大橋むつおのブログ

思いつくままに、日々の思いを。出来た作品のテスト配信などをやっています。

真夏ダイアリー・34『最初の指令・2』

2019-10-09 06:54:02 | 真夏ダイアリー
真夏ダイアリー・34
『最初の指令・2』            




 最後の通帳……?

 オソノさんの説明が分からずに、わたしは、もう一度聞き直した。

「いいえ、最後通牒……つまり、交渉を打ち切って、戦争しますよ。というお知らせ」
「…………?」
「ちょっと、これを見て」
 オソノさんが指を動かすと、空中にスクリーンが浮かんだ。

 
○1941年 12月07日、13:00  

 日本の最後通牒は野村駐米大使を通じて真珠湾攻撃の30分前の13時にコーデル・ハル米国務長官に渡されることになっていた。

○12月07日、13:25  

 日本、真珠湾攻撃を開始

○12月07日、13:50  

 最後通牒の清書が、日本大使館で完成。

○12月07日、14:05

 野村駐米大使と来栖特派大使、最後通牒を携え国務省に到着。

○12月07日、14:20

 二人の日本大使、15分待たされて、ハル国務長官と会見。最後通牒を手渡す。

「自分の公職生活50年の間、いまだかつて、このような恥ずべき偽りと歪曲とに充たされた文書を見たことがない」と、ハル国務長官に言われ、以後、日本は「スネークアタック(だまし討ち)」と言われ、ルーズベルト大統領の演説で、対日交戦機運は一気に高まり、戦争に突入。以後「リメンバー、パールハーバー!」のキャッチコピーのもと、四年にわたる対米戦争が始まった。


「これ、なんですか……?」
「むかし、日本がアメリカと戦争をした直前の事情」
「え、日本て、アメリカと戦争したんですか!?」
「こりゃ、手間かかりそうね……」

 それから、わたしはオソノさんから、その戦争についてのレクチャーをうけた。学校の授業と違って、ビジュアルな資料が多く、オソノさんの語り口もうまいので、一時間ほどで、だいたいのところは分かった。

「じゃ、アメリカは、暗号を解読して、あらかじめ知っていたんですか!?」
「そうよ、アメリカ人の心を対日戦争に向けて燃え上がらせるために、ルーズベルトさん達が、やったこと」
「で、わたしに、何をしろと?」
「予定通りの時間に、国務省に最後通牒を届けてほしいの」
 そう言って、オソノさんは、紅茶を飲み干した。まるで町内会の回覧板をまわすような気楽さだった。

「じゃ、お願いね」

「あ、あの……」
「大丈夫、必要なものは用意してある。必要な知識や能力もインストールしといてあげるから」
「で、でも……」
「がんばってね~」

 そこで、わたしの意識はまた跳んでしまった……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宇宙戦艦三笠・25[暗黒星雲 ど根性レイマ姫]

2019-10-09 06:46:54 | 小説6
宇宙戦艦三笠・25
[暗黒星雲 ど根性レイマ姫] 


 
「ただいまの戦闘、三笠大破。航行不能。艦長、砲術長戦死だす(^▽^)」

 可愛い顔で、レイマ姫は宣告した。
「今の設定ありえねーよ。両舷から10万機の飽和攻撃なんて、攻撃側も味方の弾くらって、二割がたの損失は出てるっての。なあ、クレア?」
「はい、10万機の戦闘機を、一度に管制して攻撃する能力は、わたしの知っている限り、ありえません」
「そりゃ、クレアさんは、元ボイジャーで、相当量の宇宙情報を持ってえだども、全てではねえ。あだしら暗黒星雲が観測した限りでは、グリンヘルドもシュトルハーヘンも、これぐれえの戦闘はこなすだす」
「でも、二割の損失に、三笠が撃破した分を入れれば6万機の喪失よ。部隊としては壊滅。次の作戦に差し支えるわ」
「そうよ、かりにあたしたちを撃破しても、他の国の艦隊がいるわ。それに対する準備も……」
 美奈穂も砲術長の立場で反論する。
「でもさ、そのありえねーで、あたしらのソ連は壊滅したんだよ。レーガンの際限もない軍備拡張に、ソ連はかなわなかった」
「あんだだちだってえ、日本人の末裔だべ。第二次大戦で、負けると分かってながら、神風やったんだべ。あれ、アメリカは想定外だったんだす。ま、最初はグリンヘルドの攻撃だけで瞬殺されでだったから、進歩ってば進歩だす。もっかいクレアさんど、シミュレーションしなおしてやっでみっから。美奈穂砲術長もよろしぐだす」

――可愛い顔して、あの子、わりとやるもんだねと……――

 修一の頭には、祖父ちゃんが歌っていた歌のイントロが、リフレインした。
「あ……」
「どうかした、レイマ姫」
 唯一の姫ファンのトシが、急に立ち止まったレイマ姫に声を掛けた。CICに走りかけていた美奈穂も、思わず振り返った。
「おもさげね、ちょっと寄り道してもらえねべか」

 レイマ姫は、暗黒星雲の防衛軍があるアルファ星から、サイコ通信が入っていた。

「艦長、おもさげねだども、アルファ星に寄ってもらえねべか」

 また、あの厳しいエクササイズが始まるのかとゲンナリしていたクルーたちは、レイマ姫の予定変更を歓迎した。
「見たところ、大きさも環境も月と変わりません。地表はクレーターが多くて、人工構造物は感知できません」
 クレアの観察だった。
「あの星のどこに、秘密基地があるんだ?」
「近づけば、分かるず」
 レイマ姫は、快活に、でも目は真剣……というより、厄介なことになるなという色をしていた。

「え……そんな!?」

 クレアが驚きの声を上げた。
 
「分かったずが?」
「容積のわりに質量が小さいです。たった今感知しました。たった今まで月と同じ数値だったのに……」
 三笠のアナライザーCPUは、あいかわらず月と変わらないデータを表示していた。
「10万キロに近づくと、クレアさんみだいな優秀なアナライザーには、分かってしまうだす。アルファ星は人工の星だす」

 周回軌道に乗ると、極に近いクレーターが開くのが分かった。カメラの絞りが開くのに似ている。絞りの中には、それこそカメラの数百倍はち密であろう構造物がビッシリと詰まっている。

「構造物は、全て星の内部にあるのか……」

 艦長の修一以下、クルーたちは驚きの声を上げた。三笠は誘導ビームに従ってクレーターの中に入って行った……。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

音に聞く高師浜のあだ波は・18『テレビが壊れた!』

2019-10-09 06:29:36 | ライトノベルベスト
音に聞く高師浜のあだ波は・18
『テレビが壊れた!』
         高師浜駅


 年の瀬も押し詰まっての大事件!

 エアコンを掃除してたお祖母ちゃんが、クラっとよろめいて脚立から落ちた!
 幸い怪我はなかったんやけど、かわりにテレビが犠牲になってしもた。

 どういうことかというと、お婆ちゃんは落ちたはずみでテレビを引っかけ、テレビは、そのまま床に落ちた。
 床には任務に就きはじめたお掃除ロボット、テレビは、そのロボットの上に。
 お婆ちゃんは、そのテレビの上に落ちた。
 そして、テレビは液晶の画面が粉砕されてしもた。

「ま、これで4Kテレビ買う決心がついたやんか!」

 お婆ちゃんは、どこまでもポジティブや、痛む腰を摩りながら宣言した。

 で、あたしは朝から日本橋に出向いて4Kテレビを買いにきてる。
「これも修行や、美保一人で行っといで!」と、お祖母ちゃんが言うたから。
 修行なんかやない。あたしには強がってるけど、したたかに腰を打ってしもて外出がしんどいんや。
 こんな時に「医者に行っといでや!」は禁句。下手に言うたら意固地になって、ぜったい行かへん。
 ここは大人しい「ヤッター!」言うて出かけるのが一番。
「ほなら、これで」
 お祖母ちゃんから30万円の現ナマを預かる。正直ビビります。

「あ、あんたもあかんのん?」

 すみれの次に姫乃に電話したら、姫乃もアウト。
 ま、年末の、この時期に部活にしろ家の用事にしろアグレッシブにやってんのは、高校生としては表彰ものやと思う。
 せやけど、一人で30万を懐に入れて……正直ちびりそうになります。

 ウワーーーーーーーーーー!!

 心の中で叫びました。
 地下鉄の恵美須町で下りて地上に出ると、メチャクチャな人出。
 ここで気絶とかしても、バッタリ倒れることなく、人に挟まれたまま流されて行きそうなくらいの盛況。
 普段やったら、ゲーム屋さんとかファンシーショップやとか目移りするんやけど、ひたすらお祖母ちゃんに言われたJ電気を目指します。

 お祖母ちゃんが4K言うたんは正解!

 他のテレビは山ほど種類があって、丸一日かかっても選べそうにありません。
 そやけど、4Kで30万の予算に合うのは二種類だけ。
「まあ、値段の高い方かなあ……」
 安い方をよう見ると、単なるモニターで、チューナーとかを買わんとテレビとしては機能せんらしい。
 ほぼ決まりかけたとこで、お祖母ちゃんの言葉を思い出した。
――年内配達が間に合うかどうか――
 お祖母ちゃんは紅白歌合戦を観んと年が明けへん人や。年内配達が絶対条件。
「う~ん、年内ですかあ」
 店員さんは、一声唸ると「ちょっと確認してきます」言うて行ってしもた。
 やっぱりムリっぽいかなあ……。半分諦めて、相談の電話をしよ思てスマホを出した。

「わたしが変わって承ります」

 めちゃ綺麗な声が降って来た。
 顔を上げるとベッピンの店員さん。どっかで見たこと……。
 いぶかしんでると、ニッコリ笑って提案してきた。
「こちらでしたら、メーカーとのタイアップで確実に年内配送ですが」
 示した手の先には50インチのスグレモノ! 
「わー、このテレビは気ぃつきませんでした!」
 それは、ズラッとテレビが並んだ反対側、つまり、あたしの背中側にありました!

「お買い上げありがとうございました」

 ていねいなお辞儀をされて、売り場を出ました。で、エスカレーターに乗って気ぃついた!
 あの店員さんは『ド・カワチ』の温泉で一緒になったメーテル似のベッピンさん。
 そやけど「こちらでしたら……」と身体を捻った時の胸、あのオッパイは……女の勘やけど、天然ものや。
 
 いや、よう似た人やねんやろ。

 そない結論付けると、プレステVRのことが頭をよぎった。
 これだけ大きな電気屋、きっと体験ブースがあるに違いない。
 エスカレーターを上りに乗り換えて五階のゲーム売り場へ。

 初めてのVR体験にワクワクして、帰ることにした。

 やっぱ、こういうとこは友だち同士で来なら面白さ半減。VRは面白かったけど、やっぱ「ほんなら、次はあそこ行こ!」いうことにならへんと寂しいだけや。

 テレビ売り場まで下りて(?)やった。

 さっき買うたばっかりの、あたしが買うたテレビのコーナーが無くなって、パソコンのコーナーになってしもてる。

 あたしが買うたからやろか……ま、年末、売り場の回転も早いんやろと納得して、夕方まで遊んで帰りました。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高安女子高生物語・112『惜別 それはバンジージャンプから』

2019-10-09 06:22:33 | エッセー
高安女子高生物語・112
『惜別 それはバンジージャンプから』
   


 

 MNB47の母体はユニオシ興行。日本で一番人使いが荒い。

 当たるとなると、半日の休みもくれへん。これでは、先日の仲間美紀みたいな子も出てくる(リスカやったけど、命に別状は無し。せやけど、休んでる間に、ゴーストライター付きで手記を書かされてる。ほんまに無駄のない会社や)
 あたしらは、まだ売り出し中なんで、来た仕事はなんでもやる……やらされる……やらせていただく。

 今日は、わざわざ新幹線とバスを乗り継いで、バンジージャンプのメッカ岡山鷲尾ハイランドにまできた。

 あたしらはAKBみたいに自分の番組持てるとこまでいってないんで、ヒルバラ(お昼のバラエティー)に10分のコーナーをもろてて、メンバーが、とっかえひっかえ、いろんなことをやらされる。
「ええー、どうしてもMNBの明日香がやりたいというので(だれも言うてません!)この岡山鷲尾ハイランドのバンジージャンプにやってきました。ここはジャンプしながら願い事を叫ぶと叶うそうです。デビューからたった2カ月、どんな願いがあるのでしょうか(決まってるやん、ゆっくり寝かせて!)でも、ここの願い事は、ジャンプするまでは口にできません。しゃべってしまうと効果が無いそうです。で、明日香にはカメラ付きの……」

 ヘルメットを被せられた。顔の前には自撮り、メットの上には、あたしの視線とシンクロさせたチビカメラ。

 ホンマは、メンバー二人が飛ぶはずで、ジャンケンに負けたカヨさんも飛ぶはずやったんやけど、リハでちびってしまうぐらいの緊張なんで、急きょチームリーダーのうちが二人分の内容=おもろさを出して飛ぶことになった。
「なんで、明日香が選ばれたか分かる?」
 MCのタムリが聞いてくる(おまえやんけ、やれ言うたん!)
「え、あ、センターだから?」
「いや、明日香だけが、自分の部屋3階にあるから」
「ええ、マンションの五階とかに住んでるのもいますよ」
「戸建てで、三階は自分一人やから。で、準備は万端?」
「うん、トイレも二回もいってきたし……たぶん大丈夫」
「よし、絶対成功する御呪いしてあげる……」
 そう言うて、タムリはあたしのすぐ横に寄ってきた……と思たら、突き飛ばされた!

 ギャーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!

 そう叫んだとこまでは覚えてる。
 
 そのあと、あたしはモニターの中からも、みんなの視界からも一瞬で消えて……何かが抜けていったような気がした。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

小悪魔マユの魔法日記・58『トイレットペーパー事件・2』

2019-10-09 06:15:38 | 小説5
小悪魔マユの魔法日記・58
『トイレットペーパー事件・2』   



 
 キーンコーーンカーンコーン……

 授業開始の予鈴がのどかに鳴って、お行儀のいい東城学院の生徒は、昼休みの中庭やキャフェテリアから、ゆっくりと教室に向かい始めた。
 ちょいワルとは言え、トイレットペーパーの山に埋もれたルリ子のグループを残していくのは気の毒だったけど、授業に遅れるわけにはいかない。魔法で片づけるのは簡単だけど、超常現象を起こすわけにもいかない。ルリ子のグループが教室に戻って、トイレが空になるのを待って、直すことにした。

 しかし、教室に入ると、微妙な変化を感じた。
 一つは、午後だというのに日差しが心地よく、いつのまにか秋の気配が忍び寄ってきたこと。
「クシュン!」
 豚草アレルギーの沙耶が、かわいくクシャミをしたことでも、秋の気配は確実だ。

 もう一つは、知井子とマユ自身に注がれる好奇心……少しウラヤマシイ気持ちもそこには混じっていた。
――そうだ、今日の昼「笑ってイイトモ」にAKR47のメンバーが、マスコミに初めて出たんだ。

 むろん週末アイドルであることが売りなので、直接出演したのは、リーダーの大石クララだけだったけど。レッスンのビデオが流れる。当然浅野拓美に体を貸しているマユも出ているし、選抜メンバーである知井子の姿も映っているはずだ。
 昼休みにスマホのワンセグで観た子も何人かいて、その真新しい記憶が、マユの頭にも飛び込んできた。
 意外に、知井子のショットが多い……ウラヤマ好奇心が、あちこちから湧いてきている。むろんみんなお行儀がいいので、直接見たり、こそこそ話す者などいないけど、意識はしている。

 その中で、一番強いウラヤマ好奇心を持っていたのは、意外にも……オチコボレ天使の雅部利恵だ。

――わたしのお陰じゃなくて、小悪魔の力でアイドルになってしまうなんて……マユ。あんた何か企んでる?
――そんなことないわよ。知井子は自分の力でアイドルになったのよ。
――ウソよ、だったらなんで、あんたまでいっしょになってアイドルやってんのよ。
――落第天使のあんたには分からない事情があるのよ。
――落第は余計でしょうが!
――ごめん。わたしも落第だから、親近感からよ、親近感!
――ま、そういうことにしておきましょう。とりあえず……。

 本鈴が鳴って、授業が始まっても、こんな調子だった。

「ま、かってにヘソ曲げてりゃいいや」。マユはその程度に思っていたが、利恵の対抗心は収まらなかった。先生が赤いチョークで、板書にアンダーラインを勢いよくひくと、マッチをすったように火が点いてしまった。
「先生の情熱ってスゴイですね!」
 すかさず、マユは賞賛してごまかした。化学の内田先生だったので、なんとかごまかせた。
「ど、どうだ、これが化学の力だ!」
 マッチチョークもすぐに消えたので、内田先生を得意にさせて事なきを得た。
――ちょっとテンション高すぎ!
 マユは、利恵に注意した。利恵は、なんにも応えない。バリアーを張って、なにか対抗手段を考えている様子。
――ちょっと、なに考えてんのよ?
――ほっといて!
 それっきり、利恵はバリアーを開かなくなった。

――やばいなあ……。

 そう考えているうちに、トイレの大量のトイレットペーパーのことなど、すっかりマユは忘れてしまった。

 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする