雨あがりのペイブメント

雨あがりのペイブメントに映る景色が好きです。四季折々に感じたことを、ジャンルにとらわれずに記録します。

雪を詠う

2018-02-21 13:45:48 | 人生を謳う

雪を詠う
 関東に降った雪もすっかり解け、暖かく明るい日差しの中で福寿草が輝いている。
日陰の霜柱も姿を消し、春の兆しが感じられるこの頃です。
しかし、北国では異常気象の名残りがまだ続いているようです。
雪に閉ざされ、雪かきに追われる日もきっとそろそろ終わりを告げることでしょう。
朝日新聞の俳句や短歌の投稿欄にはたくさんの雪に関する歌が投稿されています。
その中から好きな歌をそれぞれ5つを紹介します。


  〇 雪被る家並みの上の狭き空赤みを帯びて夜の明けくる
                      ……(昭島市) 奥山君子 朝日歌壇2018.02.19
     一面の雪に覆われた世界だ。白々と明るくなってくる東の空が、ほんのりと赤みを帯びてくる。
     除雪は大変だけど、雪国の美しい夜明けに感動している

  〇 積もりたる雪の歩道を鶺鴒(せきれい)は雪突(つつ)きつつ小走りに行く
                                              
……(千葉市) 笹倉童心 朝日歌壇2018.02.19
    この歌もまた雪国の一瞬の日常の風景を切り取った、絵のような風景が漂う歌である。
            雪に埋もれて餌の乏しくなった鶺鴒が歩道どうの下から現れるわずかばかりのえさを求めて小走りに               行く姿を優しい目が追いかけている。

                      
  〇 大雪に折れたる枝を取り除く頂(いただき)に柚子一つ残れり
                      ……(栃木県) 富田洋司 朝日歌壇2018.02.19
              降り積もった雪に樹々たちの枝がしな垂れている。枝をゆすり、棒で叩きながら枝に着いた雪を払っ                 ていく。 払いきれない枝のてっぺんに柚の実が一つ輝いている。

    三首とも雪国のなにげない風景を切り取った感性が素晴らしいと思います。
      



  〇 「寂しい」のうかんむりに雪つもりゆく屋根の重たさ
                 
…… (福島市)美原凍子 朝日歌壇2015.1.26
      辺り一面の雪の原。震災と原発がなにもかも奪ってしまった。ただただ寂しい雪の景色である。
      その「寂しさ」さえ、雪が埋め尽くしていく。心までも被いつくすような寂寥感が漂っている。

  〇  雪しまく峠を自転車で避難したあの人のことが忘れられない  
                                         ……梅田洋子
       「雪しまく」と言うから、
      吹雪の舞う峠道を自転車で避難していく人の後ろ姿が今でも心に焼き付いている。
      「
あの時」。 生きていくことにみんな必死だった。
                 何処へ逃げるか。人の流れる方を目指して誰もが必死で避難行
をしたのだろう。
                 避難指示で渋滞する道路、ガソリンもない… 
                 消えていったあの人は今何処にいるのだろう。
      
忘れられないあの日の一瞬が今もよみがえってくる。    

  〇 街灯の一夜を雪の降り積もる  
             …… (静岡市) 松村史基 朝日俳壇2018.02.19
       寝静まった深夜ぽつんと立った街灯に雪は降りつみ、朝、それを見ると昨夜降った雪の傘が歴                             然と残る。

  〇 美しく消ゆるは難し残る雪
             …… (東京都) 徳竹邦夫 朝日俳壇2018.02.19
       東京に降る雪。明くれば車にはねられ、人の踏みあとたちまち汚れてい来る。
       誰しもが感じる雪の白さに対する憧
れが消えていく瞬間でもある。
 

  〇 三日目も四日目もまだ雪達磨
             …… (東大阪市) 宗本智之 朝日俳壇2018.02.19
       子どもたちが久しぶりに降った雪にはしゃぎながら作った雪達磨が、まだ解けない。
       冬の寒さがひとしお厳しい日々である。

  〇 帰りゆく子の背を追ひし春の雪
             …… (岩倉市) 村瀬みさを 朝日俳壇2018.02.19
       久しぶりに帰って来た帰って来た子が帰っていく。その背中に春の雪が降っている。
       感慨深い句である。雪を背負って遠ざかる我が子…  未練が残る…

  
  〇 春立つと天は言へども屋根の雪
             …… (高岡市) 四津三樹夫 朝日俳壇2018.02.19
       暦の上で立春を迎えても、屋根の上には雪がいまだに溶けないで残っている。
       例年にない雪の深さをうたっている。その裏側に見えるのは、春を待ちわびる心なのだろう。
        (人生を謳う)                                                       (2018.02.21)


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