イラストにしろ、小説にしろ、自分が創った作品って、子どものようなものなんですね。
自分の分身のようで、どれも可愛く、愛おしい。
それでも、もし「自分が書いた小説の中でどの作品が最も愛着があるか?」と尋ねられたら、
僕は10秒くらい考えて抜いて、この作品を挙げると思います。
「エミリー」は、そんな小説です。
舞台は、1989年の夏。
地方都市の真夜中のコンビニエンスストア。
主人公は20歳の男。
まぎれもなく、僕自身がモデルです。
一応、大学生でしたけど、当時はバブルの絶頂期で、一人暮らしで、学校にも行かず、毎日遊び
ほうけていて、41年間の人生で最も怠惰な生活を過ごしていた時でした(笑)
当時、僕は本当に真夜中のコンビニでアルバイトをしていて、色んな人たちが客として店に訪れて
来ていたんです。
酔っぱらったサラリーマン、くたびれたOL、粗暴の悪いヤンキー、受験勉強で頭がいっぱいの
高校生、酒臭いホステス、テレビで視たことがあるローカルタレント、ヤクザ・・・。
今思い返せば、あのコンビニで出逢った客たちは、まだ世間というものをほとんど知らなかった
僕に、様々な人間ドラマの断片を見せてくれた貴重な人々だったような気がします。
そんな中に、異国の女性たちがいました。
当時、“じゃぱゆきさん”と呼ばれていた、東南アジアから出稼ぎに来た女性たちです。
今の時代とは違って、当時の彼女たちの働き場所は、夜の店が定番でした。
深夜・・・というよりも、もう朝が近いような時間帯に、店の若い衆が運転するオンボロワゴンに
乗って店からアパートへ帰る途中、必ず僕がアルバイトをしているコンビニへ彼女たちは
寄ってたんです。
物語では、一人でコンビニへ訪れる設定にしていますが、実際は、集団で立ち寄るんです。
それがもう、うるさいのなんのって・・・(苦笑)
酒臭いわ、化粧の匂いはキツいわ、下品な笑い方はするわ、日本語は通じないわ、正直な気持ちを
吐露すれば、彼女たちには、もうホントに辟易していたんです。
で、その気持ちを、ある日いっしょに働いていた先輩に話したんですね。他愛もない雑談の中で。
すると、その先輩が遠くを見るようなまなざしで、僕に向かってこう言ったんです。
「でもな、あの娘たちも真剣なんだぞ、知らない国の知らない土地に無理矢理連れてこられて、
そんな場所で一心不乱に働いて、それで稼いだなけなしの金を故郷に送って・・・彼女たちも
ギリギリのところで生きているんだ、そりゃあ、仕事が終わったわずかな時間くらいガス抜き
しなきゃ、やってられないぞ」
胸に突き刺さりましたね。
それと同時に、彼女たちに比べて、目標も目的も指針も何もない、あまりにも怠惰な日常を
過ごしている自分を恥ずかしく思ったことを今でも強烈に憶えています。
その頃から、彼女たちを題材にした物語を書きたい、とおぼろげに思っていた記憶があります。
しかし、そのためにはあまりにも当時の僕には、ストックしていたボキャブラリーが少なすぎた。
結局、書きはじめたのは、30代後半になってからでした。
彼女たちに追いつき小説として表現するためには、それだけの時間や経験の落差と距離が僕と
彼女たちの間にはあったのかもしれません。
でも書きはじめたら、あっという間に第一稿があがりました。
たぶん、2週間もかからなかったんじゃないかな?
不思議なもので、物語を綴り出すと、登場人物たちが勝手に物語の中で動き始めるんです。
そして、自然に、本当に自然にラストまでたどり着いて行った。
書いてて気持ちがよかったですね(笑)
暗くて切なくなるようなシーンもありますが、全体を俯瞰してみると、この小説は一貫として
揺れる心と純真な気持ちが描かれた、淡くて蒼い青春小説だと思います。
だから表紙の装丁も、そんなイメージのデザインにしました。
見方を変えると、この小説は、僕の処女作である「コカ・コーラ!」の続編かも知れない、と
思うことがあります。
「コカ・コーラ!」の主人公だった14歳のショウちゃんの、20歳の時のひと夏の物語。
奇しくも、双方ともひと夏の物語だけど、6年分、主人公は成長しているようなしていないような・・・。
相変わらず、自問して勝手に哲学しているところは変わってないかも(笑)
ちなみに、この小説は、広島県福山市の外郭団体・福山文化連盟が主催する「第34回ふくやま文学選奨 」
に応募して、短編小説部門で佳作を受賞しました。
後日、紹介する「中古家族」に続いて2年連続での佳作受賞だったんですが、落選した人には申し訳ないけど、
もう悔しくて悔しくて悔しくて・・・。
“なんでなんだ!?、中山芽集子先生(選者)のバカヤロー!”って(笑)
そんな感じだったから、昨年は“ちくしょう、仏の顔も3度までだぞ!”と、もうほとんど意地の塊になって
新しい小説を執筆して、なんとか今年、晴れて“3度目の正直”で、最優秀賞を受賞しました。
そんな、アマチュアながらも、僕の作家魂に火を付けるきっかけになった作品でもありますね。
余談ですが、この小説の執筆中、僕の頭の中ではシネイド・オコナーの「Nothing Compares 2 U」が流れて
いました。
ちょうどこの物語の舞台となっている時代にヒットしていたバラードです。
実際に、コンビニの有線からもよく流れてきてましたね。彼女のちょっとハスキーなボイスと賛美歌のような
美しいメロディが、真夜中のひとりぼっちのコンビニによく似合うんですよ。
勝手ながら、あの歌はこの小説のテーマ曲だと決めています(笑)
あと、もうひとつ・・・。
この小説を執筆中、僕はずっと登場人物のエミリーに恋をしていました(笑)
“なんて可愛い女の子なんだ”って(笑)
もしも、もしも、もしも、この小説が映画になるのならば、その時はエミリーは、絶対に宮崎あおいさんに
演じてもらいたいなぁ。
この小説を書いた作者としては、エミリーを演じられるのは、彼女しか思い浮かばない。
●「エミリー」の電子書籍サイト→http://rikiru.wook.jp/detail.html?id=208181
自分の分身のようで、どれも可愛く、愛おしい。
それでも、もし「自分が書いた小説の中でどの作品が最も愛着があるか?」と尋ねられたら、
僕は10秒くらい考えて抜いて、この作品を挙げると思います。
「エミリー」は、そんな小説です。
舞台は、1989年の夏。
地方都市の真夜中のコンビニエンスストア。
主人公は20歳の男。
まぎれもなく、僕自身がモデルです。
一応、大学生でしたけど、当時はバブルの絶頂期で、一人暮らしで、学校にも行かず、毎日遊び
ほうけていて、41年間の人生で最も怠惰な生活を過ごしていた時でした(笑)
当時、僕は本当に真夜中のコンビニでアルバイトをしていて、色んな人たちが客として店に訪れて
来ていたんです。
酔っぱらったサラリーマン、くたびれたOL、粗暴の悪いヤンキー、受験勉強で頭がいっぱいの
高校生、酒臭いホステス、テレビで視たことがあるローカルタレント、ヤクザ・・・。
今思い返せば、あのコンビニで出逢った客たちは、まだ世間というものをほとんど知らなかった
僕に、様々な人間ドラマの断片を見せてくれた貴重な人々だったような気がします。
そんな中に、異国の女性たちがいました。
当時、“じゃぱゆきさん”と呼ばれていた、東南アジアから出稼ぎに来た女性たちです。
今の時代とは違って、当時の彼女たちの働き場所は、夜の店が定番でした。
深夜・・・というよりも、もう朝が近いような時間帯に、店の若い衆が運転するオンボロワゴンに
乗って店からアパートへ帰る途中、必ず僕がアルバイトをしているコンビニへ彼女たちは
寄ってたんです。
物語では、一人でコンビニへ訪れる設定にしていますが、実際は、集団で立ち寄るんです。
それがもう、うるさいのなんのって・・・(苦笑)
酒臭いわ、化粧の匂いはキツいわ、下品な笑い方はするわ、日本語は通じないわ、正直な気持ちを
吐露すれば、彼女たちには、もうホントに辟易していたんです。
で、その気持ちを、ある日いっしょに働いていた先輩に話したんですね。他愛もない雑談の中で。
すると、その先輩が遠くを見るようなまなざしで、僕に向かってこう言ったんです。
「でもな、あの娘たちも真剣なんだぞ、知らない国の知らない土地に無理矢理連れてこられて、
そんな場所で一心不乱に働いて、それで稼いだなけなしの金を故郷に送って・・・彼女たちも
ギリギリのところで生きているんだ、そりゃあ、仕事が終わったわずかな時間くらいガス抜き
しなきゃ、やってられないぞ」
胸に突き刺さりましたね。
それと同時に、彼女たちに比べて、目標も目的も指針も何もない、あまりにも怠惰な日常を
過ごしている自分を恥ずかしく思ったことを今でも強烈に憶えています。
その頃から、彼女たちを題材にした物語を書きたい、とおぼろげに思っていた記憶があります。
しかし、そのためにはあまりにも当時の僕には、ストックしていたボキャブラリーが少なすぎた。
結局、書きはじめたのは、30代後半になってからでした。
彼女たちに追いつき小説として表現するためには、それだけの時間や経験の落差と距離が僕と
彼女たちの間にはあったのかもしれません。
でも書きはじめたら、あっという間に第一稿があがりました。
たぶん、2週間もかからなかったんじゃないかな?
不思議なもので、物語を綴り出すと、登場人物たちが勝手に物語の中で動き始めるんです。
そして、自然に、本当に自然にラストまでたどり着いて行った。
書いてて気持ちがよかったですね(笑)
暗くて切なくなるようなシーンもありますが、全体を俯瞰してみると、この小説は一貫として
揺れる心と純真な気持ちが描かれた、淡くて蒼い青春小説だと思います。
だから表紙の装丁も、そんなイメージのデザインにしました。
見方を変えると、この小説は、僕の処女作である「コカ・コーラ!」の続編かも知れない、と
思うことがあります。
「コカ・コーラ!」の主人公だった14歳のショウちゃんの、20歳の時のひと夏の物語。
奇しくも、双方ともひと夏の物語だけど、6年分、主人公は成長しているようなしていないような・・・。
相変わらず、自問して勝手に哲学しているところは変わってないかも(笑)
ちなみに、この小説は、広島県福山市の外郭団体・福山文化連盟が主催する「第34回ふくやま文学選奨 」
に応募して、短編小説部門で佳作を受賞しました。
後日、紹介する「中古家族」に続いて2年連続での佳作受賞だったんですが、落選した人には申し訳ないけど、
もう悔しくて悔しくて悔しくて・・・。
“なんでなんだ!?、中山芽集子先生(選者)のバカヤロー!”って(笑)
そんな感じだったから、昨年は“ちくしょう、仏の顔も3度までだぞ!”と、もうほとんど意地の塊になって
新しい小説を執筆して、なんとか今年、晴れて“3度目の正直”で、最優秀賞を受賞しました。
そんな、アマチュアながらも、僕の作家魂に火を付けるきっかけになった作品でもありますね。
余談ですが、この小説の執筆中、僕の頭の中ではシネイド・オコナーの「Nothing Compares 2 U」が流れて
いました。
ちょうどこの物語の舞台となっている時代にヒットしていたバラードです。
実際に、コンビニの有線からもよく流れてきてましたね。彼女のちょっとハスキーなボイスと賛美歌のような
美しいメロディが、真夜中のひとりぼっちのコンビニによく似合うんですよ。
勝手ながら、あの歌はこの小説のテーマ曲だと決めています(笑)
あと、もうひとつ・・・。
この小説を執筆中、僕はずっと登場人物のエミリーに恋をしていました(笑)
“なんて可愛い女の子なんだ”って(笑)
もしも、もしも、もしも、この小説が映画になるのならば、その時はエミリーは、絶対に宮崎あおいさんに
演じてもらいたいなぁ。
この小説を書いた作者としては、エミリーを演じられるのは、彼女しか思い浮かばない。
●「エミリー」の電子書籍サイト→http://rikiru.wook.jp/detail.html?id=208181