goo blog サービス終了のお知らせ 

大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

魔法少女マヂカ・093『M資金・25 ハートの女王・6』

2019-10-31 15:11:08 | 小説

魔法少女マヂカ・093  

『M資金・25 ハートの女王・6』語り手:ブリンダ 

 

 

 つ、疲れる……

 

 ついさっきまで牛と合体していたマヂカは宮殿の地下室に着くまでに顎を出している。

 牛女になっている間、自分の足を使っていない。下半身は牛だったのだし、大半はオレの胸の谷間にいたのだから無理もないんだが、天下無双の魔法少女としては、いささか情けない。

「しかしだな……」

 言わんとすることは分かる。

 衛兵長の指示は――宮殿の東口から地下一階の収監室に入れ――ということだった。「わたしが案内する」とビーフィーターのキャロラインが言ったが、「ここから先は衛兵の管轄だ」と一蹴され、「それでは自分が」と進み出たハリー伍長も退けられた。ハートの女王の国は慣習と官僚主義が蔓延しているようだ。先が思いやられる。

 収監室の前に来ると――収監室は西口に変更――と張り紙がしてあった。

 いったん東口から出て西口に回ろうとすると「いったん入った者を出すわけにはいかん!」と言われ、宮殿内部を迂回していかざるを得なくなった。

 その迂回路がふざけている。

 いったん、地下二階まで下りて、地下一階まで上がる。すると、そこは行きどまりになっていて、廊下の先に下りの階段。正直に下りていくと地下三階で行き止まり。廊下の先の上り階段を地下一階まで上がると、同じようになっていて、今度は地下四階まで……上り下りをを繰り返して、とうとう地下百階まで下りてしまい、いまは百回目の地下一階を目指している。

「どうなってんのよ、この宮殿……ん?」

「マヂカがボヤクから、なんか出てきたぞ」

 階段の壁に文字が現れた。

―― 議会制民主主義を身をもって感じられる階段 謹んで体感せよ! 女王署名 ――

 この無駄な上り下りを議会制民主主義の象徴に例えているのだろうが、どうにもアホらしい。いや、このアホらしいのが議会制民主主義なら当を得ているぞ。

「女王のいやがらせかあ?」

 マヂカがプンスカ怒ると、かすかにネコの笑い声。チェシャネコのいたずらかもしれないが、やつの名前を出せば、さらに何をされるか分からないので沈黙して置く。

 

『収監室』

 

 やっとたどり着いた部屋にはA4の紙にプリントされたものが貼られている。なんだか、急ごしらえで間に合わせた感じだ。

「やれやれ、入るぞ」

 ドアノブに手をかけると『収監室』の紙がペロリと剥がれる。

「なに……ロウソク倉庫?」

「ああ、衛兵長が言ってたじゃない。法改正ができて宮殿が電化されたって。電化されたために不要になったロウソクが収められてるんだ」

「ま、とにかく入るぞ」

 入ると、マヂカは崩れるように横になる。

「じかに寝たら風邪ひくぞ」

「ああ……」 

 右手をヒョロッと動かしてブランケットを出した。魔力も戻りつつあるようだ。

「しかし、膨大な量のロウソクだなあ」

「消耗品だからでしょ、はやく議会が終わらないかなあ……とりあえず寝よ。あ、ブランケット出したげるね」

「オレは、ちゃんとしたベッドを……」

 タイミングがいいのか悪いのか、二人の魔法が空中でガチンコして火花が散った!

 

 バチバチバチ!

 

 火花は壁にウサギの巣穴ほどの穴を開けてしまった。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

真夏ダイアリー・56 『ニューヨークへの原爆投下』

2019-10-31 07:13:33 | 真夏ダイアリー
真夏ダイアリー・56 
『ニューヨークへの原爆投下』    
 
   


「遊覧飛行をやろう」

「何がしたいの……?」
「この飛行機は、ダグラスDC3。日本でライセンス生産しているけど、アメリカ人には見慣れた機体だ。低空でデモンストレーションやっておかないと、日本の飛行機だと分かってもらえない」
 トニーは緩降下すると、ニューヨークのビルの間を縫うように飛び回った。道行く人たちや、ビルの窓から覗く人たちの顔は、一様にびっくりし、やがて恐怖に変わっていく。「ジャップ!」「シット(ちくしょう)!」「オーマイガー!」などと叫んでいるのが分かる。
「空軍がきて、墜とされてしまうわよ」
「その前に、仕事は終わらせる……ミリー、すまないね。こんなことに付き合わせて。大丈夫、撃墜される前にテレポで戻るから。あのミリーにそっくりな奴に邪魔させないためなんだ、しばらく辛抱してくれ。ちょっとイタズラするよ……」
 トニーがボタンを押すと、翼から機関銃が出てきた。 
「何を撃つつもりなの!?」
 トニーは黙って、トリガーを引いた。アイスキャンディーのような光の列が両翼から打ち出され、エンパイアーステイトビルの最上階のアンテナが粉々に吹き飛び、ゆっくりと落ちていった。
「400メートルもあるんだ。下敷きになる人はいないさ」
 それから、トニーはマンハッタンの低空をゆっくり旋回して、機体の下に付けてある三発の爆弾をひけらかした。
 セントラルパークの上空3000メートルまで上昇したところで、二発の爆弾が落とされた。爆弾は「ヒュー」という音を残し、高度2000メートルのところで、小さく爆発し、無数のビラをまき散らした。
「これが、ビラの見本だよ」

 『アメリカ市民に告ぐ』
 
 ただ今より、ニューヨーク湾の真ん中に原子爆弾を投下する。
 この爆弾は、普通の爆弾の数万倍の威力がる。
 けして爆発の瞬間は見ないように。太陽のような閃光がするので、見れば失明する。
 大日本帝国は、貴国との講和を希望する。
 講和のテーブルに着かなければ、以後同じ爆弾を、アメリカの諸都市に落とすであろう。

「同じ内容をラジオの電波でも流している。できるだけ人の命は損なわないようにしている」
「爆弾はダミー……本体は、そのトランクの中でしょう?」
 機体が一瞬揺れた。
「ミリー、どうして、そんなことを……」
「わたしは真夏。IDリングはミリーの頭に付けてきたわ」
「真夏……!」
「さあ、そろそろ、戻りましょうか。後ろにグラマンが貼り付いているわ」

 一瞬光が走り、わたしとトニーは、元の空港にテレポした……。
 
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

まどか乃木坂学院高校演劇部物語・21『……と言えば大阪だ』

2019-10-31 07:07:44 | はるか 真田山学院高校演劇部物語
まどか 乃木坂学院高校演劇部物語・21   

『……と言えば大阪だ』 

 
 課題は、社会科(正式には地歴公民科っていうんだけど、だれも、そんな長ったらしい名前で呼ぶ者はいない)共通のもので、日本の白地図に都道府県名を書きなさいという小学生レベル。ただし、貴崎先生……(わたしまで改まっちゃった)のは――好きな道府県を(東京は地元なので除く)一つ選び、思うところを八百字以内にまとめて書くこと――なのよ。

 五分ほどで道府県名を書き終えて、考えた……気になる道府県……と言えば大阪だ。正確に言えば、大阪に転校しちゃった三軒隣のはるかちゃん。

 一昨日、なぜか、お父さん朝からイソイソと出かけていった。

 わたしはコンクールの初日だったので気にもとめなかったんだけど。フェリペから帰ってみると、南千住の駅でいっしょになった。
 なぜだか、はるかちゃんのお父さんとその奥さんも一緒だった。
 奥さんてのは、はるかちゃんがお母さんにくっついて、大阪に行ったあと一緒になった新しい奥さん。つい先月入籍して、ご挨拶に来られた。
 玄関で声がするんで、ヒョイと覗いたら。奥さんてのは、おじさんと一緒に今の通販会社を立ち上げた女の人。
 あか抜けて、どこかの社長秘書って感じ。あとで柳井のオイチャンが教えてくれた……。
――あの人は、はるかちゃんのお父さんが、まだベンチャー企業の社長をやっていたころの本物の秘書さん……なんだって。
 テレビのドラマみたいなことが、ついご近所、それも幼なじみのお家で起こったんで、正直ビックリ!
 でも他人様の家庭事情にあれこれ言うのは、下町のシキタリに反する。と、柳井のオイチャンは釘を刺すのは忘れなかった。だから、興味津々だったけど普通にご挨拶。
 それが、夜中の十時過ぎ。お父さんといっしょに上機嫌で南千住の駅にいるんだから、あらためてビックリ!
 そいで、お父さん。改札出るとき、切符を出そうとしてポケットから落としたレシート、なにげに拾ったら大阪のコンビニだった……。
 ピンときた! でもお父さんから見れば、まだまだガキンチョ。わたしから聞くわけにはいかない。

 三人とも上機嫌なんで、なにか言ってくれるかな……と、期待したところで、はるかちゃんのお父さんの携帯が鳴った。
 歩きながら携帯と話していたお父さんの足が止まった。
 うちのお父さんが寄っていった。
「え……」
 という声がしたきり三人は黙ってしまった。

 昨日の本番の朝、出かけようとしたら、お父さんの方から声をかけてきた。
「まどか……」
「なに、お父さん?」
「あ……いや、なんでもない」
「……はるかちゃんになにかあったの?」
「そんなんじゃねえよ」
「……へんなの」
「おめえも、今日は本番だろ。その他大勢だろうけど……ま、がんばれよ」
 それだけ言うと、つっかけの音をさせて工場の方へ行ってしまった。

――も、って言ったわよね。おとうさん「おめえも」……も。

 まあ、帰ってから聞いてみよう……ぐらいの気持ちで家を出た。で、あとは、みなさんご存じのような波瀾万丈な一日。
 帰ったら、お風呂だけ入って、バタンキュー。
 で、今日は朝からスカートひらり、ひらめかせっぱなし。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宇宙戦艦三笠・47[小惑星ピレウス・4]

2019-10-31 06:50:52 | 小説6
宇宙戦艦三笠・47
[小惑星ピレウス・4] 


 

 

 同じジャングルのいくらも離れていないところにテキサスは着陸していた。

「こんな近くで、どうして探知できなかったんだろう?」
 クレアが、半ば不服そうに言った。
「三笠の倍の航路をとって、惑星直列になるのを待ってピレウスに来たの。三笠程じゃないけど、レイマ姫が時間をかけてステルスにしてくれたから」
「他のアメリカ艦隊は?」
 修一が艦長として聞くと、ジェーンは視線を修一に向けたまま言った。
「敵と大規模な戦闘になることが避けられないので、戦略的に撤退したの。で、テキサスだけが大回りしてピレウスに着陸、三笠と連携して作戦行動をとるの。日本とは集団的自衛権を互いに認め合っているから、合理的な判断よ」
「ハハ、アメリカ人が自信満々で言う時は、どこかに嘘か無理があるんだよな。要はアメリカが全面撤退した中で、ジェーンはオレタチとの義理のために単独行動しているってことじゃないの?」
「違う! 義理じゃなくて友情よ。作戦行動計画も正式なもの」

 アメリカにとっては正式かもしれないが、日本代表たる三笠には何も知らされていない。しかし、ジェーンの友情には変わりのないことだろう。修一は、それ以上このことに触れるのはよした。なによりも、地球寒冷化装置を独り占めにしないで三笠を待っていてくれたのだから。

「一つ分かんないことがあるんだけど」

 樟葉が儀礼的な微笑みのまま聞いた。
「ピレウスは、グリンヘルドとシュトルハーヘンと同じ恒星系にあるのに、どうしてグリンヘルドもシュトルハーヘンも、この星への移住を考えないの。地球にくる何百倍もお手軽なのに」
 ジェーンは沈黙し、レイマ姫は静かに息を吸ってから、こう言った。
「話をするよりも、実物を見てもらったほうがいいべ。こっちさきてけんにか」

 テキサスを出ると、直ぐ近くになんの変哲もない岩が苔むしていた。

「この岩?」
「ここが入口だす」
 一瞬目の前が白くなったかと思うと、目の前に長い廊下が現れた。
 歩くにしたがって、様々な大きさのクリスタルが廊下の両側に並んでいるのが分かった。
 クリスタルの中身は、すぐそばまで行かなければ見えない仕掛けになっていて、好奇心の強い美奈穂が先頭に歩いていたが、見た順に美奈穂は悲鳴を上げ、他の面々も、怖気をふるった。

「……これは人工生命の失敗作ですね」

 クレア一人が冷静に見抜いた。

「んだ……ピレウス人の遺体から採取したDNAを操作して、いろいろ作ったんだども、みんな魔物みたくなっちまっで……納得したら、あんまし見ねえ方がええだす」
「人間らしいものもあるけど……?」
 気丈な樟葉は、その先のクリスタルを見て言った。
「それは、ピレウスの調査に来たグリンヘルドとシュトルハーヘンの人たちだす。ピレウスに来るど、三日と命がもたねえんだす」
「それで、あいつらはピレウスには手を出さないのか」
「昔のピレウス人の最終戦争で使われたのが、この結果だす。みんなDNAに異常をきたして死ぬか魔物になっでしまうんだす」

 グリンヘルド、シュトルハーヘン、ピレウスの秘密に愕然とする三笠のクルーたちだった。

「あ……ということは!?」
 トシが声をあげた。同じ思いはみんなの心の中で湧きあがった……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小悪魔マユの魔法日記・80『期間限定の恋人・12』

2019-10-31 06:30:55 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・80
『期間限定の恋人・12』    



 
 暗証番号を入れなければ開けないファイルが一つだけあった。
 それが、まさにその8桁……。

 8桁の数字を入れエンターキーを押した……数秒して父が画像になって現れた。

――ハハ、見つかってしまったな。もう見つかった……やっと見つかった……どっちだろう?
 多分やっとだと思う。
 美智子のことだから、わたしの部屋はしばらく手を付けないで、そのままにしているんじゃないかと思ってる。
 だから、これを見つけたということは、わたしの部屋を他の目的に使う必要が出てきたことだろう。
 どうだい、それも美優が必要になったからだと……当たったかな?
 美優は自分の部屋を持っているから、この部屋の使い道は……お母さんを助けて店の手伝い。
 そして、そんな美優を助けてくれる素敵な男性が見つかったから。お父さんは、そう思っている。
 美優は、一人っ子で優しい子だから、きっとそうだと思っているよ。もし違っていたら、腹を抱えて笑ってくれ。
 店は、繁盛しているだろう。美智子はバブル真っ最中でも下手に仕事を広げたりはしなかった。
 堅実に店を守り、マスコミ関係の仕事も確実に取り込んでいる。
 HIKARIプロの事務所移転と拡張にも目を付けている。わたしも、あそこは先物買いとしては狙い目だと思う。
 ヒカリミツルはビートたけしと同じくらい奇行の多い人だが、しっかりした経営戦略を持っている。
 彼は、芸能界……古いなあ、エンタテイメントの世界に、新しいスタイルを提示してくるだろう。
 話が、仕事っぽくていけない。
 一つ心配事……お父さんの家系はガンに罹る者が多い。親父も祖父さんもそうだった。
 まさか三代続くとは思わなかった。お父さんの数少ない、でも大きな見込み違いだった。
 美優がお母さんの血を多く受け継いでいることを願っているよ。
 でも、検診はしっかり受けてな……ええと、このドロシーの胸像の下のロゴに暗証番号……。
 ハハ、ばかだな。見つけたから、これを見てるんだよね。
 ドロシーのお下げを両方いっしょに四回叩くと……ほら、『オーバーザレインボー』が聞こえる。
 これを見ている美優とお母さんが、虹の彼方に着いていることを願っているよ。
 あ、もし、美優の彼がこれを一緒に見ていたら……二人のことをよろしく――

 そこで、父はバイバイと手を振った。そして……『オーバーザレインボー』がステレオになった。

「こんな男で……こんな事情で申し訳ありません」
 黒羽が、ドロシーの胸像を手に、二人の後ろに立っていた。
「英二さん……」
「一応、声はかけたんですけど、無断ですみません。お父さん、素敵な人だったんですね」
「あ……この部屋、黒羽さんに使っていただこうと思って、美優といっしょに片づけていて」
「今度の新曲、勝負なんでしょ!?」
「うん。ありがたく使わせてもらうよ、今週いっぱい。しかし、本当にお父さんは先見の明だな」
「夢ばっかり、思いこみの強い人だったから」
「いいえ、このお店のことも、うちの事務所のことも、ちゃんと見通していらっしゃる。それに、なにより、病気のこと、ちゃんと気にかけていらっしゃって、その甲斐あって、美優ちゃんも、早期治療でこんなに元気になったじゃないか」
「ハハ、そうよね。お父さん大したもんだ。ね、お母さん!」
「ハハ、そうよね」
 三人の明るい笑い声が部屋に満ちた。

 美優の命は、あと六日と三十分……にしちゃいけない。美優の体の中でマユは決心した。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする