POEMS症候群におけるVEGF(血管内皮細胞由来増殖因子)の上昇については本ブログでも過去に取り上げたことがあるが,診断および病態において重要と考えられる.しかしながらPOEMS症候群以外の,他の末梢神経疾患においては血清VEGFの測定はほとんど行われてなく,VEGF上昇がPOEMS症候群において特異的な所見であるのかどうかについては不明である.
今回,イタリアより種々の末梢神経疾患患者(計161名)に対し血清VEGFを測定した研究が報告された.結果は以下の通りであった.
POEMS症候群(n=6)6448 pg/ml(平均値)
CIDP(n=33)668 pg/ml
GBS(n=13)1017 pg/ml
IgM monoclonal gammopathyに伴う末梢神経障害(n=19)738 pg/ml
multifocal motor neuropathy(n=13)448 pg/ml
ALS(n=28)485 pg/ml
Other PN(n=49)450 pg/ml
正常コントロール(n=22)262 pg/ml
正常コントロールの平均値+3SDを閾値としたところ,CIDP,GBS,IgM monoclonal gammopathyの一部の症例は,この閾値を上回った(異常高値を示した).
この結果より,免疫学的機序が関わる末梢神経疾患(ただしmultifocal motor neuropathyを除く)では,VEGFが中等度上昇する症例が存在することが明らかになり,血清VEGFの上昇は必ずしもPOEMS症候群に特異的な所見ではないということが明らかになった.ただし,VEGF上昇を認めた末梢神経疾患におけるVEGFの由来や,病態にどのような影響を及ぼしているのか意義については不明で,GBSやCIDPといった疾患の一部の症例では血管内皮障害を介して症状に影響がある可能性も考えられる.今後,さらなる検討が必要と言えよう。
Neurology 72:1024-1026, 2009
今回,イタリアより種々の末梢神経疾患患者(計161名)に対し血清VEGFを測定した研究が報告された.結果は以下の通りであった.
POEMS症候群(n=6)6448 pg/ml(平均値)
CIDP(n=33)668 pg/ml
GBS(n=13)1017 pg/ml
IgM monoclonal gammopathyに伴う末梢神経障害(n=19)738 pg/ml
multifocal motor neuropathy(n=13)448 pg/ml
ALS(n=28)485 pg/ml
Other PN(n=49)450 pg/ml
正常コントロール(n=22)262 pg/ml
正常コントロールの平均値+3SDを閾値としたところ,CIDP,GBS,IgM monoclonal gammopathyの一部の症例は,この閾値を上回った(異常高値を示した).
この結果より,免疫学的機序が関わる末梢神経疾患(ただしmultifocal motor neuropathyを除く)では,VEGFが中等度上昇する症例が存在することが明らかになり,血清VEGFの上昇は必ずしもPOEMS症候群に特異的な所見ではないということが明らかになった.ただし,VEGF上昇を認めた末梢神経疾患におけるVEGFの由来や,病態にどのような影響を及ぼしているのか意義については不明で,GBSやCIDPといった疾患の一部の症例では血管内皮障害を介して症状に影響がある可能性も考えられる.今後,さらなる検討が必要と言えよう。
Neurology 72:1024-1026, 2009