巨木の加工・・・その中にカードの集積が整然と埋まっている。
自然を人為が犯し、時空に共存してきた長い過去・現在・未来…果てしなく続くかもしれない時空と人間との共存世界。
それを『水没』と題している。沈むはずのない巨大木製。
自然の理に反してこれを水中に没することができるだろうか。相応のエネルギー(力)が要る。想像を超えるエネルギーの持続は離反した途端瞬時のうちに水上に浮上するに違いない。
『シジフォスの神話』というのがあるが、罪人がその刑によって重い石を山上に運ぶが、大変な労力の末に見た景色は、自分が下りるより早く麓に転落していった石である。
水底へ沈めたと思ったとたん、瞬時勢いよく浮上するに違いないこの木製の作品。
これは『神話』である。
軽い葉が沈み、重い石が浮く。比重の軽い樹木は沈むことはないが、『水没』とタイトルしたならば、これは正に不条理であり『神話』である。
写真は『若林奮 飛葉と振動』展・図録より 神奈川県立近代美術館