Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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時差ぼけにメラトニンは効くのか?

2006年05月22日 | 睡眠に伴う疾患
時差ぼけはつらい。みなさん対策をいろいろ講じているものと思われるが、メラトニンを内服するという方法がある。アメリカではサプリメントとして販売されているため,ドラッグストアや空港などで容易に入手可能である。一方、ヨーロッパではニューロホルモンと考えられ,OTC(over the counter)としては販売されていない。日本でも正式に認可・販売はされていないが、容易に個人輸入ができ、入手に対する規制は行われていない(このとき、天然性,動物性のメラトニンでないことを確認すべき;感染や抗原抗体反応を起すタンパクを含む可能性がある。人工・合成のものを購入する)。時差の程度にもよるが、通常は就眠前30分に1~10mg服用をする。

メラトニンは松果体において,トリプトファンからセロトニンを経て合成されるインドールアミン誘導体であるが,ヒトでは夜間上昇し,日中の約10~20倍に達する。生体リズムの調節作用,催眠作用,色素細胞に対する退色作用,性腺抑制作用,深部体温低下作用などの作用を持つ.よって時差ぼけに対しては、睡眠促進作用と、体内時計のリセットを期待して就眠前に内服するわけだ。

さて個人的な使用感であるが、「効いているかもしれない」という印象だ。でもエビデンスはあるのだろうか?実は「時差ぼけやシフトワーク等の睡眠不足を伴う睡眠障害に効果はない」というメタ解析がカナダから報告された。方法は13のデータベースから、有効性の評価に関してはrandomized controlled trialを、安全性の評価に関してはrandomized ならびにnon-randomized controlled trialを抽出した。1人のレビュアーが論文を抽出し、方法論的な質は別の1人のレビュアーが評価した.試験のデザインの吟味は、メタ解析ではしばしば使用される2つの方法(Jadadの方法とSchulzの方法)が使われている。ひとつひとつのRCTの重み付けに関しては、inverse variance method が用いられている。

注; Jadad(ハダッド)の方法は,ランダム化されているか,二重盲検か,そしてフォローアップは適切にされたかが報告されているか,という3項目を検討する。Schulzの方法は,concealment(ランダム化が崩れていないかどうかということ)が保たれているかどうかという1項目を検討する。

 さて結果であるが、身体・物質的原因で生じる2次的な睡眠障害を呈するひとを検討したRCTは6つで(97症例を含む)、睡眠潜時(入眠までの時間)に効果を認めなかった(weighted mean difference(WMD) は-13.2分, 95%CI -27.3~0.9)。つぎに時差ぼけやシフトワークなどの睡眠不足を伴う睡眠障害を呈するひとを検討したRCTは9つで(427症例を含む)、やはり睡眠潜時に効果を認めなかった(weighted mean difference(WMD) は-1.0分, 95%CI -2.3~0.3)。一方、17のRCT(651症例を含む)による安全性の検討では、少なくとも短期間の使用(3ヶ月以内)では明らかな副作用は認めなかった。つまり、メラトニンが時差ぼけに効果があるというエビデンスは存在しないことになる。

 ただこの結果を持って、時差ぼけに対するメラトニンの使用を否定できるだろうか?ここからは推論だが、メラトニン感受性に個人差がある可能性は否定できない。メラトニン受容体遺伝子は1994年にクローニングされているが(メラトニン受容体は G 蛋白結合性),3種類存在することが判明している。その遺伝子によりコードされる受容体はヒトではMT1とMT2受容体が知られる(主として視交叉上核に存在する)。つまり受容体遺伝子に多型が認められれば、メラトニンに対する親和性も変わってくるはずである。さらに考えを進めて、メラトニン受容体に対する強力なアゴニストを使用すれば、催眠作用および概日リズムの調整が可能になるのではないか?

実は4月にSanDiegoで行われたAANの企業の展示ブースで、ROZEREM (ロゼレム、ramelteon)という薬の説明を聞いた。概日リズムの調整に関与しているのが主としてMT1受容体であることに着目し,MT1受容体に高い親和性(メラトニンの約10倍)と選択性を持った薬剤を開発したということだ。慢性不眠患者を対象にしたプラセボ対照二重盲検第3相試験にて、睡眠潜時を短縮する効果を認め(プラセボに比べて50%短縮)、反跳性不眠や離脱症状も起こさなかったという。従来の睡眠薬との違いはベンゾジアゼピン系が覚醒に関わる神経機構を抑制することで催眠するのに対しメラトニンは睡眠に関与する機構を賦活する、という説が言われている。つまり、この薬剤はより自然な生理的睡眠をもたらし、依存などの副作用も回避できるということが売りである(第4世代睡眠薬といわれる)。実際、アメリカでは非指定薬物で、長期処方も可能となっている。日本でもおそらく近いうちに発売され、その安全性から頻繁に使用される薬になる可能性が高い。しかし、その作用メカニズムを理解することは必要で、神経症的な要素を認める不眠患者では、当然、ベンゾジアゼピン系のほうが有効である。不眠症治療も原因をきちんとタイプわけをし、睡眠薬のタイプを選ぶという時代に入ったということだ。

BMJ. 332:385-393, 2006
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リハビリテーション打ち切りに反対する署名活動はじまる

2006年05月15日 | 医学と医療

 当ブログでも取り上げた「リハビリ打ち切り問題」(平成18年度の診療報酬改定とリハビリテーション ―原文を読む―, 診療報酬改定/リハビリ中止は死の宣告)についてですが,「リハビリテーション診療報酬改定を考える会ホームページ」において,5月14日から署名活動が始まっています.保険診療下で認められるリハビリテーション医療の算定日数上限(最大180日)を撤廃し,個々の患者の必要性に応じて,リハビリテーション医療を提供できるよう求めることがその主旨です.ぜひホームページをご覧いただき,ご賛同される方はご署名にご協力いただけるようお願いいたします.

参考サイト
リハビリテーション診療報酬改定を考える会ホームページ
CRESEED Rehablog


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ヒトはそう簡単に冬眠できそうにない 

2006年05月15日 | その他
 子供のころよくテレビで,「ヒトが凍結カプセルに入って冬眠し,50年後とかに目を覚まして・・・」なんてストーリーを見たが,いつかきっと実現するんじゃないかとワクワクしていたことを思い出す.でも本当に可能なものなのだろうか?
 「ホッキョクジリス(北極地リス,arctic ground squirrel)」は,北極圏での冬眠中,体温を氷点下(摂氏マイナス3度)まで下げた状態で生き続ける.他の動物の場合なら血液が凍りそうなものだが,非常に時間をかけて体温を下げるため,体液が氷点下に達しても液状を保てるらしい(つまり,血液は正常に流れつづけている).しかし,冬眠中は心拍数・血流速度・脳血流が顕著に低下するので,脳を含めた多臓器に低酸素性障害が生じそうなものだが,彼らは春になると何事もなかったように活動を再開する.これは代謝率・酸素消費率を大幅に低下させ,必要となる栄養素・水分・酸素を減らしているためと推測されている.
 しかしホッキョクジリスが,冬眠中,どのように臓器を守っているのかはよく分かっていない.よく言われる仮説は,冬眠中に何らかの臓器保護的な蛋白(hibernation protein)が産生されるのではないかというものだ.もし進化の過程でヒトに発現しなくなったそのような蛋白を何らかの方法で誘導できれば,虚血・低酸素による臓器障害に保護的に作用し,ヒトも冬眠できるかもしれない???

 今回,アラスカから「ホッキョクジリス」冬眠中の脳保護のメカニズムに関して興味深い報告がなされた.この結果は研究者の想像をはるかに越える驚くべきものであった.まず,著者らは100匹以上の「ホッキョクジリス」の体内にデータ記録装置(メモリ機能を持ったコンピューター・チップ,バッテリー,体温計などから構成され,12分ごとに体温を記録する)を植え込み,経過観察を行っていることで有名なチームである(当然,動物保護団体から批判されている).まず分かったことは,冬眠中,1分あたりの心拍数は6.8,呼吸数は5前後に低下するにも関わらず,PaO2は81-132 mmHgと良好に保たれていたことだ.さらに驚くべきことは,非冬眠時(春以降の活動時)はPaO2 41-73mmHgとむしろ低酸素状態にあったということだ.
 つぎに冬眠から覚めるときのバイタル・サインの変化を検討している.復温は3~4時間で完了しているが,その間,酸素消費量が増加し,これに伴いPaO2が80から20 mmHg程度まで急速に低下している.低酸素ストレス下において誘導されることで知られるHIF1αも脳組織に発現していた(HIF1α抗体で免沈後,同じ抗体でimmunoblotしていることから発現量は多くはなさそう).しかしながら,復温終了後の脳を病理学的に調べてみても酸化ストレスを受けたという病的変化は認めなかった(carboxymethyl lysine;CMLと4-hydroxy-2-nonenal;HNE染色).また非冬眠時脳におけるHIF1α発現も調べてみたところ,低酸素状態を反映してか,復温時と同レベルに発現していた.
 
 やや複雑になってきたが,これらは何を示唆するのか?結論を言えば,「ホッキョクジリス」は冬眠時に代謝率や酸素消費量を抑える仕組みを持っているだけでなく,
① むしろ冬眠中より復温時に急激なhypoxic injuryにその脳はさらされ,それから脳を守る仕組みをもっている(論文に記載はないが,もしかしたらreperfusion injuryにもさらされているかもしれない)
② 非冬眠時に,なぜか脳を低酸素にならしている
ということが分かる.①についての機序は分からないが,HIF1αの誘導はneuroprotectiveに作用している可能性もある.②についてはischemic preconditioningを行っているという可能性もある.まだまだ今後の研究が必要だが,冬眠する動物というものは,冬眠中のみならず,復温時,非冬眠時いずれのステージにおいても巧妙な仕組みを持っているようだ.ヒトが冬眠するにはまだまだ時間がかかりそうだ.

Am J Physiol Integr Comp Phyiol 289; R1297-R1306, 2006

追伸;わたしごとですが,2年ほど生活した大好きなこの街を離れることになりました.思い出深いことばかりでしたが,たくさんの方々にめぐり合い,親密なお付き合いをさせていただいたことが一番の思い出です.人の親切が身に染みました.お世話になった方々にこの場を借りて,御礼申し上げます.
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なぜ「ヒト乾燥脳硬膜」による医原性ヤコブ病が日本に多いのか?

2006年05月08日 | 感染症
 「ヒト乾燥脳硬膜」による医原性ヤコブ病(CJD)の臨床・病理所見に関するまとめが,英国から報告されている.それによると1970~2003年の過去33年間において,英国では「ヒト乾燥脳硬膜」が原因であるCJDが7例存在したそうである.これら7例は,移植後,平均93ヶ月(45~177ヶ月)に発症している.7例のうちの6例は,悪名高きドイツのBブラウン社による「Lyoduraライオデュラ」が使用されていた(残り1例は詳細不明).興味深いことに神経所見は「ヒト乾燥脳硬膜」の移植部位に依存していた(硬膜の接触部位が主病変になるということ).論文によると,全世界で164例の「乾燥脳硬膜」によるCJDが報告されているそうである.そして驚くべきことに,うち100例以上が日本での発症例と記載されている.なぜ日本でこんなに発症例が多いのか少し歴史を振り返ってみたい.
 
 まず明らかなことはドイツBブラウン社のヒト死体乾燥硬膜LyoduraがCJD病原体に汚染されていたことだ.ヒト死体組織を材料とする製品であるため,本来,さまざまな病原体が潜んでいてもおかしくないわけだが,Bブラウン社は,①死体(ドナー)選択を行わなかった,②ドナーの記録を管理していなかった(病歴の追跡ができない),③製造過程で個別処理をしていなかった(300人分の硬膜を1つのポリ袋で保管していたなど),④滅菌を十分に行わなかった(CJD病原体に無効であることが判明していたガンマ線滅菌法を採用していた),⑤1987年,アメリカでの第1症例報告後,滅菌法を水酸化ナトリウム処理に変更したものの,それ以前の危険な製品を回収せず,売り続けた,といったさまざまな企業責任を怠ったことが指摘されている.
 
 「乾燥脳硬膜」によるCJDの報告については,上述のように1987年,第1号患者の報告論文が発表されたが,アメリカでは,その年にLyoduraの使用が禁止され,英国でも1989年に使用禁止となっている.これに対し,日本では1991年 6月 ,Neurology誌に世界で4例目にあたる新潟大学の症例報告が掲載され,そのほかにも硬膜移植によるCJD感染に関する論文が複数報告されたにもかかわらず,厚生省は1973年にLyoduraの輸入を承認したのち,何と1997年にヒト乾燥硬膜製品の使用を禁止するまで何の措置も取らなかった.「厚生省が医薬品の危険に対するチェックや規制を適切に行わなかったこと」が,日本での症例数が圧倒的に多い原因である.そもそも日本で乾燥硬膜によるCJDが問題となったきっかけは,1996年3月,英国政府諮問委員会の声明により「狂牛病」とヒト新変異型CJDとの関連が疑われ,同年5月に設置された「クロイツフェルト・ヤコブ病等に関する緊急全国調査研究班」が行った全国規模の疫学調査である.皮肉なことに新変異型CJDの患者は見つからず,ヒト乾燥硬膜によるCJD患者が43人確認されたことがきっかけとなったわけだ.

 最終的にLyoduraは1973年厚生省で輸入承認されて以降,24年間のあいだに,推定約40~50万枚が使用され,少なくとも30万人が移植された.論文では,Lyoduraによる感染の危険性は1000~2000人につき1人と記載されており,長い潜伏期を考えると今後も日本では発症者が増加する可能性がある.結局,薬害エイズと同じことが起こったわけだ.とにかく日本の対応は遅い.厚生省がいつ危険性を認識したのか良く分からないが,1987年当時の危険性の認識について「医学雑誌は山ほどあり,どれを誰が読むか決まっていなかった.当時,感染は予想できなかった」というコメントを残している.国民の健康を守るべきプロが言うことか?もしかしたら将来,ヤコブ病を発症するかもしれないという不安を抱え日々過ごしている人がこんなに沢山いることをどう考えているのだろうか?現在の厚生労働省がどれだけ過去の過ちを真剣に考えて,二度と同様の悲劇が起こらないように取り組んでいるのかいないのか良く分からないが,少なくとも医療関係者は厳重に監視することが必要であろう.

 最後になるが,この論文は,驚くべきことに「ブタ硬膜移植」によってCJDを発症した世界初の症例1例についても記載している.1988年に手術を受け,134ヵ月後に発症.臨床像,病理像は孤発性CJDと区別がつかない.本当にブタ硬膜が原因なのか確証があるとは言えないが,もし本当だとしたら,豚におけるプリオン病はこれまで認識されていないことから,何とも不気味な話である.

JNNP e-pub ahead, April 2006 


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医療制度改革法案について

2006年05月01日 | 医学と医療
 私の好きなドラマ「宮廷女官チャングムの誓い」のなかで,医女チャングムの師匠であるシン・イクピルが語る言葉のなかで忘れられない言葉がある.

謙虚な姿勢で病のすべてを知ろうとすること,
謙虚な姿勢で人のすべてを知ろうとすること,
謙虚な姿勢で自然のすべてを知ろうとすること,
これが医者のなすべきことだ.

 まさかドラマの台詞のなかに自分の理想の医師像を見つけるとは思わなかったが,紛れもなくこれが自分の考える理想の医師像だ.病気を理解し治療するということは,人間を理解し,そして自然を理解するという努力と切り離して考えることはできない.もちろん非常に難しいことではあるが,逆にこの3点を理解することのみに集中していられるのであれば,それは医者として幸せなことだなあと思う.

 しかし,医者になって10数年が経過したが,医者としての仕事はどんどん難しいと感じるようになった.その理由はいくつかあるが,ひとつは多少なりとも自分が成長して,病気や患者さんを単視眼的視点から見ることが減ってきたためではないかと思う.視野が広がれば,悩み考えることも増えてくるということか.もうひとつの理由は,「病・人・自然」を相手に必死に勉強していても,それだけではどうにもならない大きな問題があるということである.その問題とは「社会」とか「医療制度」と呼べばよいだろうか・・・

 医療を取り巻く環境がこの数年で劇的に変化していることは間違いのない事実である.と言うより,はるか昔からギリギリのところで,医師の献身的な労働基準法違反の労働によって支えられてきた医療が,昨今の経済改革の柱となった市場原理の医療現場への導入(参考サイト1),さらに決定的な打撃を与えることになった新臨床研修制度の導入という医療政策ミスによって,まさしく破綻しかかっているということだ.そして,ついには「産科,小児科,地方医療崩壊元年」という言葉を耳にする状況にまで至った.朝日新聞を代表とするマスコミの医者に対するnegative campaignの影響により医者に対する悪いイメージばかりが定着するものの,一般の人々には「自分が住んでいる身近な病院で,なぜ小児科が閉鎖になるのか?産科がなくなるのか? 内科の医者がいなくなるのか?」理解できないのではないかと思う(参考サイト2).

 これらは政治が大きく関与する問題であるが,医者も「病・人・自然」のみを相手にしているだけではもはや不十分な時代になったということだろう.「病床稼働率」や「平均在院日数」という経済効率ばかり優先し,「医療の質」がおろそかになることはなかったか?日々の忙しさを理由に,わが国の医療制度の行方に関心を払って来なかったのではないか? 医療の現状を嘆くのみで,いまの医療の問題を一般の人々に理解してもらう努力が不足してなかったか?自身を振り返っても反省することばかりである.

 さて前置きが長くなったが,衆院厚生労働委員会では,政府案による医療制度改革法案が審議されている.主な内容は以下のとおりだ.
(1)70~74歳の高齢者の窓口負担を,2008年から現行1割から2割へ引き上げる.
(2)現役並み所得がある人(夫婦2人で年収621万円以上)は,今年10月から現行2割を3割に引き上げる.
(3)75歳以上には,2007年度から新たな保険制度を創設,保険料は年金から天引きする,
つまり,少子高齢化で世代間負担が難しくなった医療費を,高齢者の負担増でカバーする狙いだ.それ以外に,38万床ある療養病床については,6年間で介護型13万床を廃止,医療型も25万床を15万床に削減を図る.これは医療の必要がないのに長期入院している「社会的入院」を減らすのが目的らしい.当然,受け皿となる介護施設が十分ではない現状では,行き場のない高齢者が放り出される可能性が高い.

 一方,民主党は地域の小児科医を確保するため一般財源で支援する案のほか,「がん対策」「患者の権利重視」などに絞った対案を提出している.政府案の高齢者の負担増には「財政的な観点だけからの施策では医療レベルの低下や空洞化を招く」として当面の据え置きを求めている.民主党のほうがまともなことを言っているのは自明と思うが (参考サイト3)(参考サイト4),与党は5月10日の同委で,同法案を与党の賛成多数で可決させる意向だ.十分に審議され,国民にその重要性が伝わっているのか甚だ疑わしいが,国民の多数が選んだ自民党がすることだから仕方がないということか・・・

 懸案の「リハビリ打ち切り問題」を例に挙げるまでもなく,コスト削減だけを目的とした医療政策ばかりが打ち出される.そこには医療制度全体をどう変えるかという長期的ビジョンを垣間見ることはできない.やはり,このままで良いはずはないのではないだろうか?

参考サイト1;小児科医の遺言状
参考サイト2;衆議院厚生労働委員会 産科医 奥田美加先生発言
参考サイト3;民主党厚生労働部門web
参考サイト4;やまのい和則の「軽老の国」から「敬老の国」へ


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