■ 『輪廻のラグランジェ展 in 鴨川』を見に、鴨川へGO!! ■
私の大好きなアニメ『輪廻のラグランジェ』の放映が終了して2年。地元タイアップアニメの先陣を切りながらも、「オタクなめんな」という痛い批評をネットで受けた悲劇の作品。
しかし、私は断言します。「近年で一番素晴らしい作品であった!!」と。
■ 作品に対する愛情が伝わる展示会 ■
「失敗作」と言われながらも、独自の地道なファンサービスを続けた鴨川市と有志の方々。番組放映後から2年経った今、展覧会開催にこぎつけた努力も並大抵では無かったと思います。ファンの一人として、先ず感謝したいと思います。
会場は「鴨川市郷土資料館」の2階。
入り口にはウォックス・アウラの大型フィギアが。
日産のデザイン部内のコンぺで選ばれたこのデザインは惚れ惚れする程美しい。
台本が展示されています。中が読めるので、結構参考になりました。
イヴェントで使わたポスター。
魚見塚展望台でタイムカプセルを埋めるのに使われたスコップ。
タイムカプセルが掘り出されるのは、作中の年の2032年。
寄せ書きがされたジャージ部ジャージ。鴨川でジャージ部ジャージ買えます。
これは嬉しい。作品で3人の関係のメタファーとして登場した椅子の再現。
実際に防波堤の上に並べた写真。この写真、欲しいな。
椅子の設定資料。
キャラクタデザインを担当された方からの色紙。
放映時のエンドカードも全て展示されています。
原画です。上手い!!
ロケハンのスケッチ。・・・写真だけでは無く、スケッチも描くのですね。
「ラグリン祭り」のスナップ写真
商店街のシャッターにドーンとキャラクターを描いている様子。
「鴨川エナジー」。これ結構売れているみたいで、ご当地ドリンクの座を射止めそう!!
キャラクターデザインの乗田拓茂さんのメッセージを思い出ノートに発見!!
会場には熱心なファンの姿がチラホラ。
■ 『輪廻のラグランジェ』という作品を振り返ってみる ■
ご当地アニメで大成功を収めた『ガールズ・パンツァー』の大洗と良く比較されますが、作品としては私的には甲乙付けがたい。
アニメ的日常とは・・・「輪廻のラグランジェ」
時代は鴨川・・・自転車に乗って「輪廻のラグランジェ」の聖地巡礼
「あり得ない」を吹っ飛ばす「ディテールの積み上げ」・・・・『ガールズ&パンツァー』
王道・スポ根アニメ・・・熱過ぎるゼ、『ガールズ&パンツァー』
オタクアニメと侮るなかれ・・・・ただただ素晴らしい『ガールズ&パンツァー』
こうやって自分の過去のブログを読み返してみると、『輪廻のラグランジェ』の魅力は、キャラクターの魅力。『ガールズ・パンツァー』の魅力はディテールとギャップの魅力の様に思われます。
■ ユリ展開を期待するオタク男子は意外にナイーブだ ■
『輪廻のラグランジェ』は可愛い女子3人の元気な日常を描いていますが、女子高生の父親である私の目から見れば、この関係が意外に現実的で可愛らしい。だいたい女の子って3人でつるむ事が多いのですが、不思議と性格の違う3人が微妙なバランスを保ちつつ、喧嘩したり仲直りしたりしながら、いつも一緒に行動しています。まさに、まどかとランとムギナミの関係なのですが、これが多分、世のオタク達には物足りなかったのだと思います。
オタク達は女子が二人集まれは、そこにユリ的関係性を求めてしまいます。男子が二人集まるとBL的関係を期待してしまう腐女子とは、まさに鏡に映った者同士の関係なのです。
私の勝手な認識では、オタク男子の好むユリ展開は、ちょっと病的な女子がムフフフとばかりに元気な女の子にストーカー的に絡みます。これ、明らかに無意識の自己投影なのですが、腐女子に比べて、ユリ展開を好むオタク男子は自己認識力が低く、何故自己投影が女性であるかに気づきません。
ちょっと腐った女の子が、BLで実現しているのは、現実世界では手の届かないイケてる男子と性的関係を持つ事ですが、その相手が女性であっては現実の自分を否応なしに意識してしまいます。そこで、自己投影の対照を男性とする事で、自分の存在を感じさせずに、素敵な男性との性的行為をあれこれ妄想するのでしょう。
一方、ユリ展開を見せる男性向けアニメの性的描写は非常に控えめです。体操服をクンカクンカしたり、あるいはリコーダーに口を付けたりがせいぜいでは無いでしょうか?都条例の影響か、そこから先はエロアニメの世界と割り切りがあるのかも知れません。ただ、オタク男子は意外にナイーブで、気に入った女性キャラクターの具体的な性的行動をあまり好まないのではないかと私は考えています。昔で言えば、「アイドルはウ〇コなんてしないんだ」的な思い込み・・・。
そこで、ラグランジェが何故オタク男子にアピール出来なかったを考えてみます。
1) 京乃まどかが、ポジティブを通り越してアホに見える
2) ランは良い感じにユリ的ですが、まどかの反応は性的では無く、あくまで同士!!
3) ムギナミはビッチキャラとしてはあまりに良い子
否定的に書くとこんな感じです。
そう、ラグランジェの女子3人組は、あまりにも「健康的」なのです。これは男子三人組の三バカトリオにも言える事で、アレンがメイド服を着た所で、彼らは健全な若い男子で、ユリカノ命が徹底しています。
せっかく、女子3人、男子3人を揃えながら、そこに明確な恋愛展開が無い・・・これ、実に現実の高校生的で健全なのですが、ここら辺がオタク達にはもの足りない。
制作サイドは「健康的なアニメ」を作りたかった様ですので、作品としてはブレていませんが、サービス精神旺盛の為に挿入される描写が「アザトイ」と感じられてしまうのでしょう。
一方、『ガールズ・パンツァー』は女子だけの集団を描きながらも、性的な匂いを上手く排除しています。役割的には揃えてあるのに、戦車道というフィルターが上手く掛けられています。ここら辺の抑制が、ナイーブなオタク達には嬉しいのでしょう。
『輪廻のラグランジェ』のアンチの方の多くが、「鴨川、鴨川と鴨川押しがウザい」と言いますが、実はそれは表面的な事で、この作品のキャラクターが自分達の嗜好通りに動いてくれない事に苛立っているのです。
一方で、鴨川に聖地巡礼をしている若い子達を見ていると、非常に素直な子が多い様に感じます。誓いの丘(魚見塚展望台)付近ですれ違うと、向こうから挨拶してくれます。
結局、この作品は「健全」であるが故に、アニメファンのボリュムゾーンを掴み損ねましたが、一方で非常に良質なファンの心をガッチリと掴んで離さないものがあるのでしょう。
■ 放映後2年を過ぎても、継続される「ジャージ部」の活動 ■
ご当地アニメの失敗作として語られる事の多い『輪年のラグランジェ』ですが、制作サイドと鴨川市、そして鴨川市民の有意のこの作品に寄せる思いは熱いものがあります。
それが、放映2年後に鴨川で開催された今回の展示会にも表れています。あれは失敗だったと葬り去るのでは無く、継続的にファンに対して何等かのサービスをしようと努力しています。
このプロジェクトの中心にいらした人物のブログが興味深いので、勝手ながら紹介させてい頂きます。
ラグりんと鴨川のこと
「オタクなめんな」と批判する事は簡単ですが、何かを協力して実現する為の努力を彼らは想像する事は無いでしょう。「アニメの消費者」たる一般のオタクは、様々なアニメの制作現場の苦労も想像する事が出来ないでしょう。
今回の展示会は、台本や原画も展示されており、アニメの制作現場の状況を垣間見る事が出来ます。30分の一本の作品を創るのに、どれだけの人達の労力が費やされるのか、それを知るだけでも貴重な展示会だと私は思います。
アニメファンに見て欲しいと同時に、鴨川市民の方々にも、是非足を運んで頂きたいと思います。
鴨川は元々大好きな街でしたが、この作品を見た事で、まどかやランやムギナミが、鴨川の地で生活している気がして、さらに好きな街になりました。私にとって、彼女達は萌えの対照では無く、気になる娘達的な存在です。
鴨川の海は今日も青く、そして眩しく輝いていました。
本日は行きは自転車。
現地で電車の妻と娘と合流して、鴨川を堪能しました。
夕食は鴨川駅近くの寿司屋「笹元」のおまかせコース。
3700円で様々な趣向を凝らしたお寿司が堪能できます。
先代の娘さんがご主人と握る寿司は、繊細で優しい味がします。
ところで、ご主人もジャージ部のメンバーだとは。寿司屋のカウンターでガンダムネタで盛り上がってしまいました!!
鴨川、最高!!
<追記>
よたろうさんのコメントで、『輪廻のラグランジェ』と『プリキュア』の類似性を指摘されて、やっとノドの骨が取れた気がしました。
私がこの作品に何故これ程までに魅力を感じるのか・・・それは「正義」の対立が起こした戦争を、「仲良くしたい」という願いが解決する構造が、現在の世界に通じるものがあるからなのかも知れません。
この点に関しては次のブログがとても分かり易く解説しています。(こういう優れたブログを読むと、自分のアニメ評論が恥ずかしくなります。勝手にリンクしてしまって申し訳ありません)
ロボットに乗って戦うプリキュアが明らかにした「ケアの倫理」の意義 [メディア・家族・教育等とジェンダー]
現在の日中韓の対立にしても、男性原理的なプライドの対立です。それに対抗して平和のバランスを取るのは韓流大好きなオバチャン達です。男性に言わせれば、それすらも「韓国の文化侵略」となるのでしょうが、どちらが平和を作るのかを考えた場合、明らかにオバチャン達に軍配が上がります。
「身近な平和を守る為」ならばルールを変えればいいじゃないかという柔軟な発想こそ、戦争抑止に繫がるのですが、一方でメディアは「正義」とか「正等性」といった男性原理を前面に押し出して日本を再び戦争へ導こうとしています。
『輪廻のラグランジェ』という作品は、「ロボットに乗って戦うプリキュア」という挑戦的な作品でしたが、意外にも現代の戦争と平和に関して示唆に富んだ作品です。『まどか☆マギカ』の「自己犠牲による絶対救済」には敏感に反応した現代の若者達ですが、『輪廻のラグランジェ』に込められた「平和への女性的な努力」には鈍感の様です。
男性原理の象徴とも言えるパトレイバーの劇場版を制作したIGが、『輪廻のラグランジェ』を制作した意味は意外にも大きく、そしてIGの諸作の硬直した世界観が嫌いな私は、やはり『ラグランジェ』に大きな魅力を感じてしまうのでしょう。
「愛は地球を救う」といった戦後左翼的なお花畑的な平和感には鶏肌が立ちますが、「身近な平和を守りたい」というささやかな願いには大いに共感します。いつの時代も戦争の最中、「戦争の正等性」を語るのは男性で、「人が死ぬことへの純粋な恐れ」を語るのは女性です。
ただ、この「身近な平和を守る」という思いも、ミスリードされると反原発運動の様になり得ますし、「身近な平和を守る為に戦おう!!」というアジテーションに流され易い事には注意が必要でしょう。
たかがアニメ、されどアニメ。
50歳を目前にした男がアニメにうつつを抜かすのは恥ずかしいのですが、それでもアニメから教わる事は沢山ある様です。