■ カール・スターリングという天才 ■
世界に著名な作曲家はあまたあれど、
これ程、過小評価されている作曲家は珍しいのではないでしょうか?
彼の名は、カール・スターリング。
ワーナーでバックス・バーニーなどの音楽を作曲していた人と言えば、
何となく、彼の音楽をイメージできるかと思います。
冒頭は、ディズニーの「骸骨の踊り」という短編映画。
シーンやキャラクターの動きに合わせて、
次々と音楽が変化してゆきます。
その表情のバラエティーといいい、
視覚を音楽で表現するセンスといい、
カール・スターリングは天才的才能の持ち主ですが、
決して音楽の教科書には出てきません。
■ バーバンクサウンドとして花開いた、アメリカの映像音楽 ■
このジャンルの音楽を語る時に忘れてはいけないのが「バーバンクサウンド」。
ハリウッドの近くにバーバンクという街がありますが、
ここはハリウッド絡みの録音スタジオが集まる街として有名です。
ワーナーのスタジオなどもここに有ります。
当然、映像音楽に携わる人達が集まっています。
彼らは、ミュージシャンとしても活動していますから、
自然と、この街特融の音楽が生まれてきます。
ワーナー・ブラザーズのプロデュサーであったレニー・ワーロンカを中心に、
映画音楽独特の華やかで、多彩な展開を見せる音楽に、
アメリカ独特の牧歌的な雰囲気をあわせ持った、独特のサウンドが花開いてゆきます。
1960年代後半からの出来事です。
これを「バーバンクサウンド」と呼んでいます。
代表的なミュージシャンはヴァン・ダイク・パークス、
ランディー・ニューマンや、ライ・クーダ。
これに、ドゥービー・ブラザーズや、
ビーチ・ボーイズの「スマイル」を加えても好いでしょう。
特に、ヴァン・ダイク・パークスはハリウッドの映画音楽の作曲家だった事から、
映像音楽独特の、様々なテキストが表れては消える、
めくるめく様なサウンドを作りだします。
彼の代表作、「ソング・サイクル」(1968)はバーバンクサウンドの金字塔であると同時に、
カール・スターリングに始まる、ハリウッド音楽の傑作とも言えます。
アメリカのルーツを巡る音楽絵巻といった感じでしょうか。
いやはや、今聞いても刺激的。
彼は細野晴臣とも親交が深く、ハッピーエンドの曲をプロデュースしています。
■ 21世紀最大の作曲家、ジョン・ゾーンに多大な影響を与えた ■
カール・スターリングの音楽スタイルは映像音楽の基本スタイルを築いたと言えますが、
最先端のトンガリ音楽家の中から、彼を再評価する動きが現れます。
過激な演奏で知られるNYアンダーグランド・シーン。
その中心人物のサックス奏者、ジョン・ゾーンは、
現代アメリカを代表する、現代音楽の作曲家でもあります。
彼の作曲スタイルは、ファイル・カード・ミュージックや
ゲームセオリー・ミュージックなど、
一種の「自律的なシステム」が音楽を作曲する方法論を採用します。
ジャンルの異なる曲をファイルカードに短いパートに分割して書き込み、
全てをシャッフルして、出てきた順序で演奏する「ファイルカード・ミュージック」は、
カール。スターリングの影響で編み出されたと言われています。
確か、ジョン・ゾーンの大学の卒論は、
カール・スターリング研究であったと記憶しています。
さて、それでは21世紀のアメリカで、
カール・スターリングの作曲理論はどの様に進化したかを聞いてみましょう。
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ジョン・ジョーン率いる「ネイキッド・シティー」のデビューアルバムの中の
「N.Y. Flat Top Box」とい曲ですが、
46秒の間に様々な曲の断片が、脈絡なく出現し、
ファイル・カード・ミュージックの特徴を良く表しています。
ピンクパンサーでお馴染みに「A Shot In The Dark」も
ジョン・ゾーンの手に掛かるとこの通り。
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■ 現代日本のアニメシーンに受け継がれたカール・スターリングの精神 ■
カール・スターリングの音楽手法は、
現代日本のアニメ音楽シーンに濃厚に息づいています。
「モモイロクローバーZ」をポストAKB48に押し上げた名曲
「猛烈宇宙交響曲・第七楽章「無限の愛」」です。
たった1分30秒の間に、これでもかという程のアイデアが詰め込まれています。
これ、バックのコーラスパートが贅沢なんですよね。
全曲バージョンは、途中にラップあり、荘厳な間奏ありと、
さら様々な変化を見せます。
この曲を作曲したのは、沖縄出身の前山田健一。
1980年生まれですから32歳という若者。
彼自身、ヒャダインという名義で音楽活動をしていますが、
その音楽は、まさにオモチャ箱をヒックリ返した様。
やあ、芸達者ですね。
■ 展開の速さでは、「けいおん」のTom-H@ckも負けてはいない ■
[[youtube:bkPyp-piyrc]]
展開速さでは「けいおん」のオープニングも負けてはいません。
こちらはTom-H@ckという人の曲です。
こちらは1985年生まれ。
転調しまくり。
これも現代のアニソンの特徴ですね。
■ 音楽の「ライトノベル」化 ■
現代のアニソン作曲家達に共通しているのは、
バンドで演奏する事を、初めから念頭に置いていない事。
PC上で一人で作曲して、
どんどん複雑なリズムとか、コード進行を追及して、
「こんなの出来ちゃいました!」って乗りでニコ動にアップ。
そのうちファンが沢山付いてきて、
レコード会社からお呼びが掛かって、
アニソンデビュー・・・・みたいなノリ。
これって、携帯小説やライトノベルに非常に似ていて、
経験や完成度よりも、アイデアや鮮度が重要視されています。
■ アイドル戦国時代のアイドルに求められる「目新しさ」 ■
アニメの大半は使い捨てですから、
少しでも新しくて、目立つ楽曲が絶えず求められています。
同様の需要を持つのが、アイドル業界。
ですから前山田健一の楽曲で、モモイロクローバーZは
AKB48との差別化を図っています。
(AKBにも曲を提供していますが)
その「目新しさ」の源流を遡ると
アニメ映画創世記の、カールスターリングに行き着く。
コジツケ以外の何物でも有りませんが
会社の女の子と、モモクロの会話をする時に、お役に立てば・・・。
あれ、モモクロをご存知無い?
こんなアイドルです。
昭和フレーバーを振り掛けて、オヤジ世代の支持も高いです。
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この曲は「相対性理論」のやくしまるえつこが作詞作曲。
話題作りにも、ぬかりはありません。
ちなみに「相対性理論」とは、こんなバンド。
「量子力学的歌詞世界・・・相対性理論」(2011.06.02 人力でGO)
http://green.ap.teacup.com/pekepon/458.html