ストコフスキ指揮LSO(decca)1970/6・CD
遅くてもっさりしてるのが何よりの違和感だ。楽器によって俊敏に吹かせたり、瞬間的に全体が盛り上がることはあっても、響きを壮麗に聴かせようという意思が強すぎ、重くて遅いだけの大きな演奏という印象が大部分を占める。物語的にこの曲を聴かせるというのは、そもそも録音史上最も古くからドビュッシーに取り組んできたストコフスキーはずっとそうやってきたので、今更ブツブツ何をか言わんやだが、それでも二楽章終盤など一部の異様にイマジネイティブな表現を除けば、三楽章の異常にねっとりした中間部や音響的迫力にしても、松やシェヘラザード同様に音量ほどに響いてこない。まして編成をいじり記号をいじり録音をいじりもしているであろうことを考えると、これはストコフスキ作曲「海のようなもの」として、後期ロマン派作品のように聴くべきか。音響への関心が異常な反面、和声やメロディの起伏への関心がおざなりなことも海にはマイナスに働いている。個人技の牧神など面白いが、海はもともと面白いので、過度にやっては醒めるし、過度に突き放しては現代曲的な頭の音楽に押し込めることになる。三楽章は人によっては雄大な世界をハリウッド的に楽しめるかもしれない。元々はコンサートホールの理想的な響きをお茶の間に、から始まったのがストコと技師の録音技術の探求だったはずで、たしかにストコフスキサウンドの再現にはこのバランスの録音しかなかったかと思うが、それにしてはこの曲はいじり過ぎだ。ラストの物凄く引き伸ばされたクレッシェンドはストコフスキーの独壇場。スヴェトラーノフくらいしか上らないけど。
Leopold Stokowski - Complete Decca Recordings | |
音の魔術師ストコフスキー没後40周年記念ボックス! | |
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