続・浜田節子の記録

書いておくべきことをひたすら書いていく小さなわたしの記録。

M『喜劇の精神』4.

2021-10-25 07:00:35 | 美術ノート

『喜劇の精神』であり、喜劇役者ではない。
 精神の具象化、穴の開いた薄い紙きれのように所在ない存在である。しかし、穴の様子を見ると、四方八方延々続く連鎖を成している切込み模様であり、これは無限の世界観、広がりを意味する。換言すれば限りなく《無》でもある。

 きちんと切り込まれた形に崩れはない、精神の緊張は毅然としてを許さない。
 人型、人間の形を保っているが内実は血肉を放棄し、薄っぺらい紙の仮装して可笑しみを演じている。
 危うい足元、常に危機感を抱いている。笑われることの蔑みに堪え、全身を力に変えて観客の前に立っている。フラットな背景、地盤は精神のカラーであり、常に地味に自分を抑えて均衡を保っている。勾配のある坂を何事もないような顔で直立して演じる猛烈なエネルギー、喜劇の精神は腹を抱えて笑う観客の前で平然と対峙している。

 高みからの眼差し、貶められるかの姿態、漂う哀愁・・・この時空を演出する喜劇の精神は生活の糧でもある。

 写真は『マグリット』展・図録より


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