LIVRE OBJET
何なのか分からないが、明らかに人工物である。自然ではなく人の手による形態は、四方の隅にある穴により、壁などの平面に取り付けられるものであるらしい。
上方の物にはしっかり固定されるべくネジが各所にあるが、内外の関係性から言うとその役割が不明である。
下方のものは、その内部(内側)だと思われるが、上下の関係性(大きさ)も合致せず不明である。電線のように見える線も途切れているものもあり、その必然性も見えない。
何を表明しようとしたのだろう。
強力なパワー(エネルギー)、機密性を感じる物体ではあるが、その目的が不明である。生きるための防衛・進歩・究明の痕跡だろうか。
これを見る限りでは、使用目的の判明しない廃品でしかない。歴史の中での徒労は古物としての幻影のようである。
(写真は神奈川県立近代美術館〔若林奮『飛葉と振動』展・図録より〕
雲の信号
あゝいいな せいせいするな
風が吹くし
農具はぴかぴか光つてゐるし
山はぼんやり
岩頸だつて岩鐘だつて
みんな時間のないころのゆめをみてゐるのだ
そのとき雲の信号は
もう青白い春の
禁欲のそら高く掲げられてゐた
山はぼんやり
きつと四本杉には
勘彌は雁もおりてくる
☆運(めぐらせる)真の劫(極めて長い時間)
普く推しはかる
悩む愚かな考え
太陽に願う恵みと願う照(平等)
字で換(入れ替える)
運(めぐらせる)真の劫(極めて長い時間)
照(平等)の魂は駿(すぐれている)
経(常に)に翌(つぎ)の講(話)を継(つなぐ)
散(バラバラな)詞(言葉)を翻(作り変える)
太陽は金(尊い)の丸である。
第17章 夜の尋問/縉紳館の夜
暗い縉紳館のまえには、一群の男たちが立っていた。カンテラをさげているのが二、三人いたので、何人かの顔は、なんとか見わけがついた。Kは、ひとりだけ見知りの顔を見つけた。馭者のゲルステッカーだった。
☆暗黒の中で大群(先祖である氏族の一団/死にゆく人たち)がハロー(死の入口)の前に立っていた。
二、三の者がカンテラをさげているのが見えたので幾つかの顔は見わけられた。よく知られている案内人のゲルステッカーだった。