普通に出版される小説がこんなレベルでいいのだろうか。読んでいて唖然とさせられた。表現の稚拙さだけでも、大概だが、ここまで安直な展開をさせていいのだろうか。読みながら偶然があまりに多くて、冷めてしまった。現実はこんなにも都合よく展開するわけがないだろ、と思う。
普通の読者はこのリアリティーのなさにがっかりせずに、これは小説だから、なんて思えるのだろうか。僕には無理。後半の辻褄合わせだけの展開に . . . 本文を読む
一昨年の夏、この作品の初演を見たときの衝撃は忘れることは出来ない。なんと六〇年代の労働争議なんかを今頃芝居として上演することに何の意味があるというのだろうか、と不思議に思いながら見ていた。だが、気がつけば、その作品世界の中に取り込まれていた。そして、ラスト、95年1月17日の朝、その一言を聞いた瞬間、全く無防備であったから、それだけで落涙してしまった。思いもしないラストだった。冷静に考えたなら6 . . . 本文を読む
新撰組は今けっこう大変みたいだ。座付き作家を失い、方向性が定まらないまま作り続ける様々なタイプの作品は、バラエティーに富んでいて、彼らはそれを楽しみながら作っているようにも見えるが(そこは心強いところだ、とも言えるけど)この状態がいつまで続くのか、と思うと、ファンである僕たち観客の方が不安になる。もちろん彼らも明確にならない方向性を持て余している。
今回の作品は、今までで一番苦しい出来になっ . . . 本文を読む
中国人留学生の女の子が、初めてアルバイトをする。彼女は22歳。日本人の男性と結婚した姉を頼って日本に来て、今では大学生。でも厳格な姉(15歳も年が離れているから半分母のような存在)の監督下にあり、少し息苦しい。
バイト先は純日本風の高級料理店である「すきやき屋」。昔姉がバイトしていた由緒正しい職場。もちろん姉の紹介で働く。着物を着て、お客を迎える。慣れないことばかりで戸惑う。そんな日々の中で . . . 本文を読む
スピルバーグとピーター・ジャクソンがタッグを組むと一体どんな映画になるのか、ドキドキしながら見たのだが、なんだか締りのない超大作で、少しがっかりした。いつものことだが、スピルバーグとコンビを組むとその監督の持つ個性が生きない。
何度も見せられた予告編は、どんな話なのかはよくわかるのだが、まるで映画自体の展開が読めない感じで、そういう意味でも興味深いものだった。だが、出来あがった映画は、思い付 . . . 本文を読む
吉田修一の初短編集らしい。知らなかった。彼が今まで短編集を出版してないだなんて。『初恋温泉』とか短編集じゃなかったっけ? まぁ、短編連作だから、長編のようなものか。
今回はこの10年間にいろんなところに書き綴ったものをまとめたものらしい。タイトル通り『街』をテーマにした小説が並ぶ。最初の3篇が凄くいい。出逢わないまま別れていく2人を描く。まぁ、それは言い過ぎだ。『日々の春』の2人はこれからい . . . 本文を読む
いきなりクライマックスである。そして、そのテンションの高さは最後まで途切れることはない。80分間息切れしない。激しい芝居だが、表面的にはとても静かな芝居である。声を荒げたり舞台上をドタバタしたりすることは断じてない。
主人公の秋津ねをさんは、かっと目を見開いたまま、正面を見据えて、相手から目をそらすことはない。しかも全編正座した姿勢を崩さない。きちんと背筋を伸ばして凛としたまなざしを相手に向 . . . 本文を読む
31組×15分の演劇祭。しかも入場無料のお役所企画。地域文化芸術振興プラン推進事業とチラシには書かれてある。まぁ、そんなことはどうでもいい。要は面白いか否か、だ。僕が見れたのはDプロの6団体6本のみだが、進行のテンポがよくて、気持よく見れた。各団体の間が長かったら、待ち時間で参ってしまうのだが、実にスムーズにさくさく展開し、あっという間に6本が終わった。
1作品15分の後、最大5分くらいしか . . . 本文を読む
ほんの少し読んだだけでこの小説が好きになった。『アシンメトリー』で初めて彼女の本と出会い、もしかしたら僕は好きかも、と思ったが、このデビュー作を手にして、彼女の作る世界の虜になった。
なんでもない話だ。姉と弟がいて、2人は今は別々に暮らしている。両親が離婚して、園(姉)は母親に引き取られ、行(弟)は父親と暮らす。やがて、父親は再婚し、兄と新しい母ができた。
そんなふうにして時間は過ぎてい . . . 本文を読む
とてもさらっとした作品だ。こういうタイプのお話では、あまり類を見ない。それは演出を担当した中西邦子さんの姿勢だろう。メリハリをつけてはしゃいだタッチの演出をされたならとても見てられない芝居になるところを、彼女は淡々としたタッチで綴ることでベタな芝居となるところからこの作品を救っている。
お笑いを目指す2人組の女性芸人の、片割れを主人公にしたひとり芝居。隕石少年トースターの山内直哉さんの手によ . . . 本文を読む
2つの集団の2本の作品が連続上演されることでひとつの小さな世界を作り上げる。サガンの短編小説を朗読劇として構築した三好淑子さんによる『果実』はとても素敵な大人の短編だ。そして、その作品を包み込むようにして形作られる大沢秋生さんの『さよならココア』は切なくなるような中編だ。これはまるでエッセイのような芝居である。軽やかで愛おしい。これはやがてこの世界から消えていくことになる(かもしれない)小劇場演 . . . 本文を読む
読み逃したままで、ずっと時間だけがたっていた。出版されてもう8年になるのだ。ずっと読みたいなぁ、と思いつつも、なぜか今まで機会がなかった。ほんとうにもったいないことをしてた。
『ぶらんこ乗り』のいしいしんじの、この大傑作小説を今頃初めて読んだ。こんなにもすばらしい小説を今まで読まなかったなんて、なんてバカな子だろう。(もちろん僕がです)この祝祭的空間を心から愛おしく思う。主人公の少年(彼は「 . . . 本文を読む
こういうどうってことないアニメーションを暇だから見たら、なんと、これがなかなか楽しくて、満足した。
というか、「どうってことない」という言い方はこの映画に対して失礼だろう。これはかなり良く出来た映画だ。最初から最後まで夢中で見てしまった、というのが事実だ。機内上映で見たのだが、飛行機の中での暇つぶしのはずが、モニターから目が離せなかった。日本では昨年9月に地味に公開されていたが、(しかも3D . . . 本文を読む
ブルース・ウイリスに髪がフサフサ! この衝撃の事実だけでこの映画は凄いと思えればいいのだが、そんなギャグのような映画ではないし。これはれっきとしたSF大作映画である。あの『ターミネーター3』のジョナサン・モストウ監督作品だ。だから、期待しないわけにはいかない。なのに見終えた時には、なんだか不満が残る。つまらないことは断じてない。だがあまりにしょぼい。
内容としては『ブレードランナー』の流れを . . . 本文を読む
1 1Q84 (村上春樹)
2 猫を抱いて象と泳ぐ(小川洋子)
3 ぼくたちは大人になる(佐川光晴)
4 神去なぁなぁ日常(三浦しをん)
5 かけら(青山七恵)
6 宵山万華鏡(森見登美彦)
7 横道世之介(吉田修一)
8 遠くの声に耳を澄ませて(宮下奈都)
9 ぬかるみに注意(生田沙代)
10 架空の球を追う(森絵都)
11から20
ハブテトルハブテトラン(中島京 . . . 本文を読む