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映画・演劇のレビュー

万城目学『偉大なる、しゅららぼん』

2011-10-17 19:09:30 | その他
 奈良、京都、大阪ときて、今回は滋賀である。関西ご当地巡りの様相を呈してきた。次は兵庫か、はたまた和歌山か。まぁ、万城目学はただ冗談のように舞台を決めてるようでいて、実はちゃんと取材して綿密な計画のもと、書いているのだろうから、舞台となる場所はどこでもいい。どこを舞台にしようともそこでしか作れないオリジナルな設定を展開してくれる。そんなことより、面白いかどうかだ。いつも突飛な話をまるで本当のように . . . 本文を読む
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SSTプロデュース『招待されなかった客』

2011-10-14 23:16:13 | 演劇
まずこの芝居のことよりも先に、この素敵な劇場の話をしよう。劇団大阪新撰組を率いて数々の作品を作ってきた当麻英始さんが、念願である自分の劇場を持った。細部まで彼の拘りが感じられるゴージャスで最高の小劇場の誕生である。 芝居は箱が大事なのではなく中身で勝負する。そんなことは当然の話だ。だが、本当は入れ物も含めて芝居である。お金をかけたからいい、というものでもない。だが、ちゃんとお金もつぎ込まなけ . . . 本文を読む
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中島さなえ『ルシッド・ドリーム』

2011-10-14 23:12:30 | その他
 自分の夢(夜に見る夢のことね)をコントロールして、自分の好きなように夢を展開させることが出来る能力を開発するための講座。彼らは夢の中で永遠に暮らす方法を身につけるためにここに通う。オフィス街の小さなビルの一室。そこに集まってきた男女のそれぞれのお話が綴られていく。  よくある4話構成。 発想は月並み。お話の展開も想像の範囲内。もう少し驚かせるような大胆なドラマが欲しい。それぞれのエピソードもど . . . 本文を読む
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『猿の惑星 創世記』

2011-10-13 23:56:55 | 映画
今、こういう映画が登場するのか! 古典映画を原作としているのに、その新鮮さに驚く。なんだか嬉しくなる。こういうのがありだったのだ。ありそうで今までなかったパターンである。これは、ただ単なる有名映画のリメイクではない。映画史に残る偉大な作品へのオマージュであり、あの映画への最大のリスペクトでもある。 あのオリジナルへの敬意なくして、この映画は生まれない。しかも、あの映画の魅力を損なわない。68 . . . 本文を読む
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『リトル・ランボーズ』

2011-10-13 23:32:24 | 映画
 とてもかわいい話で、こういう少年たちのお話って今までもたくさんあったはずだ。そこには忘れられないたくさんの愛おしい映画がある。この作品もそんな傑作のひとつになるはずだった。だが、この映画は少しそれらの映画とは違うものとなる。それらの映画の持つルックスとはいささか趣を異にするのだ。映画はほのぼのとしたものではない。醒めている。ここには主人公の2人を少し突き離したような距離感がある。この映画は、客観 . . . 本文を読む
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『僕たちは世界を変えることはできない』

2011-10-12 20:56:09 | 映画
 とてもいい映画だった。こういうストレートな映画が作られるって素晴らしい。深作健太監督はアクションを中心にした娯楽映画を量産してきたが、初めてこういうシリアスな題材を手掛け、一歩も引くことなく、自分らしさを損なわず、彼にしか出来ない映画に仕立てた。前半のカンボジア行きのシーンで完全ドキュメントを貫き、何も知らない僕たち(もちろんそれは、主人公である彼ら4人でもある!)にいろんなことを見せてくれたの . . . 本文を読む
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『ツレがうつになりまして』

2011-10-12 20:55:07 | 映画
まるで自分のことが描かれているようで、こんなにも感情移入出来た映画はめずらしい。別に僕が今うつであるというわけではないが、映画の中でも言っているように「うつは心の風邪のようなもの」で、いつ、誰が罹るかはわからない。その時、初めていろんなことが見えてくるのだろう。この映画はそんなすべてが丁寧に描かれてある。 これはまるで自分の話のようだ。普段の自分がもう少しエスカレートしたならこんなふうになる . . . 本文を読む
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尼崎ロマンポルノ『ラブホテルジプシー』

2011-10-11 22:15:56 | 演劇
 これは渾身の力作である。そのくせ、作、演出の橋本さんはとても楽しんでいる。この余裕はなんだろうか。「崖っぷちからお送りする」「尼崎版、ロマンポルノ」という当日パンフにあるキャッチフレーズは勇ましい。彼の今回の作品に対する自信の程が伺える。サカイヒロトさんによる猥雑で自由自在な美術と連動し、芝居は思いのまま、好き放題である。  大体今回のロケーションがすばらしい。周囲のロケーションをここまで活か . . . 本文を読む
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DRY BONES『心臓破り 手品師の恋』

2011-10-11 21:57:39 | 演劇
 ここに来て、また震災ものである。空の驛舎『under-ground』以降たった1ヶ月でこれで3本目。しかも、すべてウイングフィールドで上演されたものだし。この後も来週に三角フラスコ+A級MissingLinkによる真打ち登場である。もちろんこれもウイングだ。この劇場は、芝居が今、描くべきことと、真摯に向き合い、ささやかなアプローチかもしれないが、最大限の情熱をもってそれを為す。まぁ、今回はたまた . . . 本文を読む
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辻村深月『本日は大安なり』

2011-10-11 21:52:42 | その他
 その日、結婚式を同じホテルで迎える4組のカップル、彼らの結婚式、そこに登場する新郎新婦。もちろん彼らだけでなく、様々な人々、それを取り仕切るウエディング・プランナー。これは、彼らが無事に挙式を終えることが出来るのかを描くシチュエーション・コメディーだ。辻村深月がこういうエンタメ小説を書くなんて夢にも思わなかった。タッチも軽く、テンポもいい。だが、話にはちょっと無理がある。彼女は従来のリアリズムの . . . 本文を読む
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『ビルマVJ 消された革命』

2011-10-08 20:01:34 | 映画
 タイトルである『ビルマVJ』のVJってビデオ・ジャーナリストのことらしい。なんとシンプルなタイトル。これは軍事政権下ビルマ(ミャンマー)でレジスタンス活動をするグループを描くドキュメンタリーだ。警察の目を盗んで隠しカメラで町の様子を撮影する。デモや反政府的行動を撮影し、そのビデオを政府の目を盗んで国外に持ち出す。国外でこの国の悲惨な現状を伝えるため命を張って戦う人々の姿を描く。海外メディアにこの . . . 本文を読む
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道尾秀介『カササギたちの四季』

2011-10-08 20:00:41 | その他
 こういうレベルの小説は極力読まないようにしているのだが、ついつい読むべき小説が手許になかったため仕方なく読み始めた。少し読んでこれはダメだな、と思うが、読み始めてしまったし、他に今は何もないから我慢して2日(電車2往復)を過ごした。  4話からなる連作というよくあるパターン。よく似たタイプの小説である三浦しをん『まほろ駅前便利軒』とのあまりの落差はどうしようもない。それにしても、もう少しリアル . . . 本文を読む
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『僕が結婚を決めたワケ』

2011-10-08 19:58:32 | 映画
ロン・ハワードの新作である。宣伝のイメージやあら筋から、絶対にロマンチック・コメディーなのだろう、と思ったのだが、そうではない。コメディータッチの語り口ではあるが、映画自体は必ずしもそうではない。映画は2組のカップルを主人公のして彼らの顛末を描くのだが、なんだか後味はよくない。シリアスではないのだが、コメディーとしてはいささか重い。なんとも中途半端な映画なのだ。友人夫妻に勧められ結婚に踏ん切りを . . . 本文を読む
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『監督失格』

2011-10-05 20:39:44 | 映画
こんなにも私的なドキュメンタリーを劇場で公開していいのか、と思う。まぁ、今の時代なんでもありだ、と言えばそれまでなのだが、でも、やっていいことと、それはダメでしょ、ということの垣根は暗黙の了解事項としてあるはずで、これはそのボーダーラインを超えている。作り手ですら、大丈夫か、と心配したのではないか。しかも、ミニシアターでレイトショー公開とかいうのでなら、まだ、納得するのだが、全国東宝系一斉公開で . . . 本文を読む
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三崎亜記『海に沈んだ町』

2011-10-05 20:36:44 | その他
三崎亜記の小説と白石ちえこの写真とのコラボ。小説の中に散りばれられた近未来のイメージが具体的な現実の風景写真と連動することで、このとてもリアルな幻想の世界がさらに広がる。9つの短編はそれぞれ終末の風景を描いた近未来の物語だ。そこにはもうここにはない(今の現実の世界である)消えていく世界が描かれる。未来の風景のはずなのに、それが懐かしい。それは、僕たちがかつて見た幻の風景なのだ。このなんとも言い難 . . . 本文を読む
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