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「あり得ない」を吹っ飛ばす「ディテールの積み上げ」・・・・『ガールズ&パンツァー』

2012-10-16 03:44:00 | アニメ
 





■ セイラー服と○○ ■

最近は女子高生の制服と言えばブレザーが主流になりました。
しかし、オタクの世界では、やはりセイラー服がマスト。

セイラー服は「神格化」された存在とも言えます。

とりあえず、「セイラー服」を着せておけば、だいたいOK。

「セイラー服と○○」の組み合わせは「機関銃」から始まって、トシマのAV女優まで、
かなりの広範囲を余裕でクリアーする包容力を持っています。

さて、今回紹介するアニメは「セイラー服と戦車」の組み合わせ。

■ 「戦車道」なる武芸に精進する女子高生 ■

今期アニメの一押し「ぶっ飛び作品」は、『ガールズ&パンツァー』でしょう。

時は近未来。

大洗女子学園に通う転校生の西住みほは、内気な性格。
クラスメイトの名前と生年月日を暗記して、
いつ、誰と友達になっても良いように準備をしている様な女の子。

そんな彼女に悩みがあります。
それは、彼女が「戦車道」の家元の娘である事。

「戦車道」は「華道」や「茶道」の様な、伝統的な「女子のたしなみ」とされています。
婦女子が戦車の乗って、模擬戦を繰り広げる「戦車道」は、
国際大会が開かれる程の人気競技です。

みほは、家元の娘というプレッシャーから逃れる為に、
わざわざ親元を離れて、戦車道の授業の無い高校に転校してきます。
ところが、国際大会に向けて文科省が各高校の戦車道教育に力を入れた為、
大洗女子高校も、必修選択科目として、戦車道が復活します。

家元の娘で、戦車の経験者であるみほに生徒会は目を付けます。
華道を選択した彼女に、生徒会長は戦車道の選択を迫ります。

新しく出来た友人二人が、そんなみほを庇いますが、
実は彼女達は戦車道をやってみたいと思っています。

一人は華道の家元に娘、五十鈴 華(いすず はな)。
彼女は、華道と異なりアクティブな戦車道に憧れます。

もう一人は、活発な性格な武部 沙織(たけべ さおり)。
彼女は男子にモテルと説明された、戦車道に興味を持ちます。

二人が本当は戦車道に興味を持っている事を知っている西住みほは、
友人達が自分の為に、彼女達の本心を押し殺して、みほを庇う事に心動かされます。
そして、とうとう、友人達の為に、戦車道を選択する事を決めます。

■ テンプレキャラと戦車のデーテールのギャップ萌え ■

大洗女子学園で、戦車道が行われなくなってから長い時間が経過しています。
車庫には1両のボロボロの戦車が1台あるばかり。

落胆する、生徒達を前に、みほはこう言います。
「転輪も壊れていない。まだいけます。」

どうしようもないオタクアニメだと思っていた作品に、スイッチが入った瞬間です。

戦車道を選択したのは総勢20人程。

みほと親友二人、そしてどうやら戦車道オタクらしき女子一人。
チビで横暴な生徒会長とその取り巻き。
スポーツ馬鹿なバレー部。
無個性な1年生5人。
軍事オタクながら趣向が異なる変人4人。

これらのキャラクターは極めてテンプレ設定です。
20人からのキャラを細かく紹介していたのでは、5話あっても足りません。
ですから、いかにも有りがちなキャラクター設定で、
細かな描写をすっ飛ばしてゆきます。

しかし、それが手抜きでは無く、その後の「意外性」を引きたてます。
視聴者がこれまでの経験から想像するキャラクターの行動と、
実際のキャラクター達の行動が微妙にずれている。

80%は、そうそう、こういうキャラって、こういう行動するよねと思わせながら、
ふとした所で、その予測を外して来る。

そもそもが、女子高生が年代物の戦車に載って戦う事自体が、
予定調和を初めから無視した設定です。

よく言えば荒唐無稽、悪く言えばムチャクチャな設定ですが、
テンプレキャラのおかげで、違和感ありまくりの設定を、強引にねじ伏せた感じです。

そして、戦車に乗り込んでエンジンを掛けた瞬間から、
オタクアニメのテンプレキャラに戦車実戦をさせる面白さが爆発します。

戦車など初めて乗る女子高生に、いきなりの実戦演習を教官が命じますが、
携帯でネットに接続し、「戦車の操縦方法を教えて?」と打ち込む女子高生の姿に爆笑。
「自分でググレ!」「まず服を脱いで」という返信にも、爆笑!!

こんなトホホな女子高生達とは対称的に、戦車の描写は限りなく精緻です。

大洗女子高の所有する5両の戦車は、
どれも第二次大戦で使用された旧型戦車です。

「砂漠のキツネ」と呼ばれたロンメル将軍の第7機甲師団の多数を占めた38(t)戦車。
ドイツ軍Ⅳ号戦車D型。
日本軍、八九式中型車甲型、三号突撃砲F型、
アメリカ軍、M3中戦車リー。

軍事オタクが思わずウルウルしそうな戦車達の内部が
イグニッションやギアーやアクセルなどの細かい装置も正確に描かれ、
さらには、その操作も克明に描写されます。

発進、停止で、戦車のサスペンションが大きく沈み、
キャタピラーがギシギシと回転して前進する様は、
軍事オタクでなくとも、興味をそそります。

■ 狙いすぎではあるけれど、面白い ■

監督は、『イカ娘』『Another』『じょしらく』の水島勉。
昨今の水島勉の作品は、どれも水準以上で面白い。

彼の作風は、「ギャップ萌え」。

テンプレ設定をあえて導入しておいて、
チョコチョコと期待を裏切ってゆく。

『イカ娘』では、地上侵略を目論むイカ娘が日常に翻弄される姿で笑い、
『じょしらく』では、女性落語家という存在自体が既に日常からズレタ存在。

今回は女子高生と戦車という設定自体がミスマッチで、
ちょっと狙い過ぎという感じもしますが、
しかし、2話まで見た範囲では、戦車戦のディテイルの積み上げで、
面白い作品に仕上がっています。

■ 1話冒頭のシーンだけでも、軍事オタクは萌えも萌えでは ■


1話の冒頭は、他校との模擬戦で始まります。
イギリス戦車部隊を相手に、寄せ集めのボロ戦車で挑みます。

戦車の狭いハッチからの固定カメラは、遠くに他校の戦車を米粒の様に捉えています。
すると、丘の下からセーラー服の女子高生が二人駆け上がってきて、
そのまま、戦車の装甲の上に登ってゆき、
狭いハッチの視界から消えます。

すると、風景がターンし始め、周囲の同じチームの戦車が視界を横切ります。
そう、回っているのは風景ではなくて、砲塔です。
戦車の進行方向と関係無く、砲等は旋回し、風景もグルグル回ります。

もうこの映像だけで、私は『ガールズ&パンツァー』にホレ込んでしまいました。

固定カメラ(視点)が動くという、視点の転換は、
フランソワ・トリフォー監督の『大人は分ってくれない』の最終シーンの
回転遊具のシーンと同様に驚きを与えてくれます。

対戦型ゲームの視点でもあるのですが、
フレームを限定的にする事で、こんなにもドキドキする映像になる事が驚きです。


<追記>

今期アニメを一通り見てみました。

『となりの怪物くん』が一番面白いかな。
『ヨルムンガンド』はテッパン。
ダークホースが『ガールズ&パンツァー』。

『中二病でも恋がしたい』も面白い。
そして、同じ花田十輝がシリーズ構成を担当する『ロボティクス・ノーツ ROBOTICS;NOTES』。
これがどういう話になるのか、ちょっと気になる所。

『ソードアート・オンライン』の後期は意外に期待出来るかも・・。

『新世界より』と『絶縁のテンペスト』は微妙。


しかし、最近のアニメは面白いけど何か足りない。
打率2割7分くらいの微妙なバッターって感じ。