大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・春夏秋冬物語・02妹〔ふってきた!・2〕

2018-10-03 15:50:01 | 小説7

 物語・02妹

〔ふってきた!・2〕


 グソッ! ファーストキスが実の兄貴だなんて!

 最悪だと思うでしょ!? 最悪過ぎて、ショックがくるのには10分もかかってしまったんだから!!

 気が付いてから思い切りアルコール消毒、消毒しすぎてくちびるがヒカヒカ……やってらんねー!!

「おまえなあ、いやみったらしくマスクなんかしてんじゃねーよ!」
 アマゾン代引きの立て替え金を返しにいったら、ニイニが不足そうに言う。
 言っとくけど、あたしは貸し借りはキチンとしておく。
 貸して不仲になるよりも、いつもニコニコ……ちがったけ? ま、兄妹でも、そこんとこはキッチリしておく。そーゆう性分。

「事故なんだからな、ファーストキスなんて思うなよ」
「ふぉもうなっれいっれも!」
「あん?」
「ムー……(しゃべれないんで、マスクをずらす) りっさいやっちゃんらんらから!」
 あれ? マスクずらしても変わらない?
「ウ、ウハハハハハ……おまえ、く、くちびるタラコみたく!?」
「ウッ、みゅなー!!!」

 代引きの3341円を叩きつけると、あたしは自分の部屋に駆け戻った。

 制服のままなのに気づき、ノロノロと部屋着に着替える。
 いつもなら、帰宅したらすぐに着替える。だけど今日は、家の前で竹内からのメールが入った。あの「昇降口で待ってる」ってやつ。
 あれで頭に血が上って、カバンだけ置いてガッコに戻ろうとしたら、階段踏み外して落ちてしまった。
 で、ちょうど帰って来たばかりのニイニと激突して、その……くちびるが重なってしまった!
 で、消毒のしすぎでタラコくちびるに。

 これは、もう呪われているにちがいない。

 いっそ仕事をやろう!……と、思い立つが止める。すんなり仕事をやるには、心が折れすぎている。
 えと……あたしは高校生だけど仕事を持っている。
 これでもプロのイラストレーターだったりする。そのことは、いずれ話す。
 そんな気にならないから、アマゾンの箱を開ける。

 アマゾンの梱包はカンペキだ。

 横っちょのテープの貼り始めんとこに、ボスッと指を突っ込んで、ビシャーっと引っ張ると直ぐに開く。
 無駄な梱包材なんかは入っていない。商品は箱の底と同じ大きさの段ボール板に載せた状態でパックされている。で、段ボール板は底に二の字にひかれた接着剤で適度に固定され、それをペキペキっと剥がすと商品が手に取れる。

 ジャーン!

 手に取ったそれは、TO HEAT 2のルーシー・マリア・ミソラの1/8フィギャ!
 今から12年も前のフィギャだけど、クニっと右足に重心を置いたポーズとアイプリの表情がいい!
 なんか、昭和の表情なんだよね。
 もち昭和なんて、生まれるずっと昔。知るわけなんかないいだけどね、あたしのイメージの中の昭和にピッタリ!
 で、これは仕事のイラストのタネであったりするんだけど、ま、好きなのよね。

「お、キャストオフになってるじゃん!」

 キャストオフってのは、服の一部が着脱できるってこと。
 一体のフィギャで二体分楽しめる。
 そろっとルーシーのスカートを外そうとした。慎重にやらないと色移りの心配がある。
「そっか……プニっと捻ってから……」

「おーい、美代、ふってきたー!」

「うん、わかったー」

 ルーシーと遊ぶのは後回しにして庭に向かう。
 洗濯物の取り込みは、あたしの任務だ。

 ちなみに、料理と掃除なんかはニイニの任務。この四月からそーゆーことになっている。

 この四月から、うちに両親はいない。ニイニと二人だけの夏がやってきた。

 チョーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー不本意なんだけどねヽ(`Д´)ノプンプン! 

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高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・38『ハナちゃんの向こう傷』

2018-10-03 06:47:35 | ボクの妹

妹が憎たらしいのには訳がある・38
『ハナちゃんの向こう傷』
    


 水っぱなを、袖で横にふいたような向こう傷がついていた。

「やっぱり、流れ弾……」
『どうしよう、顔に傷がついちゃった』
 一見ぶっそうな会話だけど、これは、ボクと高機動車ハナちゃんとの会話。

 東京での『メガヒット』の帰りの空でハナちゃんは、向こうの世界から飛び込んできたパルス弾の流れ弾を受けそうになり、その傷が残ってしまったのだ。ハナちゃんは、フロントグラスを赤くして恥ずかしがった。
「ニュースで、老朽化した人工衛星が落ちてきたって言ってる……」
 チサちゃんが、スマホを見ながら言った。
「ウワー、怖い~、ヤバイとこだったんだ」
 幸子は、プログラムモードで、佳子ちゃんや、優子ちゃんといっしょにブリッコしている。
『カッコ悪いから、ハナ、メンテにいってきますう。太一さん着いてきて~』
「え、オレ?」
『メンテナンスは、太一さんの担当!』

 そういうわけで、明くる日が休みということもあって、ボクはハナちゃんに乗って甲殻機動隊のハンガーまで行くことになった。

「かすり傷でよかったな」
 出迎えた里中副長が、開口一番に言った。
「やっぱり、向こうの流れ弾ですか?」
「ああ、夕べ相模湾で、大規模な空中戦があったみたいだ」
「相模湾で?」
「ああ、こっちに遅れた分、かなり派手な戦争になっているみたいだ。亜空間に穴が空いて流れ弾が飛び込んでくるぐらいだからな。ごまかすために、人工衛星を一基落とすことになったがな」
『装甲にも異常なしだから、チョチョイと塗装して、おしまいでしょ♪』
「いや、状況分析のPCに問題がある。丸一日は検査だな」
『え、どーして。ハナの解析じゃ、異常無しなんですけどオ……』
「じゃ、なんで、メンテナンスに太一君が着いてくるんだ」
『あ、太一さん、どうして?』
「どうしてって、おまえが着いてきてくれって言ったんじゃないか!?」
『そう……だっけ?』
「まあ、オフィスで休んでくれよ」
 里中副長の仕業だと思った。

 オフィスの応接に通された。

「いらっしゃい。また、パパの無茶につきあわされそうね……」
 ねねちゃんが豚骨醤油ラーメンの大盛りを持ってやってきた。
「ねねちゃん……いやあ、ありがたいな。まだろくに晩飯食ってないんだ」
「ハナちゃんが、そう言ってたから。ハンバーガー一個だけなんでしょ?」
「そうなんだよ、食べ盛りの女の子が四人もいたし、幸子のメンテで、放送局の弁当も食べられなかったし……うん、美味い!」
「ハハ、ほんとに美味しそう」
 お盆で顔の下半分を隠して笑うねねちゃんは、とても自然だった。
「食いながら聞いてくれ」
 里中副長が、くわえ煙草で入ってきた。
「だめでしょ、たばこは体に悪いの」
「これは、電子タバコだよ」
「電磁波吸ってるようなものよ」
 ねねちゃんは、里中副長がくわえたままのタバコの先を、ハサミでちょんぎった。里中副長はびっくりし、それから、固まった。
「……どうかしましたか?」
「い、いや、昔、カミサンによくやられたもんだから……」
「ひょっとして、プログラム外の行動ですか?」
「パパのタバコを止めさせるのは、これが一番」
「ねね、ちょっと外してくれ」
「はいはい」
 ねねちゃんは――頼むわね――というような目配せをして、出て行った。

「……こないだ、君がインスト-ルしてくれてから、ねねのやつ少し変なんだ」
「自律的になってきたんですね……」
「ああ、今のようにな」
「興味深い変化ですね……」
「で、一つ頼みがあるんだが……」

 里中副長が複雑な顔をして、ボクの顔を覗き込んだ……。



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高校ライトノベル・トモコパラドクス・15『自分の取説が欲しい!』

2018-10-03 06:39:26 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・15
 『自分の取説が欲しい!』  


「いやあ、すいません。九州で事故っちゃって。とりあえず、あたしたちだけでも間に合わせました」

 小野寺潤のスガタカタチでディレクターにあいさつした紀香であった。

「スタッフの人たちは、事故処理で、まだ宮崎です」
 矢頭萌に化けた友子もかました。
「もう時間が押してるんだ、とにかく衣装つけてメイク。済んだら、すぐに舞台ソデ!」
 ディレクターと入れ違いに、総監督の服部八重がやってきた。
「心配したよ~!」
 まずは、半泣きの顔で二人をハグした。そして、すぐに総監督の顔に戻り、指示をした。
「最初の十分はMCで持たしとくから、曲には遅れないでね。ヨロシク!!」
 まなじりあげて、意気揚々と楽屋を出て行った。仲間への愛情、プロ根性がバランス良く同居している。さすがはAKRの総監督ではある。
 関心している間もあらばこそ、衣装さんが、魔法のように二人を裸にして衣装をつけさせる。これに一分。
 すかさずメイクさんと、ヘアーメイクさんが取り付いた。普段なら、潤も萌もほとんど自分でやる。紀香と友子にも同じスキルがあるが、それではとても間に合わず。急いでプロがでっち上げる。これに五分、そして、六分三十秒後には舞台に立っていた。

「すみませーん、ちょっと衣装破けちゃって、直してました~」
「ちょっと、最近食べ過ぎなのよ。サイズ合わなくなってきたんでしょ」
「そんなことありませ~ん。その証拠に体重計持ってきましたあ」
 萌(友子)が楽屋にあった、体重計を舞台に置いた。
「ちょっと潤、乗ってみそ」
「はいはい……先週と同じ○○キロで~す」
 ピースサインの潤。
「ちょっと、壊れてんじゃないの」
「じゃ、ヤエさん、乗ってみそ」
「いいよ」
 ヤエが乗ると、なんと体重計は八十キロを指した。
「ええ、ウソでしょ!」
 観客席に笑いが満ちる。ヤエが乗ると同時に、潤と萌が、片脚を乗せて踏ん張っている。気づいていないのはヤエ一人。やがてそれに気づいて追っかけになるというアドリブをかまして、曲に入った。


《出撃 レイブン少女隊!》 

 GO A HED! GO A HED! For The People! For The World! みんなのために

 放課後 校舎の陰 スマホの#ボタン押したらレイブンさ

 世界が見放してしまった 平和と愛とを守るため わたし達はレイブンリクルート

 エンプロイヤー それは世界の平和願う君たちさ 一人一人の愛の力 夢見る力

 手にする武器は 愛する心 籠める弾丸 それは愛と正義と 胸にあふれる勇気と 頬を濡らす涙と汗さ!

 邪悪なデーモン倒すため 巨悪のサタンを倒すため

 わたし達 ここに立ち上がる その名は終末傭兵 レイブン少女隊

 GO A HED! GO A HED! For The People! For The World! For The Love!

 ああ ああ レイブン レイブン レイブン 傭兵少女隊……ただ今参上!



 無事に最初の曲の一番を終わると、あとは、スムーズに流れた。
「ねえ、みんな今日の萌ちゃん、すごいよ。この子が歌もフリもノーミスでやったのはじめてだよ。これは記念になにかやらなきゃね」
 ヤエが、さっきの復讐に企み始めた。
「みんなで、萌を胴上げしよう!」
 あっと言う間に、みんなに胴上げされてしまった。
「イヤー、おパンツ見えちゃうよ!」
 そう叫びながら、萌は本物の萌が、瀕死の重傷で、意識が戻ったことに気づいた。

――やばいよ、紀香。二人宮崎で事故って、瀕死の重傷。まだ発見されてない―― 
――今すぐ行こう!――

「じゃ、あたしたちオフなんで、これでお疲れ様で~す」
「なによ、カラオケ付き合うっていったじゃんよ!」
「悪い、また今度ね~」
 二人は屋上に上ると、ステンレスのダクトカバーを外して、ロケット状に加工して、屋上を飛び立った。マッハ2・5のスピードで事故現場に着いた。

 現場は、空港に近道する林道の中だった。潤と萌とスタッフの三人は、林道から落ちた谷川でデングリガエシになった四駆の中にいた。三人ともあちこちを骨折し重症で、萌だけが意識があった。
 二人は天使の姿に擬態して、三人の怪我をチェックした。
「あなたたち……天使さん?」
 苦しい息の下から、萌が声をかけた。
「そう、わたしがミカエル。あっちのヒネたのがガブリエル」
――友子、治せそう?――
――全員体のあちこち骨折。今からナノリペアー注入。萌ちゃんは、肋骨が折れて肺に刺さってる。しゃべらせないで――
 友子は、ハンドパワーで、萌の肋骨を元に戻し、そこいらへんの車のパーツで、ギブスを作り、三人にあてがった。
――どうする、今から救急車呼ぶ?――
――だめだよ、ライブにも出ちゃったし、こんな治療もしちゃったし――

 仕方なく、二人は車をソロリともとにもどし、ボディーを加工して空の低温や、空気摩擦に絶えられるようにした。
「いくよ」
「うん」
 怪我人を後部座席に固定して、元四駆の車を空中に浮揚させると、音速ギリギリの速度で東京を目指した。
 当然、自衛隊やら米軍やら空港などのレーダーに映り、自衛隊にはスクランブルまでかけられた。仕方なく海面スレスレまで降りてレーダーをかわした。しかし、その分人目に触れて、あちこちで写真に撮られた。
 ようやく相模湾上空でステルス化に成功。三人をそれぞれのマンションやら、アパートに運んだ。

「へえ、太平洋側のあちこちでUFO出現……それにしても妙なカタチだな。ねえ、姉さん」
 妻の春奈がいないので、一郎は新聞を見ながら、十五歳の姿の姉に声をかけた。
「UFOはね、焼きそばもピンクレディーも苦労したらしいわよ……」
「なんだか、めずらしくくたびれてるね?」
「うん、明日から中間テストだからね……」
 そうごまかして、友子は、再び自分の部屋に戻った。

 このあたりが限界なのか、力の配分なのか、友子は自分の取説が欲しいと思った……。

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