大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・アンドロイド アン・23『アンの感動』

2018-10-05 15:48:26 | ノベル

アンドロイド アン・23

『アンの感動』

 

 春画に興味を持ちやがった

 

 日本史の先生に『浮世絵が盛んにんったのは春画が売れたからだ』と教えてもらいやがった。

 教科書と言うのはタブーがあるようで、春画などは教えてないけないことになっている。

 教えてはいけないということすら教えない。

 だから、江戸の人間と言うのは、役者絵とか東海道五十三次みたいなインスタ栄えしそうな風景画を買いまくって、百万の江戸市民が芸術的使命にかられて浮世絵師を育んだという、日本は世界一のアート国家だったという理解だ。

 いや、理解さえしていない。暗記科目の日本史、その中でも場合によっては「教科書読んどけ」の指示だけですっ飛ばされる江戸文化に興味を持つやつなんていねえよ。

 ちょっと変わったアンドロイドだとは思っていたけど、再認識したかっこうだ。

 

 ウ~~~~~~~~~~~~~ン

 

 リビングのソファーで腕組みしたままアンが唸る。目は虚空を睨み据えている。

「ちょ、ちょっとキモいぞ」

「喋りかけないで」

「だって、コンロの……」

 虚空を見つめたまま、組んだままの右手の指をチョイと動かす。

 すると、ガスが弱火になっただけでなく、シンクの上の調味料各種が勝手に動いて料理を仕上げていくではないか!

 人が見たら幽霊のお手伝いさんか何かがいると思ってしまうに違いない。同居して四カ月目の俺も、アンの、こういうズボラテクニックを目にするのは初めてだ。

「お、おい、こんなの町田夫人にでも見られたら……」

 俺は慌ててキッチンに向かい、人間が料理しているようなポーズをとる。

「え……なんだ?」

 目の前にインタフェイスが現れて、右から左へと文字が流れる。

 

――弱火のまま二分かき回し、終わったらお皿を並べて……――

 

 なんと、目の前に夕食準備のダンドリが流れていく。オートでやってはまずいと思って俺にやらせようと瞬時に変更しやがった。

「……という具合にね、一見デッサンの崩れた稚拙な絵に見えるんだけどね。読者が見たいところを一枚の絵に凝縮するって、現代の3D効果と同じ狙いのテクニックで」

「飯食いながら春画の説明するんじゃねー!」

「だって、これが浮世絵の優れた表現でさ。いっそ、バーチャルモニター出して見せればいいんだけどね、なんせ18禁だしね……そうだ、ポーズだけでも見せたら……」

 箸をおいて何をするのかと思ったら、テーブルの上に載って、なんともアクロバット的なポーズをとりやがる。

「な、なんだ!? 首が、そんな具合に曲がるワケないだろが!」

「だって、こうやると女の表情と○○してるとこが同時に見られるって二次元的な工夫。ピカソだって同じテク使ってるんだよ」

「お、俺は、まだ食ってるんだ!」

「ごめん。でもね、このエロ表現のあくなき追及は感動ものなんだよ、やっぱ、こういう感動をこそ授業で伝えなくっちゃね」

「い、いい加減にしろ!」

「ごめん……」

 

 いっぱつ怒鳴って、やっとエロの伝道師であることを止めた。

 でも、まるで戦国時代にやって来たイエズス会の宣教師のように、自分の感動を伝えたくて仕方がないアンだ。

 夕食後は普通にしてくれたんだけど……ちょっと悪い予感がした。

 

☆主な登場人物 

  新一    一人暮らしの高校二年生だったが、アンドロイドのアンがやってきてイレギュラーな生活が始まった

  アン    新一の祖父新之助のところからやってきたアンドロイド、二百年未来からやってきたらしいが詳細は不明

  町田夫人  町内の放送局と異名を持つおばさん

  町田老人  町会長 息子の嫁が町田夫人

  玲奈    アンと同じ三組の女生徒

  小金沢灯里 新一憧れの女生徒

  赤沢    新一の遅刻仲間

  早乙女采女 学校一の美少女

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高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・40『Departure(逸脱)・1』

2018-10-05 07:05:18 | ボクの妹

妹が憎たらしいのには訳がある40
『Departure(逸脱)・1』
    


 病室に入ると十数年の時間が巻き戻され、それが超高速でリプレイされるような間が空いた。

 ……………

 ママもわたしも、それに戸惑って、ようやく言葉が出た。

「ねね……?」
「……ママ」

「ねねなのね……!?」
「うん、ねねだよ……本当にママなんだ!」
「こっちに来て、顔をよく見せて……」
 わたしは(俺の感覚はほとんど眠ってしまって、ねねちゃんそのものになっていた)ベッドに近づき、ママが両手で顔を挟み、記憶をなぞるように、そして、それを慈しむように撫でるのに任せた。髪がクシャクシャになることさえ懐かしかった。ママは仕事にいく前に、いつもこんな風だった。
「意外と、胸が大きい」
「もう十六歳だよ」
「もう大人だね……」
 ママは、ベッドに横になったまま、わたしを抱きしめた。
「ちょっと苦しいよ、ママ」
「ごめん。ねねのことは……もう死んだと思っていた」
「わたしも、ママは死んだと思っていた」
「パパは。ねねのこと、何も話してくれないもんだから」
「わたしにも、何も話してくれなかった……さっき、この病院に行くように言われて、ひょっとしたらって気はしてたんだけど。パパの話って、いつも裏があって、ガックリしてばかり、こうやってママを見るまで……見るまでは……」

 あとは、言葉にはならなかった。

「昨日までは滅菌のICUにいたのよ。それが、今朝になって普通の病室。最終現状回復までしてくれた」
「最終……」
「最終原状回復。LLD……もう手の施しようのない末期患者に、治療を中断するかわりに、健康だった時の状態で、終末を迎えさせてくれる。そういう処置。ママの場合、状態がひどいんで、立って歩くことはできないけど、こうやって、昔の姿を取り戻すことができた。甲殻機動隊の鬼中尉も、最後は女扱いしてくれたみたいね」
「ママは、もう少佐だよ」
「そんなお情けの特進なんか意味無いわ。わたしは、いつも現場にいたときのままの中尉よ」
「うん、なんかママらしい」
「カーテンを開けてくれる。せめてガラス越しでも、お日さまを浴びたいの」
「はい」

 わたしは部屋中のカーテンを開けた。

 ママは一瞬眩しそうな顔をしたけど、すぐに嬉しそうな顔になった。本当はいけないんだけど、窓を少し開けて外の空気を入れた。

「ありがとう、懐かしいわね、この雑菌だらけの空気」
「雑菌だなんて失礼よ。常在菌と言ってあげなきゃ」
「ハハ、そうだよね。ごめんね常在菌諸君。ねね、フェリペに入ったんだね」
「あ、フェリペって、ママ嫌いだったんだよね」
「ママ、一カ月で退学になったからね。でも、懐かしい、その制服。ねね、よく似合ってるよ」
 開けた窓から、初夏の風が流れ込んできた。それを敏感に感じ取って、ママは深呼吸をした。つぶった目から涙が一筋流れた。
「ママ……」
「ねねも義体なんだね……」
 わたしは、内心ギクリとした。太一さんの心が邪魔をして、うまく表情をつくれない……どうしよう。
「お日さまに晒すと、義体の目は反射率が生体とは異なるの……ここに来て……」
 ママは、ベッドの側にわたしを呼んで、首筋に手を当てた。やばい、全てを読まれる……。
「かわいそうに、人質にとられたのね。パパは、それでも屈しなかった……で、ねねほとんど……」

 そう、パパの戦闘指揮に手を焼いたK国の秘密部隊が、わたしを人質に取った。情報は、ハニートラップにかかった政府の要人から、筒抜けだった。

 パパは、わたしの脳の断片から、わたしの記憶や個性を情報として保存し、向こうの世界が提供してくれた義体に移し替えた。わたしをグノーシスのプラットホームにすることを条件に。
「義体だって卑下することはないのよ。ねねの感受性や個性は、ちゃんと生きて成長しているもの。あなたは、わたしのねねよ」
「ママ……」
 涙で滲むママが続けた。
「ほんとうは、ねねのこと生むはずじゃなかった」
「え……」
「こんな仕事していると、家庭や子どもは足かせになるだけ。でも、政府が勧めたの、極東世界の安定を印象づけるためにも、最前線の兵士も、家庭を持つべきだって。で、バディーだったパパと結婚して、ねねが生まれたの。政府のプロパガンダに乗せられただけだけど、後悔はしていない。こうやってここに、ねねがいるんだもん」
「ママ……」
「でも、辛い思いばかりさせて、ごめんね。ママは、ねねのこと大好き……だ…………」

 ママがフリーズした。

 LLDの特徴だ。死の直前まで、元気な姿でいられるけど、その死は前触れもなく、あっと言う間にやってくる。フリーズしたら一秒で命の灯がが消える。
 わたしは、その一秒で、ママの情報をコピーし、あとはずっとママを抱きしめていた。十数年ぶりで会ったのに、あまりにあっけないお別れだったから。

 パパに、すぐに来て欲しいとDMを送った。東海地方の亜空間のほころびが大きくなって、その手当のために行けないという返事が返ってきた。

 わたしは、Departure=逸脱することを決意した……。
 


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高校ライトノベル・トモコパラドクス・17『対決、紀香VS友子!』

2018-10-05 06:53:20 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・17
 『対決、紀香VS友子!』 
     

三十年前、友子の娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が始まった!


 足許でプラズマ弾が炸裂した!

 すんでの所で友子は第一展望台までジャンプし、鉄骨をキックして隅田川に飛び込んだ。将来東京タワーと並んで、歴史的重要建築物に指定されるスカイツリーを傷つけることはできない。
 川面を、超低空で飛んだ友子は、ほんの二秒間だけ、紀香のロックオンを外す事が出来た。
 吾妻橋、駒形橋、厩橋、蔵前橋と、衝撃波を出す寸前のスピードでくぐり抜けたが、国技館前で待機していた国防軍のレーダーにひっかかった。国防軍のレーダーや統合幕僚部のCPUは、紀香がとっくにハッキングしている。国技館前の対地対空兼用ミサイル通称タカミサカリは武者震いをして発射され、両国橋の手前で、友子の後ろ十メートルのところに着弾した。この爆風で、友子は制服を吹き飛ばされアラレモナイ姿になったが、二発目は意表をついて東に曲がり、タカミサカリは、虚しくNTT浜町ビル前の護岸を破壊しただけだった。タカミサカリの管制CPUは、まるで土俵を壊した高見盛のように動揺し、その管制機能を一時マヒさせた。

 京葉道路を東に進むと、交差している清澄通りから、吉野家の前に十両、りそな銀行前に十両の10式戦車がが並び、一斉に榴弾の飽和攻撃をしかけてきた。
 ヤバイ、粘着榴弾だ。あれが当たっても、友子の装甲はぶち破れないが、装甲内部が剥離破壊され、数パーセントの確率で、義体内部が破壊される。気づいたのは交差点から二百メートルの真砂寿司の前だったが、行動を起こしたのは、交差点手前の本所警察の前だった。
 友子にとってはアナログな武器だが、この至近距離で当たれば無事では済まない。かといって戦車を破壊することは出来ない、一両につき三名の乗員が乗っており、殲滅すれば三十名の戦死者を出してしまう。両国マンション前で、両腕のプラズマ砲を空砲にして発射。その反動で、ほとんど九十度の角度で上昇。腕の良いフラッグ車の一弾が当たりそうになったが、友子は、その粘着榴弾を角度をつけて蹴り飛ばした。しかし粘着榴弾というのは、避弾形状の装甲でもぶち破れるように先端が丸くできており、友子のローファーの靴底で炸裂した。靴底も装甲になっているが内側で、剥離破壊が起こり、右脚の生体組織を傷つけ、爆風でタンクトップを引きちぎり、ブラの右肩のストラップを切ってしまった。

 友子は、思い切って東京湾で勝負をつけようとした。国防軍の兵士や武器一万二千を把握した。その気になれば十秒ほどで全滅させられる。しかし、友子は自衛隊時代の国防軍よりも交戦規定が厳しく、この時代の人間を殺すことはできない。

 まだか……!?

 友子は焦った。

 国防軍の統合幕僚本部のCPUにウィルスを送り攪乱しようと、適正なウィルスを秒速三千件で検索し組み替えている。ただウィルスを送ることは、容易いが、CPUのプログラムそのものを壊すことはできない。周辺諸国の警戒にあたる国防軍の目を潰すことは出来ないのだ。
 横須賀のイージス艦にロックされた。でも、せいぜいトマホーク。簡単にジャミングできると思った……。

「うそ、ジャミングが効かない!」

 友子は、房総半島を迂回するようにして、太平洋に出ようとした。
 しかし、速度を五百ノットまで上げたところで、トマホークに追いつかれる。

 房総沖にきれいな花火のような閃光がした。

 友子は、ブラのストラップはおろか、生体組織の全部を持って行かれ、完全なスケルトンになった。
 気づくと、紀香が至近距離で、プラズマ砲を構えている。
「もう逃げられないわよ、友子」
 紀香がニヤリと笑った。

 友子は、万分の一の可能性にかけて紀香に体当たりをかけた!

「それは禁じ手だわよ!」
「裏技と呼んでもらいたいわね」
 そう言って、友子はコントローラーを投げ出した。
 紀香は、悔しそうに固まっていた。

 モニターには、双方生存率二十パーセント、ドロー……と出ていた。

「まあ、これで、データがとれたからいいじゃん」
「ま、まあね……」
 紀香は、やっと汗にまみれたコントローラーを手放した。
「妙子を、法律と歴史に詳しくしてやったツケだもん。仕方ない」

 昨日の現社のテストで、妙子はパニックになり、救急車で病院に担ぎ込まれた。文章としても、理論としても矛盾だらけの日本国憲法の前文と第九条を書きなさいという問題が原因である。
 おかげで、妙子は数十年後内閣参与になり……まではよかったのだが、あっちの政府は、当時もうカビの生えた『友子脅威論』を持ち出し、紀香に進捗状況の報告を求めてきたのである。

 まさか、本当に戦うわけにはいかないので、プレステ5を部室に持ち込んで、ゲームのアバターを自分たちにして、模擬戦をやってデータをとったのである。街中での戦闘を極力さけたのも、後の時代に痕跡を残さないためである。

「しかし、よく寝るね、こいつ」
 モニターに映し出された妙子は、自分の部屋で、鼾をかいて爆睡していた。
「今日の数学は、自力でがんばったもんね」
「さ、あたしたちも行こうか。駅前のタイ焼き屋、テイクアウトのパンケーキ屋さんになったみたいだから」
「さっそくデータ収集にいくか!?」

 いそいそと、駅前を目指すカタキ同士であった……。

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