人力でGO

経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

日本語の魔術師・・・かせきさいだぁ≡

2012-10-07 13:58:00 | 音楽
 


CIDERが止まらない

■ このPVの破壊力!! キター、「かせきさいだぁ≡」13年ぶりのアルバム ■ 

高一の娘が、「何かお薦めのCD無い?」と聞いてきたので、
彼女のiTunesに「かせきさいだぁ≡」のアルバムを2枚入れてあげた。

何故2枚だけかといえば、「かせきさいだぁ≡」は過去、
2枚のアルバムしか発表していないかです。

ところが娘が何処で調べたのか、
「お父さん、9月に3rdアルバム出てるよ」と言うではありませんか!!

私、13年間待ちました。
「あみん」の「待つわ」よりも健気に待ち続けました。

早速、インターネットを検索して見つけたのが上のPV。

何なんだ、この破壊力。
サンボマスターの「ラブソング」の長澤まさみ以上の破壊力!!


■ 新鮮なレモンの香りを運んでくる「かせきさいだぁ≡」■

2ndアルバムの発表が13年前。
もう、その名の通り、「化石」になってもおかしくないアーティストだけれど、
ふとしたきっかけで、聞き返したくなるシンガーです。

そして、その度に、新鮮なレモンの香りが鼻腔をくすぐるのだ。
そのレモンとは、梶井基次郎の『檸檬』である事は言うまでもありません。

日本語でラップを歌うシンガーはあまた在れど、
日本文学でラップを歌うシンガーは、「かせきさいだぁ≡」の他には居ません。

彼の1stアルバム『べすとおぶ かせきさいだぁ』に収録されている曲
『じゃ夏なんで』の歌詞を紹介しちゃいます。(ゴメンなさい)


じゃ夏なんで

『ボクが随分素早く汽車から降りたタメ雲を焦がしたくらいさ

梶井基次郎の檸檬の中に出てくるような街の中は

埃っぽい匂いが立ち込める通り雨の後で

また鳴きだした蝉の声響く路地は駒絵と化したかのよう

遠くから聞こえる祭囃子 背筋を伸ばした 向日葵

横をすり抜ける少年の 飛び越す水溜りを跨いでから

ちょうどそこの角を曲がる 僕の視界に飛び込むのは

どこか大人びた君と モコモコと ソフトクリームのような入道雲

今までだんまりを決め込んでた風鈴達さえ 勢い騒ぎだしたのは

僕でさえはじめてみる君の浴衣姿の所為だけじゃなくて

その口元すっと引かれた紅の熱に浮かされた僕が

風をこう ドッと辺りに巻き起こしたからさ

神社への道はちょっとした賑わいを見せ ゆらゆら燃える陽炎 蝉時雨

浴衣姿薄化粧のそのほんの一寸赤い口紅の所為で

喉はカラカラさ 嗚呼 さいだあがあればこんな日は

でも君のリクエストに答えシャクシャクと 君と一緒に食べるカキ氷

夜ともなれば二人は誘蛾灯に誘い寄せられる虫たちのごとく

祭りに向かう人並みの中 ウスバカゲロウさ きみは

僕の呟き声に薄化粧を直した 君が振り向くとしたら

湯上りのシッカロールのにほいを ほんの少しだけフワっと夜風に乗せる

または"夏のFlora"

カランコロン鳥居潜り カンラカンラと笑い声響く境内に 尺玉花火も加わり

君の口紅 紅を増し浮かんだ ホラ鹿も舞う夏の夜空

帰り道の川原はコロコロと河鹿鳴き

口に寄せる リンゴアメ』


■ 日本語ラップ ■

元々アメリカの黒人の間で流行したラップ。
社会に反発する黒人達の怒りを、
大量の言葉の連打で、勢い良くリズムに乗せる
プロテストソングをルーツとしています。

言葉をリズムに乗せるために、沢山の韻を踏んだり、
似たような語感の言葉を連続したり、
さらには、ダブルミーニングやトリプルミーニングといった、
同じ発音で、異なる意味を持つ単語をトリッキーに用いる事で
単調と思える言葉の連続を、言葉の遊びに昇華している事がポイントです。

英語自体がリズミカルな言語なので、
ラップという手法に適していたとも言えます。

一方、ヒップホップの文化が日本に流入して、
日本人の若者達もラップを取り入れるようになります。

1980年代中ごろから、「いとうせいこう」らが、耳コピした英語を
試行錯誤しながら日本語に乗せ、
だんだんと日本でもラップが浸透してゆきます。

「スチャダラバー」あたりが、マッチョな黒人ラップとは一味違う
ちょっと軽くて、チャラチャラしたラップを歌い始めるのが90年代の前半。

日本のラッパー達は、リズム感に乏しい日本語を
上手にリズムに乗せる方法を、段々と編み出してゆきます。
そして、日本語ラップはJ-Popsの一つのジャンルとして確立し、
さらに、ジャニーズなどの歌謡曲にまで浸透してゆきます。

■ 日本語の魔術 ■



hiphopチーム「TONEPAYS(1990~1993)」解散後
「かせきさいだぁ≡」がソロデビューしたのが1995年。

インディーズ版を再編集した形で『べすと おぶ かせきさいだぁ≡』がリリースされたのが1996年。

このアルバムで「かせきさいだぁ≡」は、
日本語が持つ能力を最大限に発揮したラップを作り上げます。

それは、アメリカのラップを模倣する凡百のラパー達とは異なり、
日本語の持つ独特な語感や、
一連の言葉の連続の彼方に広がる文学的背景を引き寄せる
言葉の魔術とも言える独特なラップでした。


「雨」という言葉は、タプタプと響く雨音と、
ヒタヒタと肌を塗らす触感と共に、
耳孔から脳内へと這い入り、
何故だかとてつも無くエロティックな臭いを漂わせます。


さいだぁぶるーす


相合傘

この『べすと おぶ かせきさいだぁ≡』は、
私的なJ-Popsの名盤ベスト3に入っています。

■ 稀代のメリディーメーカー ■

歌詞ばかりが注目される「かせきさいだぁ≡」ですが、
彼はメロディーメーカーとしても素晴らしい才能を持っています。

2ndアルバムの『SKYNUTS』では、ラップから一転して
メロディアスな歌謡ポップスを披露します。
中国語のナレーションが曲間を繋ぐ、一見渋谷系オシャレポップスですが、
そこは「かせきさいだぁ≡」だけに、色々な仕掛けが沢山あって、楽しめるアルバムです。


Baby&CIDER≡

南佳孝を敬愛している様で、彼とのコラボレーション曲も収録されています。


ポップアート

■ ホフディランのワタナベイビーとのコラボレーション ■

2ndアルバムから13年間、オリジナルアルバムこそ発表していませんが、
その間にホフディランのワタナベイビーとのコラボレーション・アルバムも発表しています。
この『Baby&CIDER≡』(べいびい さいだあ)は遊び心溢れ作品です。


『Baby&CIDER≡』

これはワタナベイビーの世界で遊か「かせきさいだぁ≡」といった所でしょうか。




さらには木暮晋也(ヒックスヴィル)と共に『TOTEM ROCK』というユニットでアルバムを発表しています。
 

TOTEM ROCK 

このアルバムは、「かせきさいだぁ≡」の3rdアルバムと言っても良い内容です。


さて、復習も済みました
CD屋さんにGO!!


ちょっとオマケ。

「かせきさいだぁ≡」ともコラボする「いとうせいこう」のユニット「口ロロ」(くちろろ)
こちらはこちらで、日本語ヒップホップを極めています。



こちらは「いとうせいこう」と「かせき」のコラボ。

Check Mates / いとうせいこう&POMERANIANS


<追記>

何と、9月に発売されたのは4thアルバム。
3rdアルバムは、昨年発売されていました。
最近、音楽雑誌なんて読まなくなってしまったので、私の方が化石化してます。

どうやら、最近の「かせきさいだぁ≡」は、ヒップホップでは無く、
シティー・ポップスを目指しているそうで・・・。

これって難しい路線ですよね。
昔のシティー・ポップスと何か違うの?ってなりがち。
いつも、時代の数歩先を行くので、3年くらい経った頃、
シティーポップス再ブームが到来するのかも知れません。


これって詐欺じゃねー?・・・白い犬の会社って・・・。

2012-10-07 09:30:00 | 時事/金融危機
 

News U.S.さんは、煽り記事も多いけれど、
面白い記事も多いので、ついつい覗いてしまいます。
(話半分なのは、このブログと一緒・・)

さて、本日、News U.S.さんで拾ったこの画像・・・



真偽の程は定かではありませんが、
もしこれが真実ならば、おいおい、これって詐欺じゃねぇ?

そもそも、在日の方の料金が¥4500/月で固定料金なのも大問題。
これは週刊誌などでも追求されていますが、
一般の方の通話料金で、特定の国籍の方の通話料を負担するのは問題では?

確かに、高校生割引とか、家族割引なども、他の方の通話料で賄われているので、
同じと言えば同じなのですが、どうも釈然としないものを感じます・・。

先日のeモバイルの買収にしても、
新たに周波数の割り振りを受けた後での買収発表は限りなくクロに近い手口。
本来なら、周波数帯を一つ返還して、それを各社が公平に再分配すべきです。

とにかく、「白い」イメージと裏腹に実体は「真っ黒」な白い犬の会社。
でも、大勢の方が大挙してauに乗り換えると、
今度はauが繋がり難くなるというジレンマ・・・。

だから私はdocomoの国産ガラケー。
こいつが小さくて、ズボンの前ポケットにすっぽり収まるから一番便利。

ン!? 負け犬の遠吠えだって・・・?


原発事故の原因をベントの遅延問題に矮小化してはいけない・・・問題はマーク1型の構造的問題

2012-10-07 04:00:00 | 福島原発事故
 



■ 緊迫の現場 ■

東電の福島原発事故直後のTV会議の追加映像が公開されました。
事故当時の、現場と東電の緊迫したやり取りが記録されています。

不眠不休で事故処理に当たられた吉田所長を初め現場のスタッフの危機感が良く伝わります。

■ 長大な時間をダイジェストに編集している ■

以前、公開された東電の映像は、音声の無い部分が多く、
明らかに東電が事故当時の情報を隠蔽したものでした。

一方、今回の映像は、事故時の重大な局面でのダイジェスト版で、
音声もきちんと再生できるので、当時の状況が良く分かります。

しかし、都合の良い所だけを編集している様にも思え、
この映像だけから、当時の対応の状況を憶測するのは危険と思われます。

■ 官邸と現場の電話が繋がらないのは当然だ ■

映像冒頭は、現場の吉田所長が、
「官邸と電話が繋がらない」とぼやくシーンからスタートします。


このシーンを見て、多くの方が、事故当時、
官邸と現場のコミニュケーションが取れていなかったと推測するはずです。
「官邸は何をしていたんだ」と追求する方も出てくるでしょう。

しかし、良く考えて見てください。
東電本社と福島原発は、きっと専用回線で繋がれているはずです。

一方、福島原発と官邸の間は、一般回線ではないでしょうか?
地震直後、福島の通信インフラはダウンしていますから、
福島原発と官邸の電話が繋がり難い状況であった事は容易に想像出来ます。

さらには、官邸には被災地を初め、全国から様々な電話が殺到していたはずで、
官邸の電話回線の容量を超えていた事態も想定されます。

実際の所は知る由もありませんが、
当時、福島原発の現場からのみならず、全国から官邸への電話が繋がり難かった可能性があります。

ここら辺の事実が確認出来ない状態で、
「官邸に繋がらない」という映像だけで、
「官邸の怠慢」と決め付ける事は危険です。

いえ、むしろ、この音声を冒頭に持ってくる事で、
東電は明らかに責任を官邸に押し付ける情報操作をしていると考えられます。


■ ドライウェル・ベントできるなら直ぐやれ、こっちで全部責任は取るから ■

東電の映像では、3号機のドライベントは15日未明に実行されています。

映像で、「ドライウェル・ベントできるならすぐやれ。こっちで全部責任取るから」
とのやり取りがなされています。

この映像だけ見ていると、東電はドライベントを自主的に、かつ積極的に実施した様に見えます。

■ 福島原発事故を重大化させたのはウェット・ベントの遅れ? ■

東電がこのVTRの公表で、世間に印象付けたかったのは、
「東電はベントに積極的であった」というイメージでしょう。

原発事故直後も、「菅総理の現場視察によってウェット・ベントが遅れて水素爆発に繋がった」
との情報がさかんに飛び交っていました。



TVの報道も、ベントの遅れは「菅総理の視察と、政府の指示の遅れ」と指摘しています。


1)枝野官房長官の発言では12日の3時頃には、政府は東電にウェットベントの指示を出しています。

2)ベントしようとした所、電動バルブが開かなかった

3)東電は現場作業員が決死の覚悟で、手動でバルブを開放。

4) 現場の線量が高いので、一人数十秒のリレー作業でバルブ開放を試みる。

5) 東電が一号機のウェット・ベント用のバルブを手動で開放したのは12日午後

参考までに当時の読売新聞の記事です。
http://www.yomiuri.co.jp/national/news/20110315-OYT1T00701.htm



官邸側は枝野発言にもある様に、菅首相が福島を視察するまでには
ウェットベントは完了しているものと考えていた。

しかし、実際には電磁バルブが作動せず、
高い線量に阻まれて、ベントの実行は12日午後まで実現しなかった。


これが事実なのでしょう。

東電は、この様な不手際を誤魔化す為に、
今回の追加映像をワザワザ編集して、

「官邸=悪者」
「東電=ベントに積極的」

という情報操作をしている様に思えます。
悪い事は全部、菅元総理に押し付けてしまえ作戦を実行しているのでしょう。


■ 1号機の圧力容器の損傷は12日午前1時50分には始まっていた ■

世間ではウェット・ベンチの遅れから炉心溶融が発生した様に思われています。
それで、菅総理の現場視察が事故を重大化させた様に情報操作がされています。

しかし、実際には1号機の圧力容器の破損は、
11日午前1時50分頃から起きていたと推測されています。

http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20120312-OYT1T01043.htm

■ 福島事故の最大の原因は、緊急炉心冷却装置の、『蒸気凝縮系機能』が外されていた事 ■

福島原発事故の押し問答で、どうしてベントのタイミングがこれ程重要視されるのでしょうか?

その原因は、福島第一原発の緊急炉心冷却装置から、
『蒸気凝縮系機能』と呼ばれる冷却系が外されていた事に起因します。


http://www.asyura2.com/12/genpatu26/msg/104.html

本来、緊急炉心冷却装置は、2段構えで事故時の炉心を冷却します。

1) 非常用電源を用いて圧力容器内の水を循環する
2) 圧力容器内の蒸気の圧力で、圧力容器内の水を循環する・・・『蒸気凝縮系機能』

福島原発事故では、津波で非常電源も失っています。
非常用バッテリーの容量内では、電源を用いる緊急炉心冷却装置が作動します。
しかし、全電源喪失後は、『蒸気凝縮系機能』だけが最後の望みとなります。

その『蒸気凝縮系機能』が福島原発では、事故の8年前に何と外されていました。
これには理由があります。
2001年に、静岡県の中部電力浜岡原発で原子炉停止事故が発生した際、
『蒸気凝縮系機能』の配管内に溜まった水素が爆発したのです。
そこで、東電は同型の福島原発の原子炉から、『蒸気凝縮系機能』を
2003年に政府に申請して、撤去していたのです。

『蒸気凝縮系機能』が存在しなくてもベントでその代替が利くというのが理由でした。

ところが、そのベントのタイミングが遅れ、
結局福島原発は1号機、2号機。3号機ともに水素爆発で破損してしまいました。

■ 『蒸気凝縮系機能』が生きていても、結局は同様の結果に至ったのでは ■

結果論になりますが、福島原発事故で炉心溶融を防ぐ唯一の方法は、
非常用バッテリーによる緊急炉心冷却装置が停止した段階で、
ウェット・ベンチを即時実行して、圧力容器内の圧力を下げ、
同時に圧力容器に、消防車ポンプ車などを用いて海水を注入しるしか無かった。

それも12日の未明までに、その対策が出来なければ、
結局、燃料棒は崩壊して、圧力容器底部に穴が開く事は防げませんでした。
燃料棒崩壊は12日未明よりも早期に発生していたでしょうから、
実際には、地震直後から、ウェットベンチの実行に移らなければ、
福島原発事故の圧力容器の破壊は防げませんでした。

しかし、停止直後の圧力容器内には、
半減期の短い、危険な核種が多数存在しますから、
結局は、周辺住民を退避させずにウェット・ベントを実行する事は不可能です。

さらには、電動のバルブも電源喪失で動作しなかった為、
手動でバルブを開放せざるを得ず、
この手動開放は、現場の放射線レベルが高い間は実行出来ません。

素人目には、水素爆発による原子炉建屋の損壊が重大危機の様に写りますが、
実際には圧力容器の底が損傷した時点で、原子炉は使用不能となります。

燃料棒が崩壊した時点で、ウェットベンチを実行しても遅すぎるのです。

官邸と東電の間に情報の齟齬が無くとも、
事故発生直後に10Km圏内の避難を実行し、
同時にウェットベントと、圧力容器への注水を実行しなければ、
福島原発事故は、結局は現在の状況に至る事は不可避だったと言えます。

■ 原発を再稼動する前にやるべき事 ■

政府と関電は、夏場の大規模停電を回避する為に
住民の反対を押し切って、大飯発電所の原子炉を稼動させました。

しかし、その前に政府と電力会社は事故が再発した場合の対策を見直したのでしょうか?
福島原発事故の教訓を生かすならば、全電源喪失を想定した次の様な対策が必要でしょう。

1) シリアス事故発生と同時に10Km圏内の強制避難を即時実行

2) 電源喪失の有無に関わらず、ウェットベンチと強制注水の準備開始

4) 非常用発電機の燃料残量が少なくなった時点で、風下方向の住民を広範囲に避難させる

5) 非常用発電機の電源が喪失し、非常用バッテリーも容量が無くなったら、即時ウェットベンチを実行し、炉心にポンプ車などで強制注水する。

6) 復水器は電源喪失で機能しないので、緊急のプールに炉心冷却排水をプールする

7) 上記作業と平行して電源の回復に努める

■ 再循環系の配管が破断していれば、電源が回復しても冷却されない ■

ここで問題になるのが、圧力容器と復水器を繋ぐ配管が、
地震によって破断されているかどうかです。

ここが破断していれば、電源が回復しても炉心の冷却は復旧しません。

■ 炉心停止直後の強制ベンチと、廃炉覚悟でしばらく封じ込めを持続するのでどちらが安全か? ■

原子炉停止直後の危険な核種が大量に存在する圧力容器内のガスを
ウェット・ベンチで外部に排出するリスクと、
圧力容器を犠牲にしても、危険な核種が減少する時間を稼ぐリスクの科学的比較です。

もし、早期ベントの方が危険であるとするならば、
福島第一原発は、後手後手に回ったとは言え、
結果的には東電以外の地元被害を最小化したとも言えます。

■ 軽水炉で容易に再臨界が発生しない事は、今後の事故対策の方向性を換える可能性がある ■

福島原発事故は私達に様々な事を教えてくれました。

万全を期していると言われた原子炉の事故対策の脆弱性に多くの人が注目しています。

一方で専門家達は、軽水炉が制御不能に陥っても、
意外なまでに、大規模な再臨界が発生しない事に注目している事でしょう。

軽水炉では、事故時に予期していなかったフェールセーフ機能が働き、
再臨界が未然に防がれる事は、今後の原子炉開発や事故対策に大きな変換をもたらすかもしれません。

例えば、再臨界の可能性が低いのであれば、
事故時に圧力容器から水を抜いて、格納容器を水で満たし、
水蒸気の発生を抑えながら、燃料溶融物を徐々に冷却する方法も有効かも知れません。

尤も圧力容器底部に制御棒の貫通穴があるマーク1型では不可能な方法かも知れませんが・・。

■ 人間は失敗から学ぶ ■

人間は失敗から多くの事を学びます。

原子力発電所の事故は、制御不能に陥る可能性がある事。
危機に際して、政府も行政も電力会社も、あまり役立たない事。

ここら辺が今回の事故が残した「負の教訓」です

一方、今後研究が進めば、こんな「正の教訓」も生まれるかも知れません。

軽水炉ではちょっとやそっとでは再臨界が発生しない事。
低線量率被曝では、顕著な健康被害が発生しない事。

私達は、科学の失敗から何を学び、どんな選択をするのでしょうか?
その選択次第によっては、さらに新たな教訓を学ぶ事となるのかも知れません。
それは・・・

いずれにしても、ベントのタイミングに問題が矮小化されがちな福島原発事故ですが、
GEのマーク1の構造的欠陥も含め、もう一度、冷静に事故を振り返るべきでは無いでしょうか?