少し長いタイトルなのだが,
「厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
希少性難治性疾患患者に関する医療の向上及び患者支援のあり方に関する研究班
ワークショップ 東日本大震災と難病~今何をすべきか」
に参加した.
非常にさまざまな立場の方々が参加する研究班である.このことを反映し,シンポジウムの演者も,被災地の医師,患者受け入れ地域の医師,難病ネットワーク,看護・介護,医療機器会社,難病患者(筋ジストロフィー,ALS,パーキンソン病,炎症性腸疾患(IBD),難病団体連絡協議会),そして行政と非常に多彩であった.「今何をすべきか」という観点から大震災を見直し,非常に有意義なシンポジウムとなった.
以下,個人的に重要と思われるポイントを紹介したい.
(患者さんの問題)
1.在宅で人工呼吸器を使用している患者さんにおける停電対策(バッテリーの問題)
病院に行けば何とかなるは間違い.なぜなら震災時には病院に患者が集中し,病院機能が麻痺してしまう.
よって普段からの準備がなにより大切!!.バッテリーの準備を普段からしていた人は.震災後も在宅での療養が継続できた.
バッテリーは人工呼吸器以外にも,吸引器,エアマットにも必要.すべてに対策が必要.
電気を使わない「足ふみ式吸引器」は非常時に有用.
自動車にガソリンを満タンにしておくことを心がけることも大切(シガーソケットから電源として利用できる)
非被災地域の患者さんも計画停電による電力不足に対し準備が必要.
2.在宅医療機器の規格と整合性の問題
人工呼吸器に非常電源が使えるかという問題.
電流が擬似正弦波である発電機やインバーターは,精密機器では制御基板にダメージを与えてしまう.よって人工呼吸器に対して直接使用することは推奨されない.
人工呼吸器に接続する外部バッテリーの充電には使用できる.
3.患者情報の伝達の問題
震災直後の病院では,患者情報がわからず,医療現場が困難する一因になった.例えば「福島1,福島2,・・・」などと識別するしかないという状況に陥ったとのこと.
病院に送り出す者が,患者のからだに名前,年齢,その他の情報などをサインペンで書いておくだけでもかなり役に立った.
今後は患者が「緊急時申し送りカード」のようなものを利用することが大切になる.
以下のリンクは,「緊急時申し送りカード」の具体例(『訪問看護と介護』9月号より)
(病院・行政サイドの問題)
1.通信手段の確保の問題
無線局も震災で倒壊し,通信ができず孤立した病院があった.
なんといっても通信手段の確保は重要.衛星電話,倒壊しない無線局の確保が必要.
2.広域医療搬送
患者が集中し,病院機能が破綻した病院では,難病患者は広域医療搬送するしかなくなる.
今後必要なこと.
(ア)広域搬送のノウハウの蓄積
ヘリコプターは揺れる,そして騒音が大きい,そして天候によっては飛ばないことを知っておくべき.
音が大きくモニター音は無意味.すべて目視による患者バイタルの確認が必要
気圧低下により分泌物は増加する,カフ圧も高くなり,場合によってはエアを抜く必要がある
(イ)広域搬送に随行する医師をどう確保するか?
被災地の病院の医師は随行困難.被災地以外からの医師の確保が必要.
難病患者に関しては神経内科医が望ましい(DMAT研修も行なったほうが良).
また広域搬送を外部からアレンジする担当する災害コーディネーターも必要.
(ウ)搬送についてルールが必要
行きは良いが,帰ってくるときの手段がない.
費用負担をどうするかのルールもない.
3.安否確認
安否確認は誰が行うべきなのか?
情報をどう集約・共有すべきか?
4.災害時要援護者名簿の作成
災害時において援護が不可欠な難病患者さん等のリストの準備を行うべきではないか?
しかし個人情報保護の問題や,本人が希望しない場合もある
5.計画停電による電力不足への対応
非被災地域の病院でも今回,大きな問題になった.
せめて病院は除外すべきではないか?
(医療従事者の倫理観と限界)
避難誘導活動中の看護師が津波に飲み込まれるという非常に悲しい出来事があった.
医療者として責任ある行動を取る必要があると同時に,自分の身を守ることも行わねばならない.
医療者としての限界をどのように見極めるべきか?
以上のような内容が議論された.日本に住むかぎり,またいつ同様の震災が起こるかわからない.
少なくとも今回の震災から学んだことは,教訓として生かさねばならない.
「厚生労働科学研究費補助金難治性疾患克服研究事業
希少性難治性疾患患者に関する医療の向上及び患者支援のあり方に関する研究班
ワークショップ 東日本大震災と難病~今何をすべきか」
に参加した.
非常にさまざまな立場の方々が参加する研究班である.このことを反映し,シンポジウムの演者も,被災地の医師,患者受け入れ地域の医師,難病ネットワーク,看護・介護,医療機器会社,難病患者(筋ジストロフィー,ALS,パーキンソン病,炎症性腸疾患(IBD),難病団体連絡協議会),そして行政と非常に多彩であった.「今何をすべきか」という観点から大震災を見直し,非常に有意義なシンポジウムとなった.
以下,個人的に重要と思われるポイントを紹介したい.
(患者さんの問題)
1.在宅で人工呼吸器を使用している患者さんにおける停電対策(バッテリーの問題)
病院に行けば何とかなるは間違い.なぜなら震災時には病院に患者が集中し,病院機能が麻痺してしまう.
よって普段からの準備がなにより大切!!.バッテリーの準備を普段からしていた人は.震災後も在宅での療養が継続できた.
バッテリーは人工呼吸器以外にも,吸引器,エアマットにも必要.すべてに対策が必要.
電気を使わない「足ふみ式吸引器」は非常時に有用.
自動車にガソリンを満タンにしておくことを心がけることも大切(シガーソケットから電源として利用できる)
非被災地域の患者さんも計画停電による電力不足に対し準備が必要.
2.在宅医療機器の規格と整合性の問題
人工呼吸器に非常電源が使えるかという問題.
電流が擬似正弦波である発電機やインバーターは,精密機器では制御基板にダメージを与えてしまう.よって人工呼吸器に対して直接使用することは推奨されない.
人工呼吸器に接続する外部バッテリーの充電には使用できる.
3.患者情報の伝達の問題
震災直後の病院では,患者情報がわからず,医療現場が困難する一因になった.例えば「福島1,福島2,・・・」などと識別するしかないという状況に陥ったとのこと.
病院に送り出す者が,患者のからだに名前,年齢,その他の情報などをサインペンで書いておくだけでもかなり役に立った.
今後は患者が「緊急時申し送りカード」のようなものを利用することが大切になる.
以下のリンクは,「緊急時申し送りカード」の具体例(『訪問看護と介護』9月号より)
(病院・行政サイドの問題)
1.通信手段の確保の問題
無線局も震災で倒壊し,通信ができず孤立した病院があった.
なんといっても通信手段の確保は重要.衛星電話,倒壊しない無線局の確保が必要.
2.広域医療搬送
患者が集中し,病院機能が破綻した病院では,難病患者は広域医療搬送するしかなくなる.
今後必要なこと.
(ア)広域搬送のノウハウの蓄積
ヘリコプターは揺れる,そして騒音が大きい,そして天候によっては飛ばないことを知っておくべき.
音が大きくモニター音は無意味.すべて目視による患者バイタルの確認が必要
気圧低下により分泌物は増加する,カフ圧も高くなり,場合によってはエアを抜く必要がある
(イ)広域搬送に随行する医師をどう確保するか?
被災地の病院の医師は随行困難.被災地以外からの医師の確保が必要.
難病患者に関しては神経内科医が望ましい(DMAT研修も行なったほうが良).
また広域搬送を外部からアレンジする担当する災害コーディネーターも必要.
(ウ)搬送についてルールが必要
行きは良いが,帰ってくるときの手段がない.
費用負担をどうするかのルールもない.
3.安否確認
安否確認は誰が行うべきなのか?
情報をどう集約・共有すべきか?
4.災害時要援護者名簿の作成
災害時において援護が不可欠な難病患者さん等のリストの準備を行うべきではないか?
しかし個人情報保護の問題や,本人が希望しない場合もある
5.計画停電による電力不足への対応
非被災地域の病院でも今回,大きな問題になった.
せめて病院は除外すべきではないか?
(医療従事者の倫理観と限界)
避難誘導活動中の看護師が津波に飲み込まれるという非常に悲しい出来事があった.
医療者として責任ある行動を取る必要があると同時に,自分の身を守ることも行わねばならない.
医療者としての限界をどのように見極めるべきか?
以上のような内容が議論された.日本に住むかぎり,またいつ同様の震災が起こるかわからない.
少なくとも今回の震災から学んだことは,教訓として生かさねばならない.