湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆アイヴズ:ヴァイオリン・ソナタ第5番「ニューイングランドの祝日」

2018年03月01日 | アイヴズ
○クリサ(Vn)チェキーナ(P)(russiandisc)CD

新発見の曲ではなく本人による「祝日交響曲」(本来的には組曲)からの(無茶な)抜粋編曲である。従って正当な意味で「第5番」ではない。事実上ヴァイオリン・ソナタという形式は4番で閉じた世界である。しかしこの極めて小編成へあの大曲を編曲し、かなり聴けるものに仕上げているというのはある意味アイヴズという才能を再確認するものとして価値が高い。内容的に1、2番で未完成なまま3、4番という(個性という意味では)退嬰をへて終わったアイヴズのヴァイオリンソナタである。オリジナリティがしっかりした「技法」に支えられ完成された作品として認められるものというのは他のジャンル・・・ピアノ独奏曲もしくは大管弦楽・・・においてはいくつかあるのであり、祝日交響曲もその一つであることからして、これを独奏曲に編曲することにより「完成期のアイヴズの実の入ったしっかりした作品」として非常に安定感のある、1,2番を凌駕する完成度を持っていると言ってもいい面白さがある。アイヴズ特有の心象的な表現は多彩な楽器の音色の混交によって実現できうるものであり、擦弦楽器一本にピアノという編成では表現に限界があるが、モザイク状に「拝借」された数々の旋律がヴァイオリン一本によって露骨に継ぎ接ぎされていくさまは他のヴァイオリンソナタに通じる好悪わかつ部分であるが、一部特殊奏法により原曲と違った色を出しているところもあり、本人も(アマチュアとして)得意であったピアノが入ることによってだいぶん多彩な部分を残したままシンプルな面白みを逆に提示することに成功している。削ぎ落とされた中身だけが聞こえてくるだけに、フォースオブジュライを除く三楽章だけでは短くてあっというまに終わってしまうあっけなさもあるが、反面「編曲モノの面白さ」を比較対照して聞けるものとしても価値はあるだろう。演奏はかなり巧い。作品自体1番ほども技巧を要求しないものではあるが、よく作品を吟味している。アイヴズマニアなら聴く価値はあり。但し繰り返しになるが、1~4番の「番外編」にすぎないものであり、全く視点が異なることは留意しておくべし。YouTubeにはいくつか実演動画がアップされている。ロシアンディスクは二種類あり、ロシア音源とアメリカ新録音で、おそらく別の活動主体による。

※2007-02-03 14:17:03の記事です

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