今回のキーワードは,イスラエルにおける高齢者の高いワクチン接種率,感染可能なウイルス検体は発症から最長12日,モデルナ社ワクチンのアナフィラキシーも稀,ワクチンを打てない人・注意すべき人,ワクチンスーパーステーション,米国神経学会のワクチン接種に関する立場声明,南アフリカ変異株へのワクチンの中和能は低い,神経合併症の出現タイミング,急性小脳性運動失調・ミオクローヌス,鼻咽頭拭い後の髄液漏に伴う髄膜炎です.
イスラエルはワクチン接種率で世界をリードしています.人口の33%がすでに1回目の接種を済ませたそうです.Nature誌のニュース欄に,ファイザー・ワクチンBNT162b2を接種した60歳以上の20万人と接種しなかった20万人を比較した予備的な分析が行われ,最初の接種から2週間後の段階で,PCR陽性となる頻度が接種群で33%低下していることが分かったと書かれていました.高齢者の75%以上がワクチン接種を受けているため,今後数週間の間に接種を受けた高齢者の入院・死亡が減少するかが次の焦点となります.そして2回目の接種を受けた数週間後に,より決定的な結果が得られることになります.高齢者のワクチン接種率が日本でどうなるか心配です.外来で「ワクチンは怖いから打たないつもり」というご高齢の患者さんに,「あなたは副反応が出るリスクは高くないし,感染したらコロナは死ぬので,考え直すように」と伝えました.接種率向上に向けて担当医の役割は大きいと思います.また今朝の報道番組で,イスラエル在住の日本のかたが,イスラエルの高いワクチン接種率について「戦争のため,死に対する危機感が高い.日本は平和ボケしている.意識を高めないとこの危機から脱出できない」と仰っていました.まさにその通りだと思います.
Nature. News. Jan 22, 2021(doi.org/10.1038/d41586-021-00140-w)
◆発症から感染可能なウイルスが消失するまで7日,最長12日かかる.
韓国からの報告.入院患者21名から得た呼吸器サンプルを用いて,発症から培養及びPCRが陰性化するまでの期間が報告された.患者の年齢中央値は62歳で,男性76%であった.サンプルは1~5日の間隔(中央値 2 日)で採取し,計165サンプルでPCR,89サンプルで培養を行った.ウイルスは29/89サンプル(33%)で培養された.発症から感染可能なウイルスが消失するまでの中央値は7日(95%CI,5~10日),最長,発症から12日後まで認めた.また発症からPCRでウイルスが消失する(24時間空けて2回PCR陰性)までの中央値は34日(95%CIの下限,24日)であった.解熱後3日まで感染可能なウイルスが認められた.感染性を持つサンプルは,PCRのサイクル閾値が28.4以下のもののみであった.培養陽性率は,発症からの時間が長くなり,サイクル閾値が高くなるにつれて減少した(図1).これらの情報は患者の隔離期間の指針となる.また濃厚接触者追跡の二次感染のリスクを推定する上で有用であろう.
New Engl J Med. Jan 27, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2027040)
◆モデルナ社ワクチンのアナフィラキシーも稀.
2020年12月21日~2021年1月10日の間に,ワクチン有害事象報告システムによるモニタリングにより,モデルナ社ワクチンmRNA-1273の初回404万1396名の接種後に,10名のアナフィラキシーが生じた(100万回あたり2.5名).9例では,ワクチン接種後15分以内に発症した(図2).アナフィラキシーに関連した死亡例は報告されていない.ちなみにファイザー・ワクチンでは100万人あたりに換算すると11.1名であった.MMWR. Jan 22, 2021.(doi.org/10.15585/mmwr.mm7004e1)
◆COVID-19ワクチンをすべきでないひと,および注意を要するひと.
禁忌
1)mRNA COVID-19ワクチンの過去の投与または成分に対する重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーなど).
2)mRNA COVID-19ワクチン(ポリエチレングリコール:PEGを含む)の過去の投与または成分に対する重症度を問わない即時のアレルギー反応.
3)ポリソルベート(PEGとの交差反応性過敏症の可能性がある)に対する重症度を問わず即時のアレルギー反応.
注意
1)他のワクチンまたは注射剤治療に対する即時のアレルギー反応の既往歴.
2)中等度から重度の急性疾患.
米国米国疾病予防管理センター(CDC)パンフレット.(https://bit.ly/3oyB81s)
◆米国医療保険機関におけるワクチンの4つの課題.
1)希望があり,ワクチンを受ける準備ができている人の接種を成し遂げること.
2)予防接種に消極的な人々(一般市民と医療従事者の両方)の信頼を得ること.
3)「よくある質問」に答えるだけではなく,信頼関係を築くことを目的とした,一般市民とのコミュニケーションに取り組むこと.
4)地域において政府と他の機関を連携させること.
ワクチンを迅速かつ公平に成し遂げるためには,信頼を築き,運営を管理し,より効果的にコミュニケーションをとり,他の公的機関や民間機関と協力しなければならない.
New Engl J Med. Jan 27, 2021(doi.org/10.1056/NEJMp2100574)
◆決定からわずか5日,開始からわずか2週間で5万8千人にワクチン接種したサンディエゴ.
2021年1月6日,サンディエゴ保健局はパドレス球団を含む関係者と会議を行い,毎日5000人にワクチンを接種することを目標とした,ワクチンスーパーステーション開設に合意した.そのわずか5日後,カリフォルニア州初の大規模なワクチン接種施設が開設され,2週間後には5万8千人以上の地域住民がワクチン接種を受けた.来院者は駐車場の北側から入場し(図3A),登録テントに移動してワクチンの適格性と登録データが確認される(図3B).つぎに12台の車両が3つのテント(1つのテントに4台)で一列に並べられ,1テント1人の接種者が車両に乗っている12人に接種する(図3C).接種終了後,15分間のカウントダウンが開始され,3人の接種者は別のテントに移動し接種を行う.この方法だと,1時間あたり432回,1日で5184回の接種が可能になるという.パドレスは,球場Petco Parkに隣接する駐車場や,ドライブスルーを含むイベント実施ノウハウを提供した.またITインフラの整備(ワクチン接種の自己予約システム,電子カルテへの統合,駐車場全体の無線wifiなど),スタッフの配置計画(毎日300人以上の人員確保:臨床部門120人,管理部門180人),ワークフローの設計・最適化,交通の調整などが行われた.→ まさにプロジェクトXである.日本でもこのスピーディーさが求められる.
JAMA. Jan 28, 2021(doi.org/10.1001/jama.2021.0801)
◆米国神経学会のCOVID-19ワクチン接種に関する立場声明(position statement).
A4にして1枚程度の声明だが,重要なポイントは以下の3点.
1)米国神経学会(AAN)はワクチン接種の推奨を支持する.
2)脳神経内科医は,神経疾患患者に特有のエビデンスに基づく推奨に必要なデータを収集する努力を支援し,参加し続けるべきである.
3)ハイリスク患者へのCOVID-19の蔓延を緩和するために,AANは資格のあるすべての神経内科医がCOVID-19に対するワクチン接種を受けることを強く奨励し,また資格のあるすべての患者へのワクチン接種を支持する.
AAN. Statement on COVID-19 vaccination(https://bit.ly/36r9YDz)
◆南アフリカ変異株へのワクチンの中和能は低い.
スパイク蛋白質に変異を持つ SARS-CoV-2 変異体である英国B.1.1.7および南アフリカB.1.351が拡散している.米国からモデルナ社mRNA-1273を第1相試験で2回接種された8名(18~55歳)の血清が,これら変異株に対しても中和能を有するか検討した研究がプレプリント論文として報告された.英国株B.1.1.7に対する中和には低下はなかったが,南アフリカ株B.1.351に対する中和力は,感染防御に必要な水準を恐らく満たすものの,6.4倍低下していた(図4:対数グラフ).南アフリカ株に現在のワクチンは十分でない可能性もあり,B.1.351を標的としたワクチン開発がすでに始まっている.
bioRxiv. Jan 25, 2021(doi.org/10.1101/2021.01.25.427948)
◆神経合併症の出現タイミング.
スペインの第3次病院に,第1波が発生した3ヵ月間に入院したCOVID-19患者を対象に行われた前方視的研究.期間中に少なくとも1つの神経学的合併症(77種類の神経疾患)を発症した入院患者は71/2750名(2.6%)であった.最も多かった診断は,神経筋疾患(33.7%),脳血管障害(27.3%),急性脳症(19.4%),けいれん発作(7.8%),その他(11.6%:吃逆,ミオクローヌス・振戦,ホルネル症候群,横断性脊髄炎)であった.発症のタイミング(中央値)は脳血管障害5日(0~53日),けいれん発作5日(0~43日),脳症10日(0~47日),神経筋疾患23日(0~60日),その他23日(10~45日)であった(図5).つまり神経筋疾患は後期に発症し,脳血管障害と脳症は早期に発症した.また髄液PCR は15名全例で陰性であった.
Eur J Neurol. Jan 21, 2021(doi.org/10.1111/ene.14748)
◆急性小脳性運動失調・ミオクローヌス.
フランスから,COVID-19に関連した急性小脳性運動失調・ミオクローヌスの2症例に,既報の5例を追加した症例集積研究が報告された.これらの神経症候は,最初の症状が出現後,10日から6週間で合併した.4名の患者にオプソクローヌスまたはocular flutterが認められた.1名を除き,免疫グロブリン療法やステロイドパルス療法が行われ,1週間以内に顕著な改善が認められた.早期の治療開始により迅速な回復が見込めるため,この病態を認識することが重要である.
Eur J Neurol. Jan 25, 2021(doi.org/10.1111/ene.14726)
◆検体採取後の髄液漏に伴う髄膜炎.
スペインからの症例報告.41歳の女性.2020年3月に鼻咽頭拭い液を採取し,PCRを行ったが陰性であった.1週間後,金属味を伴う片側性の持続性鼻漏が生じたが,アレルギー性鼻炎の診断で治療を受けたが症状は改善しなかった.7月,鼻腔ドレナージでβ2-トランスフェリンが陽性,頭部MRIを実施したところ髄液瘻が確認された.β2-トランスフェリンは他の体液には存在せず,また1μl の髄液もあれば十分に測定が可能であり,髄液漏の診断に有用である.
Eur J Neurol. Jan 21, 2021(doi.org/10.1111/ene.14736)
イスラエルはワクチン接種率で世界をリードしています.人口の33%がすでに1回目の接種を済ませたそうです.Nature誌のニュース欄に,ファイザー・ワクチンBNT162b2を接種した60歳以上の20万人と接種しなかった20万人を比較した予備的な分析が行われ,最初の接種から2週間後の段階で,PCR陽性となる頻度が接種群で33%低下していることが分かったと書かれていました.高齢者の75%以上がワクチン接種を受けているため,今後数週間の間に接種を受けた高齢者の入院・死亡が減少するかが次の焦点となります.そして2回目の接種を受けた数週間後に,より決定的な結果が得られることになります.高齢者のワクチン接種率が日本でどうなるか心配です.外来で「ワクチンは怖いから打たないつもり」というご高齢の患者さんに,「あなたは副反応が出るリスクは高くないし,感染したらコロナは死ぬので,考え直すように」と伝えました.接種率向上に向けて担当医の役割は大きいと思います.また今朝の報道番組で,イスラエル在住の日本のかたが,イスラエルの高いワクチン接種率について「戦争のため,死に対する危機感が高い.日本は平和ボケしている.意識を高めないとこの危機から脱出できない」と仰っていました.まさにその通りだと思います.
Nature. News. Jan 22, 2021(doi.org/10.1038/d41586-021-00140-w)
◆発症から感染可能なウイルスが消失するまで7日,最長12日かかる.
韓国からの報告.入院患者21名から得た呼吸器サンプルを用いて,発症から培養及びPCRが陰性化するまでの期間が報告された.患者の年齢中央値は62歳で,男性76%であった.サンプルは1~5日の間隔(中央値 2 日)で採取し,計165サンプルでPCR,89サンプルで培養を行った.ウイルスは29/89サンプル(33%)で培養された.発症から感染可能なウイルスが消失するまでの中央値は7日(95%CI,5~10日),最長,発症から12日後まで認めた.また発症からPCRでウイルスが消失する(24時間空けて2回PCR陰性)までの中央値は34日(95%CIの下限,24日)であった.解熱後3日まで感染可能なウイルスが認められた.感染性を持つサンプルは,PCRのサイクル閾値が28.4以下のもののみであった.培養陽性率は,発症からの時間が長くなり,サイクル閾値が高くなるにつれて減少した(図1).これらの情報は患者の隔離期間の指針となる.また濃厚接触者追跡の二次感染のリスクを推定する上で有用であろう.
New Engl J Med. Jan 27, 2021(doi.org/10.1056/NEJMc2027040)
◆モデルナ社ワクチンのアナフィラキシーも稀.
2020年12月21日~2021年1月10日の間に,ワクチン有害事象報告システムによるモニタリングにより,モデルナ社ワクチンmRNA-1273の初回404万1396名の接種後に,10名のアナフィラキシーが生じた(100万回あたり2.5名).9例では,ワクチン接種後15分以内に発症した(図2).アナフィラキシーに関連した死亡例は報告されていない.ちなみにファイザー・ワクチンでは100万人あたりに換算すると11.1名であった.MMWR. Jan 22, 2021.(doi.org/10.15585/mmwr.mm7004e1)
◆COVID-19ワクチンをすべきでないひと,および注意を要するひと.
禁忌
1)mRNA COVID-19ワクチンの過去の投与または成分に対する重篤なアレルギー反応(アナフィラキシーなど).
2)mRNA COVID-19ワクチン(ポリエチレングリコール:PEGを含む)の過去の投与または成分に対する重症度を問わない即時のアレルギー反応.
3)ポリソルベート(PEGとの交差反応性過敏症の可能性がある)に対する重症度を問わず即時のアレルギー反応.
注意
1)他のワクチンまたは注射剤治療に対する即時のアレルギー反応の既往歴.
2)中等度から重度の急性疾患.
米国米国疾病予防管理センター(CDC)パンフレット.(https://bit.ly/3oyB81s)
◆米国医療保険機関におけるワクチンの4つの課題.
1)希望があり,ワクチンを受ける準備ができている人の接種を成し遂げること.
2)予防接種に消極的な人々(一般市民と医療従事者の両方)の信頼を得ること.
3)「よくある質問」に答えるだけではなく,信頼関係を築くことを目的とした,一般市民とのコミュニケーションに取り組むこと.
4)地域において政府と他の機関を連携させること.
ワクチンを迅速かつ公平に成し遂げるためには,信頼を築き,運営を管理し,より効果的にコミュニケーションをとり,他の公的機関や民間機関と協力しなければならない.
New Engl J Med. Jan 27, 2021(doi.org/10.1056/NEJMp2100574)
◆決定からわずか5日,開始からわずか2週間で5万8千人にワクチン接種したサンディエゴ.
2021年1月6日,サンディエゴ保健局はパドレス球団を含む関係者と会議を行い,毎日5000人にワクチンを接種することを目標とした,ワクチンスーパーステーション開設に合意した.そのわずか5日後,カリフォルニア州初の大規模なワクチン接種施設が開設され,2週間後には5万8千人以上の地域住民がワクチン接種を受けた.来院者は駐車場の北側から入場し(図3A),登録テントに移動してワクチンの適格性と登録データが確認される(図3B).つぎに12台の車両が3つのテント(1つのテントに4台)で一列に並べられ,1テント1人の接種者が車両に乗っている12人に接種する(図3C).接種終了後,15分間のカウントダウンが開始され,3人の接種者は別のテントに移動し接種を行う.この方法だと,1時間あたり432回,1日で5184回の接種が可能になるという.パドレスは,球場Petco Parkに隣接する駐車場や,ドライブスルーを含むイベント実施ノウハウを提供した.またITインフラの整備(ワクチン接種の自己予約システム,電子カルテへの統合,駐車場全体の無線wifiなど),スタッフの配置計画(毎日300人以上の人員確保:臨床部門120人,管理部門180人),ワークフローの設計・最適化,交通の調整などが行われた.→ まさにプロジェクトXである.日本でもこのスピーディーさが求められる.
JAMA. Jan 28, 2021(doi.org/10.1001/jama.2021.0801)
◆米国神経学会のCOVID-19ワクチン接種に関する立場声明(position statement).
A4にして1枚程度の声明だが,重要なポイントは以下の3点.
1)米国神経学会(AAN)はワクチン接種の推奨を支持する.
2)脳神経内科医は,神経疾患患者に特有のエビデンスに基づく推奨に必要なデータを収集する努力を支援し,参加し続けるべきである.
3)ハイリスク患者へのCOVID-19の蔓延を緩和するために,AANは資格のあるすべての神経内科医がCOVID-19に対するワクチン接種を受けることを強く奨励し,また資格のあるすべての患者へのワクチン接種を支持する.
AAN. Statement on COVID-19 vaccination(https://bit.ly/36r9YDz)
◆南アフリカ変異株へのワクチンの中和能は低い.
スパイク蛋白質に変異を持つ SARS-CoV-2 変異体である英国B.1.1.7および南アフリカB.1.351が拡散している.米国からモデルナ社mRNA-1273を第1相試験で2回接種された8名(18~55歳)の血清が,これら変異株に対しても中和能を有するか検討した研究がプレプリント論文として報告された.英国株B.1.1.7に対する中和には低下はなかったが,南アフリカ株B.1.351に対する中和力は,感染防御に必要な水準を恐らく満たすものの,6.4倍低下していた(図4:対数グラフ).南アフリカ株に現在のワクチンは十分でない可能性もあり,B.1.351を標的としたワクチン開発がすでに始まっている.
bioRxiv. Jan 25, 2021(doi.org/10.1101/2021.01.25.427948)
◆神経合併症の出現タイミング.
スペインの第3次病院に,第1波が発生した3ヵ月間に入院したCOVID-19患者を対象に行われた前方視的研究.期間中に少なくとも1つの神経学的合併症(77種類の神経疾患)を発症した入院患者は71/2750名(2.6%)であった.最も多かった診断は,神経筋疾患(33.7%),脳血管障害(27.3%),急性脳症(19.4%),けいれん発作(7.8%),その他(11.6%:吃逆,ミオクローヌス・振戦,ホルネル症候群,横断性脊髄炎)であった.発症のタイミング(中央値)は脳血管障害5日(0~53日),けいれん発作5日(0~43日),脳症10日(0~47日),神経筋疾患23日(0~60日),その他23日(10~45日)であった(図5).つまり神経筋疾患は後期に発症し,脳血管障害と脳症は早期に発症した.また髄液PCR は15名全例で陰性であった.
Eur J Neurol. Jan 21, 2021(doi.org/10.1111/ene.14748)
◆急性小脳性運動失調・ミオクローヌス.
フランスから,COVID-19に関連した急性小脳性運動失調・ミオクローヌスの2症例に,既報の5例を追加した症例集積研究が報告された.これらの神経症候は,最初の症状が出現後,10日から6週間で合併した.4名の患者にオプソクローヌスまたはocular flutterが認められた.1名を除き,免疫グロブリン療法やステロイドパルス療法が行われ,1週間以内に顕著な改善が認められた.早期の治療開始により迅速な回復が見込めるため,この病態を認識することが重要である.
Eur J Neurol. Jan 25, 2021(doi.org/10.1111/ene.14726)
◆検体採取後の髄液漏に伴う髄膜炎.
スペインからの症例報告.41歳の女性.2020年3月に鼻咽頭拭い液を採取し,PCRを行ったが陰性であった.1週間後,金属味を伴う片側性の持続性鼻漏が生じたが,アレルギー性鼻炎の診断で治療を受けたが症状は改善しなかった.7月,鼻腔ドレナージでβ2-トランスフェリンが陽性,頭部MRIを実施したところ髄液瘻が確認された.β2-トランスフェリンは他の体液には存在せず,また1μl の髄液もあれば十分に測定が可能であり,髄液漏の診断に有用である.
Eur J Neurol. Jan 21, 2021(doi.org/10.1111/ene.14736)