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経済の最新情勢から、世界の裏側、そして大人の為のアニメ紹介まで、体当たりで挑むエンタテーメント・ブログ。

微笑みの国タイで何が起きているの?・・・民主主義と王室(皇室)

2014-01-22 07:31:00 | 時事/金融危機
 

■ 連日報道されているけど全く理解出来ないタイ情勢 ■

タイの反政府デモが激化して連日TVでも報道されています。(TV持って無いけど・・)
ところで、タイの反政府デモって、何が原因で対立しているのかイマイチ分かりません。

対立してるのは 「タクシン派 VS 反タクシン派」。

ここまでは私も理解しています。

現在のタイの首相はタクシン元首相の妹のインラック首相。これに対抗して反政府デモを扇動しているのが、民主党の元副首相のステーブ•トゥアクスパン。

反タクシン派は議会を放棄して、「民衆クーデター」を煽動し、タイの主要機関を占拠した事が今回の混乱の原因です。

■ 華人同士の争い ■

タクシン元首相は国会議員の息子として生まれ、警察官僚となりますが、その頃から通信関係のビジネスを立ち上げ、通信とメディアで大成功を収めた人物です。いわば、タイの孫正義氏と言えます。

1994年から政治活動を始めたタクシンは、2001年から6年間タイの首相を務めました。彼の政策は「地方へのバラマキ」で地方の支持を集める事。

バンコクを中心とするタイの中央は華人(中華系)が経済を支配し発展してきました。一方、地方は少数民族が多く、教育レベルも低く経済も停滞しています。タイの政界は華人が支配していますが、後発のタクシンは「地方票」に目を付けて支持を拡大したと言えます。

それに対抗する民主党のステーブ•トゥアクスパンらは伝統的なタイの華人ネットワークに支持基盤を持ち、都市部を中心に経済界や知識層、中間層からの支持を受けています。

今回、ステーブ•トゥアクスパンらが議会制民主主義を否定のは、地方へのバラマキによって地方の支持を集めるタクシン派に「数の政治」で敵わない事が背景にあります。都市部の中間層を煽動して直接的な行動に出たのです。

タイの混乱は表面的には「都市 VS 地方」の構造を持っていますが、その内実は新旧華人同士の既得権を巡る争いでしかありません。

傍目に見れば、「なーんだ」って感じですが、日本の政治も似たり寄ったりで、地方バラマキ派の自民党と、都市部住民バラマキ派の民主党系の対立は、ほとんど同じ構造だとも言えます。

■ 最終的には軍がクーデターで事を収め、国王がそれを承認する ■

あくまでの民主主義に則った選挙で決着が付く日本と異なり、近年のタイは政治的対立が議会の外に持ち出される傾向が強い様です。数で有利なタクシン派に反タクシン派は議会で歯が立たないからです。こうして、2006年からタイでは頻繁にタクシン派と反タクシン派が抗議デモを繰り返す様になります。

日本でも安保闘争の頃は若者を中心に国民の政治行動が盛り上がった時期がありました。タイも経済が発展によって国民の権利意識が高まった事が、デモの根底的な原因となっているのでしょう。

かつての日本同様に警察が反政府デモの鎮圧に当たり、少なからぬ犠牲者も出る昨今のタイですが、面白い事に最後が軍がクーデターを起こして強権的に対立を収めます。そして興味深いのは、国民が軍のクーデターを支持しています。

軍は「国王の軍隊」というスタンスを貫いており、日本同様に古い王権が国民の圧倒的支持を集めるタイでは、「国王の軍隊」が出て来た時点で、政治的な対立は一時的に収束します。

後は混乱が収まるまで軍主導で治安と秩序が回復され、その後は民主的な選挙で議会制民主主義が再開されます。

■ いつまでも決着が付かないか華人同士の対立 ■

議会が再開されても、地方票を押さえているタクシン派が直ぐに政権に返り咲きます。そして、反タクシン派が次第に議会の外に闘争の場を移して行く・・・・こんな堂々巡りをタイは繰り返しています。

最早、そこには「国民の幸福」など不在で、単なる華人社会の対立があるだけとも言えます。

■ 民主主義を補完する王室と皇室 ■

私は議会制民主主義は権力者に都合の良いシステムだと思っていますから、反タクシン派の議会制民主主義の否定にはある意味においては共感を覚えます。

ただ、一般の日本人は「民主主義は錦の御旗」と思い込まされていますから、議会を否定する反タクシン派の主張は分り難いかも知れません。一方で、議会の外に争いが持ち出されるタイは、直接民主主義を実践しているとも言えます。

尤も、国家の様な大きな社会単位では直接民主主義も機能せず、対立の深化は国民の分断に発展して社会秩序を乱す結果となります。

この国民の分断を抑止するシステムとして宗教や他国との対立が利用されます。西洋諸国ではキリスト教がその役割を担い、あるいは隣国との戦争がその役割を担って来ました。

一方、日本やタイでは古くからの王室への信頼と愛情が、国家の分裂を抑止して来ました。もっとも、それらの機能は、近代化の過程において作り出されたものだとも言えます。

日本における天皇への崇拝は、明治政府が政治的に作り出したものであり、江戸時代以前は天皇と国民の関係は希薄でした。伊藤博文の天皇機関説を見るまでも無く、明治政府はそれまで「バラバラな国」であった日本を「天皇教」という信仰宗教でまとめ上げたのです。

タイの王室も似た様なもので、多様な民族からなるタイを一つにまとめるには、王室という分かり易いイコンが最も有効に機能するのです。

こうして考えると「靖国問題」も違った姿を現します。

多くの日本人は「靖国参拝」を日本人の伝統に根差した「心の問題」と考えていますが、歴史的には明治以降の「国家神道」は一種の政治的な装置であり、その象徴に利用されて来たのが「靖国神社」であったとも言えます。

西洋諸国では「キリスト教」が、イスラム国家では「イスラム教」が国家宗教として国民の統率に利用されて来ましたが、一神教の様な個人と神の強い契約関係の無い仏教国や、多神教国家においては、神に変わる規範として王室や皇室が利用されて来たのです。

中国や韓国では「儒教思想」がこの代わりを務めています。儒教は目上を重んじる事を大切にするので、国家や社会秩序の安定に非常に重要な役割を果たしています。

■ タイは日本の鏡の様な国である ■

こうして見てみるとタイは日本に非常に似た国です。仏教的な思想が浸透し、国王(天皇)を心の支えとしながらも民主主義を受け入れています。

理解不能に思える政治情勢ですが、実はタイは日本の鏡の様な存在なのかも知れません。

イオンモール幕張新都心・・・込んでいるけど・・・。

2014-01-20 11:52:00 | 時事/金融危機
 

■ イオンモール幕張新都心に行ってみた ■

イオンモール幕張新都心に行ってみました。
娘を連れて強風の中、浦安から自転車で・・・。
行は追い風気味でしたが、江戸川放水路の橋は猛烈な横風で、前を走っていたママチャリのおばちゃんはあやうく転びそうになっていました。

まあ、片道15kmなんて走った内にも入らないのですが、本日は娘たミニベロで追走して来るので、20km/hでゆっくり走ります・・・って、気づけば娘は遙か後方に・・・・。

■ 客が居ない?! ■

大混雑を予想していましたが、午前11時でも周辺道路は空いています。新習志野側からアプローチしたので、最寄のスポーツ館前に駐輪して店内へ。実はサイクルテラスという自転車屋さんを見て見たかったのです。

店内に入ってビックリ・・・・客が居ない・・・・。
と、思ったら吹きぬけに人だかりが出来ていました。何と、地元出身の大スター、元タイガースの掛布雅之氏のトークショーが始まる所でした。遠目に拝見した御姿は、意外にも若々しい・・・元々老け顔ですからね・・・。

■ サイクルテラスにはちょっとガッカリ・・・ ■

さて、ワクワクしながら覗いたサイクルテラスは・・・・ガッカリだぁ・・。
先ず取扱いブランドが少なすぎます。
TREKすら置いていません。
その割にはCENTRIONとかがAUTHORとか微妙な品揃え・・・。マニアックとも言い切れないこの微妙な雰囲気は何?

そもそも自転車屋さんって、Y'sにたいゴチャゴチャと沢山商品があるから見ていて楽しいのであって、あまり整然と陳列されているとショールームみたいで萌えません。高い自転車が手の届きそうな所に無造作に置かれているから、いつかはコイツに乗りたいと思わせる。それが、台の上に置かれて手が届かない様な所にあると、やっぱり高値の華なんだなと・・・。尤も、あまり高い商品も置かれていないので、そういう感慨に浸る事も出来ませんでした。

■ そもそもスポーツ用品の専門性が低すぎる ■

スポーツ館全体に言える事は、専門性が低くて中途半端。コア店舗がイオン系のスポーツオーソリティーだから仕方が無いのかも知れませんが、店員さんとコミュニケーションしながらスポーツギアを選ぶという行為が想像し難い感じです。

表面的な品揃えはされていますが、ファッションラインが多く、スポーツの匂いがして来ません。周辺には海浜幕張のアウトレットもあるので、ちょっと微妙な感じです。

■ グランドモールは広いけど、買い物袋をぶら下げている人が少ない? ■

客の少ないスポーツ館とは別世界の様に、ファミリーモールやペットモールからは通路に人が溢れています。グランドモールも結構な賑わいです。

でも、お店を覗くと客はまばら。まだ開店間もないので、馴染みのお客さんが付いていないからでしょうか?50%オフと大書きされたポスターも効果が無い様です。

■ ららぽーとよりも広いけど・・・ ■

通路も広々としてららぽーとよりも開放的ですが、一方で、人工的に作られ過ぎた空間というイメージは否定出来ません。モールの作りとしては従来型モールよりは低い予算で作られています。

例えば、渡り廊下の空調設備や消防設備を節約する為に、窓の上がオープンになっていますが、夏は灼熱地獄に成りそうです。グランモールの天井部も外光を取り入れる事を止める事で空調不可を低減し、建設コストも格段に安く抑えています。これは決して悪い手法では無く、ローコスト化と省エネ化に大変有効な手段だと思います。

ただ、外光を入れる事で空間に開放感が生まれるので、外光を遮断した事で、モールは広さの割に閉塞的で単調です。

■ イオンモールが成功するかどうかが、今後のモールビジネスの変節点になりそう ■

千葉側の東京の海浜地区は既に商業施設は過剰な状況です。お台場地区から始まり、豊洲ららぽーと、船橋ららぽーと、海浜幕張の三井アウトレット、そして曽我のヨーカドー系のアリオといった具合に巨大施設がせめぎ合っています。さらには、隣接する津田沼や船橋駅周辺にも従来からの商業施設が密集しています。

こういった過剰出店の地域で後発のイオンモールが成功するかどうかは、需要を奪い合うこれからの日本の商業施設の分野では非常に注目されると思われます。

既に船橋ららぽーといはトラフィックは飽和していますから、千葉市より先の客を幕張でインターセプトするという作戦はある程度成功するかもしれません。一方、広大な駐車スペースで広域からの集客を見込んでいますが、幕張メッセのイベントと重なる休日は、周辺道路は混雑します。

新駅の計画もある様ですが、駅から1Km以上離れている事で、現状は電車利用の利便性は高くありません。新奇性が失われた後、電車利用の客足は少し遠のくかも知れません。

■ 子育てを終えたプチリッチがねらい目? ■

ファミリー層が多く住む地域ですが、その購買力はあまり高くはありません。東京都心立地と、千葉の客層はおのずと異なります。

一方で海浜幕張周辺のマンション群は、そろそろ子育てを終える世代が沢山住んでします。入居当時の価格を考えると、この世代はプチリッチなので、購買力も高そうです。周辺のプチリッチをどの位集められるかが、勝負とも言えそうです。

■ 多様化する顧客ニーズをイオンが掴み切れるか? ■

最近の大型物販店の悩みは顧客のニーズの多様化に対応出来ない事です。ネットで情報が大量にさらに高速に流通するので、ニッチなブームが起きては直ぐに消えて行きます。先日まで、クリスピードーナッツに行列していた客は、今では別の店に並んでいます。

こういった移り気な顧客に対して、物販店はターゲットを絞り切れないので、百貨店などは自主商品の売り場を減らし、場所貸し業に鞍替えを始めています。

イオンモールなどモール型店舗に場所貸しの不動産業ですが、物販関係が同じ様な戦略を取る中で、同じ店がどこにも出店しているという、多様化とは反対の状況が生まれています。どこに行っても変わり映えのしない店が並んでいる事になります。

特に、一つの店舗の売り場面積の大きなモール型店舗では、小さなショップでは売り場を商品で埋める事が難しくなります。結果的にある程度知名度が高く、販売力のある店舗が並ぶ様になりますが、結果的に、個性が薄まります。

■ マスコミが消費を煽動する時代はいつまで続くのか・・・ ■

イオンモール幕張新都心など大型の商業施設が出来ると連日マスコミが取り上げて消費を煽動します。あるいは、海外のファストファッションなどがオープンしても大々的に報道されます。

マスコミに煽られて多くの人達が、一回は行ってみようと出掛けて行きますが、どうも欲しい物が見つからない・・・。何となく地元の馴染みの店の方が居心地が良い様な感じがする・・・。こんな思いを多くの人が味わっているのでは無いでしょうか?

トレンドなんて言葉にも、少々疲れた日本人の消費は今後どう変化して行くのか?

多分、マスマーケットを卒業した人達が増えるに従って、商業施設のあり方も次第に変化して行く事でしょう。巨大なイオンモールを彷徨いながら、何だか居住まいの悪い思いに囚われてしまいました。

娘も、早く帰ろうよと急かすので、イケアで細々とした雑貨を買い込んで、帰路に付きました・・・。

アニメが放棄してしまった何か・・・『無限のリヴァイアス』

2014-01-19 06:02:00 | アニメ
 



■ アニメの進化の限界と、解体と再構築 ■

アニメは「おとぎ話」なので、ロボットが空を飛びまわろうが、白兵戦で戦おうが、視覚的に面白ければ一向に構いません。そういったアニメならではの面白さを追求しようという作品の最右翼が『天空突破グレンラガン』であり『キルラキル』です。

一方でアニメと現実の関係をテクニカルに模索している作品もあります。『サムライフラメンコ』はその意味において興味深く、アニメ的荒唐無稽と現実を対位する事で、「アニメ的世界感とは何か」という問題を浮き彫りにしようと試みています。

これらの作品は、「ポストモダン」(ちょっと古いです)的手法でアニメというジャンルを再構築しようと試みています。

1) 物語の設定を単純化する
2) キャラクターの性格付けを単純化する
3) 物語の構造を再構築する
4) 細部に現代的なアレンジを加える

ポストモダンで用いられる「解体と再構築」という手法は、ある表現ジャンルが進化の袋小路に突き当たった時に、それをブレークスルーする為に用いられます。一度、表現様式を徹底して解体して単純化し、それらのピースを再構築する時に従来の構築方法とは異なる手法を用いる事で、新たな表現様式を生み出そうとする試みです。

この「解体と再構築」という手法は80年代から90年代に掛けて、建築や音楽、文学や美術の分野で盛んに用いられました。ロックにおけるポストモダンは、パンクとニューウェーヴという形で登場しました。

一方で、表現ジャンルとしては未だ発展途上にあったアニメは、一足遅でこの様なポストモダン的試みが成される様になりました。

ただ、アニメは貪欲なジャンルなので、文学やマンガなどのポストモダン的な動きも同時代的の取り込んでいました。大友克洋の「童夢」などの作品は、当時のポストモダンの雰囲気をマンガに取り込んだ例ですが、それはすぐにアニメの世界の拡散します。

ただ、この当時のアニメのはポストモダンは、「ポストモダンを外挿」したのであって、アニメというジャンルを「解体再構築」した訳では無いので、アニメ自身のポストモダンが始まるのは『新世紀エヴァンゲリオン』の登場からでは無いかと私は考えています。(押井守の『ビューティフルドリーマー』が先と言われる方も多いでしょうが・・・)

■ アニメの進化の一つの到達点であった『無限のリヴァイアス』 ■

逆説的に言えば、ポストモダン的表現が登場した頃のアニメは、表現様式としては一つの到達点に達していたとも言えます。

本日紹介する1999年にTV放映さえた『無限のリヴァイアス』はその代表的作品とも言えます。

ガンダムを始め、様々なロボットアニメの傑作を生み出して来たサンライズの作品ですが、監督は『コードギアス』の谷口悟朗、シリーズ構成と脚本は、『ヨルムンガンド』の黒田洋介が担当していました。今思うと贅沢なコンビです。

2137年に太陽から放出された巨大フレア「ゲドゥルト・フェノメーン」によって太陽系は覆い尽くされてしまいます。強い放射線を放つゲドルトの影響で地球は南半球の人口13億を失います。バンアレン帯を人工的に強化する事で、人類はかろうじて生き延びます。
一方でゲドルトから得られる膨大なエネルギーの恩恵により、人類は太陽系の各惑星にその勢力を伸ばして行きます。

ゲドゥルト内は巨大な圧力と強い放射線の影響により通常の宇宙船は航行出来ません。それによって太陽系は半ば分断された状態です。

相葉昴治(こうじ)と相葉祐希(ゆうき)の兄弟は、航宙士(宇宙飛行士)を目指して航宙士養成所リーベ・デルタに入学します。この二人は過去の事件を切っ掛けに仲違いしています。昴治は祐希から離れる為に航宙士養成所に入学を決めますが、何故か祐希も入学してきます。そんな二人を放っておけない幼馴染の蓬仙あおいもフライトアテンダント科を志望します。

リーベデルタは定期的にゲドルトの海の浅部に潜航してエネルギーをチャージします。その間は通信設備も使えないので、多くの学生が帰省します。しかし、3人を始めとして、400人余りの学生は、リーベデルタに残っていました。

ところが、この時、リーベデルタに工作員が潜入しています。彼らはリべデルタの潜航深度を変更して、ゲドルトの圧力でリーベデルタが押し潰される様に工作します。これに気づいたのは、操船科二期生のツヴァイのメンバーでした。彼らは教官達に事態を知らせます。

既にリーベデルタの先端部から溶解が始まっており、教官達は落下速度を少しでも低下させる為に周辺設備の切り離しを選択します。しかし、それは強い放射線に身をさらす事になり、さらにはパージ装置の爆風で命を失う事を意味します。しかし、大人の使命を全うする為に教官達は命と引き換えに切り離しを敢行します。

教官達の決死の行動で時間的猶予を得たツヴァイは、リーベデルタ内の400人余りの生徒達を、教習艦リベールに避難させます。リベールを起動させて脱出を試みる為です。しかし、限られた時間で船を起動させる事は困難を極め、それに失敗します。絶対絶命の危機に陥った時、突然リベールが起動し、浮上しはじめます。

九死に一生を得た生徒達ですが、教習艦リベールが大型航宙艦のリヴァイアスに取りつく様にしてゲドルトの海を脱出した事を知ります。リーベデルタの中に、何故か大型航宙艦が隠されていたのです、生徒達は無人の巨大航宙艦へ移動して、救助が来るのを待ちます。

ところが、工作員の目的は、この航宙艦リヴァイアスの奪取にあります。リヴァイアスは密かに建造され、リーベデルタ内に隠されていた秘密兵器だったのです。そして、リヴァイアスの奪取をもくろむ組織は何と軌道保安庁である事にツヴァイは気付きます。彼らが助けを求めた相手こそが、敵であったのです。

リヴァイアスは完全に孤立し、度重なる攻撃を退けながら、400人の生徒を乗せ宇宙を漂う事になります。生徒達に広がった不安は、艦内の秩序を崩壊させます。ツヴァイに対する不満が高まる中で、不良グループが操船室を選挙し、艦内の実権を握ります。彼らは恐怖によって艦を支配しますが、結果的には敵を撃退し、艦の秩序の構築に成功します。

しかし、恐怖政治は長くは続かず、ツヴァイが不良達を退けますが、艦の秩序構築の為に厳しいルールを敷かざるを得なくなります。それでも漂流が長引く中で生徒達の規律は崩壊し始めます。昴治の親友の尾瀬イクミは彼を慕う女子が傷付けられた事を切っ掛けに、とうとう武力でリヴァイアスを統率する道を選択します。独裁が始まるのです。

昴治は親友の暴走を止めようとしますが、自分の無力を思い知ります。それでも・・・

■ 宇宙版の『十五少年漂流記』であり『蠅の王』 ■

『無限のリヴァイアス』は宇宙版の『十五少年漂流記』であり『蠅の王』として企画されます。希望の無い閉鎖空間に400余命の子供達が閉じ込められた時、そこで何が起きるのかをシミュレートした作品です。

その本質は『蠅の王』に近く、閉ざされた社会での人間の利己的な行動と、それを統率する為の制度や能力に注意が注がれます。

前出の小説を継承して「漂流譚」の形を取ってはいますが、その内要は革命などで誕生した幼い国家の政治が辿る政権の変遷に酷似しています。

『無限のリヴァイアス』が放映された1999年は、1991年にソ連を中心とする共産主義国家群が崩壊した後の時代です。ソビエトという壮大な社会学的な実験が失敗に終わった事を背景に、国家と統治、権力と個人の有り方が問い直された時代のこの作品は生まれています。

■ アニメが抱えた戦後のルサンチマン ■

戦後、日本の文化人はアメリカへの反発として、共産主義に憧れます。資本主義がもたらす不平等を解消する理想として共産主義に傾倒します。

『無限のリヴァイアス』の監督、谷口悟朗は『ボトムス』で有名な高橋良輔の孫弟子です。高橋良輔は子供向けのアニメの中に強い思想性を持ち込ん人物です。(宮崎駿や富野も同じ匂いがします)

『ボトムス』に先立つ『太陽の牙だグラム』(1981年)は高橋にとって最初のロボットアニメです。『ガンダム』や『イデオン』が成功し、ロボットアニメが単なる子供向けで無くなった時代に、高橋は子供達と一緒にTVを見るであろう父親層を明らかに意識して、リアルな世界感を持つアニメを作り出そうとします。

『太陽の牙だグラム』は地球連邦の植民惑星デロイアの独立運動の過程を、レジスタンスの視点で描いた作品ですが、連邦側を単純に悪として描く事も無く、又、レジスタンスも地味な抵抗を繰り返すといった実にリアルな物語が延々と続きます。

ロシア革命や共産主義にロマンを抱いていた高橋らの世代は、アニメを利用してアメリカの日本支配を告発し続けました。『ガサラキ』では非常にストレートにアメリカの日本支配を描いています。

■ 現代のルサンチマンを象徴するサンライズ作品 ■

その後の作品でも高橋が描き続けたのは、「権力に対する反抗」であり、この思想は孫弟子とも言える谷口悟朗にも受け継がれています。『ガサラキ』で高橋の下で助監督を務めた谷口悟朗は、若い頃は役者や映画監督を志した様ですが、アニメならば20代で監督になれるとこの世界に飛び込んだ異色肌です。

谷口の世代には共産主義へのシンパシーは希薄です。共産主義の閉塞と崩壊をリアルに見て来た1966年生まれの彼は、『無限のリヴァイアス』で、国家や革命といったものの本質を子供達の漂流譚としてコンパクトに描いています。

一方、『コードギアス』では、かなりストレートにアメリカの一国覇権主義をエンタテーメントに昇華しています。

サンライズはこういう思想性の高い作品を生み出す伝統がある様で、ガンダムを始めとする富野の一連の作品から、平成ガンダム、そして最新の『革命期ヴァルヴレイヴ』に至るまで、エンタテーメントの仮面の下に、何やら棘を隠し持った作品を連発しています。

ネット社会に生きる私達の世代は、世界が「東西冷戦」や「アメリカの一極支配」といった見せかけの構造では出来ていない事に薄々勘付いています。

世界の表面的は対立の裏に、もっと大きな構造が見え隠れしている事が気になって仕方がありません。サンライズの最近の作品は、その様なネット世界に充満する空気に積極的にコミットしようとしている様に感じられます。

これも、ある意味、現代のルサンチマンなのかも知れません。

■ 群像劇を諦念に描く事で飽きさせない ■

『コードギアス』でアメリカの単独覇権を強烈に風刺した谷口悟朗ですが、『無限のリバイアス』では、その興味は権力と個人の関係に限定されています。利己的な庶民と、それを統率する権力との関係を丁寧にシミュレートしています。

ただ、理念に凝り固まったガチガチな作品では無く、多数の若い男女の細やかな関係が丁寧に描かれています。誰か大切な人を守る為に、人は暴力をも肯定していく様が切々と描かれて行きます。

彼らは大人不在の中で秩序を保つ為の模索を続けます。

あくまでも正論を振りかざす者。
妥協の内にも解決を優先する者。
合理的決断を何よりも尊重する者。
現実的であらんが為に暴力を否定しない者。

多くの意思が絡まり合いながら、彼らは良かれと思うが故に傷つけ合って行きます。

■ SF的描写の緻密さは注目に値する ■

『無限のリヴァイアス』のもう一つの魅力は科学的描写の緻密さです。『2001年宇宙の旅』と同様に、細かな部分にも科学的考証が成されています。

多分、今のロボットが飛び回るアニメを見慣れた子供達には、「まだるっこい」としか感じられないとは思うのですが、ロボットの腕を上げるだけの動作に膨大な制御プログラムを作るなんてアニメは後にも先にもこの作品だけでしょう。

戦闘の結果は、リアルタイムで組まれて行く制御プログラムによって決まります。このプログラム制作も階層化されていて、ソリッドを呼ばれるプログラムのブロックを組み合わせる事で、制御プログラムが構成されて行きます。


この他にも無重力や重力の対する拘りも徹底しています。これはサンライズの伝統とも言え、ファーストガンダムでも宇宙空間ではホワイトベースの中は無重力でした。(何故かブリッジには重力が働いていた様な・・・)。Zガンダムでは、居住ブロックは非戦闘時は遠心力によって重力を発生させるという徹底の仕方でした。

■ アニメの一つの到達点であり、SFの変節点でもあった ■

『無限のリヴァイアス』が1999年と2000年を跨ぐ次期に放映されていた事はある意味象徴的です。

古典的なハードSFの直系と言える作品は、アニメでも小説でも2000年代に入ると勢いを失って行きます。

それに代わる形で登場するのが、「世界系」と言われる一連の作品です。科学的なリアルよりは、ストーリーの面白さが優先され、科学的な不整合は「誰かが支配する世界」というチートによって許容される様になります。

量子力学や最新の宇宙論が、「存在の不確かさ」を確立して行く過程で、SFも確かな形を失って行きます。

そういった時代の変節点において、『無限のリヴァイアス』は古典的なSFアニメの到達点であったとも言えます。

■ アニメは進化しているのか、それとも退化しているのか? ■

昨年、私はいくつかの2000年前後に放映されたTVアニメを見てみました。
そして、現在のアニメが当時の作品に対して、退化しているのではないかと強く感じています。

確かに日々放映される作品の作画のクオリティーは高く、ストーリーも視聴者を飽きさせません。一方で作品を鑑賞する為のハードルは限りなく低く、中学生でも内様が容易に理解出来ます。

多分、現在『無限のリヴァイアス』を放映しても全く支持は得られないでしょう。「鬱展開」という一言でバッサリです。


そんな時代に谷口悟朗は『コードギアス』を監督し、黒田洋介は『そにアニ』を手掛け、 梅津泰臣が『ガリレイドンナ』や『ウィザード・バリスターズ 弁魔士セシル』を作っている・・・・なんだか才能の無駄遣いの様に感じてしまうのは私だけでしょうか・・・。


尤も『そにアニ』を見て、思わず「脚本上手いな・・・」って思ってしまう自分も居る訳ですが・・・・。



本日はオヤジのアニメファンのノスタルジーをお送りしました・・・。

消費税前の駆け込み需要が景気を支えている?

2014-01-17 07:24:00 | 時事/金融危機
 

■ 「消費税増税前に・・・」が合言葉 ■

昨日、大手物販店の本部で打ち合わせしていたら、こんな会話に。

「消費税前で高い商品が良く売れるんだよね。」
「でも、本当に高いものじゃなくて、サラリーマンが買える範囲のものだよね。」
「Yシャツを大量にまとめ買いした人も居るし・・・」
「だいたい本当のお金持ちは3%の増税なんて何とも思っていないから」
「車も高級車じゃなくて、庶民の豊な層が200万から300万のゾーンを買っているね」
「でも、慌てる必要ってないんだよね」
「そうそう、消費税アップ後は売上が落ちるから、どうせ値引きするしね」

■ 職人さんの手配が難しくなるから、今の内に押さえておけ!! ■

内装関係では職人さんや業者さんが引っ張りだこになっています。
いざ、工事を発注しても、受注できる業者が居なくなるのではと心配する状態。

資材関係も先行発注する所もある様です。
ただ、こちらは余らせてしまうと在庫になるので、ちょっとヒヤヒヤ。

■ 4月以降を考えたく無いね・・・ ■

消費税の話の最後は「4月以降は考えたく無いね」で必ず終わります。
これだけ需要を先食いしたら、その後は想像に難くありません。

問題は、現在の経済指標が駆け込み需要に支えられている事。
これが無ければ、いったいどれだけ悪い数字が並ぶのか・・・考えただけでもゾっとします。

■ 倒産件数の減少や、自殺者の減少を宣伝するマスコミ ■

ここ数日、ニュースでは倒産件数の低下や自殺者の減少を報道しています。

その原因は建築土木関係の業者の倒産が減った事が大きいとか。
補正予算で公共事業を大幅に拡大しているので、地方に行っても何処かで必ず道路工事をしています。堤防などの大規模改修工事も行われています。

確かに、公共事業の増発は、瀕死の状況にあった建築土木関係の業者を延命させ、そして確実に短期の雇用を増やしています。(この業界は日雇いも多い)

安倍政権というか、自民党政権の公共事業拡大が無ければ、地方経済などは目も当てられない状況だったかも知れません。

■ 点滴とカンフルで生き延びる日本経済 ■

日本経済の停滞が、ケガなどの一時的な不調ならば、点滴とカンフルで一時を凌げば、その後は回復して元気になるはずです。通常の景気循環における不景気時の政府支出の拡大には効果があります。

一方、点滴とカンフルで生き延びているのが、老衰した老人であったならば、回復の見込みは低く、様々な処置は延命を目的にしたものとなります。

現在の日本経済の不調の原因は、景気循環の谷や、バブルの後遺症では無く、少子高齢化による消費の低下と、海外との価格競争の結果なので、この2つの点が根本的に解決しない限り、日本経済が回復する可能性は低いとも言えます。

■ 消費税増税は薬でもあり毒でもある ■

消費税増税は衰弱した老人に強い薬を投与する様なものです。本来は財政の健全化という効用がありますが、現在の日本においては、経済の体力を更に奪う効果しかありません。

むしろ、日銀の国債の大量買入れによる異次元緩和の方が、栄養剤を混ぜた点滴の様に経済には優しい。一方で、代謝が低下した状況では、だんだんと体が水膨れしてきます。


「先生、患者さんの尿の出が悪いのすが・・・」
「そうか、そろそろ家族の方を呼んだ方が良さそうだね・・・。」


こうなる前に日本が取り得る政策には限界があります。


■ オリンピックバブルは東京限定で起こる ■

東京限定でオリンピックバブルは起こるはずです。それを見越して、割安感のある東京の不動産に外資が流れ込んできているはずです。

土地が値上がりして、東京の不動産価格も値上がりを始めれば、それで儲けた人達は、株式などの投資も活発化させるかも知れません。こうして、限定的ではありますが、資産市場だけは少し活況を取り戻すかも知れません。

■ 景気循環がピークアウトする2015年? ■

「アメリカ経済が持ち直している・・」など明るいニュースの一方で、ダウが不安定な動きを見せたり、アメリカの雇用統計の数字が思った程伸びていなかったり・・・。

現在の世界経済の好転は、リーマンショックからの厳戒態勢経済が終わりつつある事を示しています。FRBのテーパリングが市場に混乱をもたらさなかった事で、市場はしばらくは安定を保ちます。リスクの意識もだんだんと市場から消えて行きます。

一方で、景気循環的には2015年で現在の回復基調がピークアウトするとも言われています。そして、バブル10年周期説からすれば、2017年には次のバブル崩壊が予想されます。

短期的には明るさの見える世界経済ですが、中期的には雲が多い空模様。
儲ける人達は、短期は強気、長期は弱気のポジションを取っているかも知れません。

■ 日本の景気低迷と内外金利差の拡大 ■

気掛かりなのは、消費税増税で日本の景気が冷え込んで、日本の資金が金利を求めて海外に流出するケース。

テーパリングによってアメリカの長期金利も上昇しており、日本との金利差は2%以上となっています。日本国内で安定して金利2%を稼ぐ事は大変ですが、米国債投資ではこれが可能になり、さらに日本の経常赤字が定着すれば円安が進行するので、実質金利差はさらに拡大します。

しかし、ここで、第二のリーマンショックが起きると、日本の資金が大きく毀損する事になります。米国債が崩壊しなくとも、円キャリートレードの巻き戻しで円高に振れれれば、2%の金利差など簡単に帳消しになってしまいます。


消費税増税の影響は、消費の低迷という直接的影響だけでは無く、内外の金利差の拡大という形で、経済に様々な影響を与える事でしょう。

都知事選は都民のリトマス試験紙・・・問われているのは都民の知性では?

2014-01-16 07:08:00 | 時事/金融危機
 

■ 細川護熙氏の都知事選出馬を巡る街の声 ■

昨日、都内のチェーンのラーメン店で昼飯を食べていた時の事。
アーケード街にあるその店は、昼時はいつも近所の老人達のたまり場状態。お婆さん達が世間話しに花を咲かせます。

都議選の話になったので、思わず聞き耳を立ててしまいました。

「細川さんはどう?」
「あり得ないよねーーー。だって御爺さんだもん」
「舛添さんの方が若くて良いわよねーー。」

ご自分の歳は棚に上げて・・・・。
舛添氏がお婆さんにアピールするのは意外でした。下〇身の噂はダテではありませんね。

まあ、選挙なんてこんなもんでしょう。
東京都民にとって原発事故は他人事に等しく、それよりも候補者の年齢や見かけに興味がある御様子。

しかし、多分、このお婆さんでもTVのインタビューを受ければ、「原発で苦しんでいる福島の人達の為に細川さんに・・・」なんて発言してしまうのかも知れません。

■ 小泉- 細川 というイヤラシイ組み合わせ ■

私が今回気になるのは、小泉氏が細川氏を引っ張り出した事。
政界を引退したハズのお二人ですが、カーター元大統領みたいに色々な所で名前が挙がります。特に、細川氏は政界が混乱した時に良く登場します。

世間的には陶芸家という肩書を名乗っていますが、政界との縁は全く切れていないご様子。首相在任中はあまり評価されなかった細川氏ですが、細川氏の影響力は小さく無い様です。

細川氏と小泉氏に共通している点と言えば、政界内でのシガラミが少ない事でしょうか?本来なら派閥なり党派なりを率いて、数による力を拠り所とする日本の政界において、お二人はいつも一匹オオカミ的な印象を受けます。

その様な組織的なバックアップの無い人が達が、何故政界で影響力を行使できるのか考えた時、その背後に誰が居るのかが薄っすらと透けて見えます。

■ 反原発は争点になるのか? ■

今回の細川氏の出馬は、風化しつつある原発事故を人々の記憶に蘇らせて、自民党がなし崩し的に進めようとしている原発再稼働に対して、抵抗勢力の士気を高める効果を狙ったものでしょう。ついでに、オリンピック利権が転がり込んで来ればシメシメですが、多分、都民が細川氏を都知事に選ぶ事は無いでしょう。

確かに、東京新聞を読んでいる様な政治意識の高い若年層は、「反原発妄想」に取りつかていますから細川氏に投票するでしょうし、革新系の勢力が強い杉並や国立などでも「反原発」はアピールします。

しかし、その他大勢の特に老人達は、原発よりは医療補助や社会福祉政策の方が切実な問題です。さらに、地元で商売をなさっている方達も、自民党と古くからの関係を急に断つ事は出来ません。さらに、創価学会の組織票も自民党公認候補を支持するでしょう。

高齢者や地元の組織票と、若者中心の浮動票の割合によって都知事選の行方は左右されますが、「反原発」で若者を投票所に向かわせる程、小泉氏や細川氏は若者に好かれては居ない様な気がします。

特にネットでの小泉氏の評かは「国賊」並みです。所得格差が拡大したのは小泉改革が原因。オレ達が貧乏なのは小泉のせいだと思っている若者は少なくはありません。反原発で時代の空気を読んだ様に思える小泉氏ですが、ご自身がどれ程若者の怨嗟の対象になっているかは自覚が無い様です。

■ 原発事故以降、アトピーの症状が緩和された? ■

2chなどを覗いていると「原発事故以降健康になった」などというスレッドも立っており、具体的にはアトピーなどのアレルギー症状が緩和されたという人も居らっしゃる様です。

これが福島原発の放射性物質の影響なのか、あるいは単に食生活に気を配る様になった影響なのかは分かりませんが、低線量率の被曝はアレルギー疾患を緩和したり、免疫系の疾患を緩和する効果がある事が知られています。「はだしのゲン」にもピカドンの後に健康になった人達の話が出て来る様です。(未確認)

私などは、「低線量率被曝は健康に良い」と考えているので、東京都知事戦を巡る「反原発論争」は、地元に戻れない福島の方々を、ますます故郷から遠ざけているだけの迷惑行為にしか見えません。

■ 経常利益の赤字転落が確実になる日本 ■

まあ、東京都民がバカでも無い限り、細川氏が都知事になる事は無いとは思いますが、「そのまんま東」や「横山ノック」が首長に当選する国なので、安心は出来ません。尤も、「細川護熙」って画数が多くて難しい字ですよね。多分、投票は平仮名もOKなのでしょう。そうで無ければ、無効票が続出して落選しそうです・・・。

冗談はさて置き、冗談で済まされないのが日本の経常収支。
現在の日本はかつての「加工貿易立国」の面影はありません。製造業がアジアとのコスト競争に敗れた結果、例え国産ブランドの家電品でも、made in China という状況。アイフォンも中国製。そして衣類はベトナム製が多くなっています。

日本の貿易収支は製品輸入の増加で赤字傾向にありますが、原発停止による燃料輸入の増加が貿易収支を完全に赤字化しています。

近年、海外投資のリーターンである所得収支の黒字が、貿易収支の赤字を補って経常収支は辛うじて黒字を達成していたのですが、昨年後半くらいから経常収支も赤字化しています。2013年は通年で、日本の経常収支が初めて赤字に転落するかも知れません。

原発が再稼働出来なければ、2014年の経常収支は確実に赤字になると言われています。

経常収支の赤字は、純粋に国富の流出ですから、これが続くと日本の国力は次第に低下します。経済の基盤を輸入に頼る日本にとって、経常収支の赤字は大問題です。

■ 高い電力料金では製造業は流出してしまう ■

さらに原発が再稼働出来なければ、電力料金は現在よりも何割か値上がりします。廃炉コストや原発の減価償却費を電力会社が負担した場合は、電力料金の値上げが必至だからです。

一方、電力料金の上昇を避ける為に、原発を国有化して、そのコストを国が負担した場合、そのコストは税金で負担される事になり、やはり最後は国民の負担となります。

尤も、日本は黒田緩和以降、事実上の財政ファイナンス状態ですから、短期的には国民負担はそれ程増えません。しかし、将来的に起こるであろうインフレによって、私達はコストを負担せざるを得ません。

もし仮に東京都知事選で細川氏が勝利し、全国的に反原発政党が雨後の筍に様に出て来て、国民の支持を集める様な事になったなら、電気料金の負担を下げる為に、原発は全て国有化されるのでしょう。

■ 白黒はっきりさせるより、グレーが国益に叶う事も多い ■

ICRP(国際放射線防護委員会)が放射線の防護基準を緩和する事は考えられませんから、実際的な被害が発生しなくても、過剰な防護基準が福島に被害を与え続け、国家の予算と電力会社の資金を無意味に流出させます。

小泉氏や細川氏の主張は、現在「白」だけど「グレー」として処理されている原発を、無理やり「黒」とする事で、社会に大きなコスト負担を強いる行為です。

一方、小泉氏らを支持する人達に、自分達のコストが増える事に対する認識がどれ程あるか疑問です。だいたい「反原発」などと声高に言う人達は、自分達の負担増には徹底的に抵抗する人達です。

■ 原発を止めても構わないが、「再生可能エネルギー」なんて夢物語は止めよう ■

実は私自身は原発を廃止しても構わないと思っています。
ICRPが過大な防護基準を死守する限り、地震国日本では第二、第三の福島第一原発事故が発生する可能性は否定出来ないからです。

ただ、「原発を停止しても再生可能エネルギーを拡大すれば大丈夫だ」などという頭にお花が咲き乱れた様な発言は看過できません。

仮に日本中の屋根を太陽電池で覆い、遊休地も全て太陽電池にした場合、総発電量に占める太陽光発電の比率は30%を超えるかも知れません。天候や日照による変動率の大きな太陽電池による発電を、10%を超える割合で送電網に供給した場合、電圧の変動が大きく成り過ぎて、電源として使い物にならなくなってしまいます。

それを防ぐ為には、太陽光発電による電力を一度バッテリーなどのバッファーに溜めて、定常的に送電網に流すシステムが必要ですが、バッテリーの容量とコストが革命的に改善しない限り、莫大なコストが掛かり、電力料金は大幅に値上げせざるを得ません。

デンマークは自国の電力消費量の30%程度を風力発電で賄う事が出来ますが、あえてこの電力を他国に売って、他国からキレイな電気を購入しています。ドイツも工業用電力はフランスから安い原発の電気を購入しています。

結局、原発を停止しても太陽光発電などの自然エネルギーは大幅なコスト高となるので、総電力発電量の10%以上の普及には制約が掛かります。原発を止めて不足する電力は、現在の様に火力発電に頼らざるを得ません。

■ シェールガスと小型発電機が売れるのでウホウホのアメリカ ■

アメリカは日本にガスを輸出する為に液化施設を建造しています。アメリカからガスを輸入してもコストは現在とほとんど変わりませんが、供給地の分散化は日本にとっては悪くは無い事です。一方で、エネンルギー安全保障をアメリカに握られて、ますます頭が上がらなくなります。

一方、大企業は電力料金の値上げに対抗する為に、ガスによる小型発電機を設備するでしょう。排熱まで利用すればエネルギー変換効率は最大で85%にもなる様です。

この小型発電機ですが、実は中身はジェットエンジンとほぼ変わりありません。供給もGEなどのジェットエンジンメーカーです。決して安い商品では無いので、ここでもアメリカの軍事産業を利益を確保する事が出来ます。

■ 日本の将来の為に原発を停止するのでは無く、アメリカの為 ■

小泉氏や細川氏がいくらきれい事を並べても、結局は誰かの指示で動いている事はボンヤリと透けて見えます。そして、陰謀論者の私は、「誰得」の理論から、アメリカの指示で彼らは動いているのではないのかと邪推してしまいます。

メディアはこんな事は決して書きませんから、正論で小泉氏らの動きを牽制しています。
しかし、ネット世界ではメディアはすっかり悪者扱いですから、メディアに責められると、都民は細川支持を強めるかもしれません。

小泉氏はそれも計算の上で、「反原発」を都知事選の争点にしているのかも知れません。


本日は都知事選をめぐる「妄想」を垂れ流してみました。
都知事選は「都民のリトマス試験紙」みたいで、結構楽しめそうです。



多くの候補が原発反対とか、脱原発と口にする中で、田母神氏は「原発は必要」と、保守らしいリアリズムを貫いています。一方、発明家のドクター・中松氏は「原発技術は19世紀の技術。21世紀の新しい発明を東京に実施する」とこれまた頭の中がジャングル発言・・・。


「新しい発明」に一票!!・・・・エッ!?