大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・小説・大阪府立真田山学院高校演劇部公式ブログ・Vol・6

2018-10-17 18:43:17 | 小説・2

大阪府立真田山学院高校演劇部
公式ブログ・Vol・6



☆あせってます

 先週は先輩の女優、坂東はるかさんが来てくれはって、半日いろんな芝居の基礎から、食堂のカラマヨ丼の話までして、テンション、モチベーション上がりまくりでした。
 せやけど、半日のことは、しょせん半日のこと。今週は、もう気持ちサゲサゲです。

 顧問の淀貴美先生と誓うた「ルピック氏を演る男子」が決まりません。

 11月のコンクールに何を焦ってと言われるかもしれませんけど。考えてください、野球部なんか半年ぐらいかけての調整は当たり前。甲子園行くような学校は、一年掛けて選抜メンバーのふるい落とし、癖の矯正やら、めっちゃストイックに、かつ長期的展望に立って練習やってます。軽音も『スニーカーエイジ』目指して、猛特訓やってます。
 演劇部は、どこもノホホンとしてるさかい、たいての学校はOHPが終わったあたりからの泥縄。みんながそないやさかい、なんとも思わへんねやろけど、それは、この一言。

信号、みんなで渡れば怖くない」

 みんなしょうもない芝居演るさかい、目立てへんだけ。せめて毎日放送の『ちちんぷいぷい』に取材に来てもらえるぐらいのココロザシがないとあかんと思います。ココロザシの裏付けは日々の努力。で、努力するためには、当たり前やけど「努力する人間」が必要です。おらん人間に努力のさせようもありませんでしょ?

☆で、考えてます

 女子二人でもやれる芝居。あたし三好清海と九鬼あやめのデコボココンビでも演れる芝居
 あたし的には、オールビーの『動物園物語』なんか演りたいんですけど、キャストを女子に変えての上演許可は、ごっついむつかしいらしいです。

 ちょい役一人入れて『すみれの花さくころ』も考えてます。この芝居は名古屋音大がミュージカル風にやったのをYOU TUBEで見てから惚れ込んでます。うちも坂東はるかさんが現役やったころに、本選まで行った芝居。ネットで検索したら名古屋のプロのオペラ歌手やら、北陸の劇団、関東の中学校でもやってる名作みたいです。下にYOU TUBEのショートカット入れときました。

     https://youtu.be/ItJpVtCcxMQ             

 これクリックして見てください。後半1/4ですけど、あたしの感激分かってもらえると思います。

 せやけど、今年の審査員は、そのときの真田山の芝居をわけ分からん理由で落とした人です。やったら、また「作品に血が通っていない。思考回路、行動原理が高校生ではない」て言われるのん目に見えてます。
 え、その前に真田山は予選落ち? 縁起でもないこと言わんといてください。

☆近所の噂

 軽音が、午後6時を超えると近所から苦情の電話が来るらしいです。うちらとしては、両方の気持ちが分かります。近所の人には、ただの騒音。
 軽音は『スニーカーエイジ』がかかった命がけ。せやけど学校は冷房許可してくれません。唯一の例外は情報の教室。コンピューターがいっぱいあるんで、年中冷房。
 機械が冷房されて、生徒が熱中症寸前で練習やってても「がまんせい!」や。なんかひっくり返ってるような気がします。しません?

 で、熱中症で倒れる生徒が出て、マスコミがきたら「配慮が足りなかった」。で、もし、もし、まあ、そこまではいかへんやろけど死ぬような子が出たら「命の大切さ」いう城東区やない常套句。ほんで一分間の黙祷でおしまい。ちょっと言い過ぎました。淀先生ごめんなさい。

 で、昔は演劇部の発声練習がやかましいいうて苦情がきたらしいです。ええ時代やってんなあ。

 も一つ近所の噂。うちのブロックの某高校は部員ゼロやけど、連盟に加盟したらしいです。先生に聞いたら、大阪全体で、そういう学校が二十近くあるそうです。そんな学校含めて百何校かの加盟。ちょっと寂しいですね。

 試験中なんで、このくらいで。せやけど、試験中になると、こんなブログ書きたなるのは、イチビリか、勉強嫌いか。ちなみに後輩の九鬼あやめは、メール打ったら「先輩勉強しましょう」ええ子やけど、このニクソさはなんやろね?

 他の演劇部さんも、3校ほどはブログ続けてはりますね。たいがい一カ月ぐらいで止めてしまうとこが多いから、お互いがんばりましょね!

 文責 大阪府立真田山学院高校演劇部部長 三好清海(みよしはるみ) 

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高校ライトノベル・アンドロイド アン・26『問題は振り付け』

2018-10-17 13:44:42 | ノベル

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アンドロイド アン・26

 

『問題は振り付け』

 

 

 

 コラボと二クラス合同というところまでは良かった。

 

 コラボってのは、メイド喫茶風の模擬店と、そのメイド衣装を生かしての舞台パフォーマンス。

 合同ってのは、わが一組と三組がいっしょになって取り組むっちゅうこと。

 

 おかげで、体育館を除いては最大の屋内スペースであるプレゼンテーションルームの使用が認められた。

 プレゼンの収容人員は八十名。むろん、教室式に机を並べての人数だけど、メイド喫茶として緩く席を配置しても五十人はいける。

 五十人のお客を収容してもメイドは二クラスの女子、三十六人も居る。三交代としても十二人がフロアに入れば素人のメイドでも十分さばけるだろう。

 メニューもレトルトのカレーとオムライスと焼きそば。四種類で1200食分もある。食堂のオッチャンの口利きで、仕入れ値は一食100円、これを200円で売って儲けを衣装やら内装やらの費用に充てる。他にもパックジュースもあったりで、完売すれば経費を除いてもけっこうな儲けになる。

 わが一組の徳永さんと三組の玲奈のコンビも上手くいって、発案から一週間もすると目に見える成果が現れる。

 

「じゃ、メニューの試食会兼て、コスの発表と発会式をやりまーす!」

 

 徳永さんが音頭を取って、二クラス七十人の試食会が始まった。

「ちょっと物足りねえかなあ」

「ほかの模擬店にもいくだろうから、こんくらいでいい」

「お、レトルトとは思えない味だ」

「400円出して二つ食うのもありだなあ」

「じゃ、ドリンク付けてワンコイン! これは売りになるかも!」

 賑やかで発展的な試食会になってきた。

「メイド服も試作品が出来たから、見てちょうだーい!」

 徳永さんが手を上げるとポップな曲が流れ、控室から田中さんと渡辺さんがフリフリしながら現れた。

「メイド服ってのは女子力倍増だなあ」

 赤沢が正直なため息をもらす。

「縫子が増えれば、もうちょっとフリフリのゴージャスになるの、やってみたい人いる?」

 現物を見せるというのは効果的で、三組の男子が手を上げた。

「あ、あいつ、家が仕立て屋なんだ」

「ほう、プロなんだ」

「でもさ、最初に手を上げてたら、ちょっちキショイと思われたかも」

 そりゃそうだろ。上から着るものだとは言っても女の子のメイド服だ、変態と思われる恐れ濃厚だ。

「ここのイセ込みを工夫すると、ほら、前身ごろの合わせ目に皴がよらない」

 さっそくプロの目でチェックすると女子から「おーーーー」と歓声があがる。

 俺は、ハナから野次馬なんだけど、文化祭の取り組みがうまく転がっているのは気持ちがいいもんだ。

 

「で、コラボしてる舞台パフォーマンスのダンスなんだけど、ちょっと、やってもらうわね」

 

 BGのボリュームが上がると、田中さんと渡辺さんは素人ばなれれしたダンスを披露し始めた。

 オーーーーーーー!!

 主に男子から歓声があがったが、意外にも女子たちからは声が上がらない。

「なんでだ?」

「二人ともダンス部……見てる分にはともかく、いっしょに踊る女子にはなあ……」

 たしかに、あれをやれと言われたら腰が引けるかもしれない。

「う~ん、新しい振り付けってなると、わたしらも部活の方があるしねえ……」

 そうだろ、ダンス部は文化祭でも花形だ。

「だれか、振り付けやってみようって人いない?」

 徳永さんが手をメガホンにして呼びかける。

 なんせ、文化祭まで十日あまりしかないのだ……いちばんクリエィティブなところで頓挫しかけている。

 

「よかったら、わたしがやる!」

 

 沈黙を破って手を上げたのはアンだった。

 

☆主な登場人物 

 

  新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

  アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

  町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

  町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

  玲奈    アンと同じ三組の女生徒

  小金沢灯里 新一憧れの女生徒

  赤沢    新一の遅刻仲間

  早乙女采女 学校一の美少女

 徳永さん   クラスの委員長

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『高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・52『拓磨クン!?』

2018-10-17 06:51:42 | ボクの妹

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が憎たらしいのは訳がある52
『拓磨クン!?』 
     



 事件は、その日の放課後にやってきた……。

「ちょっと、道が違わない、拓磨クン?」
「下水道工事で、いつもの道は通られへん。外環に出て、ちょっと大回りするわ」

 たしかに、カーナビには工事中通行止めのサインが出ていた。回覧板の記録と照合したが、隣の町内会のことなので、記録がない。半信半疑のまま助手席に座り続ける。
 交差点を左折して妙な振動を感じた。道路は平坦なのに、体の感触は僅かに車が乗り上げた感触がしたあと、緩い坂になり、すぐに車は停車した。でも窓から見える景色は、外環を外れた国道○号線のそれだった。左側にはコンビニ、右側は、回転寿司と焼き肉チェーン店。ときどきパパと来る店であった。

 拓磨が、ドアを開けて車から転がり出た。わたしはシートベルトを外すのに0・5秒遅れた。
 車から出て驚いた。そこは大きな倉庫の中であったのだ。

「窓ガラスに、ダミーの映像をかましたのね」
 倉庫の割に声が響かない。高度な吸音処理が施されているようだ。
「おまえが、こっち側のねねちゃんかどうか、確かめたかったんでな」
「あなた、拓磨じゃない……義体なの?」
 拓磨が、あいまいに笑うと、後ろのフォークリフトがガシャガシャ動きだし、三秒ほどでロボットに変身した……おそらく、祐介を取り込んだロボットだ。わたしは、程よく驚いておいた。
「ユースケ?」
『ああ、潜入させておいたねねかどうか確認したいんでな』
「リンクすれば済む話でしょ」
『ああ、普通ならな。だけど、敵も味方も技術が向上している。現に、おまえは拓磨が義体だとは見抜けなかっただろう』
「それくらいは、言ってくれてもいいんじゃない。CPがバグりそうよ」
『そんなタマか、もし、おまえがこちら側のねねならな。それに……』
「なによ」
『里中のところで上手くいきすぎている。あの里中が全く気づかないのが不自然だ。じゃ、確認しようか』
 拓磨の義体が迫ってきた。
「ちょっと乱暴だが、辛抱してくれよ……!」
 拓磨とは思えない敏捷さで襲いかかってきた。その時点で、この義体のスペックは分かったけど、知らないふりをした。二度跳躍したところで、右手首のグレネード銃を解放し、至近距離で拓磨の頭を粉砕した。拓磨は首のないまま、二三歩前進し、ドウっと倒れた。
「義体化のスペックは高いようだけど、戦闘能力はスタンダードね。さ、早いとこ情報交換しましょう。ケーブルを寄こして」
 すると、後ろから急に羽交い締めにされた。首のない拓磨が、わたしを締め上げてきた。
『そいつのCPは、胸にある。タクマ、うちのねねなら、胸骨の鳩尾のところが本物のコネクターだ』
 首無しタクマは、下着ごと制服の前を引きちぎり、わたしの胸を顕わにした。ケ-ブルが伸びてきて、鳩尾のところでコンタクトした、

 一瞬意識が飛んだ。

『間違いない、うちのねねだ。里中は入れ違っていることには気づいていないようだな』
「それを確認するためだけに、こんなことしたの?」
『ああ、これがオレのやり方だ』
 わたしは、解放したままの右手首のグレネード銃で、タクマの胸に風穴を開けた。タクマは仰向けに倒れ、完全に……ブレイクした。
「これが、わたしのやり方。義体でもセクハラは死刑よ!」
『その右手首の傷の言い訳を、考えなきゃな』
 内蔵のグレネード銃を使うときは、手首を270度曲げ、銃口を出す。そのために生体組織である皮膚は、破れて傷になる。現にブラウスの袖口は血に染まっている。
「恋に破れてリストカット……笑うことないでしょ。正直に言うわよ。あんたたち不貞グノーシスと出会って、遭遇戦になったって……なにすんのよ!」
 一瞬バレたかと思った。ユースケのレーザーがスカートごと、わたしの太ももをかすめた。
『遭遇戦をやっていたら、これぐらいの傷はあったほうが自然だろう……』

 それからユースケとは、ケーブルをつないで、情報をやりとりした。

 反乱組のグノーシスの全容が分かった。そして、ユースケの攻撃方法も。合理的ではあるが、残酷な方法であった。どうも、優奈を、あんな形で失ったことのショックが反映されているような気がする。数秒で三百回ほどシュミレーションをやって、一番人を殺さずに済む方法を二人で考えた。むろん、わたしの作戦はユースケを信用させるためのダミープラン。だが、ある線までは、ユースケと行動を共にしなければならないとも覚悟した……。

 

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高校ライトノベル・トモコパラドクス・29『バニラの決心』

2018-10-17 06:40:22 | トモコパラドクス

 

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トモコパラドクス・29
『バニラの決心』
 
      


 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された!



 水島結衣は、学校に来るのが早い。八時前には教室にいて、予習のチェックなんかをやっている。

 これに次いで早いのが、王梨香である。
「おはよう」
 互いに、静かに挨拶し、それぞれ勉強に没頭するのが、結衣が転校してからの一年A組の習わしになってきた。
 この二人に影響されて、他の子たちも勉強に熱を入れてくれればと、ノッキーこと柚木先生も願っている。
 特に、A組の出来が悪いというわけではなかった。学年でも上位のクラスだ。新採三年目で、初めてもった一年生。生徒たちには恵まれたと思った。
 思った分、ノッキー先生の生徒たちへの愛情は膨らむばかりであった。「ばかり」の「ばか」で、鈴木友子を連想した。
 友子は、けしてバカではない。だが、いろんなことに気を取られ、集中しきれないでいると思っていた。で、このごろは、ほんとうにバカな顔をしていることもある。

 現実の友子は違う。頭はスーパーコンピューター以上の能力を持った、数十年後の技術で作られた義体で、ノッキーの知らないところで、ダイハードやったり、宇宙人の戦いに巻き込まれたり、幽霊の水島昭二が結衣という女子高生としてやっていけるのを見届けたり、けっこう忙しい。たまにアイドルに擬態して、先輩の紀香と街をうろつくのが、ささやかな息抜きであった。勉強は、目立たないようにわざと真ん中の成績をとっている。

――ピンポンパ~ン♪ 一年A組の水島結衣さん、一年A組の水島結衣さん、理事長室まで至急に来て下さい――

 長閑な校内放送で、結衣は理事長室に呼び出された。
「失礼します……」
 そう言って入った理事長室には、あまり長閑ではない顔つきのノッキーが、先に来て座っていた。
「まあ、掛けたまえ」
「はい」
 理事長は、自分の椅子に座ったまま、内容を伝えた。
「一時間ほど前に、東亜テレビのディレクターの方から電話があってね。放課後水島さんのことで取材に来たいって言うんだ」
「……わたしにですか?」
「ああ、これだよ」
 理事長は、モニターの電源を入れた。そこには東京ドームの横で、バニラというディユオといっしょに楽しそうに歌っている結衣の姿が映っていた。
「あ、これは……」
「もう、アクセスが四万を超えている。なかなか大したもんだよ」

「わたしは、反対よ」

 ノッキーが先回りした。
「転校してきてから、一週間ちょっとだけど、水島さんの力と熱心さはよく分かっているわ。今は勉強中心にやってもらいたいの」
「まあまあ、柚木先生。水島さん本人の気持ちも聞こうじゃありませんか」
 理事長は、手を頭の後ろで組んで、ノビをした。びっくりするほど若く見える。
「スマホで撮られていたのは、知っていましたけど、こんなに話が大きくなっているなんて……」
「でしょ、だから今のうちに。理事長先生、お願いします」
「ボクは、青春時代、いろいろチャレンジしてみればいいと思う」
「先生」
「柚木先生。ハイティーンというのは、可能性の固まりなんですよ。時に自分で制御できないほどにね。僕は戦時中、そうありたくても、そうできなかった生徒をたくさん見てきました。生きていくことさえままならない時代でした。年寄りの妄想と笑ってくださってもいいが……時々、生徒の中に見つけてしまうんですよ。こいつは青春をやり直すために生まれ変わってきた奴じゃないかと。つい、こないだも、坂東はるかさんと、仲まどかさんが来てくれた。坂東さんは、この学校は中退だが、転校先の大阪の学校で素晴らしい成績を残し、得難い体験をして、今は女優の道を歩いている。類は類を呼ぶで、幼なじみで後輩の仲まどかさんも女優になってしまった」
「ああ、『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』で読みました」
「あれは、いささか話としては誇張されているが、ほぼあの通りだよ。むろん勧めている訳じゃない。試してごらんというだけのことだよ。向いていなければ、いくらでも方向転換の道はある。でしょ、柚木先生の先輩の貴崎マリ先生には驚きました。先生を辞めてタレントさんになっちまった」
「貴崎マリ?」
「ああ、芸名は上野百合」
「え、あの上野百合ですか『のどあめカンタービレ』の?」
「そう、柚木先生より五歳は年上……あ、これは業界じゃ秘密だがね」

 そういうわけで、放課後は、東亜テレビが、でっかい中継車と、マイクロバスでやってきた。

「中継の上野です。スタジオのタムリさん。聞こえてます?」

 驚いたことに、MCでやってきたのは、その上野百合だった。ノッキーは驚き、理事長は、タヌキのような顔でとぼけていた。
――百合ちゃん、なんだか自分の学校みたいにスイスイ行くね――
 スタジオのタムリが本質をついてきた。
「そりゃあ、天下の乃木坂学院ですよ。もう、ネットで、トイレの位置まで確認済みです。ああ、バニラ、早くきて!」
 バニラの二人は、生徒たちに取り巻かれて、素人らしく緊張している。
「こんにちは。東京ドーム……の横で、頑張ってますバニラの岩崎広也です」
「あ、西川康志です」
「今、動画サイトで人気のバニラ……っても、一人足りません。そう、メインボーカルの秘密の彼女が、ここにいます。で、本日の突撃アタックは、その彼女に、正式にメンバーになっていただけるよう、こんな中継車まで用意してコクリにきました。これで断られたら、今日の経費は、このバニラの二人が……」
「ええ、そんなの聞いてないっすよ!」
 マジに聞いた西川がビビリながら抗議した。
「うそよ。タムリさんがもつことになってます」
――え、ええ!?――
 タムリが奇声を発した。
「では、さっそく。ボーカルの彼女いるかな!?」

 一瞬生徒たちがシーンとし、結衣がこわごわと手を上げた。みんなからどよめきが起こった。

「すみません……一回歌わせてもらえませんか? それで決めたいと思います」
「よっしゃー、バニラ、いいわね、今月のタムリさんの家賃がかかってるんだからね。しっかりね!」

 この事態を予想していたスタッフによってPAの準備はバッチリだった。結衣はマイクを持つと、ゆっくりバニラの前に立った。もう顔つきがちがう。何かが降りてきた顔になっている。


 《ぼくの おいたち》 作詞:岩崎広也   作曲:西川康志

 ぼくのおいたち ぼくのおいたち ぼくのおいたち

 でも ぼくの姉貴のむすこじゃないんだよ

 ぼくをパシリに使うやつらのことでもなくってさ

 そうさ ぼくの生い立ち ぼくの人生 ぼくの生きてきた道のこと

 でも 人生とか 生きてきた道とか言うのは恥ずかしくって

 ちょっとマイナー ちょっとネガティブ ちょっとセンチメンタル 生い立ちが相応しいねえー!

 お姉ちゃんが太陽ならば ぼくは昼間のお月さま 目立たないったらありゃしない

 お姉ちゃんのスマホは三台使い分け 本命 アッシー みつぐくん

 こんな古い言葉は知らなかったけど アッシー みつぐくんのスマホを任されて

 読んだアッシー みつぐの孤独なメール 

 キーワードにして検索したら 出てきた二十世紀の悲しき男のカテゴリー! イエー!

 広也 どうして、そんなにショボイ顔 どうしてそんなに泣き笑い ほら ほら そのヘラヘラ笑い?

 お姉ちゃん よせばいいのに ぼくに彼女をあてがった なんと なんと 本命彼氏の妹さ ああ~!

 本命彼氏の妹も ぼくに劣らぬ日陰の妹で お互い兄姉つなぐホッチキス

 ホッチキス キスキス ホッチキス スー スー すきま風

 そんなきみがかわいそうっていうんじゃない 自分自身に優しくするように 

 そっと掛けたブルゾンに 思わずキミは「あ、ありがとう」 ぼくは前頭葉で感じたよ

 潤んだヒトミ 最後の言葉が尻餅ついて震えるクチビルに

 ぼくは ホチキス キスキス キス キス キスー!

 そのとき ぼくは知ったんだ 互いのクチビルに付いたタコ焼き青のりに

 キ・ミ・は ぼくのアルテミス ミスアルテミス! オ~オ アルテミス!
 



 コミックソングが、きれいなバラードになって、グラウンドにいたみんなの拍手が鳴り響いた。

 すると、ロケバスから、業界では名の通ったHIKARIプロの会長・光ミツルが降りてきた。
「はい、じゃ、君たち、ここにサイン」
「え……?」
 当然驚くバニラの二人。
「水島さんは未成年だから、あとで保護者のハンコもらってね」
 結衣は、もう迷うことなくサインした。保護者のはんこ……まあ、なんとかなるだろう。

 陰で見ていた友子は、紀香を振り返った。

「じゃ、新ユニット名を発表します……」
 光会長が宣言した。

 そして、ここにHIKARIプロの新ユニット「バニラエッセンス」が誕生した……。 

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