大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

高校ライトノベル・魔法少女マヂカ・053『司令の目は笑ってはいなかった……』

2019-08-03 12:05:09 | 小説

魔法少女マヂカ・053  

 
『司令の目は笑ってはいなかった……』語り手:マヂカ  

 

 

 ちょっと困った。

 

 調理研の三人、体力や運動能力が目に見えて向上しているのだ。

 水泳のテストで、友里と清美は自己ベストを出した。ほとんどカナヅチのノンコも既定の25メートルを泳ぎ切って目を丸くしている。

 ノンコは、泳ぎ切らなければ鬼の補習がまっているので必死だったから、本人も周囲も感動を持って納得している。

 友里と清美は25メートルは楽勝なので、ごく普通に泳いでいての自己新記録なのだよなあ。

「ノンコの波にのっちゃったんだよ! それだけ、ノンコのは感動的だったしさ!」

 苦しい説明だけど、二人ともノンコの偉業を素直に喜んでいるので、なんとか「そうか、友情の賜物なんだよな!」ということに収まった。

 問題は、これからだ。

 三人の体力と運動能力が向上しているのは、特務師団の高機動車北斗のクルーになって、訓練と実戦を経験しているからだ。

 むろん魔法少女たるわたしやブリンダに及ぶものではないんだけど、並みの女子高生の能力ではなくなってきている。

 三人が任務に就いているのは亜次元の時空の中だ。亜次元の中ではリアルには時間が進まない。霊魔相手に何時間死闘を繰り広げても、リアルには一秒も時間がたたないのだ。

 彼女たちのアビリティーは確実に向上して、このままでは、周囲も本人たちも不思議に思うだろう。

「いっそ、三人には本当のことを言っておいた方がよくはないかな」

 来栖司令に話すと「これから、まだまだ熾烈な戦いが続く。人が死んだり傷ついたりが当たり前になるんだ。亜次元のことも知ってしまえば、かなりのストレスになる。伏せておいた方がいい」という答えしか返ってこない。

「しかしね、わたしはリアルでも三人とは付き合いがあるんだ。ハラハラしながら学校生活を送るのは勘弁してほしい」

 テディ―が淹れてくれたお茶をすする。思いのほか冷めている。

「淹れなおしましょうか?」

「あ、すまん」

 テディ―が丸っこい手でカップを掴んで給湯室に向かう。

 どう見ても縫いぐるみのテディ―が人語を操り、ドラえもんみたいな手で器用にアレコレをこなす、時と場合によっては、丸っこい手に武器を持って霊魔と戦うこともある。霊魔の多くは人の姿をしている、切れば血も噴きだすし、苦悶の表情を浮かべることもある。そんなのを目にしたら……リアルの意識で任務に就くのは問題があるだろう。

「君たちは調理研究部だったな」

「うん、もっぱら食べることばかりになってきたけど」

「調理や食材集めで心身を鍛えると言うのはどうだろう」

「調理と食材集め?」

「ああ、ツバメの巣とか、ある種のキノコ、徐福が求めた不老不死の果物とか、そういうレアものを集めることにしたら、心身を鍛えることにもなるだろう。調理にしても、食材によっては鍋振りとか包丁とか、かなり体力を使うものもありそうじゃないか」

「正気?」

「自衛隊メシも経験してもらったし、レンジャーの食事を体験してもらうというのもいけるかもしれない」

「泥水すすったり、蛇を生で食べたりする、あれをやれってかあ……」

「自然に心身が鍛えられるぞーー」

「「アハハ……」」

 互いに笑ってごまかしたが、司令の目は笑ってはいなかった……。

 

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高校ライトノベル・連載戯曲『となりのトコロ・4』

2019-08-03 06:20:32 | 戯曲

となりのトコロ・4 

大橋むつお

 

時   現代
所   ある町
人物……女3  

のり子
ユキ
よしみ

 

 

ユキ: ユキ、北風ユキ……
のり子: そりゃまた、ずいぶん寒そうな名前だ!
ユキ: ひい婆ちゃんが雪女だったの。
のり子: アハ……
ユキ: また本気にしてない。
のり子: してるしてる。あんまり突然に、ぴったりの名前とひい婆さんだったからさ。うん、それで……?
ユキ: ほんとうに真剣に聞いてくれるの?
のり子: うん、真剣。
ユキ: (さぐるようにのり子の目を見る)じゃ、しばらく姉さんを抱っこしててちょうだい。ほんとうに真剣なら、姉さん起きないわ(姉をおしつけて、下手の端にうずくまる)
のり子: ……ん(ポケットをまさぐり、ポケティッシュを渡す)
ユキ: ……ん?
のり子: ガマンしてるとからだにわるいよ。
ユキ: ちがうわよ! 考え事してんのよ。
のり子: 考え事?
ユキ: (舞台中央まで走り、大事なほうの傘を、思いつめた顔で開こうとする)……!
のり子: 雨なら、とっくに止んだよ。
ユキ: やっぱりだめだ。やっぱり開かないんだ(泣く)
のり子: ユキ……?
ユキ: お父さんやっぱり開かない……お父さんやっぱり開かない!
のり子: (勘ちがいして、あたりを見回す)ユキ、あんたお父さんと二人連れだったの?

ユキ: お父さんは、この傘。
のり子: え?
ユキ: この傘が、お父さんなの。
のり子: ……傘が、お父さん(ユキと目が合う)信じてるよ! その傘がお父さんなんだ!
ユキ: (もう一度開こうと努力する)お父さん開いて! お願いだから、素直に開いてみせて……(傘を構えたまま泣きくずれる)
のり子: ユキ……話してくれないかな……納得はしてるんだよ。その傘がお父さんだって、うん。でも、その……話がさ、見えてないんだよね……その、姉さんがブタで、ひい婆さんが雪女で、お父さんがこうもり傘だっとかさ……そして、どうしてユキがひとり寂しくバスを待ってるいるのか?
ユキ: 姉さん、目をさましてない?
のり子: う、うん。
ユキ: 姉さんの胸に耳をあててみて。
のり子: 心臓の音が聞こえる……
ユキ: どんなふうに?
のり子: なんか変……
ユキ: どんなふうに変?
のり子: だってリズムが……トントコ、トントコ、トントコトッコトッコ。トントコトントコ、トントントントン……なんだかミュージカルにあったよね、このリズム……
ユキ: そう、コーラスラインのリズム! やっぱり、あなたは本物なんだ! 姉さんの心臓のリズムがわかるんだから!
のり子: でも、どうしてコーラスラインなの?
ユキ: ミュージカルスターに憧れていたの。憧れるだけでなんの努力もしなかったけどね……ふつうの人には、ただのブタぬいぐるみ。でも、こうやってイッチョマエに心臓は動いている。それがわかるあなたは信じることができる。信じていい人。あなた……

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高校ライトノベル・高安女子高生物語・45〈高安幻想・4〉

2019-08-03 06:15:40 | 小説・2

高安女子高生物語・45
〈高安幻想・4〉        


 うち自身が元の世界にもどれるかどうか……。

 それが、戻れてしもた!

 正成のオッチャンが、この古墳の石室に身を隠してならあかん事情を切々と説明したあと、なんや匿うたげならあかんようんな気ぃになってきた。どうやら、赤坂城で一暴れしたあと、護良親王の令旨(りょうじ)を受けて再び挙兵しようと潜伏中やったらしい。

「わいは、どないしてもやらならアカンのんじゃ」

 この和歌に十文字足らん言葉に万感の思いがあった。うちらの平成の時代のオッサンらには無い心にしみ通るような響きがあった。

 で、どないかしたらなアカン……と思たら、元の恩地川のほとりに、うち一人で立ってた。

 ゲンチャが脇をすり抜けていくのにびっくりして、我に返った。

「なんや、夢でもみててんやろか……」
――夢や無い。明日香の心の中に居る――
「え、うちの中!?」
――なんや、様子が変わってしもとるけど、信貴山、高安の山のカタチはいっしょや。これが七百年後の高安か――
「正確には、恩地との境目やけどね。とりあえず家帰るわね」
――あの、高安山の上にある海坊主みたいなんは、なんや?――
「あれは、気象レーダー……言うても分からんやろなあ」
 
 それから、家に帰るまでは質問攻めやった。いちいち答えてたら、通行人の人らがへんな目で見るさかい、シカトすることに決めた。正成のオッチャンも勘のええ人で、うちの迷惑になるのん分かったみたいで外環超える頃には、なんにも聞いてこんようになった。ただ、うちの心の中に居るんで、オッチャンの驚きがダイレクトに心にわき起こって、うち自身ドキドキやった。

「ただいまあ」

「おかえり……」
 めずらしい、お父さんが二階のリビングに居った。と、思たら、もうお昼や。
「明日香。生協来たとこやから、パスタの新製品あるで」
「ほんなら、もらうわ」
 うちは、自分の意志やないのに答えてしもた。どうやら正成のオッチャンがお腹空いてるらしい。
 レンジでチンして、和風キノコバターとペペロンチーネを二つも食べてしもた。

「ああ、おいしいなあ!」

「明日香が、そないに美味しそうに食べるのん久々やなあ」
「ああ、育ち盛りやさかい。アハハ」
 まさか、自分の中の正成のオッチャンが美味しがってるとは言われへん。うちは、それから、自分の部屋に戻ってから、どないしょうかと思た。
「正成さん、ずっと、こないしてうちの中に居るのん?」
――しゃあないやろ。どうやら、この時代では、明日香の中からは出られんようやさかいな――
「せやけどなあ……」
――狭いけど、いろいろある部屋やのう。あの生き写しみたいな絵は明日香やなあ――
 馬場先輩に描いてもろた絵に興味。
――この絵にはタマシイが籠もっんのう。ただ残念なことに、これ描いた男は、明日香のことを絵の対象としか見とらんようやけどな。まあ、大事にし。何かにつけて明日香の助けになってくれるで――
 それは、もう分かってる。
――なんや、知ってるんか。そこの仕舞そこねた雛人形も大事にしいや。もうちょっと、日ぃに当たっていたいらしいで。その明日香の絵ぇとも相性良さそうやさかい――
「分かってます。それより、ちょっとでもええさかい、うちの心から離れてもらえません。なんや落ち着かへん」
――しかしなあ……その日本史いう本はなんじゃい?――
「ああ、うちの教科書。日本でいっちゃん難しい日本史の本」
――おもろそうやなあ……しかし、日本史いう言い方はおかしいなあ。まるで日本いう異国の歴史みたいや。日本国の歴史やったら国史やろが……――

 正成のオッチャンが呟くと、心が軽なったような気ぃがした。

「正成さん、正成のオッチャン……」
――なんじゃい――
 なんと、山川の詳説日本史の中から声がした。
「オッチャン、いま本の中に居てるのん!?」
――なんや、そないみたいやな――
「大発見。オッチャン本の中にも入れるんや。本やったら、なんぼでもあるさかい、本の中に居って」
――ああ、わいも興味津々やさかいな――

 一安心、いつまでも心の中におられてはかなわん。あたしは、新学期の準備と部屋の片づけしてるうちに、正成のオッチャンのことは忘れてしもた。
 気ぃついたんは、夜にお風呂に入ってから。

――明日香、おまえ、なかなかええ体しとったなあ――

 心の中から、オッサンの声がしてびっくりした!
――しかし、明日香、おまえ、まだおぼこ(処女)やねんのう――
 顔のニキビを発見したほどの気楽さで言われたが、言われた本人は、真っ赤になった……。

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高校ライトノベル・里奈の物語・44『た、た、妙子ちゃん……!』

2019-08-03 06:08:47 | 小説3

里奈の物語・44
『た、た、妙子ちゃん……!』 



 フラグが立った。

 広東風カニあんかけチャーハンのあと、あたしはお店の手伝いに下り、妙子ちゃんは部屋で持ち帰りの仕事を始めた。

「ごめんください」

 閉店間際に、ハッとするほどのイケメンがやってきた。
「いらっしゃいませ」
「わたし、妙子さんの会社の者で田嶋と申します。妙子さん御在宅でしょうか?」
 TL(=Teen's Love)なら相手役の男性にぴったりのイメージ。
 前を開けたPコートの下にはチェックのシャツとTシャツ、三月ほど床屋に行っていないような髪は耳を半ばまで隠しているが、不潔さは無く、いかにもコンピューターソフトの開発に命を懸けているヤングアダルトの風格。

「あ、副長!」

 ちょうどブルゾン抱えて下りてきた妙子ちゃんが、嬉しさ色の声をあげた。
「すまない、やっとの休みなのに」
「ううん、副長こそ。いいアイデア浮かんだんですね?」
「うん、冷めないうちに妙ちゃんに見てもらいたくて」
「じゃ、いっしょに。あたしコーヒー飲みに行くところだから」
「そっか、じゃ」
 副長さんは、伯父さんとおばさんに一礼すると、妙子さんといっしょに出ていった。
「妙子のとこも忙しいようやね」
「正月もヘッタクレもなさそうやな」
「あ、あんた、あたしらもぼちぼち時間やし」
「ほんまや!」

 伯父さんとおばさんは、商売仲間の新年会に出かけ、あたしは一人ぼっちになった。

 広東風カニあんかけチャーハンをたらふく食べたので、夕飯はまだまだ早い。
 で、やりかけの『早春賦』を詰めることにした。

 十分ほどで分岐にきた。

 意外なサブキャラの名美にフラグが立った、こういう突発的な展開に、あたしは素早い反応が出来ない。
「迷うなあ……」
 一瞬迷ってクリック。
「この展開は……」
 エロゲとはいえ、ゲーム。話の展開に意表を突かれるとニンマリする。

 え……Hシーンはまだ先だろう?

 パソコンの画面は、名美が新しい彼と微笑ましく土手道を歩いている。
――あ、そこ……ウ……クフン……ウ、ウ、ウ、だめ、声に出ちゃうよ……あ、あ、あ、あ、君が、君のが入って、あっ、あっ……!!――
 画面に合わない声がヘッドフォンから……いや、ヘッドフォンの外から!?
 ヘッドフォンを外して首をめぐらせると、声は部屋のドアの外……向かいの妙子さんの部屋から聞こえてくる。

 いつの間にか妙子ちゃんは副長さんと帰ってきているんだ。

 エロゲでは慣れっこになっているけど、生のHシーンを声だけとはいえ、その……初めて!
 た、た、妙子ちゃん……!
 あたしは、廊下で顔を真っ赤にして固まってしまった!
 

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高校ライトノベル・須之内写真館・17『クリスマスのディスプレー』

2019-08-03 06:02:17 | 小説4

須之内写真館・17
『クリスマスのディスプレー』           


「ウワー、こんなのありー!?」

 美花が感嘆の声をあげた。ちょっと言葉の使い方を間違えているが、感動が籠もっていた。
 須之内写真館のショーウインドウの飾り付けをやっている。
 美花と杏奈が、頼まれもしないのに学校のテストが終わると率先して手伝いにきた。

 二人ともガールズバー『ボヘミアン』のバイトまで居場所がないのだ。

 よかったら、ディスプレーのやり換えするから見においでよ。あらかじめメールはしておいたが示し合わせたように駅で一緒になり、そろってやってきた。
 念のため、杏奈は私立のU高校で、美花は都立のS高。杏奈はテスト最終日。美花はもう一日あるが、三年生なので、開き直っているようだ。ひい婆ちゃんのお葬式が、ついこないだあったばかりで、余計にそうなんだろうと、直美は理解した。

 須之内写真館は、よく飾り換えをやる。商売のためでもあるが、手の器用な親子三代が半ば趣味でやっている。

 今回のテーマはクリスマスだ。小さなライトをいくつも仕込み、サンプルの写真が順次浮き立つようにする。上の方にはトナカイに曳かれたサンタのソリが不規則な動きをし、サンタが前を通過したときに写真のライトが灯る仕掛けになっている。
 下の方は、街のディスプレーの間を汽車がライトを点けて走っている。
 そして、極めつけは循環式で降ってくる粉雪の仕掛け。

 全てのディスプレーが決まったあとに電源を入れて、全てが動く仕掛けになっている。

 で、今まさに、電源を入れたところなのである。

 そして美花の「ウワー、こんなの有りー!?」になった。その割には十分ほどで飽きてしまい。スタジオでスマホをいじっている。杏奈はチェコの血が流れているせいか、飽きずに眺めている。似たもの同士のようでも、こういうところで個性の違いが出るから面白い。直美は、本人たちに気づかれないようにその姿を何枚も写真に撮った。

「ウワー、こんなの有りー!?」

 美花が、また叫んだ。でもニュアンスが、先ほどとは違う。
「どうかした?」
「こいつ、うちの国語の教師なんだけど、フェイスブックのプロフ……職業が『劇団アリガ党』になってる!」
「聞いたことあるなあ」
 直子の父がディスプレーの手直しをしながら呟いた。
「そうだ、90年代に若者の劇団活動撮りまくっていた時代に……あった、これだ。プロの劇団になってるね。大したもんだ」
 パソコンで、アリガ党を検索して、一発で出した。
「どうだ、この舞台写真。上手いだろう?」
「写真? お芝居?」
「写真だよ、芝居はそれなりだったけどな。上手く見える瞬間をとらえている」
「あ、こいつだよ滝沢修……ほんとは治って字なんだけどね」
「すごい名前をパクッたもんだな」
 お祖父ちゃんも加わった。
「すごい名前なの?」
「ああ、劇団民芸の看板だった人だ。唐さんの赤テントにも同じ名前の役者がいたけどね。かなり詳しい人だね」
 父と祖父が同じように懐かしそうな顔になっている。美花がなにかやっている。
「なにやってるの?」
「裏サイトに書いてんの。先生は兼職禁止のはずだよ」
「それは、感心しないなあ……」
 お祖父ちゃんが言った。
「どうして、こいつ学校でもヤナやつなの」
「ヤナやつでも、いきなり書き込んじゃな。確かに滝沢さんは軽はずみだけど、ちょっとかわいそうじゃないか」
「そうかな……」
「まず、本人に注意すべきなんだが……」
「話なんか、したくないです」
「じゃ、こうしてごらん」
 祖父ちゃんはサラサラとメモった。

 高校の先生で、社会的にプロ劇団と認知されている劇団に在籍され、中にはSNSの職業欄に劇団名を書かれておられる方がおられます。公務員の兼職は、どこでも厳しい目で見られます。問題化する前に、どうにかされた方が良いと思います。

「これをツイートしてごらん。まずは、これだけでいい」
「こんなので……」
 美花は不承不承、そうツイートした。

「ウワー、すごい!」
 今度は杏奈が声を上げた。
「なによ、こんどは……?」

 覗きに行った直美が驚いた。

 新島准尉のルミナリエの写真が大きなフィルムになって、イルミネーションがチラチラして、とてもきれいだった。
「やったね、お父さん!」
「新島さんの写真がいいからさ」
「あ、ひい婆ちゃん!」
 美花が叫んだ。

 美花のひい婆ちゃんが女先生の姿で、セピア色から白黒に……そしてカラーになったかと思ったら、ニッコリ笑った!

「お父さん、これ!?」
「親父が撮った写真をボツにした笑顔のとダブらせたんだよ。アナログだけど味があるだろ」
 美花の目は潤んでいたが、ひい婆ちゃんの真意を理解するのには、もう少し歳をとらなきゃ……と、直美は思った。

 その夜、遅くにパソコンで検索したら、滝川修先生の『アリガ党』は、職業ではなく政治思想に変わっていた……。

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高校ライトノベル・『はるか 真田山学院高校演劇部物語・85』

2019-08-03 05:52:32 | はるか 真田山学院高校演劇部物語

はるか 真田山学院高校演劇部物語・85
『第八章 はるかの決意8』 


 玄関を開けると、お母さんがクラッカーを鳴らした。

「おめでとう!」
 って、昨日も聞いたんだけど(お母さんは、由香たちと審査結果の発表までつき合ってくれて、家に帰ると大騒ぎだった)
「今日は、お母さんのだわよ。はるかもクラッカー持って!」
 お母さんには、その日エッセー賞の優秀賞受賞の連絡があったのだ。皮肉なことに、わたしと同じA書房。でもめでたいことに違いはなかった。長いスランプだったから。
 作品は、例の神戸の異人館がテーマだ。
「ねえ、目玉オヤジ大明神にお礼言っとこうよ」
 お母さん、絶好調。
「ねえ、目玉オヤジ大権現、ライトアップとかしてなかったっけ?」
「するわけないでしょ、気象観測レーダーなんだから。わたしたちのエモーションの中でこその神さまなのよ」
 そうか……暮れなずむベランダで手を合わせる母子でした。

 その夜は、タキさんの主催で、母子同時受賞の祝賀会。
 店を臨時休業にして、京橋の焼き肉屋さんに行った。
 大阪に来てからの宿願の焼き肉ぅ!

 塩タンから始まって、上ミノ、ハラミ、カルビ、ロース……いずれも焼きは控えめに。焼き網の角の方でテッチャン鍋。
 牛骨ス-プに野菜をドッチャリ、肉とホルモン、豆腐とトッポギ、などなどを入れヤンギン醤で味付け。
 締めは、残ったスープにご飯を入れゴマ油を少々。煮詰めていくと真っ赤なリゾット風
 フー……さすがに満腹です。

 で、けっきょく肝心の話はできなかった……白羽さんのNOZOMIプロの件。

 ナイショだけど、わたしは、タキさんの勧めでハイボールを二杯飲んでいた。
 けっこうイケタ。これはお母さんのDNA。お父さんはほとんど下戸。
 忘れないうちにと、観客動員のメールを打つ。
 気が大きくなっていたんだろう、シカトからの講和条約を結んだばかりの亜美から打った。そして大あくび……間違って、一斉送信のボタンを押したことは、本選の芝居が終わってから分かった。

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