大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

せやさかい・074『ダミアの由来と部屋探し』

2019-10-04 16:02:30 | ノベル
せやさかい・074
『ダミアの由来と部屋探し』 

 

 

 ダミアという名前には由来がある。

 

 お母さんが、まだ幼稚園やったころに飼ってたネコがダミアやったらしい。

 お祖父ちゃんの言うところでは、アホなネコやったらしい。

「ダミア」と呼びかけても知らん顔。どうも自分には名前があって、それが『ダミア』という三音節の言葉やいうことが理解でけへんかったみたい。

 檀家さんが「たま」と呼んでも反応するときがある。むろん『くま』でも『ミケ』でも『ショコラ』でも。『ダミア』でも、たまには「にゃんだ?」と気まぐれで向くときがあったらしいけど、とにかく決められた単語が名前やいうことが理解でけへんかったらしい。

「いや、ちゃんと姓名判断の先生につけてもろたんや。むろん、料金払てな」

「猫の名前に姓名判断!?」

 正直びっくりした。

 そら、可愛いニャンコやったんやろけど、お金払てまで? 孫やさかいに、正直にビックリする。

「そら、ネコやさかいな、料金は半額に値切ったけどな」

「ハハ、値切ったん? お祖父ちゃん?」

「それが、覚えよらへん……十日ほどで諦めてなあ、死んだ婆さんなんか『ネコ』で通しとった」

「アハ、うちが『ネコちゃん』て呼んだんといっしょや!」

「せやなあ、桜は婆さん似ぃなんかもしれへんなあ」

 お婆ちゃんは、あたしが生まれる前に死んださかい、似てる言われてもピンとけえへん。

「諦念(伯父さん)なんか、担任の先生とかフラれた女の子の名前で呼んどったなあ」

「え、伯父さんが!?」

「ああ、腹いせのつもりやったんやろなあ。ダミアは、名前いうのは「おーい」とか「ちょっと」とか「もしもし」くらいの呼びかけの言葉やと思とった感じやなあ」

「南無阿弥陀仏の南無といっしょや」

「せやなあ」

「ほんで、あの子をダミアて呼んだんは?」

「お金のかかった名前やさかいなあ、使わならもったいない思てなあ。ダメもとで」

 ダメもと言うのは引っかかったけど、まあ、ええか。

 そこでお祖父ちゃんはガタピシと襖を開けた。

「まあ、掃除したら使えんことないか。ほんま、ここでええか?」

「うん、隠れ家いう感じでグッド!」

「ほなら、明日でも、文芸部の子ぉら呼んで掃除したらええわ」

「うん、ありがとう伯父さん!」

 

 じつは、ダミアのことが好きでたまらん頼子さん「桜んちで部活やっちゃだめかなあ!?」と思いついた。むろん、あたしは構えへんねんけど、ティーセットとか部活に必要なあれこれを考えると、あたしの部屋いうわけにもいかへんので、お祖父ちゃんといっしょにお寺の空いてる部屋を見繕ってるとこ。

 で、ダミアの由来なんかを聞きながら、本堂裏の使てない道具部屋に決まったとこなんです。

 

 

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宇宙戦艦三笠・20[空母遼寧の船霊ウレシコワ・2]

2019-10-04 06:53:29 | 小説6
宇宙戦艦三笠・20
[空母遼寧の船霊ウレシコワ・2]    



 
 彼女は「カチューシャ」をバラード調のBGMにして、やってきた。

「ね、あれメーテルじゃないの!?」
 と、美奈穂が叫んだとおり、黒のコートに黒の帽子にブーツといういでたちで、艦首の甲板に佇んでいた。
「遼寧のウレシコワさんです……」
 クレアが冷静に、しかし語尾は濁して呟いた。
「なんだか、ワケ有だな」
「あんなとこ寒いよ!」
「ちょっと!」
 トシは、樟葉が止めるのも聞かずにブリッジを降り、艦首のウレシコワの元に走った。
「なんだか、トシ君、鉄郎みたいね」
 船霊のみかさんまで出てきて、期せずしてウレシコワ歓迎の形ができてしまった。

「遼寧では、つっけんどんでごめんなさい」

 ブリッジに着くと、以前のウレシコワと、打って変わった穏やかさで頭を下げた。
「ブリッジじゃ狭いわ、長官室でお話ししよう」
 みかさんの提案で、艦尾の長官室に向かった。ウレシコワが艦内に入ってから、心なし……いや、はっきり寒い。
「ウレシコワ、どうしてこんなに寒いの?」
「ごめんなさい。たぶん、あたしの心が寒いから……」
 メーテル風の暖かそうなコートは見せかけだけではなかったようだ。

 長官室はスチームが効いて暖かかった。

「なにか、暖かいものを頂きながら、お話ししようか?」
「じゃ、あたしに作らせて」
 みかさんの提案に、ウレシコワは全員分のボルシチ鍋を作った。甲斐甲斐しく鍋奉行をやっているウレシコワだが、どこか屈託がある。
「いつまでも、三笠にいてくれていいのよ」
 みかさんの言葉は、クルーたちにもウレシコワにも意外だった。
「なにもかも、お見通しのようね……」
 ウレシコワは、安堵したようにスプーンを置いてため息をついた。

「遼寧……この名前きらいだけど、ヴァリヤーグなんて言っても、誰にもわからないものね。遼寧の船霊は、実質あたしじゃないの……」
「共産党?」
「でもないわ、しいていえば中国そのもの。内部は分裂してるけど、したたかな人たちだから、決定的な破局にはならない。そうなったら、みんなが損をするから、ギリギリのところでまとまっている。ヴァリヤーグは、その点はロシア的な頑丈さで出来ているから、船が分解することもないわ」
「このピレウスへの旅は、どこが勝ってもいいの。どこかの国の船が、寒冷化防止装置を取りにいければいいの。これは全人類と船霊の戦いなんだから」
「あたしは、三笠に勝ってほしい。あたしもクルーとして、働くわ。三笠こそ、勝つべき船なのよ」

 ウレシコワの言葉は、みんなの胸に響いた。だが暖かくはならなかった。ウレシコワの声には、これからの運命の厳しさを感じさせるものがあったからかもしれない。

「敵はグリンヘルドとシュトルハーヘンだけじゃない。ピレウスまでには難所がいくつもある。敵は、そこで我々が自滅するのを待っている。さあ、最初の難所、第一暗黒星雲よ」

 第一暗黒星雲。
 
 その存在は星座標で存在は分かっていたが、その実態はクル-たちの想像を超えたものであった……。
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真夏ダイアリー・29『終日ゴロゴロ』

2019-10-04 06:42:35 | エッセー
真夏ダイアリー・29 
『終日ゴロゴロ』         
 
 
 
 
 千通の年賀状は問題だった。
 
 嬉しかったことは確かだけれど、直ぐに問題に気が付いた。それだけ、わたしの住所、個人情報が漏れているということだ。 
「入りきらない分が、これね」
 千通の年賀状の上に、何通かの年賀状がポンと投げ出された。
  で、この何通かが本物で、段ボールの中味は古新聞だった……やられた、悪ノリのお母さんに。
「どう、目が覚めたでしょ」 
「冗談きついよ、お母さん」
 お雑煮と簡単なおせちをいただきながら、年賀状を見る……簡単なものから手の込んだのまで、いろいろだけれど、パソコンとプリンターで作ったものばかり。その中に、ただ一通手書きのがあった。
 
 あけまして、おめでとうございます。仲間になれてうれしかったです!
 
 エヴァンゲリオン事件で、お仲間になった春野うららからだった。年末のゴタゴタで、クリスマスパーティー以来だったけど、仲間が増えたことは嬉しい。省吾とうまくいけばいいと思った。省吾のお父さんに事実を教えられて以来、省吾は友だちとか、それ以上の関係とかじゃなくて同志、バディーという言葉が相応しい関係になるんだろうなあ……という予感がしていた。
――初詣いこうよ~(^O^)~  と、省吾にメールを打った。 
――今、行って帰ってきたとこ。真夏忙しいんじゃね?  つれない返事が、すぐに返ってきた。
――四日まで、オフだからあ。  これへの返事は、すぐには返ってこなかった。
 で、年賀状の返事を三通ほど書いて、もう一度メール。 
――まあだ? 
――ちょっとタンマ。  と、返ってきた。
 
 書き終えた年賀状を近くのポストまで出しにいった。 
 
「紅白たいへんだったみたいね」 
 ポストに年賀状を入れた直後に、声をかけられた。しまった、変装用のメガネを忘れた。 
「いや、どーも(n*´ω`*n)」  
 振り返ると、わたしが急にアイドルになっちゃった、そもそもの原因である美容師の大谷さんが立っていた。 
「You Tubeで見たよ。クララちゃん大丈夫だった?」 「あ、はい。ただのお腹痛でしたから」 「そうか、わたし、応援してるからね」  
 それ以上カラまれてはかなわないので、そそくさと新年の挨拶して家に帰る。
 ――4日、昼から俺の家で。    
 省吾から、メールが返ってきていた。簡単な内容だったけど、その間に、いろいろ調整してくれたんだろうなあ、と感謝。
 
 で、新年二日目の今日は、梅と葉ボタンにお水をやって、終日ゴロゴロ……。
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音に聞く高師浜のあだ波は・13『なんでマッタイラかというと……』

2019-10-04 06:31:42 | ライトノベルベスト
音に聞く高師浜のあだ波は・13
『なんでマッタイラかというと……』
         高師浜駅

 

 なんだか恋人同士みたいだったわよ

 国道26号線の信号にひっかかると、それがスイッチやったみたいに姫乃が言う。
「え、恋人てぇ!?」
 すみれが好奇心むき出しにして、あたしと姫乃の顔を交互に見る。
「高石のBNRの前、マッタイラ君と居たのよ(ホッチが)」
「えー! ホッチがマッタイラと!?」
「ムー、そんなんとちゃうわよ。てか、なんで姫乃知ってんのん?」
「タクシーで家に帰る途中、信号でタクシーが停まって、それで見かけた。いま信号が変わったんで思い出したの」

 学校からの帰り道、信号待ちで、取り留めのないガールズトークが飛躍した。

「あれはやね……」
 アンパンマンの写真からドラミちゃんの誕生日に発展し、高石のBNRでマッタイラに頼まれてドラミちゃんのフィギュアを買うハメになったいきさつを話した。
「マッタイラ、意外に妹想いやねんねえ」
 すみれが感心したところで信号が青になる。
「あたし一人っ子で兄妹いてへんやんか、なんかほだされるんよね」
「なんかホノボノする話しやねえ」
「ねえ、マッタイラというのは、やっぱ苗字の松平が訛ったんだよね?」
「え、ああ、そうやよ」
「ほんとに?」
 姫乃が覗き込むように、あたしの顔を見る。好奇心が強いんやろけど、姫乃が時折見せる、こういう表情は反則や。なんとも可愛らしい。男やったら惚れてしまうやろなあ。そう思たら、半分照れ隠しに笑てしまう。
「なんで笑うのよ?」
 説明がややこしいんで、つい喋ってしまいそうになる。
「身体的特徴のモジリやから、人には言わんといてね」
 すみれが断りをいれてから説明を始める。
「マッタイラて、後頭部がすごい絶壁でしょ。ストンいう感じ」
 空中にマッタイラの横顔をなぞる。さすが弓道部、指の動きは見事にマッタイラの絶壁頭をトレースしてる。
「あ、ああ!」
 
 アハハハハハハハ

 若さとは残酷なもんで、三人ともマッタイラの大絶壁頭を思い浮かべて大爆笑。
 女子高生三人が朗らかに笑てんのは健康的でええもんに見えるんやと思う。すれ違たオバチャンの三人連れが(あたしらもそうやった)いうような目で微笑み返してくる。
 因果なもんやなあ、マッタイラこそ、ええ面の皮。

 羽衣の駅にに向かう最後の角が迫って来た。

 ええねん どーせあたしはマッタイラや!

 大きな声で叫びながら女子中学生が飛び出してきたんで、三人ともビックリして立ち止まってしもた。

 ま、待てやアツコ!
 
 その後を追いかけてきたのは通学カバンを肩にかけたマッタイラやったんで、二度びっくりの三人娘やった!
 
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高安女子高生物語・107〔The Summer Vacation・10〕

2019-10-04 06:24:14 | ノベル2
高安女子高生物語・107
〔The Summer Vacation・10〕
            


 

 結局、仲間美紀は辞めていった。

「けっきょく、あたしを引き留めてくれはるのは、明日香さん自身のためなんでしょ?」
「……せや、うちのためや。やっと軌道に乗りかけた6期、このまま仲間を減らしたら、みんなへの影響が強すぎる。うちの使命は一人も欠かさんと、きちんとメジャーにすることや」
「それで、ええんです……」
 美紀は、精一杯の笑顔を作ったかと思うと、ベッドの蒲団を頭からかぶって泣き出した。
――仲間は、ほんまに仲間やねんで――いう決め台詞は言える空気やなかった……。

「あの子は精神的にまいってる。とにかく辞めさせるのが一番。治療はそれからです」

 お医者さんの意見で、笠松プロディユーサーも、市川ディレクターも納得した。
 うちは後悔した。きれいごと言うて引き留めるよりは、四捨五入した本心でぶつかった方が仲間美紀には伝わると思たから。6期は、もうみんな家族や! 姉妹や! ほんで、うちが一番のお姉ちゃんや! そない思てた。せやけどなんにも分かってなかった。危ないのは和田亜紀と芦原るみやとばっかり思てた。リーダーやのに、うちはなんにも見えてなかった。

「まあ、一人二人抜けるのは織り込みずみだから、気にすんな明日香」

 市川ディレクターはビジネスライクに、一言でしまい。下手に慰められるよりは、気が楽やった。
 夜はステージが終わった後、ローカル局のトーク番組があった。
「美紀のことには触れんように。こっちのディレクターにも話してあるから」
 市川さんに言われた通り、うちもパーソナリティーも美紀のことは無かったみたいに、ロケの話やら、アホな話で盛り上がった。

 家に帰ったら、日付が変わってしもてた。メールのチェックもせんと、ざっとシャワー浴びて、そのまま寝てしもた。

 スタジオ入りまで時間があるんで、美紀の病院へ行った。面会時間やなかったけど、ナースステーションに寄ったら「もう落ち着いてるからどうぞ」て言われて病室へ。
 ところが、部屋に入ったら美紀の姿が無かった。

――明日香、トイレに行け!――正成のオッサンが、うちの心の中で叫んだ。

 トイレに行くと、個室二つが閉まってた。一つはノックしたらすぐにノックが返ってきた。もう一つをノック……反応が無い。
――ここや!――
 正成のオッサンの声に体が反応した。ヒョイとジャンプして、個室の上に手を掛けると、自分でも信じられへんぐらいの身の軽さで個室の中へ。
 美紀は手首を切ってぐったりしてたけど、うちの姿を見ると暴れだした。血まみれになりながら緊急ボタンを押して、美紀のみぞおちに当て身を食らわせた。

 切って間が無かったんで、美紀は助かった。

 このことは、秘密にすることになったけど、血まみれのうちと美紀をスマホで撮ったドアホがおって、あっという間に動画サイトに投稿され、手におえんことになってしもた……。
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小悪魔マユの魔法日記・53『フェアリーテール・27』

2019-10-04 06:13:17 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・53
『フェアリーテール・27』
   


 
 
  トトが喋った!?

 ブリキマンとかかしは顔を見交わし、眠っているトトに目を落とした……。

「そりゃ、たぶんマユが小悪魔だから、お話ができたんだ」
「そうだよ、マユには特殊な力があるんだよ」

 かかしと、ブリキマンは勝手に理解した。

「もう、何時間ぐらい眠ってるんだろう……あんまり寝過ぎても、頭がボンヤリしちゃう」
「そうだね、タイマーを見てみよう」
 かかしは、ドロシーのバスケットから、写真立てを出した。
「あ、これ、ドロシーが家出したときに持って出たエムおばさんといっしょに写っているやつね」
「これは、情報端末のタブレットなんだよ。写真は、ただのマチウケ。ドロシーが、ここへ来てからの記録や、予定が出てくるんだ……めったに使わないから、操作の仕方忘れちゃったなあ……」
「ブリキマンさんは、分からないの?」
「ボクは、ブリキで出来ているから、触れないんだ。タブレットの画面を傷つけてしまうから」
「……記録が出てきた」
「どのくらい寝てるの?」
「いや、違う記録だよ。やっぱり、オズの魔法使いから『西の魔女』のホウキをとってくるように言われてるね」
「で、何時間寝てるんだよ?」
 ブリキマンがせっついた。
「せかせるなよ、こういうの、ボクは弱いんだから……あ、これは」
「なに!?」
 マユとブリキマンの声がそろった。

「ドロシーが、ドロシーになるまえの情報みたいだ……ほら」
 画面はバグりかけていたが、いくつかのことが読み取れた。
「この子、もとは日本人だったんだ……」
「責任感が強くて……」
「……なにか、使命があったみたいだな」
「ボランティア……読めないなあ」
「ここに来る前に、大きな手術やってる……中味は……ああ、バグちゃった」
「あ出てきた。ドロシーダイアリー……たいへんだ、もう三日も眠ってるよ」
「起こさなくちゃ。食事も、水分も摂ってないよ」
「ドロシー……と、その前に」
 かかしが、マユを見た。
「なに?」
「言っといたほうがいいよな」
「うん、マユが混乱するといけないからな」
「いったい、なによ?」
「ドロシーが目覚めたら、マユと話していたことや、ボクたちが、何人ものドロシーの相手をしていたこと……」
「ボクたちには、もともとの姿があったことなんか忘れてしまうからね」
「ボクたちは、このドロシーが起きているうちは、このドロシーのためだけのブリキマンとかかしなんだ。だから、スカタン言うかもしれないけどね」
「分かった、早くドロシーを起こして」

「ドロシー、ドロシー……!」

 それから、五分ほどかけて、やっとドロシーは目を覚ました。

「ああ、よく寝たわ……おはようみんな」
「「お、おはよう、ドロシー!」」
 かかしと、ブリキマンが声をそろえて言った。
「やだ、ライオンさんもトトも寝てる……そうか、わたしが眠れないものだから、いろいろ面倒かけたのよね……あ、あなたは?」

 ドロシーとかかし、ブリキマンの視線が、マユに集まった。

「「キミだれ?」」
 かかしとブリキマンの声が、またそろった。ほんとうにマユのことは忘れたようだ。
「あ、あなた、白雪姫さんのところで見かけたわよね」
「う、うん。小悪魔のマユ。よろしくね……」
「よろしく……」
 そこまで言うと、ドロシーはバスケットから、ミルクやサンドイッチ、おにぎりなんかを取りだし、無心に食べ始めた。その間、かかしとブリキマンは不思議な顔をしている。
「だからあ……」
 マユは、最初から説明をしなければならなかった。しかし、途中でライオンさんが目を覚ましてくれたので、マユの説明は半分ですんだ。

 ドロシーが三日分の食事を終えたころで声がした。
「じゃ、そろそろ行こうか!」

 声の主は、いつの間にか目覚めたトトであった……。


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