がん患者において悪性腫瘍の合併頻度は高く,14.6%との報告がある.この機序としてはDIC,非細菌性血栓性心内膜炎(NBTE),腫瘍塞栓,血管への腫瘍細胞の浸潤,高フィブリン血症,hyperviscosity syndromeなどが考えられる.とくにDICの頻度は高い(25%はDICで説明がつくといわれる).一方,脳塞栓症を呈した患者において循環性のムチン物質(mucinous material)が見つかることや,ムチン産生腺癌患者の剖検所見において血管内ムチンを認めることがあり,血管内ムチンが脳塞栓症の原因となる可能性が考えられる.
今回,転移性がん患者の脳梗塞症例で,ムチン産生腫瘍の腫瘍マーカーであるCA125が異常に高値であった4症例についてのケースシリーズが報告されている.1例目は71歳男性,抗血小板療法無効で再発性の脳塞栓を認めたが,血栓の起源が不明,凝固異常はなかったが,Fbgが若干低下,CA125は異常高値(7019U/ml; normal 0-35)であった.転移性膵癌があとになって発見された.深部静脈血栓症も合併した.2例目は抗凝固療法無効の繰り返す脳梗塞を呈した59歳男性.CA125 は683U/mlと異常高値.やはりあとになって転移静肺小細胞癌が見つかった.3例目は64歳男性,深部静脈血栓と肺塞栓を認め,検索の結果,未分化型の肺腺癌を認めた.ヘパリン使用中であったにもかかわらず脳塞栓を発症した.CA125 は765U/ml. 4例目は79歳女性.転移性肺腺癌に引き続き脳塞.を発症.CA125 は1042U/mlであった.
以上の症例はいずれも塞栓源が見つからなかった症例であり,著者らはCA125蛋白と脳塞栓の関連を疑っている(具体的には過凝固を引き起こす可能性やムチン蛋白による血管の直接の閉塞,NBTEを引き起こす可能性を疑っている).しかし,いずれの症例においても剖検は行われておらず,その因果関係の立証については4例のみの検討では十分とは言えないかもしれない.ただし,繰り返す脳塞栓を認め,脳血管以外の塞栓症を認め,体重減少やがんを疑わせる全身所見がある場合には,念のためCA125もチェックしておいたほうが良いかもしれない.ちなみにCA125は卵巣癌,子宮がん,膵癌,胆道癌,肝癌,胃癌,肺癌,子宮内膜症などで上昇する.
Neurology 64; 1944-1945, 2005
今回,転移性がん患者の脳梗塞症例で,ムチン産生腫瘍の腫瘍マーカーであるCA125が異常に高値であった4症例についてのケースシリーズが報告されている.1例目は71歳男性,抗血小板療法無効で再発性の脳塞栓を認めたが,血栓の起源が不明,凝固異常はなかったが,Fbgが若干低下,CA125は異常高値(7019U/ml; normal 0-35)であった.転移性膵癌があとになって発見された.深部静脈血栓症も合併した.2例目は抗凝固療法無効の繰り返す脳梗塞を呈した59歳男性.CA125 は683U/mlと異常高値.やはりあとになって転移静肺小細胞癌が見つかった.3例目は64歳男性,深部静脈血栓と肺塞栓を認め,検索の結果,未分化型の肺腺癌を認めた.ヘパリン使用中であったにもかかわらず脳塞栓を発症した.CA125 は765U/ml. 4例目は79歳女性.転移性肺腺癌に引き続き脳塞.を発症.CA125 は1042U/mlであった.
以上の症例はいずれも塞栓源が見つからなかった症例であり,著者らはCA125蛋白と脳塞栓の関連を疑っている(具体的には過凝固を引き起こす可能性やムチン蛋白による血管の直接の閉塞,NBTEを引き起こす可能性を疑っている).しかし,いずれの症例においても剖検は行われておらず,その因果関係の立証については4例のみの検討では十分とは言えないかもしれない.ただし,繰り返す脳塞栓を認め,脳血管以外の塞栓症を認め,体重減少やがんを疑わせる全身所見がある場合には,念のためCA125もチェックしておいたほうが良いかもしれない.ちなみにCA125は卵巣癌,子宮がん,膵癌,胆道癌,肝癌,胃癌,肺癌,子宮内膜症などで上昇する.
Neurology 64; 1944-1945, 2005
