Neurology 興味を持った「脳神経内科」論文

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免疫チェックポイント阻害薬関連筋炎において食道機能障害が生じる!

2025年01月20日 | 筋疾患
当科の大野陽哉先生,國枝顕二郎先生らによる症例報告です.免疫チェックポイント阻害薬(ICI)関連筋炎に伴って食道機能障害が生じる可能性を示した初の報告であり,症例の診療経過を詳しく示しました.

症例は69歳の乳がん治療中の方で,ICIのひとつであるペムブロリズマブの治療後に筋力低下を発症し,ICI関連筋炎と診断されました.嚥下困難などの自覚症状はありませんでしたが,炎症性ミオパチーでは食道機能障害が生じうるため,嚥下機能検査を実施しました.この結果,ビデオ嚥下造影検査(VFSS)では,食道下部にバリウム残留が認められました(図1).



また高分解能マノメトリー(HRM)では上部食道括約筋の開口障害および食道蠕動運動の欠如が確認されました(図2).これらの所見は,免疫療法により部分的に改善したものの,完全には回復しませんでした.具体的には上部食道(横紋筋)は改善しましたが,中部から下部にかけての平滑筋の蠕動運動は改善せず,食道壁の筋組織の違いがその背景にあると推測されました.



以上より,下記の3点が示されました.①ICI関連筋炎では食道蠕動運動が欠如しうる(逆流性誤嚥による肺炎や突然死のリスクになりうる),②免疫療法によって上部食道括約筋の機能は改善が見込めるものの,食道全体では機能回復に限界がある,③無症状のことがあり,検査による早期発見が重要である.この経験を踏まえ,当科ではICI関連筋炎の患者においては食道機能を評価するようにしています.
Ono Y, Kunieda K, Ohno T, Fujishima I, Shimohata T. Esophageal Dysfunction in Immune Checkpoint Inhibitor-related Myositis: A Case Report. Intern Med. 2024 Dec 26.(doi.org/10.2169/internalmedicine.4254-24
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