私の好きな医学雑誌のひとつにpractical neurologyがある.あまり知られていないかもしれないが,JNNP誌の姉妹誌で,JNNPなどにpublishされたレベルの高い臨床研究を噛み砕き,より実践的な内容を神経内科学の専門家以外のドクターにも伝えようとする雑誌である.とても分かりやすく,実践的で,かつ質の高いreviewを読むことができるので,レジデントや学生さんの勉強の資料として,また専門医であっても知識の整理に役立つと思う.さて今回はそのpractical neurologyの最新号の記事What to doのなかから,「パーキンソン病患者に幻覚が出現したら・・・」という内容のreviewを紹介する.著者はオーストリア・インスブルグ大学のPoewe W教授.以下,サマリーを記載する.
幻視はDLBでしばしば生じ,パーキンソン病でもその経過中40%の患者に生じる.MSA-PやPSPのような疾患より,Lewy body diseaseに比較的特異的に生じる(注.ただしMSAなどでも稀ながら生じうる).通常,その幻視は色彩があり,細部まで細かく分かるがが,「誰かがそこにいた感じがする」とか,「ひとが通り過ぎた」といった軽微なタイプもある.
幻視の出現に関しては,加齢と認知機能低下が最も重要な危険因子だが,外的要因として,脱水や感染,電解質異常も重要である.もちろん薬剤(抗パ剤や他の中枢神経系薬剤)も重要である.抗パ剤のなかではL-DOPAと比べ,ドパミン・アゴニストが重要であるが,治療を開始して早期に幻視が出現した場合はParkinson disease with dementia(PDD)である可能性が増加する.
治療方針としては,すぐに非定型抗精神病薬を開始せずに,脱水や感染,電解質異常の有無を確認し,あればその治療を行う.つぎに内服薬の調節を行うが,以下の順番を勧めている.
1. 抗コリン剤,セレギリン,シンメトレル中止
2. アゴニストの減量・中止
3. L-DOPA減量
これでも幻視が残存する場合には以下を行う.
1. PDDの可能性が高い場合,コリンエステラーゼ阻害剤(rivastigmine 3-12 mg/h;日本未発売)を開始する
2. もしくは非定型抗精神病薬を開始する.まずセロクエル眠前 25mgから開始し,200mgまで増量可能.クロザピン(世界初の非定型抗精神病薬.日本未発売)は第2選択で,その場合,毎週採血を要する.
治療の最後の部分で1に関しては日本のガイドラインに記載がなく興味深い.確かに個人的にもDLBの幻覚にアリセプトが明らかに有効であることは経験しており,コリンエステラーゼ阻害剤はPDDやDLBの幻覚に試してよいのかもしれない.一方,非定型抗精神病薬のクロザピンは世界初の非定型抗精神病薬で,最も効果があると言われるが,無顆粒球症や心血管障害,けいれん発作などの危険な副作用を発現する.最も効果的かつ最も危険な非定型抗精神病薬とも評されている .
Pract Neurol 8; 238-241, 2008
幻視はDLBでしばしば生じ,パーキンソン病でもその経過中40%の患者に生じる.MSA-PやPSPのような疾患より,Lewy body diseaseに比較的特異的に生じる(注.ただしMSAなどでも稀ながら生じうる).通常,その幻視は色彩があり,細部まで細かく分かるがが,「誰かがそこにいた感じがする」とか,「ひとが通り過ぎた」といった軽微なタイプもある.
幻視の出現に関しては,加齢と認知機能低下が最も重要な危険因子だが,外的要因として,脱水や感染,電解質異常も重要である.もちろん薬剤(抗パ剤や他の中枢神経系薬剤)も重要である.抗パ剤のなかではL-DOPAと比べ,ドパミン・アゴニストが重要であるが,治療を開始して早期に幻視が出現した場合はParkinson disease with dementia(PDD)である可能性が増加する.
治療方針としては,すぐに非定型抗精神病薬を開始せずに,脱水や感染,電解質異常の有無を確認し,あればその治療を行う.つぎに内服薬の調節を行うが,以下の順番を勧めている.
1. 抗コリン剤,セレギリン,シンメトレル中止
2. アゴニストの減量・中止
3. L-DOPA減量
これでも幻視が残存する場合には以下を行う.
1. PDDの可能性が高い場合,コリンエステラーゼ阻害剤(rivastigmine 3-12 mg/h;日本未発売)を開始する
2. もしくは非定型抗精神病薬を開始する.まずセロクエル眠前 25mgから開始し,200mgまで増量可能.クロザピン(世界初の非定型抗精神病薬.日本未発売)は第2選択で,その場合,毎週採血を要する.
治療の最後の部分で1に関しては日本のガイドラインに記載がなく興味深い.確かに個人的にもDLBの幻覚にアリセプトが明らかに有効であることは経験しており,コリンエステラーゼ阻害剤はPDDやDLBの幻覚に試してよいのかもしれない.一方,非定型抗精神病薬のクロザピンは世界初の非定型抗精神病薬で,最も効果があると言われるが,無顆粒球症や心血管障害,けいれん発作などの危険な副作用を発現する.最も効果的かつ最も危険な非定型抗精神病薬とも評されている .
Pract Neurol 8; 238-241, 2008