大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・66『C国多摩事変・1』

2018-10-31 06:29:43 | ボクの妹

妹が憎たらしいのには訳がある・66
『C国多摩事変・1』 
      


 よくある漢方薬の注文のメールだった。一日に数万件はある、それらの、ほんの三百件ほどだった。

 木下が、おかしいと思ったのは、それらが多摩ニュータウンに集中し、商品が、今はほとんど注文のない強壮剤だったからである。
 多摩ニュータウンは人口減少と多摩局地戦の影響で、規模が2/3に縮小され、高齢者の人口は減っている。
 こんな多量、同種の漢方薬が発注されることがおかしいと思った。勘の働いた木下は、そのうちの一軒を覗いてみた。
 内務省が極秘で持っている世帯個別調査のコードを使った。これを使えば、各世帯のテレビ内蔵のカメラや、PCカメラ、防犯カメラの映像を瞬時にみることができ、住人の個体識別もできるというスグレモノである。映された映像は、若い夫婦が子孫繁栄のための、ごく個人的な行為の真っ最中で、まちがっても強壮剤などは使わない。

「あ……」

 それはハッカーとしての直感であった。
 これは初歩的なハッキングによる情報操作だ。木下は受信先のアドレスを徹底的に洗った。
 その結果、今は壊滅した対馬戦争時代のC国陸軍の情報部宛になっていた。
 そこで木下は、その情報部のコードを偽造し、注文主に確認のメールを送った。すると、そこには、二世代前のチンタオ型、それもステルスタイプのロボットが十数台集結しつつある映像が映った。

「こいつはスリーパーだ……こないだのは、そのうちの一台にすぎなかったんだ!」

 チンタオ7号は考えた、ついさっき再起動したことを偽装電で送った。宛はチンタオ統合情報部である。そこから、再起動確認の偽装電が送られてきた。他の300台にも短波無線で情報を流し、全てのロボットが再起動の連絡をやりなおした。
 すると今度は、チンタオ統合情報部からではなく、彼らが以前稼動していたころには存在しなかった陸軍中央情報局から、暗号文で活動停止の電文が送られてきた。チンタオたちはこれをフェイクと考え、最初の再起動確認の電信を送ってきた者を敵と見なし、その発信源を突き止めた。

「しまった、こいつらCPを並列化して捜索してやがる」

 こんな事態になるとは思っていなかったので、簡易偽装と通り一遍の迂回しかやっていない。いかに二世代前とは言え並列化したCPなら数分で、ここを特定するだろう。

 木下は、CPを使ってワルサはするが、ごく身近な人間には「親切」な男である。
 となりの真由と優子を助けてやろうと思った。PCの一つを覗きモードにすると真由と優子の部屋が見える。就寝準備のため、布団をしいて、パジャマに着替えている。
「いつ見ても、真由ちゃんのオッパイってかわいい……いかん、今は、そんな状況じゃない!」
 木下は、慌てて隣の部屋に行きドアを叩いた。
「真由、優子、すぐに逃げろ、間もなくミサイルが飛んでくる!」
『なに言ってんの。あたしたち、もう寝るとこだから』
「寝ちゃダメだ、逃げなきゃ!」
『おやすみなさ~い』
「くそ!」
 木下は、二人の乙女を助けるべく、ドアを蹴破って中に入った。

 部屋の中はもぬけの殻だった。

「真由、たいへん。木下クンが、あたしたちの部屋に入った」
「え、ほんとだ」
「あいつ、チンタオのスリーパーに気づいて、あたしたちを助けようとしてるんだ!」
 その時、渋谷にいた二人の上空を一発のミサイルが飛んでいったのが分かった。
――木下クン、逃げて!――
 わたしは部屋のPCを起動して、思念で呼びかけた。それが音声化されて木下の耳には届いたが、パニックになっている彼は、とっさには理解できなかった。

 そして、数秒後にミサイルは、マンションごと、木下を吹き飛ばしてしまった……。


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高校ライトノベル・トモコパラドクス・43『東京異常気象・1』

2018-10-31 06:22:58 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・43 
『東京異常気象・1』 
       

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になったん…未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された! 娘である栞との決着もすみ、久々に女子高生として、マッタリ過ごすはずであったが……。


 東京は6日連続の真夏日で、ナントカ評論家たちが、地球温暖化のせいだと騒いでいた。

 温暖化がガセだというのは、未来を知っている友子にはフンってなもんだが、それを信じ込んでいる現代人には深刻だ。クールビズはダサイので下火気味だが、冷感繊維を利用した衣類は今年のヒット商品になってきた。
 残念ながら、乃木坂学院の制服は、そういう繊維でできていないので、学校に着くころにはアセビチャで、朝の教室は、耐汗スプレーや、抗菌スプレー、それに汗の臭いなどものともしない男どもの匂いが混ざって一種異様な臭いがする。

 友子も、紀香も義体なので、汗をかかないでおこうと思えばできるのだが、自然さを装うためにも人並みの汗はかかなければならない。先日の『ベターハーフ事件』では、うっかり汗も忘れていた友子だったが、あれから、16歳の女子高生に相応しい汗をかくようにプログラムしなおした。

 しかし、それが問題だった。

 汗というのは、適度なフェロモンが含まれていて、地下鉄の中などでは男どものイヤラシイ欲望を刺激してしまう。
 友子は、なるべく普通にふるまっているので、地下鉄でも必要が無くてもつり革に掴まっている。当然脇の下は無防備になり、合成フェロモンをまき散らしっぱなしである。また、友子の義体は、見た目には、ごく清楚な女子高生にできており、とても10万馬力には見えない。

 気づくと、お尻と右のオッパイを触られていた。

 お尻は、大学生のニイチャン。オッパイは新聞で巧妙に手を隠した公務員風のオッサン。二人とも顔はあさっての方角を向いている。
 大学生のニイチャンは、彼女に振られた腹いせが原因であることが分かったが、その後ろのサラリーマンのオッサンが――うまいことやりやがって――と、羨望の目で目撃しているので、放ってはおけない。
 方や、公務員風のオッサンは、どうやらプロで、この混雑の中、友子の足の間に膝を割り込ませてきた。

 ドサッ、グチャという音が同時にした。

「痴漢です、警察呼んでください!」
 友子はカバンを床に落とし、両手でニイチャンとオッサンの手をひねりあげ、股でオッサンの膝を締め付けた。

 ちょっとやりすぎた。

 ニイチャンとオッサンは手首を骨折、オッサンは膝の骨にヒビが入った。
「オッサン、よく、こんな痛む脚で……よっぽどのスケベだな」
「違うよ、こいつが凄い力で、オレの脚挟みやがって、イテテテ……」
「それにしても、お嬢ちゃん偉かったねえ!」
「わ、わたし、怖くて怖くて、でも、女性の敵だと思って一生懸命で……」
 友子は、顔を赤くして、涙さえうかべてみせた。
「でも、大した度胸と力だったよ!」
 駆けつけたお巡りさんが、あまりに褒め称えるので、つい言ってしまった。
「はあ、合気道を少々やっていたものですから……」
「ほう、自分もやっておるのですが、どこの流派で?」
 友子は、お巡りさんの心に浮かんだ流派を、そのまま口にした。
「はい……青芝流を」
「奇遇だ、自分と同じだ!」
「あ、わたしは本を読んで、ほんの真似事で……」

 この遣り取りが、新聞に載り、動画サイトで流れ、テレビでも放送したので、その影響は凄かった。
 絶滅寸前だった青芝流は入門者が引きも切らず。絶版になっていた『青芝流合気道入門』は大増刷になった。

 乃木坂学院の女生徒は被害者も多かったので、わざわざ全校集会がひらかれ、理事長表彰を受けただけでなく、痴漢撃退の講師まで、やらされた。

「あ、その……わたしが掴まえられたのは、たまたまですが。犯人の手を掴まえること、それが無理なら『警察を呼んでください!』と叫ぶことが大事です。『助けて下さい』では、一瞬意味が分からず、取り逃がすことがあります。この乃木坂学院から、犠牲者を出さないためにも、がんばりましょう!」
 みんなが拍手をする中、紀香一人が笑いを堪えていた。

 そして、この「警察呼んでください!」が、とんでもない事件を引き起こすのだった……。



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