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『チョコレート粉砕機』(No.2)
モデルがある、しかしモデルの形を借用しただけで本来の目的は決して達成不可能な設え、構想である。
モデルには動力があり、ローラーは若干中央に傾き、豆を磨り潰す作用に拍車をかける仕組みである。ところが作品には動力が消失しており、ローラーの傾きも外に向いているという滑稽中央の心棒も役目を果たさない仕組みである。要するにチョコレートの粉砕ではなく、機能の粉砕である。
無用の長物の案、一見『チョコレート粉砕機』に似ているが、もって非なるものを提案している。描写であれば崩れる心配はないが、実際にはこの形で留まることはなく、組み立てることさえままならない物であるに違いない。
これを制作した意図は何か。
機能の喪失、存在しているが、その目的を破棄し決して存在理由に届かない代物・・・悲劇である。争うこともなく沈黙しているが、明らかに嘲笑せざるを得ない存在としての『チョコレート粉砕機』(No.2)。
見かけは《それらしい》が、《それ》にはなれない。一般に偽物といわれる範疇の模索を仕掛けている。
有るが、無いも同然。『存在とは何か、価値(有意義)とは何か』』を秘密裏に吐露している。
写真は『DUCHAMP』 www.taschen.comより
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