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映画・演劇のレビュー

まはら三桃 他4人『くらくらのブックカフェ』

2024-12-10 09:31:00 | その他
シリーズ第4作。短編連作で5人の作家による共作。1話完結だけど、しりとり式でお話が展開していく。まはら三桃から始まって廣嶋玲子、濱野京子を経て、菅野雪虫、工藤純子に至る。現代児童文学の最前線を走っている彼女たちがタッグを組んで子どもたちに向けて本を読むことの喜びを伝える。  今回は図書館や本屋ではなく、ブックカフェ。しかも古い倉を改装したカフェである。今回も読書を通してさまざまな出会い . . . 本文を読む
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吉田修一『罪名、一万年愛す』

2024-12-09 20:18:00 | その他
今回の吉田修一はエンタメ作品。絶海の孤島で起きた失踪事件を描く本格ミステリに挑んだ。ミステリはあまり好きではないが、吉田修一なら喜んで読む。だけど最初の100ページほどはいささか苦痛だった。なんだこれは!と思うようなあからさまによくある安易なTVドラマ。2時間もののサスペンス劇場を見る気分。あるいは『犬神家の一族』かなんかを見ている気分。孤島に招かれた探偵と老警部(元警部)。招いたのは88歳になる . . . 本文を読む
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坂井希久子『赤羽せんべろまねき猫』

2024-12-09 17:22:00 | その他
東京に行った時、赤羽のホテルに2泊したことがある。JR赤羽駅から続く商店街にはおびただしい飲み屋が確かに続いていた。この作品の舞台はそんな既知の光景だ。なんだかそれだけで身近な気分。もちろん赤羽はとてもいい町だと思う。滞在中はいつものように朝にはフラフラ小一時間街歩きをした。荒川河川敷にも行ったし、かなりの範囲をぶらぶらした。楽しかった。知らない町のなんでもない日常の時間。  そんなこ . . . 本文を読む
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大崎梢、坂井希久子他『おひとりさま日和 ささやかな転機』

2024-12-08 10:59:00 | その他
6人の作家たちによるアンソロジー・シリーズの第2作。ひとりで生きることの喜び(哀しみ、も)を描く短編連作。さまざまな視点からささやかな転機を描く。前作も読んでいるはずだけどあまり記憶にはない。同じ作家たちによる作品集で前作の続編もあるらしい。こちらもわからなかった。最近は読み終えるとすぐに忘れてしまうみたいだ。やばい。 さて、今回の6篇。お気に入りの大崎梢と坂井希久子はいつも通りいいけど、4話目 . . . 本文を読む
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井上荒野『だめになった僕』

2024-12-07 06:53:00 | その他
続々と出版される井上荒野の最新刊である。今回はまたシンプルな恋愛物語。ふたりの男女の語りが交互に描かれて時間は遡行していく。現在から始まり、1年前に、さらには4年前、8年前と。ふたりのこれまでが徐々に明らかになっていく。10、12、14、16年前まで。出会いから今日までを遡っていく。 長野と東京。これって昨日読んでいた『立秋』と同じパターンではないか。あれも作家(小説家)の話だったけど、こちらも . . . 本文を読む
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乙川優三郎『立秋』

2024-12-06 07:22:00 | その他
こういう大人向けの恋愛小説は苦手だから普段は読まない。渡辺淳一とか読んだこともない。(森田芳光の『失楽園』は見たけど)だけど最近あまりに同じ傾向の本ばかりが続いたので、少し反省して手にした。秋が終わるからその名残りになるかなとも思い読み始めた。昔、子どもの頃なぜが立原正秋を読んでいたことがある。『冬の旅』に心惹かれた。たぶんTVドラマ化されたものを見たことがきっかけであろう。それから少し背伸びして . . . 本文を読む
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桂望実『地獄の底で見たものは』

2024-12-05 08:13:00 | その他
この凄まじいタイトルからはホラー小説を思わせるけど、桂望実だからそれはない。地獄というのは、50代で仕事をクビになる女たちを描いた作品だからだ。4話からなる連作。   とても面白い。エンタメ小説として満点のドラマ運びを見せてくれる。地獄のような状況に陥るが、そこから一発大逆転というパターンは気持ちいい。最初は53歳専業主婦が離婚から再び働き出し輝く話。次は51歳会社員が仕事をクビにな . . . 本文を読む
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篠友子『あなたに会える杜のごはん屋』

2024-12-04 09:14:00 | その他
またまた食を題材にした美味しい小説だが、今回の目玉は映画業界で働いていた作者が書いた作品ということか。しかも僕とほぼ同い年。同世代の同じように映画好き作家が描く世界ということで興味深い。   ということで読み始めたのだが、あまり面白くない。予定調和のお話が続くからだ。不思議なレストラン。山の辺にあり、1日ひとりのお客しか取らない。亡くなった人との思い出の料理を出し、死者と再会出来る。 . . . 本文を読む
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朝比奈あすか『いつか、あの博物館で。』

2024-12-03 16:23:00 | その他
まるで児童書のような本。文字も大きいし、ページの余白も広い。読みやすいけど、なんか不思議。図書館の分類は一般書になっている。児童書でもYA小説でもない。話は中学生の3年間を4人の視点から描いた連作。3章仕立て。1章は3話、3人のエピソードが描かれる。魚住陽子の余白とはまるで違うけどこの小説は目に見える余白がたくさんある。ページにあからさまな空白が出来ている。そして主人公4人の心にも。まだ中学生で自 . . . 本文を読む
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愛野史香『あの日の風を描く』

2024-12-02 20:30:00 | その他
角川春樹小説賞を受賞したとあるが、そんな文学賞があるなんて知らなかったです。しかも第16回って。審査員に角川春樹の名前もある。さすが角川春樹だ。自分の目を信じて本を作り売る。  これはそんな彼に見出された新人作家のデビュー作である。読み出してこれは面白いと感心した。偶然昨日見た映画ともリンクする。もちろん倉本聰の『海の沈黙』である。あれは贋作と真贋の話だったが、これは模写と再現の話であ . . . 本文を読む
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魚住陽子『野の骨を拾う日々の始まり』

2024-12-02 11:45:28 | その他
このタイトルに心惹かれて読み始めた。実は魚住陽子を読むのは初めてである。(たぶん)あとがきまで読んでこれが彼女が遺した未刊作品を集めたものだと知る。デビュー作から87年から89年までの初期の作品。   この手の純文学を読むのは久しぶりかもしれない。このなんとも言えない余白がいい。彼女の心の空隙が小説になる。そこにはお話ではなく、心象風景がある。文字で描かれるあるけど、それは映像として . . . 本文を読む
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長月天音『たい焼き・雑貨 銀座ちぐさ百貨店』

2024-11-29 17:37:00 | その他
『キッチン常夜灯』を読んでいるから、この作品も安心して読める。ただあまりテンポはよくないから、最初は少し退屈。おばあちゃんと孫のふたりが銀座にある老舗雑貨店を守るため奮闘するというよくあるパターン。なぜかそこではたい焼きも売っていて、しかもそれが大人気。バイトの青年は謎めいている。  主人公は雑貨バイヤーをしていたが、仕事を退職した40歳。祖母90歳の経営する雑貨店を引き継ぐことに。食 . . . 本文を読む
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岩井圭也『夜更けより静かな場所』

2024-11-28 23:16:00 | その他
深夜12時からの読書会。古書店に集う6人の男女。課題図書について語り合い2時過ぎに帰宅する。そんな不思議な読書会に参加する6人のそれぞれのお話。6話からなる連作長編。軽い気持ちで読み始めたが、これは決して軽い小説ではない。5人の人生が、その断片が語られる。彼らが今どこにいて、どこに向かうのか。これまでどんなふうにして生きたか。大袈裟ではなく、そんなものさえこの読書会を中心にした物語の中から確かに伝 . . . 本文を読む
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ほしのさなえ『銀河ホテルの居候 また虹がかかる日に』

2024-11-26 08:38:00 | その他
なんだか素敵なこのタイトルに惹かれて読むことに。というか、ほしのさなえだからそれだけでも読むけど。3話からなる中編連作である。ワン・エピソードが100ページくらいのボリュームというのがいい。短編ではなくほぼ長編の趣きである。軽井沢の英国風の古いけど趣きのあるおしゃれなホテルが舞台になる。ここはもともとは戦前に建てられた外国人の別荘でそこを改築した。こじんまりとした、だけど落ち着いた瀟酒なホテルだ。 . . . 本文を読む
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水庭れん『今宵も猫は更新中』

2024-11-22 09:38:00 | その他
なんだか甘そうな小説だから、どうしようかなと逡巡したが、漱石の『猫』(もちろん『吾輩は猫である』)の現代版かもね、と思い読むことにした。 1話が80ページくらいのボリュームで4話からなる連作だからスケールは大きくはない。300ページくらい。まぁそれなりの分量だろう。『猫』には及ばないし、もちろんこれは漱石を目指したわけではない。軽い読み物である。4匹の姉妹猫と彼女たちの飼い主の話。4匹がそれぞれ . . . 本文を読む
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