大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・59『古戦場のピクニック』

2018-10-24 06:52:44 | ボクの妹

妹が憎たらしいのには訳がある・59
『古戦場のピクニック』 
    


「あ~たまに来る田舎もいいもんだなあ」

 高橋宗司がノビををした。


 わたしたちは、ひょんなことで友だちになり、みんなでお好み焼きパーティーをやったあと、今日のピクニックの話になった。
 で、木下クンの提案で、多摩の自然公園のピクニックに来ている。

 自然公園といっても奥多摩のような完全な自然公園ではない。今世紀の初頭まで、団地が林立していた多摩市、八王子市、町田市にまたがるニュータウンの北西部である。
 人口の減少、高齢化にともないニュータウンの過疎化が進み、先の極東戦争では首都圏内で唯一戦場になったこともあり、1/3にあたる1000ヘクタールあまりが、戦後自然に戻され、多摩自然公園……のようにされた。
 戦場跡であったので、そのままの状態で保存しようという声も高かったが、「平和を希求する日本の象徴」として、自然公園のように作り替えられ、昭和の昔には多くの人の営みがあったことなど、痕跡も留めていない。
 コンクリートやアスファルトなどは、クラスター砲(物質を分子の次ぎに大きいクラスターのレベルまで分解するショックガン。その威力は、一発で10000平米ほどに展開した戦車部隊を、鉄とセラミックのクラスターに分解し、核とは無関係なのに極地核兵器とまで恐れられ。戦後は国際法で使用が禁止された。なぜなら、人間さえタンパク質やカルシウムのクラスターに分解してしまう。今では対クラスターの技術も進んでいるのだが、象徴的に禁止兵器とされている)を民生用に転用したクラスター破砕機で素材にまで分解され、自然の岩のようにされて、十数年たった今では苔むして、見かけは完全な自然に戻っている。

 わたしは無意識に、その「自然な姿」をCPの中で元の形に復元して見ていた。

――ここは、ジブリの『耳をすませば』のモデルになった公団住宅のあたりだ――

「なに思い出にふけってんのよ」

 優子が、たしなめた。義体の能力を使えば、パッシブセンサーに捉えられる可能性がある。
「優子だって、こないだ宗司クン助けたじゃん」
「あれは、一瞬の出来心。真由、もう10分もサイトシーングしてるよ」
「ああ、やっぱ、あれは出来心だったのか!」
 意外なところで、宗司クンが傷ついた。
「あたりまえでしょ、あんなのほっといたら、事故になって、みんなが迷惑するんだからね」
「ねえ、ここらへんでお昼にしようよ!」
 宗司クンの気を引き立てるように、春奈が明るく言った。

「うわー、豪華なランチパックじゃないの!」
「夕べから、川口さんといっしょに作ったんです」
 宗司クンが際どいことを言う。
「それって、原因、結果?」
 木下クンが、意地悪な質問をする。
「いやあ、作っているうちにアイデアが膨らんで、あれも、これもって……」
 宗司クンが頭を掻く。
「あ、結果ですからね、結果。宗司クンには下心なんかありません!」
「そういう言い方って、想像力をかきたてんのよね」
 真由まで調子にのりだした。

「ここに、カントリーロードが走っていた」

 ちっこいPCを出して、木下クンが言った。
 覗いてみると、PCには今の風景と、ニュータウンがあったころの風景が、重なって映し出されていた。
「この道を挟んで、杉本が雫を呼び止めるんだ」
「知ってる、で、神社ですれ違いの告白になるんだよね!」
 と、わたしが言おうとしたことを春奈が先を越した。
「しかし、木下クンのPC技術はすごいね」
「実は、他にも使い道が……」
 地図にグリーンのドットが現れた。
「なにこれ?」
「多摩奇襲作戦で、敵のロボットが破壊された場所」
「今でも残ってんの!?」
 優子がすっとんきょうな声を上げ、驚いた小鳥が二三羽飛び立っていった。
「本体は回収されたけどね、部品が地中に埋まってる……こいつを掘り出して、オークションにかければいい値段になるんだけどね」
「ひょっとして、木下クン、そのために、わたしたちを連れてきたとか?」
「少しはあるけどね、みんな地中深くだ。大がかりな重機でもなきゃ無理さ。たとえできても採算が合わない…………ん、これは?」

 モニターに赤いドットが現れた。

「こいつ、生きてるよ!」

「え、何が?」
 みんなが寄ってきた。
「これは国防軍のレベルCの機密なんだけど。奥多摩奇襲作戦で補足した敵のロボットと撃破したロボットの数が一つ合わないんだ。カウントミスということになっているけど、こいつはスリーパーだったんだ……」
「寝てたの?」
 春奈が、あどけない質問をする。
「今までは、グリーンの残骸と認識されていたんだ……」
「なあ、このドット動いてないか?」
 宗司が、信号機が変わったぐらいの関心で言った。
「ヤベエ、こっちに近づいている!」
 その時、地響きがして、やがて地震のような揺れになった。
「みんな、逃げよう!」

 ボーーーーーーン!


 鈍い爆発音のようなのがして、現れた……そいつが。

 C国の戦時中の出来損ないのガンダムのようなロボットが……。


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高校ライトノベル・トモコパラドクス・36『50年後 友子の決着・1』

2018-10-24 06:43:08 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・36 
『50年後 友子の決着・1』 
      

 三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された!



 二トンもある隔壁の扉が開いた。一メガトンの戦術核の爆発にも耐えられる特殊部隊のラボである。

「母を捕獲しました。安全のため全ての動力をダウンし、僅かでもCPUが起動の兆しを見せたら、即破壊されるようにしてあります」
 栞は無表情に答えた。このラボでは、感情を交えたコミニケーションは禁止されている。長官は、無機質に聞いた。
「この二体の君の義体は?」
「ご覧のように、母にプラグインして、万一の場合は、自分の動力とショートさせ、身をもって安全を確保するようにしてあります」
「栞らしい念の入れようだな。しかし、こいつは本当にオリジナルなんだろうな?」
「戦闘詳報は、ダイレクトで送らせていただきましたが」
「たしかに、お前と義体二体で友子を捕獲し、フリーズさせた上で動力をダウンさせるところは確認している。しかし、こいつがオリジナルであることは、状況証拠しかないからな」
「しかし、このラボに入るときに、我々も含めてアナライズされたと承知していますが」
「栞と、その義体はな。しかし友子は違う。なんせ、こいつを作ったのはミームの連中だ。詳しいスペックも、シリアルも確認できていない」
「我々のメモリーの確認だけではいけませんか?」
「君のメモリーには主観が入っている。こいつがオリジナル友子であるという」
「では、どのようにして確認を?」
「八十年前、人間だったころの友子を争奪しようとしたことがあるだろう」
「はい、ミームの工作員は始末。母は、瀕死の重傷で、それが義体化のきっかけになったと承知しております」
「そのとき、破壊された工作員のCPUから、一部だけだが、義体の情報を抜き出せた」

 この情報は、栞は知らなかった。長官から得ていた情報にはダミーやフィルターがかけられていたようだ。

「これを見たまえ」
 長官のガード兼秘書が、モニターにあるものを写した。
「これは……」
「友子のシリアルだ。3Dのホログラムになっている。我々の技術でもできない高度なものだ。この友子の義体に宇宙人のテクノロジーが使われているのは間違いない」
「まさか、母のシリアルと照合しようと!?」
「ああ、それが一番確実だからな」
「いけません。そのためには母のCPUの一部を起動させなくてはなりません。何が起こるか分かりません。危険すぎます!」
「多少のリスクを冒しても、確認はしなくてはな。おい」
 長官は、直接栞の合成義体に命じた。
「はい、十秒お待ち下さい。安全性の確認を行った上で実施します」
「これで、君たちが本物であることも確認できた。オリジナルのお前を含め、栞の義体は、俺には反抗できないからな」
「安全性の確認ができました」
「ようし、シリアルを出せ」

 モニターに資料とそっくりなシリアルが映し出され、ラボのCPUも百パーセント本物であることを証明した。

「よし、確認できた。友子を破壊しろ」

 長官が静かに命じた……。

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