切り紙細工の人型も、背景も、地上(床)も単色(フラット)であり、地上と背景の距離が分からない。人型の影が地上で切れており、大きな溝、間隔を予感させるのですが、背景自体の具体性に欠けるため関係性は不明、深淵の時空である。
地上はフラットでありながら片足を軽く埋没させている。しかし人型が紙状の軽さゆえ、危機感を感じさせない。かなりの勾配の坂を直立で立ち、不安感を与えない。
人型を人間に置き換えて見ると、このポーズはあり得ないほどのエネルギーを要するはずである、むしろ立っていることは困難である。
『喜劇の精神』というのは、ごく軽く見えて、内実は予想をはるかに超えたパワーの起爆があるとマグリットは進言する。そして、わたしの作品においても、と呟いているのではないか。
写真は『マグリット』展・図録より
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