大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・春夏秋冬物語・04妹〔ふってきた!・4〕

2018-10-06 16:07:16 | 小説7

物語・04妹

〔ふってきた!・4〕


 学校のホームページに、制服見本とかあるじゃやない。

 たいてい清楚・真面目・明朗を絵にかいたような男女がカッコよく立って、ニッコリだかニンマリだかしている。
 その女生徒の見本みたいなのが、ブティックのガラスに映っていて、あたしを見ている。

 見ているはずで、映っているのはあたし自身。

 でも、ナルシストってわけじゃない。
 自分が、いまどんな風なのかくらいは、ガラスに映してみなくても分かる。いつもなら、ガラス見たりはしない。
 今日は特別。なんといっても、言い寄って来たモブの竹内に引導を渡す。
 でも、制服見本、いえ、それ以上のセレブリティーたる春夏秋冬(ひととせ)美代はムゲな振り方はしない。してはいけない。
 だから、ガラスに映る自分を見て、自分を落ち着かせる。
 
 ちょっと目と口の端に力が入り過ぎている。

 立ち止まってニッコリしてみる……うん、善良で可愛い女子高生だ。
 ん……目のピントを変えると、ブティック店内のオッサンと目が合った。
 変な誤解をされないために、しおらしくドギマギしておく。
 ほんとうに、家の中以外では気を使いまくり。

 二つ目の角を曲がったときに、遠回りになるけど、一本道を外した。

 ちょっと遠回りだけど、竹内に追いつかれることは無い。
 追いつかれ、横に並ばれて話すなんてごめんだし、並んでるところを人に見られるのもヤダ。

 公園の入り口に、竹内は立っていた。

 カバンは持っているけどペッタンコ。シャツは第二ボタンまで外し、ゾロッと裾を出している。短い脚が余計に短く見える。
 髪の裾は野球部みたく刈り上げてんのに、その上を伸ばしている。前髪なんか、垂らしたら鼻の上まで届きそう。
 靴は、学校指定のだけども、縁が薄汚れてる。そして、腰パンを連想させるようなスニーカーソックス。なんでローファーにスニーカーソックスなんだ! もう、この姿だけでゲロが出そう。

「ごめん、待たせちゃったみたいね」
 そう言いながら、ポケットからハンカチを出す……ついでに防犯ブザーを落としておく。
「ごめんなさい、そそっかしくて……あ、ありがとう」
 竹内に防犯ブザーを拾わせた。
「歩きながら話していい? ゆっくりと」
「あ、うん……」
 目を合わすことなく、無言で2分ほど歩く。全身でごめんなさいオーラを発しておく。

「嬉しかったわ、告白してくれて」
「う……うん」

 緊張してんだろう、しきりに汗を拭く。せめてタオルハンカチとかで拭けよ……ウ、なんで美装堂のイチゴシャンプーの匂いがするわけ? それってJC御用達じゃんよ、マジキモイんだけど。
「あたし、器用じゃないから……飾らずに言うわね。いい?」
「う……うん」

 一歩前に出て立ち止まる、竹内の方を向いてね。

「あたし恋愛モードには入れないの。高校に入って、まだ3か月たらずでしょ。あたしってば、まだ自分の居場所がはっきりしない、部活には入り損ねちゃったけど、勉強以外に打ち込めるものとか、そんなの探してるの。高校生活って3年間でしょ、大事にしたいし、竹内君も大事に……と思うの。竹内君に不足なんてないのよ……出会う時期が早すぎた……のかな? だから、竹内君がどうのこうのってことじゃなく、だれとも、そいうモードにはなれないの。分かってくれるかな……」

 ここで目線をそらしちゃいけない。

 がまんして竹内のドーナツの穴みたいな目を見つめる。

 で、信じられないことに、竹内の目が潤んできやがる!

 めんどくさいけど、涙を貯めてみる。その涙を手で拭い、涙に濡れた手で竹内の右手を握ってやる。
「ごめん、これだけしか言えない。ごめん……」
 あたし、ほどよく声が震えてる。
「ほんとに、告白してくれてありがとう……じゃ、じゃあね!」

 クルリと回れ右。そのまま、小走りで家に帰った。

「今夜は冷製ブタシャブと茄子のポン酢かけ」
 家に帰ると、ニイニが夕飯メニューを言う。
「うん」
 我ながら無愛想に返事。2階へ上がるあたしに、ニイニの声が追いかけてくる。
「雨降ってたか?」
「うん、ふってきた」
「ん……?」

 ふってきたのアクセントを間違ってしまった。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・妹が憎たらしいのには訳がある・41『Departure(逸脱)・2』

2018-10-06 06:56:49 | ボクの妹

妹が憎たらしいのには訳がある41
『Departure(逸脱)・2』
    


 母が息を引き取りました……モスボールおねがいします

 管理室からナースがやってくるまでの間に、わたしはママのバトルスーツに着替え、駐車場に向かった。
「わるいけど、アズマ貸して。夕方までには帰ってくる」
「あ、あんたは?」
「甲殻機動隊、第一突撃隊隊長里中リサ。ねねのママよ。ねねの制服とカバン預かっといて」
「え、ええ!?」
 わたしは、呆然とする拓磨を置き去りに、第三名神を目指した。

 二時間半後、わたしは防衛省から一キロ離れたパーキングに着いた。

 セキュリティーレベル2の地域で、政府関係者や、政府と特殊な関係にある者でなければ、パーキングは許されない。幸い、このアズマは、小なりと言えど青木財閥の車である。パーキングのセキュリティーには、青木社長の秘書のIDをかましてある。そのまま防衛省の中に入ることもできたけど、のちのち拓磨の迷惑になることは避けたかったので、実在の警務隊員のパスをコピーした。本人は仮死状態で植え込みの中で転がっている。三十分は生命反応も出ない。もっとも三十分を超えると、罪もない警務隊員は、そのまま命を失う。仮死状態にする寸前彼女の彼の顔が浮かんだ。一カ月後に結婚の予定のようだ。二十分もすれば仕事は済む。ごめんね……。

 ここに来るまでの二時間で防衛省のセキュリティーは完全に解読した。庁舎に入る寸前で、バトルスーツをステルスモードにした。エレベーターは重量センサーが付いているので使えない。わたしは、地下三階の動力室に向かった。ここの床や、天井にも重量センサーが付いているので、そのままでは入れない。警備員の頭に、動力室からのノイズのダミーをかました。
「ん……?」
 警備員が不審に思い目視で室内の異常確認をする十秒の間に潜り込む。警備員が床に足を降ろすタイミングに合わせて、床に足を着く。警備員の体重は、わたしの体重を引いた分しか感知しないようにしてある。そして、その間に制御板に爆薬をしかけると、警備員の足に合わせて部屋を出る。花粉症の警備員は、部屋を出る寸前クシャミをしたが、それは織り込み済みだ。瞬間跳躍してごまかす。ただ、体重をもどしたとき、オナラをされたのにはヒヤリとした。幸いセンサーは誤差と読んだが、わたしは、極東戦争から十数年で失われた緊張感が悲しかった。

 長官室の前まで来ると、意外にセキュリティーは甘い。

「甲殻機動隊、第一突撃隊長入ります」
「入れ」
「失礼します」
「ん……おまえは!?」
「セキュリティーの過信ね、声紋チェックもしないなんて。ここは突撃隊でも総隊長しか入れないのよ。わたしは第一突撃隊長と言っただけ」
「里中、治ったのか?」
「里中リサは、二時間前に死んだわ。助からない放射線障害であることは、的場さんが一番ご存じでしょ。だから二階級特進で少佐にしてくれたんでしょ」
「おまえは……」
「義体よ……」
「グノーシスか!?」
「どうでもいいわ。あなたが防衛政務官だったとき、どれだけ状況判断を誤ったか。死ななくていい二千人が命を落とした。里中リサのように後遺症で亡くなった人間も合わせれば一万人は超えるでしょうね」
「……!」
「この部屋のセキュリティーにはダミーをかましてある。あなたは、甲殻機動隊の来栖総隊長と話してることになってる。ゆうべ東海地方で、亜空間にほころびができたから」
「な、なにをさせたいんだ、わたしに!?」
「K国とC国の機密条約を流してもらう。両国ともに、こちらへの攻撃準備に入っているのは、情報として上がってきているはずよ。防衛大臣である的場さん。あなたが一人で握りつぶしている……でしょ。機密条約が子供だましなのは、それこそ子供でも分かるわ。条約と情報の両方を流してもらうわ。そうすれば国民も気づくでしょう、第二次極東戦争の危機だって。そして、的場さんたちがどれだけ日和っていたか。もう、昔のハニートラップで懲りたはずでしょうに、性根が腐ってるのね」

 ドーーーーーーーーーーン!!

 腹に響く衝撃音。

「な、何をした!?」
「動力室を吹き飛ばしたの。予備電力で見た目に大きな障害はないでしょうけど、ここのMPCは、全部ダウン」
「な、なんてことを!」
「K国もC国も同じことをやろうとしていた。互いにフライングだって騒ぎになるでしょうね。ただ、わたしが、それより早くフライングしたから、現場の対応は早いわ。的場さんの首が一つ飛んで、大事にはいたらないんだから、良しとしましょう。ほら、お土産」
「ア、アルバイトニュース!?」
「明日から、額に汗して働くのよ、ボクちゃん」

 そうして、わたしはそのまま防衛省を後にした。

 途中、C国とK国の工作員に出くわした。やつらの頭は情報収集で一杯だったので、ダミーの情報をかますことは簡単だった。両国とも互いのフライングだと思っている。
 ただ、現場は忙しいだろう。明日と思っていた攻撃が今日始まった。敵も同じで、準備はまだ整っていない。あらかじめ国防大臣の意向を無視して準備していた味方の勝利は間違いない。パパたちは少し忙しくなるだろうけど、わたしのDepartureは、これで、おしまい。

 夕方になって警察病院に戻った。オート走行でもどると、待合いから拓磨が慌てて出てきた。
「ねねちゃん、大丈夫……!?」
「とりあえず、制服くれる?」
 下着姿のわたしは、ドアの窓を半分だけ開けて、腕を伸ばした……。


コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高校ライトノベル・トモコパラドクス・18『乃木坂パンケーキ』

2018-10-06 06:45:47 | トモコパラドクス

トモコパラドクス・18
『乃木坂パンケーキ』
      

三十年前、友子が生む娘が極東戦争を起こすという説が有力になった未来。そこから来た特殊部隊によって、女子高生の友子は一度殺された。しかしこれに反対する勢力により義体として一命を取り留める。しかし、未来世界の内紛や、資材不足により、義体化できたのは三十年先の現代。やむなく友子は弟一郎の娘として社会に適応する「え、お姉ちゃんが、オレの娘!?」そう、友子は十六歳。女子高生としてのパラドクスに満ちた生活が再開された!


 優に五十人は並んでいた……と、思いきや、角を曲がって、もう八十人ほどが並んでいた!

 部室のプレステ5で、紀香VS友子の模擬戦をやり、データをとった二人は、いそいそと新装開店の駅前のパンケーキ屋さんに急いだ。

 乃木坂パンケーキ

 おしゃれなキーワードが二つも入っている。乃木坂ほど由緒正しく、東京の老若男女が「ちょっとオシャレでイケテル」と思える地名は他にはない。銀座も池袋も新宿もエリアが広く、ポピュラーな割には、ゴッタ煮の感じで、この地名を冠してオシャレと思えたのは昭和まで、いいとこバブルの時代まで。
 そこへいくと、乃木坂というのはエリアも狭く。ついこないだまでは「ああ、そういえば……」程度の知名度。これに色を付けたのはNOGIZAKA46と『まどか 乃木坂学院高校演劇部物語』ぐらいのもので、まだ、そんなに手垢の付いた地名ではない。

 方やパンケーキは、この春から全国的に流行りだした。
 要は、ホットケーキのことなんだけど、バターにメイプルシロップという定形をくずして、いろんなスィーツやクリームを挟んだり、トッピングしたり、コラボさせたり。まあ、ホットケーキのアイデア賞。というか、伝統的なホットケーキに便乗した、ナンチャッテスイーツと言えなくもない。

「ねえ、ちょっと待ってくださいよーー!」

 寝ぼけマナコの妙子が、制服のリボンを揺すりながら、乃木坂を駆け下りてきた。
「うわー、こんなのができたんだ。おお~、いま流行の最先端のパンケーキじゃないっすか。こんなに並んじゃって。へー、こだわりのプレーンパンケーキ! これは並ばない手はないですね!」
 妙子は、列さえ出来ていれば並ぼうというオバサンDNAを働かせた。この行儀がいいというか無節操というか、こういうノリにはついて行けない友子であった。
「こう言うときに並ぶ練習して、きたるべき災害時に備えるんじゃあ~りませんか!」
 妙子はポジティブというか、おめでたいというか。ただ「食いたい!」という気持ちから災害対策まで持ち出して、その意欲を見せた。
「あ、大佛クンも浅田麻衣、徳永亮介……長峰さんまで並んでる」
「うちの生徒と坂下の都立乃木坂で半分は占めてるね」

 気が付いたら並ばされていた、妙子はじめ高校生の情熱というのは大したもんだと思った。三十年前の女子高生が、この時代の女子高生として蘇った友子には、もっとエネルギーの使いようがあるだろうと思われた。受験戦争だって、これにくらべれば高尚なものに思えたし、知識として知っている新宿フォークゲリラや、学園紛争は、文化や、政治のありようさえ変える可能性があった。
 でも、ものがパンケーキでは、さっきまで紀香とやっていた、模擬戦の方が情熱が湧く。

「……!」
「どうした、友子?」
 紀香が小声で聞いてきた。

――殺気!――

 心で、そう叫ぶと、友子はテレポートしていた。また自分の能力を発見した。

 そこは……富士の樹海であった。

 木の間隠れに見える姿は、都立乃木高の制服を着ていた。
「あなたね、三十年前の事故から、未来の技術で蘇った子って……鈴木友子っていうのね」
 そういうと、その子の気配は背後に回っていた。
「あなたは……」
 友子は、相手の思念やスペックを読み取ろうとしたが、何一つ分からなかった。
「この惑星の人間は、不安と猜疑心をこんなカタチで現すこともあるのね」
「それって、わたしのこと?」
 また、気配が移動した。
「あなたの中には、人類の不安がとんでもない力として凝縮されている。でもあなたには、これっぱかしの悪意もない。安心したわ……」

 気づくと、パンケーキ屋の列に戻っていた。

――友子、テレポしたわね――
――ちょっと変なのがいたんで……でも、もう大丈夫――

 そう言うしかなかった、相手のことは何も読めなかった。この列のどこかにはいるんだろうけど、もう気配も感じない。ちょっとおかしいけど、缶コーヒーのCMに出てくるオジサン宇宙人を連想した。

「あ~、おいしかった。やっぱ、パンケーキはプレーンだね!」
 妙子は無邪気に喜んで、向かい側のホームに行った。

「あの店、市販の業務用のパンケーキ粉に、タイ焼きの残った粉混ぜてるね」
「成分分析したのね」
「タイ焼き屋のおじさん、体こわしたんだね。で、息子が流行に乗ってパンケーキに転業」
「まあ、詐欺っちゃ詐欺だけど、動機の半分はオヤジさんの治療費……」
「そっと、しとこうか。ね……友子」

 あの宇宙人も、このことを調べに?……苦笑する友子であった。
 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする