重症筋無力症(MG)は自己免疫疾患であるが,他の自己免疫性疾患を合併することを時々経験する.個人的には甲状腺機能亢進症の合併例の経験があるが,実際にはどのような自己免疫疾患を合併することが多いのだろうか?また通常の,自己免疫疾患を合併しないMGと比較して,どのような臨床的特徴を有するのであろうか?これまでノルウェーやオランダでは,それぞれ22.9%(48名中11名)および9.4%(212名中20名)といった報告があり,後者ではやはり甲状腺疾患が多いという報告だが,意外なことに日本人に関してはほとんど報告がない.
さて,今回,新潟大学から本邦142例のMG症例を検討したretrospective studyの結果が報告された. 対象は連続した142例のMG入院症例(約20年間の観察期間)で,10歳未満の小児例は除外している.結果としては,28例(19.7%)において他の自己免疫性疾患を合併していた.なかでも甲状腺疾患はやはり多かった.以下に内訳を示す.
①バセドウ病11名(7.7%)
②橋本甲状腺炎6名(4.2%)
②慢性関節リウマチ6名(4.2%)
④SLE 2名
④自己免疫性血小板減少症2名
⑥シュエーグレン症候群1名
ではこれらの自己免疫性疾患合併MGは,通常の自己免疫性疾患を合併しないMGと臨床像が異なるのであろうか?まずバセドウ病合併MG症例は,通常のMGと比較して,①MG症状の発症が若年である(それぞれ35.5歳,49歳;P<0.05),②アセチルコリン受容体抗体陽性率が低い(それぞれ44.4%と89.8%;P<0.05),③胸腺過形成合併が高率である(それぞれ72.7%と17.9%;P<0.05),という特徴を認めた.治療後の予後については有意差を認めなかった.
つぎに頻度の高い橋本甲状腺炎合併MGについては,①MG症状の発症が高齢(66.0歳;P<0.05),②胸腺過形成合併はなし,という特徴を認めたが,アセチルコリン受容体抗体陽性率や予後については通常のMGと有意差を認めなかった.
以上より,バセドウ病ないし橋本甲状腺炎合併を合併するMG症例は,通常のMGとは異なる1亜型である可能性が考えられた.とくに同じ自己免疫性甲状腺疾患でありながら,発症年齢や胸腺過形成合併の頻度はまったく反対の結果を示した点は不思議である(橋本病はそれ自体が高齢発症が多いことも関与しているのかもしれない).治療後の予後については,自己免疫性甲状腺疾患合併の有無によって違いはないようなので,とくに通常のMGと違った治療を行う必要はないようであるが,甲状腺機能の正常化を急ぐことは言うまでもない.今後,多数例において,甲状腺疾患合併MGが,MGの新たなサブタイプであるのかどうか検討されることが望まれる.
Eur J Neurol. 2007 Oct 17; [Epub ahead of print]
追伸;背景のハロウィーンは我が家では抜群の人気であったが,一般には不評のようなので変更することにする.
さて,今回,新潟大学から本邦142例のMG症例を検討したretrospective studyの結果が報告された. 対象は連続した142例のMG入院症例(約20年間の観察期間)で,10歳未満の小児例は除外している.結果としては,28例(19.7%)において他の自己免疫性疾患を合併していた.なかでも甲状腺疾患はやはり多かった.以下に内訳を示す.
①バセドウ病11名(7.7%)
②橋本甲状腺炎6名(4.2%)
②慢性関節リウマチ6名(4.2%)
④SLE 2名
④自己免疫性血小板減少症2名
⑥シュエーグレン症候群1名
ではこれらの自己免疫性疾患合併MGは,通常の自己免疫性疾患を合併しないMGと臨床像が異なるのであろうか?まずバセドウ病合併MG症例は,通常のMGと比較して,①MG症状の発症が若年である(それぞれ35.5歳,49歳;P<0.05),②アセチルコリン受容体抗体陽性率が低い(それぞれ44.4%と89.8%;P<0.05),③胸腺過形成合併が高率である(それぞれ72.7%と17.9%;P<0.05),という特徴を認めた.治療後の予後については有意差を認めなかった.
つぎに頻度の高い橋本甲状腺炎合併MGについては,①MG症状の発症が高齢(66.0歳;P<0.05),②胸腺過形成合併はなし,という特徴を認めたが,アセチルコリン受容体抗体陽性率や予後については通常のMGと有意差を認めなかった.
以上より,バセドウ病ないし橋本甲状腺炎合併を合併するMG症例は,通常のMGとは異なる1亜型である可能性が考えられた.とくに同じ自己免疫性甲状腺疾患でありながら,発症年齢や胸腺過形成合併の頻度はまったく反対の結果を示した点は不思議である(橋本病はそれ自体が高齢発症が多いことも関与しているのかもしれない).治療後の予後については,自己免疫性甲状腺疾患合併の有無によって違いはないようなので,とくに通常のMGと違った治療を行う必要はないようであるが,甲状腺機能の正常化を急ぐことは言うまでもない.今後,多数例において,甲状腺疾患合併MGが,MGの新たなサブタイプであるのかどうか検討されることが望まれる.
Eur J Neurol. 2007 Oct 17; [Epub ahead of print]
追伸;背景のハロウィーンは我が家では抜群の人気であったが,一般には不評のようなので変更することにする.