SCA2ではパーキンソニズムやジストニアなどの錐体外路症状を合併するが,その治療法については十分に検討はなされていない.今回,SCA2における頸部ジストニアに対し,L-DOPAと抗コリン剤が有効であった症例が本邦より報告されている.
症例は家族歴を有する51歳の男性で,44歳時に失調歩行にて発症した.神経学的には,四肢・体幹の運動失調,眼球運動制限,緩徐眼球運動,断綴言語,四肢腱反射減弱,前頭葉徴候を認めた.頭部MRIでは,小脳・橋が萎縮しており,遺伝子検査ではataxin 2遺伝子におけるCAGリピートの伸長(42リピート)を認め,診断を確定した.
不随意運動は50歳頃より頚部に認められるようになった.胸鎖乳突筋の筋トーヌスが右優位に亢進し,かつ左右交互に収縮するため,頭部は左へ回旋し,さらに 4Hzの振戦様運動を呈した.表面筋電図でも同様の所見が確認され,かつ感覚性トリックも認めたため,頚部の不随意運動はジストニアと診断した(dystonic tremor).治療としてL-DOPAを開始したところ不随意運動は明らかに軽減した.トリヘキシフェニジルの追加により,さらに改善を認めた.
SCA2では頸部ジストニアの合併はまれではない.Boeschらは,SCA2の18例のうち11例(61%)に頸部ジストニアを認め,7例は側屈のみ,3例は側屈と頸部回旋,そして1例に頸部dystonic tremorを認めたと報告した.またZárubováらは,30代前半に小脳失調にて発症し,41歳時に頚部後屈を伴う頸部dystonic tremorを呈した症例を報告している.これらの原因として,黒質の変性,基底核サーキットまたは橋小脳路の機能障害が関与する可能性が示唆されてきた.
本症例においてL-DOPAが有効であったことは,黒質の変性が,頸部dystonic tremorに関与しているという仮説を支持するものである.黒質の変性はドパミン系とコリン系の不均衡を生じ,この不均衡を是正する抗コリン剤も症状の改善に有効であったものと考えられた.しかしSCA2では病期の進行に伴い,D2受容体の減少・消失が生じることが報告されていることから,L-DOPAの効果は徐々に減弱する可能性がある.今後,症例を蓄積し,SCA2の不随意運動に対するL-DOPA,トリヘキシフェニジルの有効性を検証する必要がある.
Mov Disord. 2009 Sep 4. [Epub ahead of print]
症例は家族歴を有する51歳の男性で,44歳時に失調歩行にて発症した.神経学的には,四肢・体幹の運動失調,眼球運動制限,緩徐眼球運動,断綴言語,四肢腱反射減弱,前頭葉徴候を認めた.頭部MRIでは,小脳・橋が萎縮しており,遺伝子検査ではataxin 2遺伝子におけるCAGリピートの伸長(42リピート)を認め,診断を確定した.
不随意運動は50歳頃より頚部に認められるようになった.胸鎖乳突筋の筋トーヌスが右優位に亢進し,かつ左右交互に収縮するため,頭部は左へ回旋し,さらに 4Hzの振戦様運動を呈した.表面筋電図でも同様の所見が確認され,かつ感覚性トリックも認めたため,頚部の不随意運動はジストニアと診断した(dystonic tremor).治療としてL-DOPAを開始したところ不随意運動は明らかに軽減した.トリヘキシフェニジルの追加により,さらに改善を認めた.
SCA2では頸部ジストニアの合併はまれではない.Boeschらは,SCA2の18例のうち11例(61%)に頸部ジストニアを認め,7例は側屈のみ,3例は側屈と頸部回旋,そして1例に頸部dystonic tremorを認めたと報告した.またZárubováらは,30代前半に小脳失調にて発症し,41歳時に頚部後屈を伴う頸部dystonic tremorを呈した症例を報告している.これらの原因として,黒質の変性,基底核サーキットまたは橋小脳路の機能障害が関与する可能性が示唆されてきた.
本症例においてL-DOPAが有効であったことは,黒質の変性が,頸部dystonic tremorに関与しているという仮説を支持するものである.黒質の変性はドパミン系とコリン系の不均衡を生じ,この不均衡を是正する抗コリン剤も症状の改善に有効であったものと考えられた.しかしSCA2では病期の進行に伴い,D2受容体の減少・消失が生じることが報告されていることから,L-DOPAの効果は徐々に減弱する可能性がある.今後,症例を蓄積し,SCA2の不随意運動に対するL-DOPA,トリヘキシフェニジルの有効性を検証する必要がある.
Mov Disord. 2009 Sep 4. [Epub ahead of print]