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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

アメリカの住宅市場は回復している?・・・あまり力強さは感じないのだけれど

2013-02-20 02:59:00 | 時事/金融危機
 

■ 金利もお安いですし・・・ ■


「マイケル、そろそろ私達も家を買いましょうよ」

「でも、ジェシー、この先景気がどうなるか・・・」

「大丈夫よ、私も働いているし、最近、金融危機って言わないじゃない」

「でも、財政の崖とか何とかTVで言ってるぞ」

「じゃあ、とりあえず、見るだけ、それならいいでしょう?」



「ミセス・スミス、こちらの物件は寝室が4つ。お子さんが増える事を考えると最適かと」

「そうね、2Fにもシャワールームがあるし、何よりこのキッチンが気に入ったわ」

「ガレージも広いな・・・将来ここを俺のホビールームに・・・。」



「いかがですか、今なら金利もお安いですし、最近住宅価格が上がってきていますから今のうちに・・・」

「そうだな、こんなに長期金利が安ければオレ達の稼ぎでも余裕で返済できるな」



「あなた、見てみて!!このテラス、ステキじゃない。ここにデッキチェアーを置いて・・」

「奥様もあんなに嬉しそうになさっていますし、ここはドーンと如何ですか?」


■ QE3の効果って上がっているのか? ■

日本に限らず、住宅を購入する時に気になるのは長期金利。
住宅ローンは30年を超える様な返済期間ですから
長期金利の僅かな違いが、返済総額に大きく影響します。

アメリカはサブプライムショックで住宅市場が大きく落ち込みました。
裾野の広い住宅産業の復活は、米経済回復のカギと言われています。

そこで、FRBはQE3で住宅担保証券(MBS)を毎月3.6兆円規模で市場から買い入れて、
住宅市場に潤沢な資金提供を行なっています。
又、長期国債も毎月3.6兆円規模で買い入れて、長期金利の抑制に努めています。

その結果がこれ・・・




なんと、長期金利が上昇を初めています・・・。
これって、QE3の効果が現れていないという事では・・・。

長期金利を抑制して住宅市場を活性化させたい政府の思惑とは裏腹に
市場はQE3によって、将来的な金利抑制が難しくなると捉えている様です。

■ 米国の住宅市場の回復が始まった?! ■

昨年中盤から、米国の住宅市場が回復し始めた。
米国の実体経済の回復の兆しが見られる・・・などと言われています。



確かにケースシラー住宅価格指標の前年比は、昨年中盤から回復しています。
これは、全米の主要10都市、あるいは20都市の住宅価格が回復している事を示します。


■ QE3の結果が、たったこれだけの変動 ■

 

http://lets-gold.net/chart_gallery/chart_usa_macro_case-shiller.php より

上のグラフはケースシラー住宅価格指標の長期変動です。

これが、回復と言えるのかどうか、私には疑問です。
単なる、短期的な変動では無いのか?

そもそもQE3でジャブジャブ資金供給しても、
住宅市場はピクリ程度しか反応していません。

これこそが、現在のアメリカ経済の真の姿なのです。

■ 住宅神話の崩壊を経験してしまったアメリカ人 ■

冒頭に挙げた夫婦の会話は、日本でもアメリカでも良くある会話では無いでしょうか。
結婚して、あるていど収入が安定した人達は、住宅の購入を検討します。

アメリカは雇用の流動性が高く、
住宅ローンが仮に破綻しても住宅を手放せば借金はチャラになります。
日本人に比べてアメリカ人は気軽に住宅を購入できる環境にあります。

ですから、現在の雇用がある程度安定していれば、
住宅を購入しようとする人が現れるのは当然です。
ましてや、長期金利は市場最低水準です。
住宅価格も底を打って上昇している様にも見えます・・・。

しかし、住宅市場の回復は「力強さ」が見られません。
何かのショックで簡単に今回の回復基調も崩れてしまいそうに見えます。

結局、アメリカ人は「住宅を購入すれば値上がりする」という思い込みから
サブプライムショックによって「住宅は値下がりする事もある」という
当たり前の事柄に気付いてしまったのです。



ケースシラーの長期推移を見ると、1990年代の上昇率を延長すれば
現在の住宅価格がまだまだ割高の様に見えます。

ケースシラーの指標が120くらいにならなければ、
米国の住宅市場の本格的な回復は起こらないのでは無いでしょうか?

■ 日本でも繰り返されるプチ住宅バブル ■

最近ニュースで首都圏のマンションが売れていると報道されています。
アベノミクスによって長期金利が上昇する可能性が出てきたのと、
将来的に消費税が引き上げられる可能性がある事から、
今まで住宅購入を手控えてきた若い人達が、動き出したのでしょう。

しかし、大バブルの崩壊以降、この様なマンションブームは何回か発生しています。
そして、それは本格的な景気回復に繋がる事なく、いつの間にか萎んでしまいました。

この原因を日銀のデフレ政策に求める事は簡単です。
デフレ下では、借金をして資産を購入するメリットが無いからです。

アメリカはリーマンショックを経験しても尚、揺るやかなインフレを持続しています。
ですから、住宅価格が回復基調にあるならば、
アメリカ人の住宅購入意欲は、もう少し刺激されても良さそうなものです。

ところが、銃は売れても、住宅は売れない・・・・・。
アメリカは本当に景気が回復しているのか・・・?

■ 消費も格差が拡大するアメリカ ■

1月のアメリカの自動車販売は大幅な伸びを示しました。
百貨店などの高級品の売り上げも悪く無い様です。
住宅市場も徐々にではありますが、値上がりを初めています。

これだけを見れば、アメリカ経済は回復している様に見えます。

一方で、ウォールマートの2月の業績不振を予測する社内情報がリークしたり、
消費動向指数が低下したり、GDPが伸びが鈍化したりと、
景気悪化のシグナルも点灯しています。

いったいアメリカの景気は回復しているのか、それとも減速しているのか?
FRBも「一休み」という表現を使っている様です。

アメリカは財政の崖を前にして12月に配当やボーナスが前倒しにされた様です。
自動車の販売好調などは、この効果が現れたのでは無いでしょうか?
配当やボーナスに得られる様な富裕層は、消費を拡大した。

反対に、配当もボーナスも無い様な普通の労働者は、
日々の消費も抑制する様な状況になり、
それがウォールマートの売り上げ不振に繋がったのでは無いでしょうか。

アメリカは格差が拡大し続けており、
富裕層は消費を拡大し、一般庶民は消費を手控えている。

富裕層の消費の拡大のみをクローズアップして、
日本のマスコミやアナリスト達はアメリカ経済復活と報道しますが、
アメリカ経済の実態は、お寒いばかりでは無いでしょうか?
そろそろアメリカ人も、量的緩和が景気回復に繋がらない事を、
そして、金融界だけがその恩恵を得ている事に気付く頃です。

そして、将来的なインフレで損をするのはいつも庶民なのです。