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アメリカの長期金利が上昇・・・景気は回復しているのか?

2012-10-18 12:01:00 | 時事/金融危機
 


■ アメリカの長期金利がジワジワと上昇 ■



アメリカの10年物、30年物国債の金利が上昇しています。

長期金利は中長期的な景気の動向予測で上下します。
単純に考えれば、長期金利の上昇は、アメリカの景気が将来的に回復する印と言えます。

■ 住宅市場に薄日が射して来た? ■



「9月米住宅着工件数は約4年ぶり高水準、景気に明るい兆し」(ロイター 2012.10.17)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPTJE89G00W20121017

<引用開始>

 米商務省が発表した9月の住宅着工件数10+ 件は前月比15%増の年率87万2000戸(季節調整済み)で、2008年7月以来約4年ぶりの高水準となった。住宅部門回復の勢いが増し、景気回復を下支えしている兆しが表れた。

ロイターがまとめたエコノミストの着工件数予想は77万戸だった。8月の着工件数は75万8000戸と、前回発表の75万戸から上方修正された。

ただ、住宅市場は売れ残り物件が過剰で、住宅着工率は2006年1月のピーク時を依然として約60%下回っている。

1戸建て住宅の着工件数は11%増の60万3000戸で、2008年8月以来の高水準となった。集合住宅の着工件数も25.1%増えた。

着工件数は振れが大きく、大幅に修正される傾向がある。

(後略)

<引用終わり>


アメリカの住宅着工件数が上昇したという記事です。
しかし、良く読むと「兆し」とか「大幅に修正される傾向」とか、
何だか、改善しているのか、改善していないのか分からない記事です。

■ このグラフの何処が回復と言えるのだろうか? ■




直近だけ拡大すると、確かに少し上向いて見える住宅着工件数。
青が一戸建ての着工件数です。



しかし、レンジを長く取ると、リーマンショックの谷があまりにも深いので、
そのショック状態から少し回復しただけという事が歴然です。

日本もバブル崩壊以降20年以上も、景気が低迷しています。
アメリカの景気が急速に回復するとは思えません。

■ MBS市場は既に「死に体」で無いのか? ■

毎月3兆円以上のMBSを市場からFRBが買い入れるQE3。

ロイターの予測では総額6000億ドルで、
QE2と同規模の緩和になりそうです。

サブプライムショックで金融機関が抱え込んだ住宅担保証券(MBS)は、
不良債権として、金融機関が大事に隠しています。

昨年末頃にFRBはQE1で購入したMBSを売却して利益を出した様に見せ掛けましたが、
それを又、無制限で買い戻すのですから、
この市場が既に「死に体」である事に疑う余地はありません。

■ 新たな借金を生み出さなければ「死亡」する金融システム ■

現代の通貨システムは、誰かが新たな借金を作る事で維持されています。
非常に単純化してしまえば、借金で借金を返済し続けるシステムです。

ですから、景気が悪化して、資金需要が滞ると一気にシステムが崩壊します。

通常はバブルの崩壊として観測されるこの現象は、
債権放棄という方法で、誰かが損をする事で調整が行われます。

ところが、米英が金融革命で生み出した債権金融システムは、
住宅債権などの「借金」を、さらに「証券化」して売り出しました。
これが住宅担保証券(MBS)です。

さらに、MBSを複雑な金融商品に組み替えて、
何回も販売しました。

これらのMBSを購入する資金も、借金によって賄われたので、
借金が借金を自己拡大する状況が生まれます。

さらにデリバティブ取引など、実際の資金を上回る取引が繰り返された結果、
天文学的な負債が積み上がる事になりました。

この状態でも、新たな借金を作り続けなければ、
現代の通貨システムや金融システムは破綻します。

■ 既に破綻しているシステムに絆創膏を貼るだけの量的緩和 ■

量的緩和とは、債務の返済期日が来てもお資金の目処が立たない金融機関に、
中央銀行が、低利で資金を貸し付ける行為に他成りません。

最も、返せる当てが無いので、
ゴミ同然のMBSを金融機関から買い上げる形で、
FRBは金融機関に資金を用立てしています。

MBS自体は、住宅ローンの支払い者がコツコツと債務を返済する限り、
いつかは元が取れる商品です。
ですから、米国の経済が危機に瀕して、
再びローン破綻者が急増しなけば、FRBも最終的には損をしません。

ただ、MBS市場は完全に死んでしまっているので、
流動資産としてのMBSの価値は、大きく毀損しています。
それを時価会計すれば、FRBのバランスシートは大きく崩れます。

アメリカはリーマンショック以降、時価会計を停止して、
金融機関の含み損は隠蔽されています。
ストレステストをもともに実施して時価会計すれば、
アメリカの金融機関は、全て債務超過になるでしょう。

QE3とは、MBSという不良債権の中でも幾らかマシな債権を
FRBが無制限に買い取って、市場に資金を供給するプログラムです。

■ プリンティング・マネー ■

ドルの金兌換が停止されてから、ドルは事実上は「紙切れ」です。
しかし、「紙切れ」でも実際に買い物が出来るので、
ドルは価値を維持していると言えます。

ドルに限らず、どの国の通貨も、「信用」が失われなければ
「紙切れ」でありながらも「価値」を維持します。

通貨の価値は、普通、「過剰に印刷」すれば損なわれます。

現在のアメリカの様に、好きなだけドルを刷れば、
当然、ドルの信用が失われます。

通常はドルの暴落という現象で、この歪みは調整されます。
ところが、世界を見回すと、ユーロもヤバイ、
元もドルと同じかそれ以上に刷り散らかされている。

円は少ししか刷っていないので、相対的にマトモに見えます。
ですから、円高が進行していますが、
その日本ですら、景気は長期に低迷し、国債の発行残高は危機的状況です。

要は、世界中を見回した時、まともな通貨が存在しないのです。

ところが不思議な事に、誰も「お金は紙切れだ!!」と言い出しません。
それを言ってしまったが最後、世界の通貨は全て「紙切れ」になってしまうからです。
タヌキのお札が、一瞬で葉っぱに化けるのと同じです。

■ 通貨はどこまで増え続けるのか? ■

現在、通貨の増刷に一番積極的なのはドルと、ドルにペックする国の通貨です。
元も、ドルに半ばパックしているので、元も大量に発行され、中国でバブルを形成しています。

これは異常な状態ですが、それでもドルも、他の通貨も現状は崩壊していません。
何故でしょう?

それは、極端なインフレが発生しないので、国民の不満が少ないからです。
通貨の発行限界は、インフレの影響が国民生活を圧迫する時にやってきます。

■ インフレを隠す米政府 ■

現状、アメリカでは食料品価格や、ガソリン価格がインフレ気味です。
特に干ばつによる穀物の不作は、穀物価格のみならず、食肉価格を上昇させます。

アメリカ政府はガソリン価格の上昇にナーバスです。
備蓄ガソリンを上手に供給して、価格安定に努めています。

食肉価格も、低めに誘導して、国民の不満を抑えています。

大統領戦が終了するまで、アメリカのインフレは押さえ込まれると思われます。

■ 中東有事が一番恐い ■

現在のアメリカで最も警戒すべきは、
大規模な中東有事による原油価格の高騰です。

1バレル200ドルなどという事態になれば、
全ての物価に上昇圧力が掛かります。

アメリカは実体経済が不況なので、金利に上昇圧力が掛かりません。
しかし、物価上昇が顕著になれば、FRBとて金利を上げざるを得ません。

金利上昇は経済のブレーキになると同時に、
米国債の発行コストを引き上げます。

■ 米国債金利に敏感な米国政府 ■

昨年、アメリカの景気が少し持ち直した時がありました。
その時、国債金利がピョンと上がりました。

すると、バーナンキもガイトナーも景気に水を差す様な発言を繰り返しました。
リスクを選好して、債券市場から株式市場に流れていた資金が、
慌てて、債券市場に戻った様に見えました。

米政府やFRBは量的緩和で、景気回復を演出しようとしますが、
リスクオンのムードが高まると、
米国債市場から資金が逃げ出すというジレンマに陥っています。

■ 再び、米国債金利が上昇し始めた ■

冒頭のグラフを見ると、QE3に連動するかの様に、
米国債金利が上昇に転じています。

リスクオンの流れに乗って、ダウ平均などは持ち直していますが、
この動きが過剰になって、米国債市場から資金流出が起これば、
何か、景気に水を差すよ、動きがあるかも知れません。

■ 長期金利の上昇が住宅市場の回復を遅らせる ■

せかく回復基調にある住宅市場も、
長期金利が上昇すれば、すぐに需要が落ち込みます。

結局、あちらを立てれば、こちらが立たずという状況で、
米経済はなかなか本格的な回復軌道に乗れません。

■ 米国債を必至に買い支える日本 ■

八方塞りの状況にあって、米国債を必至で買い支えているのは日本です。
先ごろ、中国を抜いて、保有高の世界1位を奪還しました。

円高を仕掛けられては、為替介入の名目で米国債を買い、
さらには日銀の外債購入まで前原氏が主張する始末。

米国債の残高が積み上がるのとペースを揃えるがごとく、
日本国債の残高も積み上がっています。

既に、ドル紙幣の裏側に、福沢諭吉の顔が薄っすらと浮んで来そうです。

■ 世界の空気がピリピリし出した ■

尖閣や竹島問題で東アジアで緊張が高まっています。
中東でもシリアとトルコの緊張状態も高まっています。
ガザ地区と、イスラエルの間でもイザコザが続いています。

ここまで書いてきて、私はデジャブに囚われます。

何だか、リーマンショック直後の状況に世界が酷似しています。

当時も尖閣問題で日中関係が緊迫していました。
イラン制裁が発動され、ホルムズ海峡で緊張が高まっていました。
韓国の哨戒艇が、北朝鮮の魚雷で撃沈しました。(という事になっています)

どうも、経済の雲行きが怪しくなると、
世界の軍事的緊張関係も、高まる様に思われます。

・・・経済運営の舵取りに失敗した瞬間に、
世界中で戦争が勃発して、全てがウヤムヤにされて、
戦時統制体制に突入するなんて・・・・まさかネ。


今日は、取りとめもない書き捨て記事になってしまいました。
オオカミだよ、オオカミだよと叫べども、意外と世界は平穏ではあるのですが・・・。