気が付くと、1942年6月2日、ニューヨークの郊外にいた。
少し違和感を感じた。わたしは視点を三人称モードにして、自分の姿を見た。
少し違和感を感じた。わたしは視点を三人称モードにして、自分の姿を見た。
ギンガムチェックのワンピースの上には、ブロンドのポニーテールが載って、脇にブックバンドでまとめた教科書を挟んでいた。前回、ワシントンDCに行ったときよりも、わたしらしくなかった。
どうやらイングランド系アメリカ人のようで、肌は白く、瞳はブルー。頬に少しソバカスの名残が……頭の上には、02ーMILLIEというIDが付いていた。これは、この時代の人間には見えない。同じ時代に来ている未来人同士が互いに認識しあえるように付けられたIDタグだ。前回は、これが無かった。タイムリープした未来人が、わたし一人だったせいだろう。その他、いろんな情報が新しくインストールされている。
「ハイ、ミリー!」
声が掛かって、後ろで自転車のブレーキ音がした。
「ハイ、ジェシカ!」
この子はジェシカで、ハイスクールの同級生(ということになっている)で、ブルネットの髪をヒッツメにして、陽気なパンツルックである。
「トニーのとこ?」
「うん、ここんとこ休みが多いから」
「成績はいいけど、あいつなんか変よね」
「変……?」
「あ、いやゴメン。そういう意味じゃないの……」
わたしは、そんな気はなかったけど、ジェシカの顔には、なんだかトニーを非難がましく言ったような後ろめたい色が浮かんでいた。
「ミリーには勝てないわ」
「どういう意味よ?」
「わたしも、今日の欠席にかこつけて、トニーに会いに行くつもりだったの……でも、たかが二日休んだだけで、お見舞いってのも、ちょっとフライングだわよね」
「ジェシカ……」
「いいの、これでふっきれた。トニーとは上手くやってね。BALL(ボール=卒業式に付随したパーティー)楽しみにしてる!」
「ハイ、ミリー!」
声が掛かって、後ろで自転車のブレーキ音がした。
「ハイ、ジェシカ!」
この子はジェシカで、ハイスクールの同級生(ということになっている)で、ブルネットの髪をヒッツメにして、陽気なパンツルックである。
「トニーのとこ?」
「うん、ここんとこ休みが多いから」
「成績はいいけど、あいつなんか変よね」
「変……?」
「あ、いやゴメン。そういう意味じゃないの……」
わたしは、そんな気はなかったけど、ジェシカの顔には、なんだかトニーを非難がましく言ったような後ろめたい色が浮かんでいた。
「ミリーには勝てないわ」
「どういう意味よ?」
「わたしも、今日の欠席にかこつけて、トニーに会いに行くつもりだったの……でも、たかが二日休んだだけで、お見舞いってのも、ちょっとフライングだわよね」
「ジェシカ……」
「いいの、これでふっきれた。トニーとは上手くやってね。BALL(ボール=卒業式に付随したパーティー)楽しみにしてる!」
そういうと、ジェシカは口笛を吹きながら、ゆるい坂道を下っていった。
わたしは、この世界では、卒業間近のハイスクールの最上級生で、トニーとは恋人同士に設定されている。
分かりやすく言えば、恋愛シュミレーションゲームのようなもので、成り行きによるイベントの発生やら、分岐がいくつもある。ただ、それがゲームと違うのは、これは現実であり、イベントや分岐は楽しむためではなく、予期できないリアルなアクシデントとして起こる。
わたしは、この世界では、卒業間近のハイスクールの最上級生で、トニーとは恋人同士に設定されている。
分かりやすく言えば、恋愛シュミレーションゲームのようなもので、成り行きによるイベントの発生やら、分岐がいくつもある。ただ、それがゲームと違うのは、これは現実であり、イベントや分岐は楽しむためではなく、予期できないリアルなアクシデントとして起こる。
つまり、それだけリスクの大きいタイムリープであるということなんだ。
さっきのジェシカは、外見も心もバランスのとれたいい子。でも、時に自分でコントロールできなくなることがある。トニーへの愛情は、インストールされたわたしの疑似感情よりも強い。早くトニーに会って問題を解決しなければ、とんでもないことになりそうな予感。
ドアをノックして二呼吸ほどすると、ガレージの方から、トニーが現れた。頭の上には、01-TONYのID。
「ハイ、ショーゴ!」わたしは、明るくフレンドリーに、そして、正確なIDで奴に呼びかけた……。
ドアをノックして二呼吸ほどすると、ガレージの方から、トニーが現れた。頭の上には、01-TONYのID。
「ハイ、ショーゴ!」わたしは、明るくフレンドリーに、そして、正確なIDで奴に呼びかけた……。