日本神経学会が主催するサマースクール「神経疾患に対する創薬トランスレーショナルリサーチを学ぶ」において実例紹介の講師を務めた.私達が取り組んでいる脳梗塞に対する3つの創薬シーズ(t-PAとVEGF抑制薬の併用,成長因子プログラニュリン,低酸素・低糖刺激細胞療法)を紹介し,これまでの経験から創薬の成功の鍵を握る以下の5点について説明を行った.
❶ 対象疾患,標的分子を慎重に選択すること
❷ 動物実験の質を高めること(ヒトの臨床を反映させること)
❸ 特許の要件,とくに新規性と進歩性について理解すること
❹ 資金と出口戦略を考えること
❺ 産学連携で求められることを理解すること
❹は,研究資金をどのように獲得し,製薬企業にどのような形でシーズを引き継ぐかを考えることである.私達は,創薬シーズが早期の段階から製薬企業との積極的な議論を目指すようになった.それは公的資金の獲得でつまずきうまく行かず,途方に暮れていたとき,産学連携という道があることを友人が教えてくれたがきっかけであったが,それ以外にも,必ず最終目的地(出口)が製薬企業であり(薬剤の承認申請,製造,販売を行うのは製薬企業であるため),製薬企業との何らかの合意に達するまでの期間が,特許の各国移行の期限=出願後30ヶ月と極めて短いためである.
しかし,製薬企業との連携開始は容易なことではない.その理由は①シーズが未熟なearly stageでは製薬企業が関心を持たない,もしくは連携開始の決断をしないこと,②それ以前にアカデミア研究者が同じ目標をもつパートナー(製薬企業)にどのように巡り合ったらよいか分からないことが挙げられる.ここでは②に関連して,パートナーに巡り合う方法としてのオープン・イノベーションとマッチングについて紹介したい.たとえシーズが未熟で産学連携がうまく行かなくても,製薬企業との議論は必ず研究の推進に役立つ.
1)オープン・イノベーション
これは組織内部のイノベーションを促進するため,組織の枠を超えて「外部の知見を活用する」こととである.疾患標的分子の枯渇や,研究費に対する新薬創出の成功率の低下などを背景に,製薬企業でも近年,積極的な取り組みが行われている.「製薬会社の研究公募活動の一覧」というホームページで最新の情報を入手できる.私達は第一三共株式会社TaNeDSに採択され,2年弱,成長因子プログラニュリンに関する共同研究をしたが,企業の研究者との交流を通して非常に多くのことを学ばせていただいた.
2)マッチング
以下のようなマッチングの機会を提供するという試みがあり,以下のものがある.私は何度もこのような機会に参加し,直接,創薬シーズをプレゼンテーションすることで,製薬企業が何を求めているのか,何が自分たちのシーズに足らないのかを理解することができる.ぜひトライしていただきたい.
DSANJ Bio Conference(旧DSANJ疾患別相談会)
日本医療研究開発機構,日本製薬工業協会,大阪商工会議所等が主催.事前に情報提供を行い,関心を持った企業と面談.
BioJapan
BioJapan 組織委員会が主催.ブースにポスターや資料などを配置し,来場した製薬企業の担当者と名刺交換や面談する.
BIO tech
リード エグジビション ジャパン 株式会社が主催.
新技術説明会
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催.
創薬シーズ相談会
医学系大学産学連携ネットワーク協議会(medU-net)が主催.
❶ 対象疾患,標的分子を慎重に選択すること
❷ 動物実験の質を高めること(ヒトの臨床を反映させること)
❸ 特許の要件,とくに新規性と進歩性について理解すること
❹ 資金と出口戦略を考えること
❺ 産学連携で求められることを理解すること
❹は,研究資金をどのように獲得し,製薬企業にどのような形でシーズを引き継ぐかを考えることである.私達は,創薬シーズが早期の段階から製薬企業との積極的な議論を目指すようになった.それは公的資金の獲得でつまずきうまく行かず,途方に暮れていたとき,産学連携という道があることを友人が教えてくれたがきっかけであったが,それ以外にも,必ず最終目的地(出口)が製薬企業であり(薬剤の承認申請,製造,販売を行うのは製薬企業であるため),製薬企業との何らかの合意に達するまでの期間が,特許の各国移行の期限=出願後30ヶ月と極めて短いためである.
しかし,製薬企業との連携開始は容易なことではない.その理由は①シーズが未熟なearly stageでは製薬企業が関心を持たない,もしくは連携開始の決断をしないこと,②それ以前にアカデミア研究者が同じ目標をもつパートナー(製薬企業)にどのように巡り合ったらよいか分からないことが挙げられる.ここでは②に関連して,パートナーに巡り合う方法としてのオープン・イノベーションとマッチングについて紹介したい.たとえシーズが未熟で産学連携がうまく行かなくても,製薬企業との議論は必ず研究の推進に役立つ.
1)オープン・イノベーション
これは組織内部のイノベーションを促進するため,組織の枠を超えて「外部の知見を活用する」こととである.疾患標的分子の枯渇や,研究費に対する新薬創出の成功率の低下などを背景に,製薬企業でも近年,積極的な取り組みが行われている.「製薬会社の研究公募活動の一覧」というホームページで最新の情報を入手できる.私達は第一三共株式会社TaNeDSに採択され,2年弱,成長因子プログラニュリンに関する共同研究をしたが,企業の研究者との交流を通して非常に多くのことを学ばせていただいた.
2)マッチング
以下のようなマッチングの機会を提供するという試みがあり,以下のものがある.私は何度もこのような機会に参加し,直接,創薬シーズをプレゼンテーションすることで,製薬企業が何を求めているのか,何が自分たちのシーズに足らないのかを理解することができる.ぜひトライしていただきたい.
DSANJ Bio Conference(旧DSANJ疾患別相談会)
日本医療研究開発機構,日本製薬工業協会,大阪商工会議所等が主催.事前に情報提供を行い,関心を持った企業と面談.
BioJapan
BioJapan 組織委員会が主催.ブースにポスターや資料などを配置し,来場した製薬企業の担当者と名刺交換や面談する.
BIO tech
リード エグジビション ジャパン 株式会社が主催.
新技術説明会
国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主催.
創薬シーズ相談会
医学系大学産学連携ネットワーク協議会(medU-net)が主催.