湯・つれづれ雑記録(旧20世紀ウラ・クラシック!)

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☆アイヴズ:交響曲第4番

2018年02月16日 | アイヴズ
○ストコフスキ指揮アメリカ交響楽団?(DA:CD-R)1967/12/18live

録音は悪い。ホワイトノイズが多くぼけたモノラルでバランスも崩れている(この曲は生で聴いていてもバランスよく聴こえることは無いので理想的な音響は「スタジオ録音でのみ」可能なのだが)。ねっとりしたストコ独自の表現が初演盤よりはっきりと聴き取れる。1楽章は重苦しく引きずるような印象を受ける。2楽章は物凄い迫力だけが聴き取れる。バス音域が強すぎる感もある。かなりゴテゴテ表現を加えている。アイヴズぽくはないが変に単純化するよりも多彩に聴け楽しめる。通常ピアノ(この曲には他に四分音ずらした調律のピアノとアップライトピアノが導入される)が案外よく聴こえ、それがソロピアノ曲に近似した書法で描かれていることがわかる。禁欲的な硬質の音楽だ。3楽章はクライマックス前の悲劇的パセージでパイプオルガンとベースのハウリングが激しすぎて聴こえない(そういう箇所はいくつか聞かれる)。それが生々しくもあるのだが耳には辛い。異様な雰囲気があり、かなり稀有壮大に誇張した表現がとられている。

4楽章は打楽器オケ(パーカッション部)から始まるが、タムタムがいきなりえらく大きく出てくる。それまでにも増してねっとり壮大に異常世界が演出される。スクリアビンだこりゃ。旋律的な流れ(旋律そのものではない)を失わない方法はわかりやすく、かなり成功しているさまが悪い音の中に伺える。それにしてもこんな想像力の限界に挑む異常音楽にラグのイディオムとか素朴に組み込まれ抽象化されているさまはほんとにすさまじい。アイヴズのスコアは単純だが音にするとこんなにもなる、いや「なりうる」のだ、シェフによっては。

正規盤初演ライヴよりもクライマックスへの盛り上がりが自然で迫力がある。細部の聴こえない録音が返す返すも残念、とくに高弦が聴こえない。最後の神秘の賛美歌が清澄で不可思議な空気をかもしながらねっとり恍惚として表現されるのはストコらしい。ベースが再びハウリングを起こしてその透明な美観を損ねているのは惜しい。最後ふたたびの打楽器オケの残響が綺麗だが、その上で余韻をかなでるコンマスの下降音形の分散和音(アイヴズがよくやる方法)がまったく消えているのは惜しい。

終始ストコがいじっている感じだが、それすらも「アイヴズらしい」と思わせる。初演盤がけして成功しているとは思えない部分もあるし、寧ろモノラルであることによって下手なステレオよりまとまって聴こえるのはメリットかもしれない。○。

※2008-01-09 20:33:55の記事です

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