習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

吉本ばなな『人生の旅をゆく 4』

2022-05-19 09:33:58 | その他
これは小説ではなくエッセイ集だ。最近の読書パターンは8割小説。それ以外で5冊に一冊くらいエッセイ。10冊に1冊くらい評論。さらに20冊に1冊くらい海外文学という概算。エッセイは一気読みしたら、もったいないし、読んだ瞬間に忘れるから、時間にすると小説4冊読む間に、1冊くらいの割合で読み終えるようにする。本当は小説も短編集なら優雅に同じ読み方をしたいのだが、仕方なく一気読みすることが多い。 でも、今 . . . 本文を読む
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小路幸也『花咲小路二丁目の寫眞館』

2022-05-18 11:42:50 | その他
膨大な量の小説を量産している小路幸也の新刊だ。この後もいつもの『東京バンドワゴン』の新作が控えている。この『花咲小路』シリーズもこの作品で7作目になるようだ。今回は寫眞館が舞台となる。そこに採用されるためにやってきた新米カメラマンの女の子と、4代目を継いだ若社長のお話。小説は二人が向き合う面接のシーンから始まる。最初はいつものような商店街を舞台にしたほのぼのとした「人情もの」だと思い読み始めたのだ . . . 本文を読む
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『マイ・ニューヨーク・ダイアリー』

2022-05-18 11:16:03 | 映画
なんだか不思議な映画だ。もっとわかりやすくて単純な映画だと思っていたのに、こんなお話なのに、なんだか単純ではなく複雑なのだ。主人公の女の子は憧れのニューヨークにやってきて、ここで働くことになる。人生の第1歩を踏み出す。出版社のエージェント見習いに採用される。彼女の上司はなんとあのサリンジャーのエージェントだ。彼女の夢は小説家になること。そのために出版関係の仕事を選んだ。夢に向けて邁進する。恋人も同 . . . 本文を読む
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原田ひ香『古本食堂』

2022-05-18 10:43:00 | その他
これもまた短編連作スタイルの読みやすい長編小説。20代の国文科の院生、美希喜が主人公。彼女が大叔父さんの遺した古本屋でバイトする話。大叔父さんの妹である珊瑚さんがこの古書店を取りあえず引き継いだのだが、老齢の彼女はこの店をこの先どうしたらいいのか、迷っている。そんな彼女とふたりでこの店を再開し、やがてここを引き継ぐことになるまでのお話。 「古本」と「食べ物」というなんだか意外な取り合わせで、お話 . . . 本文を読む
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近藤史恵『シャルロットのアルバイト』

2022-05-18 10:22:20 | その他
6話からなる短編連作。30代の子供のいない夫婦と、その家にいる大型犬シャルロットとの日々のスケッチだ。小さな事件を介して彼らの生活が綴られていくのだが、まるで犬が彼らの子供のようだ。(成犬で大型犬だけど、ふたりは小さな子供のように彼女を愛しんでいる) 僕は生き物が苦手だから、犬を飼ったことはない。だから我が家には今はペットはいない。(実は以前娘が連れてきたイグアナの女の子がいたのだけど、彼女は5 . . . 本文を読む
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『パドルトン』

2022-05-15 10:36:01 | 映画
『ブルージェイ』を見て、アレックス・レーマンに興味を抱く。過去作を検索すると2本。しかも、いずれもネットフリックスで配信されている。ほんとうに便利な時代になったものだ。まず第1作の『アルペルガーザらス』を見た。なんとドキュメンタリー映画だ。アスペルガーの4人の男の子たちが主人公。彼らが高校卒業記念ライブをする。その記録。彼らはコント集団を結成している。その解散ライブを企画した。この先それぞれの道を . . . 本文を読む
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山本幸久『花屋さんが言うことには』

2022-05-15 10:09:28 | その他
ポプラ社の小説は一番信用できる。作者名より、作品内容より、まず出版社名で借りてしまう事すらある。(まぁ、そこまで言うと、言いすぎだが)今回も山本幸久の新刊ではあるけど、出版社がポプラ社だったので内容のチェックもなく借りてきて読み始めた。やはり安心の出来だ。24歳、ブラック企業勤務。身も心も疲れ果てていた紀久子が夜中のファミレスで、ひとりの女性と出会うところからお話は始まる。読みやすいし、心地よい。 . . . 本文を読む
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『流浪の月』

2022-05-14 10:52:49 | 映画
李相日監督が『怒り』から5年振りで放つ大作映画だ。渾身の力作である。2時間30分。あまりにヘビーで見終えたときはクタクタだ。だけど、孤独な2人の魂の旅に寄り添い、一時の平安にたどりつくラストは心地よい。世界中から見放されてもいい。たったひとり、自分のことをちゃんとわかってくれる人と一緒に居られるのなら。だが、彼らがようやく安住の地にたどりつくこのラストシーンは寂しい。このラストを単純にハッピーエン . . . 本文を読む
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『シン・ウルトラマン』

2022-05-14 09:43:25 | 映画
公開初日の午後、さっそく見に行く。見事なアナログ映画だ。オリジナルのリメイクである。原作へのオマージュであり、その進化系。ここには誰もが見たこともないウルトラマンが、懐かしい姿で立っている。原点帰りではない。原点に忠実に「今」のウルトラマンがそこにはいる。庵野秀明と樋口真嗣がタッグを組んで、4年の歳月を費やし、丁寧に作り上げた。最新技術と、アナログ技術の見事な融合。そして何より素晴らしいのは、まず . . . 本文を読む
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バリー・ユアグロー『東京ゴースト・シティ』(柴田元幸・訳)

2022-05-14 09:11:24 | その他
この不思議東京旅行記、かつ妄想小説に世界に耽溺する。2019年、コロナなんて想像もしない平和な東京にやってきたバリーとコジマの旅の記録だ。でも、この旅は「現実」だったはずなのにいつのまにか、この町で暮らす幽霊たちに誘われて、不思議な「妄想」世界に連れ去られる。東京という街自身がもともと現実なのに幻想のような場所で、今あるこの風景もほんの少し前には違う光景で、過去と現在が混在し、未来すらそこに顔を覗 . . . 本文を読む
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『ホリック xxxHOLiC』

2022-05-13 09:51:34 | 映画
見る前からこれはやばいかも、とは思っていたけど、ここまで酷いとは想定外だ。蜷川実花監督作品だから、あまり期待はしないけど、いつも驚きのビジュアル提示があり、視覚的には楽しめるからついつい見てしまう。それに『Diner ダイナー」や『ヘルタースケルター』は悪くはなかったし。今回の荒唐無稽なお話とは相性がいいかも、とも思った。キネマ旬報での批評家の短評で凄まじい酷評をされていたので、反対に「もしかした . . . 本文を読む
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名取佐和子『図書室のはこぶね』

2022-05-12 15:51:26 | その他
体育祭は嫌いだ。暑いし、長いし。運動は好きじゃないし。だから、そこでの自分の思い出は競技ではなく、グランドのかたすみで、友人とダラダラどうでもいいことをおしゃべりしていたこと。そこに尽きる。あまり競技には出ないから、暇で、だからふだんと違って長い時間、途切れることなく、しゃべることができた。しかも、それがそれまであまり親しくなかった友だちとの会話であった場合はとても新鮮で、そこから新しい関係が始ま . . . 本文を読む
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『マイスモールランド』

2022-05-11 11:43:34 | 映画
この映画を見たのは、これがなんだか『キューポラのある街』を思わせる映画だ、と思ったからだ。あの映画は僕の生涯ベストワン作品である。吉永小百合演じる中学3年生の少女ジュンが、貧しい暮らしの中でも、明るくけなげに生きる姿を描く青春映画の大傑作だ。北朝鮮に帰る朝鮮人少年との別れを描くラストシーンが素晴らしい。どんなに苦しくても、弱音を吐かずにまっすぐに生きる。ひとりの少女と、彼女の周辺の人たちの姿が胸に . . . 本文を読む
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『インフル病みのペトロフ家』

2022-05-11 10:05:09 | 映画
2時間半の壮大な妄想劇だ。延々と悪夢が連鎖していく。そこには理由はない。(まぁ、悪夢に理由を求めても詮無い話なのだが。)これはインフル病みの高熱のもたらす混濁した意識のなせる業か。彼の混迷は極まる。時間も空間も自在に飛び越えていく。今がどこで誰がどうしたとか、何がどうしたとか、あんたは誰なのかとか、もう、なにがなんだか。でも、その圧倒的なビジュアルに引き込まれ、スクリーンからは一瞬すら目が離せない . . . 本文を読む
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東山彰良『怪物』

2022-05-11 09:11:18 | その他
手にしてから1か月近く放置したままだったがようやく重い腰を上げて読み始めた。かなり内容が重そうだから先送りしていた。ほかにも読みたい本は山のようにあるから、ついついそうなる。きっかけがなくては読めない。先に読んでいた妻がもうこれはいいや、というのでそれを合図にして読み始めた。彼女が読んでいた120ページのところまで一気に読んで、「たしかに、これはなぁ」とため息つく。450ページに迫る長編だ。僕も読 . . . 本文を読む
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