ハルメリという言葉がこの2時間10分の芝居の中で何度交わされたことだろうか。100回や200回では足りない。もう無限大にハルメリが増殖していく。この無意味で、だからこそ、それにすがりつきたいという願望。現代人の孤独をこの壮大な茶番劇は根底に持つ。黒川陽子さんの台本のすごさは過剰であることに抑制をかけないところにある。限りなく暴走するハルメリを実に醒めた目でみつめている。こんなこと茶番であることは . . . 本文を読む
この映画がつまらなかったことに衝撃を受けた。クリストファー・ノーランの『メメント』を見たときと同じくらいにショックだった。というか、この作品もノーラン監督作品である。
期待が大きすぎた、ということもあったかもしれない。アイディアの凄さに映画がついていけない。2本ともそのストーリーの斬新さ、映像のすばらしさに圧倒され、作品自体がそこを越えられない。企画倒れになっているというという意味でこれらは . . . 本文を読む
この淡々としたタッチは好きだけどストーリーにまるで仕掛けが無くてガッカリする。7つのシーンからなる70分ほどの芝居だ。リビングと姉のバイト先である喫茶店のシーンが交互に描かれる。ワンシーンは10分。几帳面に繰り返される。ドラマにメリハリをつけないのは確信犯的行為で、その心意気は確かに伝わる。だが、あまりにスタイリッシュになりすぎて、そこだけが突出して、肝心のハートが伝わらない。
姉と弟の2人 . . . 本文を読む
これはもうひとつの『トイストーリー』だ。顧みられなくなったおもちゃが、それでも彼らとの絆を断ちがたく、彼らと関わりを持とうとする。おもちゃの孤独のほうに話をシフトさせているのがいい。
15年程前に上演された台本を、今もう一度取り上げ、新生信愛演劇部は中学1年生2名、3年1名、高校生は1名というキャストで、HPFに挑む。
これはたぶん今回の23作品の中で一番小さな作品である。そして、その小ささ . . . 本文を読む
とてもおもしろい発想の芝居(というか、パフォーマンス)だと思う。テンポよくいくつものエピソードをコラージュさせる。10から20くらいのエピソードをバラバラにして、組み合わせる。繰り返しを多用してリズムを作る。マイクと肉声を併用し変化をつける。ひとつひとつのエピソードはウォーリー木下さんが日々の生活の中でサンプリングしてきたどうでもいいようなお話(あるいはお話以下のもの)で、そこには明確なストーリ . . . 本文を読む
「私は中の下の女だから」と開き直るヒロインに共感ができない。その違和感がこの映画を引っ張っていく。
まだ23歳の女が、自分のことをこんなにも安く見ていいのか、と思う。(しかも演じるのはあの満島ひかりである!)18歳でつまらない男でしかないテニス部の先輩と駆け落ちして東京にやってきた。男には1カ月で棄てられ、それから5年。ずっと最悪な毎日を生きてきた彼女は卑屈になるのではなく、今ある現実を等身大 . . . 本文を読む
自主映画として製作され、PFFでグランプリを受賞、さらにはプサン国際映画祭でもグランプリを受け、日本でも劇場公開され、絶賛された作品。こういう前評判を受けて見たにもかかわらず、この映画は事前の予想を遥に上回る衝撃を僕に与える。昨年公開されたすべての映画の中でも、ベストの1本だと断言してもよい。充分な制作費もなく、自主制作された新人監督の映画が、これだけのものになるなんて、驚きだ。この世界では時に . . . 本文を読む