真夏ダイアリー・48
新曲『二本の桜』のリリースといっしょに乃木坂で撮ったPVも発表になった。
アイドルグループの新曲としては珍しく、中高年の人たちが、たくさん聞いて下さった。
動画サイトのアクセスは、初日だけで2万件を超えた。
――新曲なのに、とても懐かしい。
そんな書き込みが多かった。
――子供たちのためにも頑張らなくちゃ……気づいたら、孫がいっしょに聞いていました。
東北のお年寄りからの、そんな書き込みもあった。
「会長、その辺の狙いもあったんですか?」
週間歌謡曲で初披露のときは、光会長も付いてきて(珍しいことなんだけど)司会のタムリに聞かれた。
「狙いなんか、ありませんよ。タムリさんの芸と同じく、思いつき。まあ、あんたより歳くってるから、なんか無意識に出たものはあるかもね」
「ああ、あるかも。似たようなギャグやっても、若い奴ならヒンシュクだけど、タムリがやったら笑うしかないって言われますもんね」
「ハハハ、お二人とも、存在そのものが昭和の文化遺産というか、無形文化財ってとこありますもんね」
MCの局アナのオネエサンがヨイショした。
「そんな見え透いたヨイショしたら、ヨイショ返ししちゃうよ」
「え……」
目が点になったオネエサンを、会長はタムリといっしょにヨイショした……物理的に。
「キャ、キャ、アハハハ、止めてくださいよ、あ、ど、どこ触ってんですかあ……!」
セクハラというか、放送事故というか、その手前までやって、わたしたちの『二本の桜』になった。
アイドルグループの新曲としては珍しく、中高年の人たちが、たくさん聞いて下さった。
動画サイトのアクセスは、初日だけで2万件を超えた。
――新曲なのに、とても懐かしい。
そんな書き込みが多かった。
――子供たちのためにも頑張らなくちゃ……気づいたら、孫がいっしょに聞いていました。
東北のお年寄りからの、そんな書き込みもあった。
「会長、その辺の狙いもあったんですか?」
週間歌謡曲で初披露のときは、光会長も付いてきて(珍しいことなんだけど)司会のタムリに聞かれた。
「狙いなんか、ありませんよ。タムリさんの芸と同じく、思いつき。まあ、あんたより歳くってるから、なんか無意識に出たものはあるかもね」
「ああ、あるかも。似たようなギャグやっても、若い奴ならヒンシュクだけど、タムリがやったら笑うしかないって言われますもんね」
「ハハハ、お二人とも、存在そのものが昭和の文化遺産というか、無形文化財ってとこありますもんね」
MCの局アナのオネエサンがヨイショした。
「そんな見え透いたヨイショしたら、ヨイショ返ししちゃうよ」
「え……」
目が点になったオネエサンを、会長はタムリといっしょにヨイショした……物理的に。
「キャ、キャ、アハハハ、止めてくださいよ、あ、ど、どこ触ってんですかあ……!」
セクハラというか、放送事故というか、その手前までやって、わたしたちの『二本の桜』になった。
《二本の桜》
春色の空の下 ぼくたちが植えた桜 二本の桜
ぼく達の卒業記念
ぼく達は 涙こらえて植えたんだ その日が最後の日だったから
ぼく達の そして思い出が丘の学校の
あれから 幾つの季節がめぐったことだろう
どれだけ くじけそうになっただろう
どれだけ 涙を流しただろう
ぼくがくじけそうになったとき キミが押してくれたぼくの背中
キミが泣きだしそうになったとき ぎこちなく出したぼくの右手
キミはつかんだ 遠慮がちに まるで寄り添う二本の桜
それから何年たっただろう
訪れた学校は 生徒のいない校舎は抜け殻のよう 校庭は一面の草原のよう
それはぼく達が積み重ねた年月のローテーション
校庭の隅 二本の桜は寄り添い支え合い 友情の奇跡 愛の証(あかし)
二本の桜は 互いにい抱き合い 一本の桜になっていた 咲いていた
まるで ここにたどり着いたぼく達のよう 一本の桜になっていた
空を見上げれば あの日と同じ 春色の空 ああ 春色の空 その下に精一杯広げた両手のように
枝を広げた繋がり桜
ああ 二本の桜 二本の桜 二本の桜 春色の空の下
春色の空の下 ぼくたちが植えた桜 二本の桜
ぼく達の卒業記念
ぼく達は 涙こらえて植えたんだ その日が最後の日だったから
ぼく達の そして思い出が丘の学校の
あれから 幾つの季節がめぐったことだろう
どれだけ くじけそうになっただろう
どれだけ 涙を流しただろう
ぼくがくじけそうになったとき キミが押してくれたぼくの背中
キミが泣きだしそうになったとき ぎこちなく出したぼくの右手
キミはつかんだ 遠慮がちに まるで寄り添う二本の桜
それから何年たっただろう
訪れた学校は 生徒のいない校舎は抜け殻のよう 校庭は一面の草原のよう
それはぼく達が積み重ねた年月のローテーション
校庭の隅 二本の桜は寄り添い支え合い 友情の奇跡 愛の証(あかし)
二本の桜は 互いにい抱き合い 一本の桜になっていた 咲いていた
まるで ここにたどり着いたぼく達のよう 一本の桜になっていた
空を見上げれば あの日と同じ 春色の空 ああ 春色の空 その下に精一杯広げた両手のように
枝を広げた繋がり桜
ああ 二本の桜 二本の桜 二本の桜 春色の空の下
「今年の卒業ソングのベストになりそうですね」
ヨイショを警戒しながら、局アナのオネエサンが正直な感想を言った。
「そうなるかなあ……まあ、卒業式の歌は定番てのがあったほうがいいかなあ」
「お、大きく出ましたね。早くも定番ソング狙いですか!?」
「……こんな歌が定番になってたまるか」
帰りのバスの中で、会長が呟いた。
「ヒットさせちゃいけないんですか?」
潤が聞き返した。
「バカ、ヒットは当然。お前らは動画サイトで、昔の卒業式でも見てろ」
「あの、仁和さんから聞いたんですけど、光先生は東北のご出身なんですか」
「それは、たまたま。真夏は、乃木坂の古い卒業アルバムでも見てな」
わたしは気になったんで、ネットで光会長のことを調べた。でも、福島県出身という以上のことは分からない。
天下のHIKARIプロの会長のブログなので、書き込みや、コメントがたくさんある。わたしは、その中にヒントがあるような気がした。でもたくさん有りすぎて途方に暮れる。
そのとき閃いた。
――そうだ、ラピスラズリのサイコロだ。
そう思って、ラピスラズリのサイコロを振ってみた。サイコロは、1から6までしか無いはずなのに、196という数字を浮かばせていた。
「え……?」
わたしは、196番目のコメントを見た。
――充くん、この間はありがとう。ノムサン
わたしは閃くものがあって、福島県ノムサンで検索してみた。
「あった」
――ノムサン。野村産業。社長・野村信一……初代・野村信之介によって創始された県下有数の流通企業に……。
わたしは、会長の野村信之介にひっかかり、検索しなおした。経歴がいっぱい出てきたけど、出身のH小学校にひっかかった。ここに、なにかある……。
さらに、H小学校で検索。昭和45年、過疎化のために廃校とあった。
さらに画像を検索してみると……それがあった。
ヨイショを警戒しながら、局アナのオネエサンが正直な感想を言った。
「そうなるかなあ……まあ、卒業式の歌は定番てのがあったほうがいいかなあ」
「お、大きく出ましたね。早くも定番ソング狙いですか!?」
「……こんな歌が定番になってたまるか」
帰りのバスの中で、会長が呟いた。
「ヒットさせちゃいけないんですか?」
潤が聞き返した。
「バカ、ヒットは当然。お前らは動画サイトで、昔の卒業式でも見てろ」
「あの、仁和さんから聞いたんですけど、光先生は東北のご出身なんですか」
「それは、たまたま。真夏は、乃木坂の古い卒業アルバムでも見てな」
わたしは気になったんで、ネットで光会長のことを調べた。でも、福島県出身という以上のことは分からない。
天下のHIKARIプロの会長のブログなので、書き込みや、コメントがたくさんある。わたしは、その中にヒントがあるような気がした。でもたくさん有りすぎて途方に暮れる。
そのとき閃いた。
――そうだ、ラピスラズリのサイコロだ。
そう思って、ラピスラズリのサイコロを振ってみた。サイコロは、1から6までしか無いはずなのに、196という数字を浮かばせていた。
「え……?」
わたしは、196番目のコメントを見た。
――充くん、この間はありがとう。ノムサン
わたしは閃くものがあって、福島県ノムサンで検索してみた。
「あった」
――ノムサン。野村産業。社長・野村信一……初代・野村信之介によって創始された県下有数の流通企業に……。
わたしは、会長の野村信之介にひっかかり、検索しなおした。経歴がいっぱい出てきたけど、出身のH小学校にひっかかった。ここに、なにかある……。
さらに、H小学校で検索。昭和45年、過疎化のために廃校とあった。
さらに画像を検索してみると……それがあった。