魔法少女マヂカ・090
キ~ンコ~ンカ~コ~ン キンコンカンコ~ン
ポリコウ(日暮里高校)のチャイムにそっくりな鐘の音が鳴り響いた。
「逆じゃ、ここの鐘が本家本元で、そなたらの学校のチャイムは、コピーしたものじゃ。まあ、とうに著作権は切れておるが、心得違いをせぬようにな」
女王が鐘の音にチェックを入れている間に、議員たちが勢ぞろいをして『ゴッド セイブズ ザ クィーン』を斉唱する。
「それでは、臣トーマス・ペンドラゴン、国会議長として、恭しく女王陛下を議場にご案内仕ります!」
議長が宣言すると、議事堂の玄関からスルスルと赤じゅうたんが敷かれてきた。
「おまち! 議会に女王が臨場するときは、議会から人質が差し出されるのが習いじゃ。余が出立するときには、まだ人質は送ってこられてはいなかったぞ。どうなっておるのじゃ、議長!?」
「へえ、女王って、人質をとるんだ」
「日本人のマヂカには理解できないだろうがな、議会と国王というのは元来対立する関係にあるのだ。イギリスは今でもそうだしな」
マヂカに説明してやっている間に、議員たちは顔を見かわして咳払い。お互いに――おまえが説明しろ――と責め合っている。
「どういたしたのじゃ、返答がなければ、余は議場には入らぬぞ。余の宣誓が無ければ議会が開けぬであろうが」
「恐れ入ります、陛下。今般は我が国のEU離脱が議案となっておりまする……」
「承知しておる。国の行方を左右する重要議案であるからこそ、余が臨場した。そうであろう、議長」
「ご明察ではございますが、その……」
「グズグズいたすな、首をちょん切るぞ」
議員たちがいっせいに首をすくめた。こいつら、本気でビビッてやんの。
「実は、与野党ともに議席が伯仲……いえ、三日前にヒギンズ卿が緊急入院して、まったくの同数となっております。人質は、与野党から一名ずつ出すことになっております、おりまするが……」
「出せばよかろう」
「出してしまいますると、与野党ともに単独過半数に及ばぬ議席数になってしまい、議決ができぬ仕儀とあいなります」
愛想のいい副議長が、揉み手しながら言い添える。
「ここは、慣例を破り、人質なしのご臨席を願わしゅうございます」
「首をちょん切るぞ!」
ヘヘーーー!! 議員たちは、首を胴体にめり込ませた。
「不甲斐ない議員どもだ。ならば、余が解決策をしめしてやろう」
「御心のままに」
「余が、女王の権限で議員を任命し、その新議員を人質に選任すればよかろう」
「おう、いかにも、陛下には、総議員の一割を任命する権限が、ございます」
「勅任議員は、現在八名でございますので、二名を選任することができます」
副議長が、分厚い書類の束を繰りながら付け加える。
「ならば、ここの魔法少女と牛女を勅任議員といたすぞ!」
女王が、ビシッと指さした。議員どものめりこんだ首が目のところまで出てきて、いっせいにオレとマヂカに熱い視線を送ってきた!