Rouge Triomphant-1959-1963
彫刻に動きを取り入れた、カルダーの偉業”モビール”。
細いワイヤーで原色で彩られた小片をバランスよく配置し、ゆらゆらと軽やかに動く洒落た作品。
彼は、現代美術のアートシーンの真っ只中に活躍した。
カルダーのモビールの名付け親であるマルセル・デュシャンや、カルダーに多大な影響を与えたピート・モンドリアンなどの錚々たる芸術家がいた時代だった。
大きな戦争などの過酷な時代でもあったが、芸術家は自分の使命を信じることができた時代でもあった。
カルダーは、商業的成功には見向きせず、モビールの特性を生かすべく広いスペースのある公共施設への作品提供、大きなモニュメントなどにも心血を傾けた。
芸術家になる前のカルダーが、技術屋であったことと、記念碑などの彫刻を成していた家系による刷り込みが、根底にあったのかもしれない。
しかし、小さなモビールが天井から吊り下げられ、空気の流れによって揺らめくさまを日々眺めていたい自分としては、カルダーが十分に商業美術の中でも成功を修めたと思うので、もったいない気もするのだ。
確かに、商業ベースに乗ると、一時的大きな成功を手にしても、一過性の流行とやたら目たらに消費されて精神的に疲弊しそうだ。
長い目で見て考えれば、自分のペースを守り、より良い作品を送り出すのが賢明といえよう。
公共的な場所に設置するならば、よほどのことがない限り、半永久的に作品は保持される。
その機会を得られたカルダーは、とても幸運で、その選択をしたことは賢いと言わざるをえない。
どうだろう、カルダーの作品はなかなか素晴らしいと思わないか?
もちろんモビールも素敵だが、ワイヤーでの彫刻に平面のリトグラフもすっきりと洒落ている。
カルダーの作品には、軽薄ではない、力学と工学に裏打ちされた技術による自信に満ちた明るい未来を感じさせる”軽さ”が備わっているからだろう。
そのカルダーに秘められた軽さを取り入れたいと。ずっと前から、自分でカルダー風のモビールを作ろうと計画を練っているところだ。
Kiki of Montparnasse
Two Spirals, 1974.