魔法少女マヂカ・086
人牛一体となった敵が鼻先一つの横並びになった時、一マイル先にゴールが見えてきた。
もとより、これはラフストックだから、早くゴールインしたからと言って勝敗には関係ない。
しかし、目前にゴールを設定されて、励めない奴はタマナシだ!
そんな勝負師根性は敵も同じ、一気にラストスパートをかけてくる!
―― ウウーー! 魅せてくれるのニャー! 嬉しいのニャー! みんな、頑張ってゴールを目指すのニャー! ――
ルール変更はチェシャネコの気まぐれのようだが、何百時間競っても決着がつかないラフストックに飽きる気持ちも分かる。
斜め上に見えるチェシャネコは、目やにを貯めて涎を垂らしている。こいつ、直前まで寝ていたなあ!?
―― そ、そんなことは無いのニャー! ずっと目を開けて観ていたニャー! ――
チェシャネコの言い訳を無視して牛腹を蹴る!
牛も勝負魂を刺激されたのか、素直にスピードを上げる。視野の端っこには同様にラストスパートをかけるマヂカが見える。
がんばれマヂカ!……ん? この場合、敵はマヂカになるのか?
ええい! とにかくゴールインだああああああああああ!!
勝敗、判然としないままにゴールイン!
ロデオ慣れしているオレは、すぐに速度を落とした。急に止まっては人牛ともに心臓に負担をかけ脚を痛めるからだ。
しかし、マヂカは速度を落とせずに、全力疾走のまま前方に走り去っていった。
まあ、いい、自然に落ち着いて戻って来るだろう。
それよりも、勝負の結果だ。
…………いつもなら、すぐに賞金を掲示するチェシャネコが沈黙している。ビデオ判定かな?
パンパカパーーーーーーーーーーン!!
ファンファーレ付きで賞金が掲示された!
¥ 50000000!
……五千万!? 少ないじゃないか、チェシャネコ!!
―― 仕方ないのニャー、小数点百万ケタまで見ても、優劣がつかないのニャー! だから、賞金は半分こニャー(^ー^* )!
「これだけの勝負をさせておいて、半額かあ!! 甲乙つけがたいなら、両方に一等賞の賞金を出せよ!」
―― ニャハハハハ、それは出来ないのニャー! ――
「この、くされ笑いネコがああ!」
―― ニャハハ、ニャハハハハハ!! お、それよりも、相棒が帰ってきた……にゃあ!? ――
「どうした?」
ニャハハ笑いのままフリーズしたチェシャネコの視線を追うと、牛に跨ったマヂカが戻ってきつつある。
さすがに、ここまでの激戦を戦ってきたので、牛に跨る姿も堂にいってきたようだ。
―― あっぱれ、牛馬一体の姿に拍手なのニャア!! ――
「ま、待て、あれは?」
牛には首が無く、跨ったマヂカの上半身が露出……ちがう!?
歩みを止めたそいつ……そいつは、上半身がマヂカ、下半身が牛という化け物だったのだ!!
―― おもしろいのニャーー!! 賞金、上げてやるニャー!! ――
¥ 200000000
マヂカの上に、二億円の数字が現れた。