2年のインターバルは長すぎる。この手のプログラムピクチャーは旬のうちに連打して飽きられるとすぐに辞める、というのが鉄則だ。だから、ヒットしたらその年のうちに、あるいは翌年には公開しなくてはならない。なのに、こんなにも遅くなった。東映にもいろいろ事情があろうが、その地点でこの作品は失敗している。
実際に見た映画も、明らかに失敗作だ。ヒットもしないはずだ。たぶん。一番ダメなのは、話がつまらなすぎ . . . 本文を読む
いきなり始まって、いきなり終わる。この唐突さが、この作家の(ジュリア・ロクテフ)のこの作品に対するスタンスなのだろう。2人がどこを旅しているのかすら、わからないまま、彼らの旅に連れて行かれる。しかも、セリフがほとんどないから、彼らの置かれた状況もわからない。ここがグルシアであることも2時間の映画のラスト30分になってようやくわかる。しかも、このトレッキングが何日間の行程なのかもラストになってもは . . . 本文を読む
「たんじょうかい」というタイトルは「短(編)上(演)会」を縮めたものだと、アクタートークで筒井さんが言っていたけど、誰もそんなことに気付くわけがない。誰もが「誕生会」だと思い込んでいるはず。大体そんな誤解を招くことを見越してこのいたずらなタイトルをつけたはずだ。じゃぁ、その誤解から何を見せようと企んだのか、と考えてしまうけど、きっと何も考えてない。
そんなあっけらかんとしたところが、ドラカン . . . 本文を読む
林遊眠とナツメクニオの到達点『ウインドミルバレー 最後の3日間』の上演から、まだ5カ月ほどしか経っていないのに、こんなにも短いインターバルで3部作の完結編となる本作が上演される。しかも、『ウインドミルバレー 最後の3日間』の再演と2本立公演だ。前回あの傑作を見逃した人にとってはこれは僥報ではなかろうか。この2本を連続で見ることが出来るのである。だが、林遊民にとってはとんでもない試練となる。だが、 . . . 本文を読む
先月の『シンデレラ』に続いて浪花グランドロマンが贈るアトリエ公演。今回は細原愛美の作、主演の2人芝居。(相手役は藤田和広)等身大の女の子を細原さんが演じる。その無理のなさがいい。それを演出の浦部さんが、ちゃんとそのままで見せる。作者の見せたいものを、いらない小細工を弄さず、さらりと提示する。中途半端に手を入れるのではなく、作品に寄り添うのだ。それって簡単そうに見えて、けっこう大変なことだ。でも、 . . . 本文を読む
こんなへんてこな映画ってないだろ。デリヘル嬢(高梨臨)が老人(奥野匡)のもとに行く。親切で紳士的な元大学教授で、翌朝、試験を受けるため大学に行くという彼女を送り届ける。すると嫉妬深い彼女の恋人(加瀬亮)が待っていて、2人は口論になる。しかたなく彼は仲裁に入る。この3人が主人公で、彼らの数日間が描かれる。
アッバス・キアロスタミ監督による日本映画だ。イラン人監督が日本を舞台にして、日本人キャス . . . 本文を読む
『光圀伝』の次に読んだのが、この小説だ。これもまた分厚い。600ページに及ぶ大作なのだ。持ち運びが重いから、辛いのだが。(2冊に分けてくれたらいいのに、最近の本は分厚くてもあまり分冊にしない)高校1年生の男の子が主人公の青春小説なのに、このボリューム。サーフィンが好きで、でも、それほどには夢中になっていない。なんだか自分が腐っていく気がする。何かをしなくては自分がダメになるという恐怖。たまたまブ . . . 本文を読む
先行有料試写会というので見てきた。一刻も早く見たかった映画だ。『無防備』の市井昌秀監督の商業映画デビュー作である。何の準備もなく見た『無防備』にはノックアウトされた。あんな凄い映画を自主製作で作れる才能がいる。しかも、中途半端な習作ではなく、完璧な劇場用作品としても成立するものなのだ。ぴあでグランプリを受賞しただけではなく、プサン国際映画祭でもグランプリを受賞して、たった1作品で世界が認める才能 . . . 本文を読む
前半はコメディータッチで、後半、シリアスで、つらい話になる。ある意味で定番の展開のはずなのに、この作品の意外性に戸惑うし、たじろぐ。不意打ちを食らった気分なのだ。いくらなんでも殺さなくてもいいじゃないか、と思う。暖かくて、心に沁みる映画なのだから、あんなにも可愛い彼女を殺す必要はない。幸せにしてあげたいと誰もが思う。だが、この映画が抱える闇は深い。実際の事件を下敷きにしたから、その決着点は変更し . . . 本文を読む
最初は『地獄の黙示録』の韓国版か、なんて思った。だが、これはそんな単純な映画ではない。コッポラがベトナムを描いたあの映画は多分に観念的な代物で、それは仕方がないことだ。だが、この映画は入口こそ分かりやすく『地獄の黙示録』しているが、その先はどんどんリアルなものになる。最前線で生きる兵士たちが、生きのびるために、何をどうするのか。それが様々な次元から描かれる。俗っぽいエピソードもある。だが、そんな . . . 本文を読む
スピルバーグがこの映画に賭ける意気込みは十分に伝わってくるのだが、リンカーンという男の生きざまのほうが今一歩伝わらない。この状況の中で奴隷制度廃止法案を通すことがどれだけ大切なことなのかが分かりにくい。南北戦争終結の前に法案を通さなくてはいろんなことがうやむやになる。何が何でも譲れない地点をそこに設定し、映画もまた、その一点へと収斂していくように作られてある。だが、それを成し遂げるための権謀術数 . . . 本文を読む
これはたった33分の短編映画なのだが、この豊饒さ。とうとう横田さんはこういう境地に達したのだ。そう思うと、なんだか嬉しくなる。ここにはほとんどお話らしいお話はない。それは尺が短いから描けなかったということではなく、この映画は、最初からそういうものを棄てているからだ。欲しかったのは物語ではなく、主人公の寂寥だ。
妻を失った老人が、たったひとりになって、過ごす時間である。それを極端な長回しも含め . . . 本文を読む
ついに『光圀伝』を読み終えた。750ページの大作だが、なかなか先に進まない難物だった。読むのに結構てこずった。それが沖方丁の仕掛けた罠だ。最後の最期まで先が読めない小説である。まさか大願とは大政奉還だったなんて、夢にも思わなかった。しかもそれを光圀が望んだのではなく、彼に私淑した紋太夫だ。彼が義のためそんな狂気に至る。光圀のずっと先を行く。だが、時代はまだそこまで追いつかない。歴史を知る僕たちは . . . 本文を読む
こんな変態的な映画を撮るのは、ミヒャエル・ハネケ作品でキャスティングディレクターを務めたマルクス・シュライツァーという人だ。こんな恐ろしい映画を、こんなにもさらっと作る。まぁ、これを猟奇的に作ると、ただのキワモノ映画になる。
主人公の名前がミヒャエルなのでこのタイトルなのだが、偶々なのだろうが、わざわざこんなところにハネケの名前を取らなくてもいいじゃないか、と思う。(主人公の少年を演じた子役 . . . 本文を読む