エディンバラを離れる飛行機の中に居てる。
と言っても、夏休みが終わって日本へ帰るわけではない。第二の訪問地ヤマセンブルグに向かっているところ。
じつは、こっちが本命なんや。
おとついの晩御飯で頼子さんが口を開いたのは、イザベラさんがデザートを運んできた時。
いつもは通訳見習いにしてエクソシストにしてお世話係のソフィアさんがやってくれてる。それがイザベラさんなんで、あたしらもアレ?って感じはした。
イザベラさんが英語でも日本語でもない言葉で頼子さんに言うと、頼子さんも同じ言葉で返事した。
「あさって、エディンバラを離れてヤマセンブルグに移動します。ちょっと窮屈な旅になるかもしれないけど、新鮮な旅になることは確かだから、期待してちょうだい」
「「は、はあ……」」
留美ちゃんと二人でたよんない返事になる。
「ヤマセンブルグというのは、どんな国なんですか?」
留美ちゃんが素朴な質問をする。
「ヨーロッパには公国と言って、王国に準ずる国がいくつかあるの。モナコ公国とか知ってるでしょ? その一つよ。わたしにはね三つの国籍があるの、日本とイギリスと、ヤマセンブルグ。お父さんがイギリスとヤマセンブルグの国籍を持ってる関係でね。で、夏休みに間にどうしても立ち寄らなくちゃならなくて、ごめんなさい、ちょっと付き合ってくださいね(o^―^o)」
頼子さんの笑顔(o^―^o)には有無を言わせない力がある。阿弥陀さんがお迎えに来たら、きっとこんな笑顔やろなあと思う。
空港で待ってた飛行機はプライベートジェットとは違ごた。ふたまわりは大きいクリーム色のジェット機で、胴体にはドラクエに出てきそうな紋章が貼り付いてて、パイロットもジョン・スミスとは違う人。
「この機体の操縦免許は持ってないんでね」
そう言いながら、ソフィアさんやイザベラさんといっしょに飛行機に乗り込んだ。他にもヒルウッドのお屋敷のスタッフも何人か乗り込んで賑やかになるかなあ……と思ったら、機内はいくつかのキャビンに分かれていて、わたしと留美ちゃんは頼子さんといっしょに○○○○キャビンに。○○○○と伏字になってるのは「キャビンの位置が分かる書き方はしてはいけません」と言われたから。
「なんでですか?」
「ミサイルは、このジョン・スミスにも防げないからね」
これはただ事やないなあ……。
そう思てると、イザベラさんの耳打ちで頼子さんが目を剥いた。
「え、ドレスコードがあるの!?」
ドレスコード? どんなコードや?