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世界的に株価はバブル相場になっている・・・国債金利との相関

2013-02-05 10:58:00 | 時事/金融危機
 



■ 企業業績は好転しているのか? ■

パナソニックの10-12月期の黒字決算が話題になり
パナソニック株はスットップ高を演じています。

アベノミクスの円安効果で企業業績はこのまま改善するのでしょうか?

パナソニックの黒字転換の最大の要因はリストラです。
不調部門の業績も円安によって改善はしていますが、
ヨーロッパ市場は、経済不安で大幅に輸出が落ち込んでいます。
国内市場の回復は、個人消費が改善していないので回復していません。

パナソニックは業績の上方修正はせず、目標達成を確実にするとしています。
一方、日立製作所は業績予測を下方修正しましたが、
世界の景気の先行きを、日本企業は楽観視はしていない様です。

■ 株高は債券市場から逃避した資金が集まっているだけ ■

冒頭に載せたグラフは、最近の国債金利の動きです。
米国10年債の金利は2%を突破しました。
日本の長期金利も上昇傾向にあります。

株高の影に隠れていますが、国債価格がジリジリと下がっています。
これは、国債市場の資金が、株式市場に移動している事を示しています。

市場規模としては、国債市場は株式市場に比べて巨大です。
ですから、国債市場の金利上昇が少しの様に見えても、
そこから流出する金額は巨額です。
その様なマネーが株式市場を買上げているので、
アメリカでも、欧州でも、日本でも株価が上昇するのは当然と言えます。

■ 国債金利に圧力を掛けて、追加緩和を促す勢力 ■

株式と国債のリスクを比較すれば、株式の方たリスクは高くなります。
ですから、一連の株高国債安の動きは、「市場がリスクを選好している」と捉えられています。

その最たる理由が、「欧州のユーロ危機の小休止」とされています。
確かに、先週当たりまでは、ユーロ情勢に目立った動きはありませんでした。

しかし、ユーロの問題は何ら解決した訳でなく、
単に問題を先送りにしているだけです。

この様な状況で、市場はリスクを選好していると言えるかどうか、怪しいものです。
むしろ、さらなるECBの金融緩和を要求して国債市場に圧力を掛けている様に見えます。

アメリカも同様で、財政の崖とシーリング問題で紛糾する米国議会に対して、
国債金利上昇という圧力を掛けているとも言えます。

■ ちょっとしたショックで資金は株式市場から逃避する ■

世界経済に明るい話題は見当たりません。
しかし、株式市場は企業の業績を無視して買上げられています。
こういう相場はちょっとしたショックに過敏に反応します。

欧州では、スペインの政権の不正や、
イタリアの選挙でベルルスコーニが再選されるかも知れないといった不安が注目され始めました。

今週は欧州勢が、株式市場で利益確定売りをしている様です。
日経平均もその影響で少し下落しています。

しかし、これは敏感な連中が、細かく利益を稼いでいるに過ぎず、
しばらくの間は、債券市場から株式市場への資金流入は続きそうです。

■ 米国債のシーリング問題が解決すれば、一気に市場は反転する ■

市場は「ある筋書き」にそって資金を流動させる事で、
リスクを最小化し、そして利益を最大化します。

今は株を買い上げていますが、
アメリカ国債のシーリング問題に解決の目処が立てば、
一気に「次の場面」に突入します。

誰かが巨額の資金を持て、市場のシナリオを裏切れば大儲け出来ますが、
市場をシナリオ通り動かす勢力の資金力が勝れば、逆に損をします。

ですから、市場は最大の勢力の思惑に則って運用されているとも言えます。
この状態に乗っかっていれば、大儲けもありませんが、損する事もありません。
こうして、中央銀行の投入する資金を皆で分け合って、市場は少しずつ拡大しています。

これは市場で静かにインフレが進行している状態とも言えます。

■ アップル株が400ドルを割り込む ■

一方で、米株式市場の牽引役であったアップル株が400ドルを割り込んでいます。
一時は700ドル以上の高値だっただけに、一気に半分近くに値下がりした事になります。

iPhone5の売れ行きが低調な事などが理由に挙げられていますが、
米株全体の値上がりや、世界的な株高と無関係では無いでしょう。

実力以上に買われていたアップル株ですが、
世界的な株価の回復により、他の銘柄も値上がりし出したので、
アップル株に集中した資金が流出しているのでしょう。

要は、「アップル株はバブル」だったのです。
アップルはそれでも実績を伴っていたので、結構踏ん張りましたが、
全く期待だけで高値を付けたFaceook株などは、公開と同時にバブルが弾けました。

この様に、株価は本来は企業実績を反映したもののはずで、
実績が低迷しながらも、世界的に株か買われている状況は異常だと考えるべきです。

■ アベノミクスで煙に巻かれる日本の市場動向 ■

日本国内の円安も株高も、「アベノミクスの効果」と説明されています。

しかし、実際には円安は安倍政権発足以前から始まっており、
きっかけは、欧州のユーロ高でした。
ユーロ危機のリスクを回避していた欧州資金がドルや円から移動していたのです。

同様に株高も、世界的に国債市場から株式市場に資金が移っているのが主な要因です。
ただ、日本は円安による調整が働いて、海外勢力が、売却益目的で買上げ、
そこに国内個人投資家が乗っかる形で、海外よりも株価の上昇率が大きくなっています。

これらのファンダメンタルの変化を無視して、
日本のマスコミは円安や株高を「アベノミクスの成果」と報道しています。

もし円安や株高が「アベノミクス」の影響で無いならば、
海外投資家達のシナリオが次の場面に入れば、
日本の国内事情などお構いなく、円相場や株式相場は大きく動くはずです。

■ 業績改善で実行されるのは、賃上げでは無くリストラ? ■

パナソニックを初め日本の製造業の外需依存は低くありません。
ですから、円安による業績回復は、日本の輸出企業には有利です。

さて、黒字転換した日本企業がやる事な何でしょうか?

実は私はリストラだと思います。
経営が安定しているうちに、不採算部門を整理して、
世界で勝負できる筋肉質な体質を目指すと思います。

それは、日本の経営者の意思というよりも、
日本の輸出企業の株の多くを所有する外国人株主の意思とも言えます。

円安による業績回復でリストラが加速した場合、
日本人の間には、大きな失望が生まれるでしょう。

輸出企業の皆さんは、円安で安心ばかりはしていられません。
お隣韓国のサムソンを見れば、競争力の源が、
徹底した合理化である事が理解出来るでしょう。

日本人経営者達が、外国人株主の要求を、どこまで受け入れるかも
アベノミクスの結果に大きく影響を及ぼします。

日本企業は復活したけれど、日本人の雇用は守られなかった・・・・
こんな悲惨な状況は、出来れば避けたいものです。

アメリカの大手企業の多くが、リーマンショック後に業績が回復したと言われています。
しかし、それは大胆なリストラの断行によって収益率を改善した結果です。
反面、失業者は大幅に増加し、企業業績に関わらず雇用は回復していません。

最近は雇用が上向きなど報道されますが、
それは正規雇用から非正規雇用のシフトが発生しているだけの事で、
アメリカの賃金には下落圧力が強く働いています。
これが、アメリカの実体経済回復の重りになっています。

日本企業と日本社会が、アメリカの後を追っている様に思えて仕方ありません。